依代 3      作: 玲 ********************************************************************************* ☆彡10. 私は膝に肘を突き、挙げた手の指でこめかみを揉む。何といえばいいのだろう。いったん 決めたらこの強さ。真理に似ている。とことん優しく、穏やかで、ひかえめ。しかし芯は 柔軟で、それが強さにもなっている。依代の体質を持った女はどこか共通したものを持っ ている。「菩薩」の性質とでもいおうか。水代にもそれがあるのは間違いない。 私は内心、水代が浄霊を受けることを期待していたはずだ。そうなれば否応もなく、巨大 な依代の能力が手に入る。しかし・・・それはこの3年間、酒に溺れ目を逸らし続けてき たものと、正面から向き合うということに他ならない。水代に覚悟は問うたが、私自身に も覚悟が問われる瞬間だった。 頭の中を、真理と暮らした5年間の、宝石のような思い出が駆け巡る。酒に溺れ、部屋に 閉じこもってまで守ろうとしてきた思い出・・・真理という女の生きた証に、別れを告げ る時がきてしまった。真理の泣き顔。真理の笑い顔。真理の怒った顔。真理の困った顔。 真理のひょうきんな顔。真理の拗ねた顔。真理の真摯な顔。私を魅了し続けた真理の無数 の顔が入り乱れ・・・そしてすべてが溶け合うように、ひとつの顔が私の中で像を結んだ。 それは、菩薩の顔。すべてを許し受け入れる神々しいまでに清らかな眼差しが、私を優し く見つめていた。その微笑みに、私はさよならを告げた。 「私の覚悟も決まったよ。水代君。いや、今からは千明と呼ぼう。私の傍においで」 薄れてゆく真理の菩薩顔の余韻を切なく愛おしく感じながら、私は水代千明という青年を 本当の意味で正面から見つめた。千明はおずおずと立ち上がり、緊張で身を固くしながら 私の横に腰を下ろした。その距離は40センチ。馴れ馴れしいほど近くもなく、他人行儀 なほど遠くもない距離だった。私は身体を千明に向けて回しながら擦り寄せ、その距離を 詰めてしまう。股間に押し当てられた千明の拳が固く握りしめられている。私がすくめら れた肩に手を回すと、ぴくりと動揺が走る。震えた息を吐きながら、その顔がゆっくりと 私に向けられた。 私はもう一方の手を千明の握り締めた拳に被せ、肩に回した腕に力を込めて千明を引き寄 せる。互いの腿と胸が潰れるほど密着した。私が顔を近づけていくと、千明はぎゅっと目 をつぶった。若く健康で弾力のある唇に、私のがさついた唇が触れた瞬間、千明は全身を 彫像のように強張らせ、それからかすかな呻きと共に脱力させる。固く食いしばられた唇 がわずかに開き、接触で生じた生理的嫌悪感を自制したと示してくれた。 そっと舌を差し伸べる。千明の唇を吐息のように舐め、それから口の中へ滑り込ませた。 千明の身体は正直に拒絶反応を示すが、すぐに意志の力で抑制されていく。わずかに力の こもった鼻息。かすかな肩の揺れ。千明はまさにバージンそのものだった。私に口の中ま で舐め回され、流れ込んだ唾液をコクリと呑み込む。腹筋がぴくりと引攣ったのは、今呑 み込んだものが、他人の、しかも男の唾だと思い至ったからだろう。 密着した胸から、ゴム越しに猛烈に脈打つ千明の心臓の鼓動が感じられた。血圧が上がり、 頭の中が真っ白になっているのだろう。千明の舌を吸い出し、私の口の中で思う存分嬲っ てやると、千明は興奮の極致に達したようで、んん、んん、っと喘ぎを漏らした。私は股 間を隠すように握り締められた千明の拳をそっとずらし、もっこりとゴム膜を盛り上げて いる股間に手の平を当てた。千明が塞がれた口から呻きを漏らす。手の平で優しく股間を 揉みしだいてやる。例え相手が男だろうが、目をつぶり考えないようにすれば刺激は刺激 だ。嫌悪による興奮であれ、ごちゃ混ぜになれば興奮は興奮。人間は錯覚しやすい動物で ある。千明の股間を被う私の手の平に、ゴム膜の下で何かがぴくりと動く気配が伝わった。 千明のゴム頭の後頭部に手を回して保持し、限界まで引き出した舌を歯と唇で挟みつけて 固定した上で、千明の手を私の身体へ回すように誘導してやる。どこか硬さを増した股間 を指でなぞってやる。私の身体に回された千明の腕がきつく締まり、反射的に身体を反り 返らそうとしたが、頭が固定されていては叶わない。動けなかった反動で、ゴムの下の千 明のイチモツが、ビクリと跳ね上がる。ゴムの膜がもっこりと山をなし、その下の物体が 滾らせている血潮で、ひくひくと脈動している。私はあくまでもソフトタッチで、その硬 い山の頂あたりを撫で回し、その間千明は狼狽して、身を捩ろうとし続けた。 依代-10 玲 - 2004/09/07 00:08 - 最初からあまりしつこくすると拒否反応が破裂的に高まる可能性もあり、程々の所で口を 離した。私と千明の口に唾のアーチが糸を曳く。後頭部からは手を離したが、肩に戻して 抱き続ける。千明は恥ずかしさのあまり私の視線を避けてうつむき、荒い息づかいを響か せていた。 「男と口を合わせたのは生まれて初めてだろう。どう感じた?」 「ど、どうって・・・無我夢中で・・・自分自身が恥ずかしいです」 そういいながら片手で股間を隠した。もう一方の手は私の身体に回されたままだ。そちら まで外すと私に失礼かもしれないと、戸惑いながら遠慮しているのが見え見えだった。 「男というのは浅ましい生き物だからね。嫌でも、その気がなくとも、刺激されれば反応 してしまうものだ。その反応に抵抗しないで委ねてしまえば、慣れるのも早くなると思う よ。さて、私の唾をたっぷりと呑んで、私の口臭を嗅いだついでに、私の臭いにも慣れて もらおうかな。ちょうど病院帰りで、看護婦が清拭くらいはしてくれただろうけど、4日 も風呂に入っていない身体だ。足も股間も程良く蒸れて、私の香りを放っているだろう。 私の前に犬のように跪いて、まずは足の臭い。それから上に上がって股間の臭いを、私が いいというまで嗅ぎ続けること。いいね」 「はい・・・。わかりました」 千明は素直に従い、私の前の床に正座すると、土下座するかのように私の足先へ鼻を寄せ た。それから思い至って、顎の下を突き出した。口に穴を開けててはいたが、鼻のパイプ は未だ顎の下の呼吸穴に続き、鼻呼吸はその穴から行っているのだ。くんくんと鼻の鳴る 音が聞こえる。正確には鼻の穴に繋がった呼吸穴が鳴っているのだが。鼻のあたりのゴム が呼吸に合わせてぷくぷくと上下する。三つ指ついてお辞儀をするようなポーズで、顎を 上げて顔面を正面に向けるという珍妙な格好をさせられているというのに、より直截に口 を蹂躙された後では、こんな屈辱的なポーズでも、視線を合わせなくていい分楽なのかも 知れない。 「瀬那さんの足・・・ぜんぜん臭くないです。匂いはあるけど。何だろ・・・日に焼けた 藁の匂いみたいだ」 「瀬那さんはやめろよ。恭でも恭介でもいい」 「わかりました。じゃあ・・・恭さんって呼ばせてもらいます」 そういいながらも、くんくん鼻を鳴らすのをやめないところをみると、ほんとうに不快で はない様子だ。 「今日はほとんど靴を履いていなかったからなあ。じゃあ、股間の臭いはどうだ。こっち はしっかり蒸れているだろう」 千明がゆっくり上体を起こし、半歩前に這い出て、私の拡げた脚の間に身体を割り込ませ た。一瞬怯んだ様子を見せたが、すぐにおずおずと顎を差し伸べる。くんくんと臭いを嗅 ぐ。ぷくぷくと鼻の横が膨らんでは張り付く。 「んんん・・・こちらはしっかり蒸れていますね。き、亀頭の周りに垢が浮いてますし。 ・・・イカ臭いです。鼻につんと来る。でも、自分のおチンチンの臭いと共通する部分が あるからかなあ、そんなにイヤダ!っていう臭いじゃあないかも。僕のより、イカの臭い が強いかな・・・蒸れた、焦げ臭いみたいな臭いも強いけど・・・」 「ほう。まんざらでもない様子だなあ。その様子じゃ、この臭いを嗅いだだけで涎を流し、 チンポをおっ勃てて犬の尻尾のようにふりながら、尻の穴を疼かせてパクパク拡げるよう になるのも早いかも知れない」 「ううう、凄い表現ですね。そういう風にいわれると、恥ずかしい。でも・・・そうなん でしょうか? うーん。そうなのかなあ。でも、ちょっとクラッとくるだけで、身の毛が よだつってこともないし」 千明は首をかしげながら、大きく深呼吸を繰り返す。あまりの落ち着きように疑問が生じ、 私は千明を正座の状態にして手を胸に当ててみた。すると、案の定、千明の心臓はドラム のように鳴り響いていた。 「なるほど。精一杯の虚勢を張っていたのか。照れ隠しに」 千明は急に泣きそうな目になって、顔を伏せた。 「だって、恥ずかしいし・・・こんなこと生まれて初めてで、いきなりですもん」 「男はだろう。千明はその顔だから、女性経験は豊富だったろう。女となら、こんなこと の経験は多かったろう」 「え、あ、その・・・高校時代は部活と受験でいっぱいいっぱいでしたから。・・・一度 だけ、友達のお姉さんに強引に迫られて、無理矢理みたいに・・・その、でも、お姉さん の唇が触れたとたんに出ちゃって・・・。気まずくて、逃げ出すみたいにして・・・はあ」 「何と。それだけ? じゃあ実質的には童貞じゃないか」 「そういうことになるんでしょうか?」 「なるだろう。それはイカンなあ。浄霊が終わったら、不和美加に手解きを受けるといい。 ルナティックのママにっていう選択もあるにはあるがね」 「ええええ!不破さんと!・・・でも、僕は瀬那さん、あああ、すいません、恭さんのも のになっちゃうわけで・・・恭さんは、不破さんとなんて、そんなの許せるんですか?」 「霊師の中でも浄霊師っていうのは、セックスが仕事みたいなものだからね。ペアの片方 が怪我などで一時的に動きが取れないような場合に、よく代役を頼まれる。浄霊師は絶対 的人数が少ないからね。日本で8ペアしかいない。相方の貸し借りも仕事の内。というわ けで、セックスに関しての倫理観が世間とは違う」 「そ、そうですか・・・」 「男同士のセックスだって禁忌はない。依代の中に入った霊が男の場合、イメージとして は男とセックスしているようなものだし、ときどき憑依されている人から霊を引き剥がす ためにセックスする場合もある。たいていは手の平から気を送り込んだり、お札を貼るだ けで剥がせるんだが、稀に因果が深い上に時間が経ってしまって憑依が深刻化し、同化に 近い状態になっている場合があってね。そんな時は、相手が男だろうが女だろうが強引に セックスして、性エネルギーを使うことで引き剥がさなくちゃならない。相手が依代じゃ ないから、浄霊じゃなく除霊にしかならないが。憑依霊を引き剥がせば、依代に吸収させ 浄霊することができる」 「なる、ほど・・・」 「さて、私の臭いをたっぷり嗅いで、ゴムスーツの中は鳥肌が立っているかも知れないが、 こういうことはひとえに慣れだからね。千明の決意が萎えない内に、いよいよ最初の一線 を超えるとしよう。私のチンポを舐めなさい。最初は万遍なく舌を這わせるんだ。童貞だ としてもオナニーくらいしていただろ。同じ男なんだから、どこをどう刺激すれば感じる かぐらいは想像できるはずだ。じっくり味わってもらうよ」 千明の喉がごくりと動いた。いよいよ来るべき時が来たという目をしている。 「はい。・・・が、がんばります・・・」 いい心がけだ。千明は床に手を突き、ゆっくりと顔を私の股間に近づけた。私の亀頭にわ ずか1センチの距離を残して止まる。恥垢の浮いた亀頭を、寄り目になって見つめている。 凝視に込められた生気が、私の亀頭を熱くする。その視線がつと上を向き、見下ろしてい る私の視線と絡み合った。一瞬視線が揺らいだが、再び私の視線を受け止め、今度は逃げ なかった。一文字に引き絞られていた口元が、吐息と共に薄く開かれる。その口から、千 明の胸の中で暴れ馬のように跳ねている心臓の鼓動が聞こえてきそうだった。 吸って、吐いて、もう一回吸って吐いて。千明の目が私の股間に戻され、そして・・・と うとうピンクの舌先が、ちろりと唇を割って差し出された。ぷるぷると震える舌先が、少 しずつ少しずつ伸び出す。後、5ミリ。後、3ミリ。いよいよ後、1ミリ。千明は息を詰 め、最後にぎゅっと目をつぶった。 舌先が私の亀頭に届いていた。尿道口の上の小さな一点に、物理的な温かさが生じる。次 の瞬間、脅かされた貝のように舌が引き戻された。詰めていた息が一気に吐き出され、パ ンクでもしたかのようなシューッという音を響かせた。千明は舌を引き込めたはいいが、 その舌を口腔内で宙に浮かせたまま、困惑していた。口を閉じれば、あるいは舌を落ち着 かせてしまえば、嚥下反射が起きる。自分の舌に付いた他人の亀頭の汚濁を、飲み込むこ ともできず、といって吐き出すのも躊躇われるのだろう。切れ切れに口で息を吸い、そし てようやく意を決して口を閉じた。ごくりと喉が鳴ったとたん、千明は小さく喘ぎを漏ら した。 私は千明を急かさない。私に命じられて嫌々やるのだ、という言い訳を与えるつもりはな かった。のんびりと眺めていたが、千明は嘔吐の発作も起こさず、さらに2度喉を鳴らし て唾を飲み込んでいた。私を摂り込んでしまったという恥辱よりも、全身が爆発しそうな 程の脈動に耐えるのが精一杯という感じだ。ゴムマスク越しにさえ、こめかみの脈動が見 える。せわしなく鼻息を鳴らし、硬く緊張させた身体のあちこちをひくつかせて、ようや く動悸が収まったのだろう、閉じていた瞼が震えながら開き、すがるように私を見つめた。 私はただ優しい目で見返すだけ。 千明が全身を揺すって深呼吸し、再び舌を伸び出させた。今度はべっとりと舌全体が、私 の亀頭に貼り付いた。毒を喰らわば皿までの心境に至ったのだろうか。ぎこちなく舌が動 きだした。まず亀頭の上が、そして細めた舌先で亀頭のエラが。千明の舌に、私の恥垢が 白くこびりつくのが見えた。ぎこちないものの、刺激は刺激だ。私の陰茎がぴくりと反応 し、ゆっくりと鎌首を持ち上げ始めた。千明の舌がいったん引っ込められ、んふうんふう という鼻息が漏れた後で、ごくりとひときわ大きな喉鳴りがした。舌にざらつく私の恥垢 を、それと意識した上で呑み込んだのだ。呑み込んでしまってから、後悔するように小さ くあああと呻いていた。 ひとつひとつの仕草が初々しく、私の性欲中枢を刺激する。海綿体に熱い血が流れ込み、 私のイチモツに天を突かせる。目の寸前でぎりぎりと硬く締まっていく肉の棒を、千明は 驚異の眼差しで見つめていた。巨大とは言い難いが、それでもそんじょそこらにはない立 派な道具だ。これは天の配剤。ただ女を悦ばせるためではなく、霊を屈服させるに足る威 圧感が必要とされる物なのだから、浄霊師の素養を持つ男はすべて、他の男達が垂涎する イチモツを天から与えられている。 黒檀の色艶、充分な長さと太さ、カリ高で楔のようなエラ、放物線のような反り具合、そ して鋼の硬さ。私のイチモツを見て日本刀の凄みと評した女もいた。海綿体に詰まってい るのは血だけではなく、会陰のチャクラで練り込まれた生気もまた、バリバリと放電しそ うなほど充填されているのだ。 一線を超えたパニックが和らいだのだろう、千明の舌の動きにも迷いがなくなってきた。 「なかなか上手になってきたな。時々裏筋も舌を這わせるようにすると感じるよ」 そういってやると自分なりにアレンジをするようになる。亀頭がどこもかしこもピカピカ と光り出すほど掃除された。私の汚濁がすべて千明の身体に摂り込まれたというわけだ。 「亀頭だけじゃ駄目だよ。茎をしごくように根元からエラまで舐め上げたり、舌をフルフ ル動かしてくすぐるようにしたりしてごらん。金玉だって、時には会陰から尻の穴まで刺 激しするんだ。千明は頭がいいんだから、私の反応を見ながら上手にフィードバックして アレンジしなくちゃ」 「は、はい。すいません。が、がんばります」 恥垢まで呑んだことで、一線は踏み越えた。そうなれば一を教えると十を知る頭のいい子 だ、最低限の指摘でたちまち自分なりに工夫をし出す。この分だとわずか数日の経験で、 フェラチオの達人になれるかも知れない。千明の舌は初々しくも意外に巧みで、私は気を 緩急させて昂りをコントロールしなくてはならなかった。そうしなければ、あっという間 に放出してしまって、千明の学習にならなくなる。あまり知られていないが、射精という 現象に関わるのは血液よりも、気が重要な要素なのだ。霊師だからできる技でこらえなが ら、千明の舌の根が痺れきるまで、容赦なく舐め続けさせた。 私の股間に頭を突っ込んで、必死に舐め回す千明は、実に可愛い生き物だった。性格なの か、いったんブレーキを外してやれば、手を抜くということを知らないようだ。若いが故 に体力も気力もある。30分以上舐め続けさせても音を上げなかった。しかし、注意して 息づかいを聞けば、羞恥や動揺による荒さではなく、舌の疲労による荒さであることに気 がつく。 「よし。よくがんばった。じゃあ、いよいよ口に咥えてもらおうか。わかっているだろう が、歯は立てないこと。そして最初の経験だから、躊躇せず一気に喉の奥まで、このチン ポの根元まで呑み込むこと。喉の奥の嘔吐反射を経験するんだ。吐き気が生じたらいった んチンポを出していいからね」 「は、はい。わかりました」 千明は息を整えると、わずかに身体を前に進め体勢を整えた。上体を起こし気味にして、 私のイチモツの先端に口の高さを合わせる。まるで水中に潜るかのように一息大きく吸い つけ、私の先端を咥えるやいなや、一気に頭を押し下げた。ずぶっと一気に全長が滑り込 む。喉の関門もかすかな引っかかりだけで通り抜け、千明の顔が私の下腹に埋まり込んだ。 一瞬の静止。私は千明の喉の温かさを堪能した。次の瞬間、千明の身体が内側から膨れ上 がるように歪み、ぐふっという音と共に、千明の頭が離れていった。 ぐぽっ。 喉が鳴り、続いて強烈なえづきの発作に、千明の身体が海老反った。うえっ。ぐぷっ。う ぶっ。吐き気の大発作が3回。それでなんとか抑え込んだようだ。吐き散らかさなかった のはえらい。胃のあたりを押さえて突っ伏し、丸まっている千明の背中を撫でてやる。息 がつけるようになった千明が感謝した。 「す、すいません。どうしても吐き気が・・・」 涙目で私を見上げ、謝っている。 「わかってるよ。身体を起こして私の前に正座しなさい」 疲れ切ったように身体を起こし、私の前までわずかにいざって来る。私はその首に手をか け、首輪を外してやった。それから千明のつるんとしたゴムマスクの後ろに手を回し、マ スクのチャックを引き上げた。 「あ、でも・・・」 「マスクを外すわけじゃないから」 そういって安心させる。マスクの中から蒸気に近い熱気が溢れ出してきた。顔面だけでな く、全身が汗でうだっているのだろう。私は緩んだマスクの縁から両手を差し込み、水代 のこめかみを中心にして、頭を包むように指を押し当てた。気を練って指先に集め、千明 の脳をまさぐる。しばらくぶりなので慎重に部位を探す。・・・あった。今の嘔吐発作で 喚起され、電位を上げている部分。脳内の嘔吐中枢。そこに弱い気を流してミクロの結界 を形成する。あっと千明が声を漏らした。 「胃のむかつきが消えただろ。今度はちょっと頭を反らして、口を大きく開けなさい」 千明がいわれた通りにする。ちょっとしたイタズラ心で、千明の口の臭いを嗅ぐ。 「んふふ。私の恥垢臭いぞ」 そういってからかうと、千明は大口を開けているために意味不明の呻きを発した。私は笑 いながら左手を千明の喉に当て、右手の人差し指と中指を口の中深くに突き込んだ。 「ん? んぐ。んんんんう〜」 瞬間の気塊を送り込み、指で千明の扁桃腺周りを強く押し込む。最後に舌の付け根に指を 叩きつけるように、気を流し込んだ。 「んんん〜。ん、ん、ん」 指を引き抜き、千明のマスクを閉めてやる。千明は何度も唾を飲み込むようにして、喉の 具合を確かめていた。 「な、何したんですか?」 私は笑って答えず、ビクビクと跳ね回るイチモツを指差した。 「さっきと同じ要領だ。根元まで」 千明は唾を呑み、唇を舐め回しておずおずと頭を埋めていく。亀頭が咥えられ、次には一 気に頭が押しつけられた。顔面が私の下腹に密着すると、私は千明の頭を押しつけるよう に固定した。一瞬パニックを起こして千明がもがいたが、すぐに、さっきとは違い、吐き 気がまったく起きないことに気がついた。私のイチモツは完全に千明の体内に収まり、そ の太さのために千明の気道を塞いで呼吸は止まっていたから、千明はその驚きを声に出す ことができなかった。 一分間、千明の呼吸を止めたまま、私は千明の内部をじっくりと堪能し、それから手を離 して解放してやった。頭を引き抜いた千明がぜいぜいと空気を貪る。少し落ち着いてから 千明が喉を掠れさせながらいった。 「吐き気の反射中枢を、麻痺させたんですね」 「ご名答。永続的なものではないけどね。この前の視床への気送りとは違って、今のは神 経ブロックだから、ミクロの結界を使って脳内神経を封じる分、時間的コントロールが可 能だ。個人差はあるが、半年近くは保つはず。その間に毎日何回もチンポを呑んでいれば、 結界が消えてももう平気になっていると思うよ。こういう部分で千明を苦しめる気はない からね」 「ありがとうございます・・・って、いった方がいいんでしょうね」 「感謝は言葉より行動で、を今日から我が家の家訓にしようと思うんだが、どうかね?」 私は自分のイチモツをつまみ上げ、おいでおいでをさせた。千明が苦笑する。ふううっと 溜息をついて、えいやっと私の股間に顔を埋める。千明の頭が杭打ち機のように、激しく 上下に振り立てられた。グボッやらジュポッやら、湿った淫靡な音が股間に響く。 快調にピストン運動をしていたと思ったが、途中一回だけ動きが止まり、目に陰毛でも入 ったのか、目を擦っていた。普通ならその程度にしか思わないほどさりげない動きだった が、肉と肉を接している私には千明の心が表層程度は読めるのだ。無我夢中で男のイチモ ツを喉で擦り上げている内に、ふと我に返って、そんな行為をしている自分の惨めさが胸 を突いたのだ。じわっと滲んだ涙を拭ったのだろう。しかし、中断はそれっきりで、千明 は自分を罰するかのごとく、人間ピストンに徹していた。 初めてだからこそ、私はあえて厳しく奉仕させたが、そろそろ充分だろう。千明は身も心 も疲れ果て、いい具合に力が抜けてきていた。気のコントロールをやめて、千明に第二の 一線越えをさせる時だ。気の圧力を低めると、海綿体に過剰なほど嬉しい刺激が伝わった。 私はみるみる高みに昇り、そしてイチモツの根が縊れるほどの引攣りを覚える。鉄砲水の ように4日分の精液が決壊し、尿道から砲丸のように撃ち出された。 千明の頭を押さえつけ、限界までイチモツを突き込み、私は心ゆくまで尻肉をひくつかせ る。千明の呼吸など無視し、三度の痙攣で、溜まりに溜まった精液の半分を千明の喉の奥 へ流し込んでやる。千明は私の尻肉にしがみつくようにして、必死で受け止めていた。呼 吸が止められて、苦しさだけでなく死の恐怖も感じているだろうに、決して歯を立てない 気配りが健気だ。射精しながら私はゆっくりイチモツを引き抜いていき、残りの半分は千 明の舌の上に放出する。尿道をしごき上げ、最後の一滴まで絞り出してやった。 「こぼすなよ。いいといったら口を閉じて、まだ呑まずにゆっくりと舌で味わうんだ。口 中に舌中に塗り拡げるくらいのつもりでな。よし、いいぞ」 千明が唇を震わせながらも口を閉じた。ん、んっと鼻息を鳴らしながら、舌での撹拌を続 けている。ゴム越しにでも眉が顰められているのがわかる。美味いもんじゃないからなあ。 煙草も酒もやらない千明の、今時珍しく保持された味覚では、不味さの感覚もひとしおだ ろう。私は意地悪く、なかなか嚥下を許さなかった。千明の困惑顔が楽しく、いつまでも 眺めていたいような気もする。千明の口内で、もはや精液だか唾液だかも判然としなくな っただろう頃、私は渋々嚥下を許した。 飲めといわれて、すぐ飲めるような代物じゃない。正座した千明は握り拳を腿に押し当て、 目は虚ろに、自分の口の中のものに全神経を集中して飲み込もうと試みた。二度果たせず、 最後は眼球が引っ込んでしまうほど力一杯目をつぶり・・・ごくり・・・と、喉が動いた。 口はへの字に歪み、食道を粘りつきながら垂れ落ちてゆく私の精液の感触を、泣く泣く味 わっている。嘔吐中枢を麻痺させていなければ、この時点で吐き出していたかも知れない。 もう一度ごくりと喉が鳴り、耐えきれなくなって薄く唇を開くと、ああああ、と堕ちた人 間の絶望の声を漏らした。 「飲んだな。男が、男の精液を飲んだわけだ。もう誰にいわせても、千明はホモってわけ だ。私の精液の味はどうだった?」 「ううううう・・・生臭くて、しょっぱいような・・・とろみが何とも。美味いものじゃ ないです。ううう」 「慣れれば美味しいといい出すさ。今日からは水代わりに精液を飲むんだ。千明のために チャクラをフル回転させて、精液は1日1リットル造ってあげる。感謝したくもないだろ うがね」 「慣れます。僕の浄霊のために恭さんにつき合ってもらうんですから、文句をいう筋合い なんてありません。恭さんが喜んでくれるのは嬉しいですし。・・・精液を飲んだら、少 し吹っ切れたみたいな気もしますし」 「嬉しいことをいってくれるね。よーし。じゃあ、寝室に移って、最後の一線を超えても らおうかな」 「え、すぐですか?」 「鉄は熱い内に打て。ホモも熱い内に突っ込めだ」 「ううう・・・心の準備が・・・恥ずかしいです。でも、よ、よろしくお願いします」 千明は三つ指をついた。 ☆彡11. ベッドの上に水代が突っ伏している。脚を開いて膝を突き、上体を前に倒して、尻を高々 と上げたポーズで、ベッドの端に据え置かれている。 その胴体は拘束用ストラップをがんじがらめに締め込まれて、ボンレスハムのように肉を 括られ、背骨に沿って嵌り込んだ金属板によって上体を限界まで反り返らせた形で固定さ れている。腕は拘束用の肩近くまである手袋を新たに嵌め、背中にきつく捩じあげられて、 うなじの所で交差させずに固定してある。手首と肘と指先が固定金具で上体のストラップ に繋がれて、指一本動かせない状態にされている。そのままだと手で支えられないため、 顔面がベッドに埋まってしまう。呼吸は顎の下からだから可能なものの首を痛める怖れが あるので、とりあえず胸の下にクッションを噛ませて、首の処理が終わるまで顔面が浮く ように調整してある。 膝には特殊な固定具を嵌めてある。脚を完全に折り畳んだ状態で、膝から腿の中程までに 巨大な金属カップが嵌まり込んでいる。ラッパ状のカップに膝を滑り込ませるだけで、畳 んだ脚をきつく固定し、ぴくりとも動かせない状態になる。その上でベルトを締めるから、 ミリ単位ですら動かせなくなる。尻肉に踵を埋めた足先も、足首ごと股の付け根を締め上 げるベルトによって固定され、さらにそこから直角に上へ伸びるベルトが、足の甲と爪先 を包んで圧迫し、尻のラインに限界まで沿わせて固定していた。とどめに左右の膝の固定 具を長さ60センチの金属棒が繋ぎ、どんなに力を込めても開いた脚が動かないように固 めてしまう。 千明の頭は分厚いアイマスクを締め込まれ、光が奪われている。初めてなので、拘束の具 合を報告させるために、口だけは自由にしてある。今のところは文句もいわずに、きつく 締め上げた時だけ小さな呻きをあげるくらいで耐えている。 「さて、最後に首枷を嵌めよう。首に体重がかかっても安全なようにがっちりと支持して くれるよ」 私は金属ネット入りのゴム枷の上半分を、千明の細い首に被せた。千明は真理よりも頸が 長いようだ。下半分をあてがい、バックルを締めて千明の頸を包み込んでから、調節ダイ アルを回して1ミリずつ首枷を伸ばす。3ミリ伸ばしたところで顎受けが千明の下顎に密 着し、頭を固定する。顎受けの穴と全頭マスクの呼吸穴がずれていないか確認し、さらに 2ミリ伸ばして千明の頸を引き伸ばす。これで頸も頭も完全に固定され、頭を振ることは おろか、そもそも動かすことができなくなった。 「頸は苦しすぎないかい?」 「き、きつい・・・唾を飲もうとすると喉仏がゴリッとなって痛いけど・・・何とか耐え られると思います。頭が、ぜんぜん動かせない。どこもかしこもきつくて、動かない」 「痺れたり、痛すぎる所はないか? 身体を揺すって確かめてごらん」 千明は全身に力を込めて揺すろうと試みているようだが、外から見るとただあちこちの筋 肉がピクピクとゴム膜を押し上げるだけで、固定された身体は1ミリも揺るがなかった。 「揺するっていわれても・・・動かせません。我慢できない所はないけど・・・」 私は千明の上体を持ち上げ、胸のクッションを外した。千明の身体を下ろすと、顔面がベ ッドマットに埋まる。頸が固定されているから、体重は額周辺で支えることになる。 「どうだ、苦しいか?」 「んんんん・・・だ、大丈夫みたいです〜」 返事は少しくぐもっていたが、口まではベッドに埋まっていないので会話はできる。 「よ〜し。これで千明は生きたオブジェとして、私のなすがままだ。嬉しいだろ」 「う、嬉しいわけないですよ〜。恥ずかしいです」 「尻の穴丸出しだしなあ」 「それをいわないでくださいよ〜。あうひっ」 私の指が、高々と持ち上げられ晒け出された千明の肛門をなぞったのだ。 「きれいな色をしているなあ、千明の肛門は」 「ううううう〜」 私はしばらくぶりの変態的シチュエーションを、じっくり楽しみたくなった。椅子を移動 してきて千明の前に座り、一服する。若い頃なら焦って鼻息も荒く突き込もうとしただろ うが、イチモツがいきり立っていても精神的余裕が持てるようになったのは、喜ぶべきこ とか悲しむべきことか。 煙草に火をつけ、じっくりと観賞する。千明のもともとの赤いラバースーツに、黒いスト ラップと金属の器具が追加され、オブジェとしての美しさを引き立てている。このままシ ョーウインドウにでも展示してやりたいほどだった。唯一生身の色を覗かせる股間の穴か らは、ピンク色の肛門が顔を出し、ヒクヒクと蠢いている。 「あの〜。恭さ〜ん。何してるんですか〜」 「ん? 何してるって・・・観賞させてもらってるよ。あまりにアブノーマルで美しいオ ブジェだからね。手を触れるのがもったいない気がする」 「そんなあ。もの凄く恥ずかしいし、苦しいし、見えないからドキドキしちゃって・・・」 「おやおや。お尻の穴にチンポを入れて欲しいってことかい。待ちきれないわけだね」 「いや、その〜、わかってるくせに・・・もういっぱいいっぱいなんですから。だいたい、 こんな拘束するんだって恭さんの趣味なんでしょう? 僕だって一生懸命合わせてるんで すから、虐めないでくださいよ〜」 「あははは。まあ、趣味といえば、趣味でもあるんだけどね。ちゃんとした理由もあるん だよ。チンポを挿入すると中の霊が抵抗して、時に依代の意識を乗っ取る場合があってね。 そうなると暴れ出してお互いに怪我をする可能性もあるから、全身を拘束するのは危険防 止のためなのさ。とまれ、ここまで厳重にやっちゃうのは、私の変態趣味なんだがね。千 明にしたって、このくらい完璧に動けなければ諦めもつくだろう」 「え!? 意識を乗っ取られるって・・・そしたらどうなるんですか?」 「逃げだそうとするし、それが叶わないと悪口雑言を喚き散らしたりとかね。中の霊の状 態や性格にも因る」 「乗っ取られたら、僕はどうなっちゃうんですか?」 「見えて聞こえて感覚はあるけれど、身体の制御や会話機能は霊に奪われる。精神的に幽 閉されるような感じかな。意識が相当弱ってると、夢うつつ状態にもなるようだが、千明 はそこまで弱くないだろう。そもそも千明自身の意志がしっかりしていれば、乗っ取られ ることもない。乗っ取られたとしても一時的で、霊にとって焼けた鉄の棒みたいに感じる 私のチンポが抜け出せば、パニックも収まって元の安定状態に戻る可能性もある。最悪、 乗っ取られたままになっても、効果的な方法があるから安心していいよ。ただ、その方法 は結構苦しいけどね」 「苦しいって、いったいどういう・・・いや、聞かない方がよさそうです。聞いたってど うにかできるものじゃないし。あああ、何で依代なんていう、とんでもない体質に生まれ ついちゃったんだろう」 目の前に開陳され突き出されたお尻に向かって喋っていると、別の生物と話しているよう な感じがしてくる。その尻生物が自分の運命を嘆いて、口を尖らすように肛門を引攣らせ ている。滑稽な図だ。思わず笑ってしまう。 「何、笑ってるんですか?」 「いやあ、お尻と会話してるのも奇妙な感覚でね」 「うううう、ううううう〜。泣きたい・・・」 「若い内の苦労は買ってでもしろっていうだろ。前もいったが、嫌々やっていても絶頂は 得られないよ。リラックスして受け入れる気持ちにならないとね。羞恥心をなくしたら人 間お終いだが、恥ずかしさに囚われてもいけない。ゆったり深呼吸して、大らかな気持ち になるんだ」 「ううう、わかってるんですけど・・・」 私は潤滑ジェルを指に取り、千明の肛門へどろりと擦り付けた。 「あ、ひ、つ、冷たい。何? 何?」 「潤滑ジェルだよ。千明の肛門が緊張のあまり石みたいに硬くなってるからね。これじゃ あ私のチンポは入らない。無理矢理やったら肛門括約筋が千切れちゃうからね。少しマッ サージしよう」 「す、すいません・・・」 私は人差し指をそっと押し当て、ゆっくり円を描くようにジェルを塗り拡げていった。何 せ初めてのことづくしで、千明の精神も肉体も秘結している。じっくり時間をかけて揉み ほぐさなくてはならない。 「他人に肛門をいじくられるのなんて初めてだろう。しかし、これじゃあ金庫だよ。もっ と力を抜いて」 「は、はい。すいません。でも、鳥肌が立って・・・たまりません」 それでも、ほんのわずか肛門が柔らかくなった。私は焦らず、まず肛門を触られる感覚に 慣らしていった。10分近くも肛門周辺を撫で回していたろうか、ふと千明の肛門が和ん だ。緊張というものは、そうそう長時間維持できるものではない。千明の緊張が緩んだの を見逃さず、私はほんの少しだけ指先を押し込んでやった。 「あ、うわっ・・・ううううんんん」 「まだ、指先のほんの先だよ。力を抜きなさい」 「は、はあああああ、気色悪い・・・」 私は指先を微妙に前後させ、千明を呻かせてやる。潤滑ゼリーを追加し、指先を前後に動 かすたびに、前よりもほんのわずか奥へと埋め込んでいく。 「あああ、あああ、んっ、あああ。ふうう、ふうう」 千明も頭では協力しようとしているのだろう。思い出したように深呼吸しようとしている。 千明の肛門はそのたびに、緩んだりまた硬く窄んだりを繰り返した。その緩急のタイミン グを計る。緩もうとした一瞬に、力を込めて指を突き込んでやった。指の根元まで、ずぶ りと埋まった。 「あわあ、あああ、あああああ、気持ち悪い。取って。抜いて。抜いて!」 拘束の前にイチジク浣腸を使い排泄は済ませてあるから、突き込まれた私の指を千明の腸 襞が直に柔らかく包み込む。温かく湿った肉襞の壺だ。私の趣味からすれば、イチジク浣 腸などという甘い方法は使わず、バルーンカテーテルをぶち込んで肛門を塞ぎ、千cc単 位のグリセリン溶液を大量注入して、どんなに悶え苦しんでも糞便が水状になるまで耐え させたいところだ。いったん排泄させた後も、シャワーのノズルを外した管を突き込み、 微温湯で徹底的に腸内洗浄させる。しかし、初体験の千明に最初からそんなことすれば、 ますます嫌悪感が高まってしまうだろうから、今回に限りイチジク浣腸で済ませたのだ。 次回からは本格的にやると告げてある。 「駄目だ。また最初からやり直したいかい? 指は根元まで入っているよ。動かさないか ら、焦って肛門を締めつけないで、力を抜いてごらん」 「あ、あああん、うううううん。でも気持ち悪いいいい」 私の指を食い千切ろうとしているかのように締まる括約筋が、痙攣でも起こしたかのよう にぶるぶる震え、わずかずつ緩んでいった。時々耐えきれなくなって、ぎゅうっと締め戻 される。驚いたことに括約筋が締まるのとは別に、千明の腸全体がざわざわと、イソギン チャクのように締めつけてくる。 「ふむう。これは・・・思わぬ名器を得たのかも知れない」 「な、何ですかあ、メーキって」 「メーキじゃなくて名器だよ。素晴らしい機能を持った尻の穴ってことさ。千明の直腸が ざわざわ動いている。嫌がって尻の穴を締めると、腸の襞がびらびら動いて、指を吸い付 けてしまう。真空吸引機並みだな」 「あうあああ。そんな名器じゃなくてもいいです。ああうあ。指を、う、動かさないでえ」 千明の尻の穴深く、突き込んだ指先をくいっと曲げるだけで、千明の括約筋と腸の襞が爆 発的に反応する。襞が奥へ奥へとなびくことで生まれる驚くべき吸引力に、ついつい何度 も指を動かしてしまう。吸いつき、吸い上げ、そのうちに我慢しきれず千明がいきむと、 襞の動きが反転して突き飛ばされたかのような排斥力が生じる。吸引と排斥、そのたびに 千明は泣き声を上げた。指先一本で操ることができる、楽器のような千明の反応を堪能し ているうちに私も興奮してしまった。鬼太鼓でも叩けるほどに張り詰めた肉棒が痛い。チ ャクラ全開で、先ほど空っぽにした精液も再充填されている。では、いよいよ千明を女に してやろう。いや、この場合、男にしてやろうが正しいのかも知れないが。 私は指をゆっくり抜き去った。ちゅるり、と粘液にまみれた指が抜け出すと、千明はほっ としたのか、大きな震える息を吐く。私は潤滑ゼリーと千明の腸液に濡れた指の臭いを嗅 いだ。そこはかとなく、千明の糞の香りが漂っていた。軽くティッシュで拭い、それから その指先に気を集める。丹田のチャクラからの気ではなく、会陰のチャクラからの気だ。 丹田の気のパワーとは違い、会陰のチャクラの気は浸透と拡散、解放と快感の気である。 充分に気を集め、その指をそっと千明の肛門に押し当てる。括約筋に沿って一周させ、括 約筋に気を浸透させると、あれほど硬く締まって拒絶していた千明の肛門がゆるゆると口 を開けていった。 「あ、ああ、何? お尻が温かい。あああ、漏れちゃう」 「初めてだからね。気の力を借りて、私を受け入れられるように千明の肛門括約筋を弛め ているのさ。ほら、もうぽかっと口を開けているよ。筋弛緩剤なんかと違って、麻痺して いるわけじゃない。柔らかくなるだけだからね。感覚も敏感になる。いよいよ男のチンポ を入れられるわけだ。女になったつもりで受け入れなさい。男のままでチンポを入れられ るより、ホモっ気のない千明は受け入れやすいだろ。私はどちらでも構わないが。さあて、 いよいよ串刺しだ。覚悟はいいね」 「お、女に・・・なる・・・。ううう。ううう。お、お願いします。ううう。覚悟したは ずなのに。でも、やっぱりやめたい。ううう、怖い」 私は叩けば金属音を響かせそうなイチモツに、潤滑ゼリーをたっぷりと塗りこめた。コン ドームなどという無粋な物は使わない。私が無意識に全身を巡らせている気は、微生物な ど寄せ付けないから、尿道感染など心配したことはない。本格的浄霊なら、ここでイチモ ツに最大限の気を集めるのだが、今は千明の体内の霊を刺激しないよう、意識的に気を散 らすようにする。 私はベッドサイドに仁王立ちした。高さは計算してあるから、ちょうど私の佇立したイチ モツの先に千明の肛門が位置している。私は突き出された小ぶりな双球に手を置いた。手 の下で、千明の尻の筋肉がガチガチに固まっていく。 「口を開けて。きつく感じたらウンチを出す時のように、いきむと入りやすい。聞こえて るかい?」 「え? あ、ううう、すいません。怖くて・・・」 「口を開けて。きつく感じたらウンチを出す時のように、いきむと入りやすい」 「は、はい。口を開けて、いきむ。口を開けて、いきむ。口を開けて・・・」 「じゃあ、入れるよ」 「あ、あ、あ、あああ、やっぱり今度にします。駄目です」 私は弱気になった千明の拒否など無視して、ゆっくりと腰を押し進めていった。亀頭の先 端が、ぽっかり開いた千明の肛門に何の抵抗もなく半分ほど滑り込んだ。 「あああ! 駄目です。駄目だったら・・・」 ゆっくりと腰を押しつけると、千明の肛門括約筋がさらに伸び始めた。ぬるり、ぬるりと 肉の襞を拡げながら、亀頭が押し入っていく。 「あああ、入っちゃう。あ、あ、う、ああ。やめて。やだよう。やめて・・・」 肛門の皺が消え、括約筋はほぼ限界まで伸びきったようだ。抵抗が増す。千明は喚きなが ら必死で括約筋を締め、半ば没した私の亀頭を押し返そうとしているが、気を注入されて 柔らかくなっている括約筋ではあまりに力ない。私はこじるように腰をくれた。亀頭が歪 み、千明の肛門が限界を超えて一回り拡がる。 「痛! あ、痛ああああ、あああああ」 めりめりと音が聞こえてきそうだった。千切れる寸前まで引き伸ばされ、血の気を失って 白くなった千明の尻の穴を、私の亀頭がくぐり抜けた。刺すような痛みに括約筋が収縮し、 亀頭のエラの下を絞るように咥え込む。ここでいったん動きを止めて、千明の穴の痛みが 和らぐまで待ってやってもいいのだが、それは辛い思いを後回しにするだけ。ふんぬっと、 私は腰を進めた。粘膜の襞を掻き分けて、鋼鉄の棒が千明の奥深くへ叩き込まれた。 「あ、あうおおおおお」 ずん、と叩き込まれた鉄拳が千明の腸の奥を突き、それでも止まらずに腸をぐねりと捩じ 曲げて突き進んだ。 「わうっ」 私の恥骨が千明の股間にぶち当たり、私のイチモツは付け根までずっぽりと千明の中に収 まった。ぞろりぞろりと腸の襞が絡みつく。あまりの快さにペニスが跳ねた。 「あうう。動かさないで。ひいっ。だ、駄目っていったのにい。あはあ。はふう」 千明がかすれた涙声で哀願した。いわれなくとも動かす気はない。私は3年ぶりの一体感 に感動していた。 「貫いたよ。私のチンポが、千明の腹の中にすっぽり収まってる。温かくて柔らかくて、 いい気持ちだ。千明はどうだい?」 「うううう。酷い。・・・お尻が、痛い。・・・ジンジンする。気持ち悪いよお。ウンチ したい。抜いて。お願い。抜いて」 ぎゅううっと私の肉棒が締めつけられる。根元だけでなく、全長に渡って肉の襞がざわめ きながら締め上げてくれる。それがいっせいに押し出すような動きをした。私の肉棒が手 で押されたかのような摩擦を受ける。潤滑ゼリーがなければ排出されたかも知れないほど、 強烈な動きだった。何千枚という小さな舌先が舐め上げているようだ。 「んんん。凄い。千明には悪いけどとても気持ちいい。でも、抜かないよ。すぐは動かさ ないから我慢しなさい。ウンチがしたくなるのは、異物が入って刺激されたせいで起きる 排泄反射だから、しばらく動かさずにいれば収まるよ。肛門の筋肉が痛むのも、一瞬だけ 限界をわずかに超えたための痛みだから。肛門が切れたり、括約筋が千切れたりはしてな いし、すぐに治まる。安心しなさい」 「ううううう。そんなあ・・・ううううう」 「それより、おめでとう。ついにロストバージン、処女喪失だ。千明は男のチンポを、ず っぽりと受け入れた。これで立派なホモでゲイというわけだな。女役として、一人前の女 になったわけだ。感想はどうだい?」 「うー、うー。悲しい。気持ち悪い。お尻の中が熱くて。重くて。詰まってる。女になん かなりたくなかった。あああああ。変だ。うー。こんなの・・・」 「まだ混乱してるね。落ち着くまで待とう。こうして繋がっているだけでも心地いいしね」 千明の尻は、ほんとうに名器だった。これも希少な男の依代という資質の故なのだろうか。 何人もの男を除霊のために犯してきたが、ほとんどは単なる肉の空洞状態で、括約筋の力 さえ、千明の半分もなかった。約束通り動かさずにいても、千明の腸襞が大波のように寄 せては返して私のイチモツを嬲ってくれる。括約筋は腸襞とは別で、窒息しかけた大鯉の ようにぱくぱくと私の茎の根元を咀嚼する。動かさずとも絶頂できるかも知れない。 どれくらい経っただろうか。千明の肉壺の動きは相変わらずだったが、本体はようやく息 が整ってきたようだ。 「落ち着いたかい、千明」 返事がなく、もうしばらく待たなければならないかと考えた時、おずおずと返事が返った。 「・・・なんとか・・・でも・・・」 「でも、何だい?」 「・・・でも、気色悪いです。ザワワって身体中が波打つみたいに鳥肌立つし。きつくて。 あああ・・・ホントに恭さんが入ってるんだ・・・ううう。ついに・・・男の人としちゃ った・・・」 「しっかり根元まで、ずっぽり入っているよ。一線を、もうひとつ踏み越えちゃったね」 「頭がまとまらない。もう、抜いてください。お願いしますう・・・」 「おいおい。まだ動かしてもいないんだよ。最初は辛いだろうけど、辛抱しなくちゃ」 「ああ、やっぱり駄目ですか・・・」 「せっかくひとつになったんだ。もっと楽しもうよ」 「ひとつに・・・恭さんとひとつに・・・ふううう」 「君の中は温かくて、腸がザワザワ蠢いて締め上げてくれる。もの凄く気持ちがいいよ。 まさに名器だ。こんなに素晴らしい尻の壺穴を持っているなんて思わなかった」 「あああ・・・恥ずかしい。素直に喜べないですう」 「もうしばらく、こうして繋がっていよう。千明が慣れるまで」 「はあああ」 ぐすんと千明が啜り上げた。それでも時間と共に、肛門を貫かれる感覚に馴染んできたよ うだ。腸襞の蠢きが間隔を空けるようになってきた。括約筋も弛めた方が楽だとわかった のだろう、途中でふっと力が抜けた。人間は何にでも慣れる生き物だ。まして千明は若く、 柔軟だった。 「・・・太いし、熱い。・・・入ってるんだあ。恭さんのおチンチンが。あんなに大きな 物が・・・入っちゃうんですね・・・凄いなあ」 「慣れてきたかな」 「はふう。まだドキドキしてますし、混乱してますけど・・・なんとか。でも、急に恥ず かしくなって来ちゃいました。こんな格好で・・・男の人と繋がってるなんて・・・」 「気分は男? それとも女?」 「あー、わかりません。でも、ちょっと女性的な気分にはなります。犯されてるって感じ が・・・混乱してる時、自分の体験じゃない女性として挿入される感覚が、フラッシュバ ックみたいに・・・僕の中の霊の記憶なのかな・・・それにずいぶん引きずられて・・・」 「君の中の霊は、混ざり合って女性質になってるようだね。意識を乗っ取る様子もないし、 このまま続けても大丈夫そうだな」 「ああ・・・やっぱり、続けるんですね。すいません。わかってるんですけど・・・でも、 ふううう、頑張ってみます」 「千明の性感開発のためには、気を使って長時間交わった方がいいんだが、最初だからね。 私自身の快感感覚は抑制しないから、千明も意識的にいきんだり吸い込もうとしたり、肛 門括約筋を緩急つけて締め上げるように動かしてごらん。そうすればこれほどの名器だか ら、私もあっという間に逝かされてしまうだろう。早く終わって欲しいだろ」 「は・・・はい。頑張ってみます・・・。あ、でも、でも、最初はゆっくりお願いします」 「わかってるよ」 私はゆっくり腰を引いていった。千明が押さえきれずに喘ぎを漏らした。ぎっちり詰まっ た便を排泄するような快感があるはずだ。亀頭の手前まで抜けた所で、エラが引っかかっ た。千明の肛門が内側から盛り上がる。私がそこで腰を止めると、千明は全部吐き出した いのだろう、必死でいきんでいる。強烈な排出圧がかかるが、私はその圧力に逆らって、 抜けかけた肉棒を再び捩じ込んでやった。 「あがう!」 みしりと拘束を軋ませて千明が全身を硬直させる。嫌悪を金ブラシで逆撫でされたような おぞましさを感じただろう。私はといえば、脳天まで届く快感に我を忘れかけた。もう一 度ゆっくりイチモツを引き出し、今度は力一杯勢いをつけて叩き込んでやる。 「ぐんんん」 千明はかすかには感じているのだろうか。それとも不快の絶頂にいるのだろうか。どちら ともつかない苦鳴を漏らす。直腸はのたうつように襞がひしめき、激しく蠢く。私の理性 は、千明の暗い肉壺の奥へと吸い取られてしまった。たまらずに腰を強振する。千明の尻 と股間に打ち付けられた腹が鳴り、その音に被って千明の苦鳴が切なく響く。千明の拘束 がギシギシと鳴るほど、私は激しく腰を使った。 「あ、はっ、あう、あはっ、うっ、うっ、あああん」 必死でこらえるその声で、私のボルテージはますます昂ってしまう。何百回、千明の腸を 擦り上げただろうか。いつしか千明の肛門は、ジュボジュボと猥雑な音を鳴らし始めた。 「うっ、うっ、ああん、ぐすっ、うっ、あっ、うっ」 ギシギシと拘束が鳴り、ジュボジュボと肉壺が囀る。千明の肛門が緩んだ隙に、じゅぶっ と腸液が噴き出してきた。私の下腹をべとべとにして、床に滴る。私は加熱した頭で、喝 采していた。まさに最高の性器だった。永遠に味わい続けていたいと願うほどの快楽の壺 だったが、気で防御していない私の肉棒は、千明の粘膜に屈服しようとしていた。 「はうっ、うくっ、ひっ、うむっ、うっ、ひっ、くっ」 私の腰の動きがさらに加速し、私はついに限界を超えた。全身の体液が一気にペニスへ集 中したかのようだった。肉茎の奥が爆発的に膨れ上がり、尿道を引き裂かんばかりに拡張 させて、怒濤のように精液が噴き出す。全身を反り返らせ、尻の肉を鋼鉄のように引き絞 り、私は小便のように大量の精液を千明の管の奥深くに流し込んでいた。 「ああああ〜。ああああ〜」 どこか遠くで、種付けされるおぞましさと、堕とされていく己への哀悼に咽ぶ苦鳴が聞こ えていた。その声も、精液の噴出が10回を数える頃には枯れ果てていった。 ☆彡12. はあ。はあ。はあ。はあ。息が上がる。滴った汗が、千明の尻と背中に幾筋もの軌跡を描 いている。下半身に巨大な空洞ができたかのように感じる。何もかも全部イチモツの先か ら噴き出していったようだ。私は千明の両脇に手を突いて、かろうじて身体を支えていた。 射精してわずかに鬱血が引こうとしている私の肉茎が、柔らかな手で握り締められたかの ように包み込まれた。千明が腸を蠕動させているのだ。意識してのことではないだろう。 たまらなくなって収縮しているのだ。期せずしてそれが私のペニスをしごき上げる結果と なった。尿道に残っていた精液の残滓が、にゅるりとしごき出されていく。千明の腸内に 放出された大量の精液が、ぐじゅぐじゅと逆流していく。次には逆流のおぞましさに、い きみ始め、千明は肛門からブジュっと白く濁った泡を溢れさせた。 「ふううう。よかったよ。最高だった。千明はたまらなかっただろうけどね。よく耐えた。 今抜くけど、精液を漏らすなよ。一滴残らず吸収して蓄えるんだ。浄化の気はまだ込めて いないが、千明の血に混じって全身に回り、霊体の融合をこれ以上悪化させない手助けに はなるだろう。抜いたら、漏れないように栓をしてやるからね」 「ううう。は、はい。ううう」 ゆっくりと腰を引いていく。入れる時は抵抗あった肛門も、抜く時はちゅぽんとあっけな く抜ける。千明はいわれたように肛門を締めようと力んだが、弛められているために完全 には閉じきらない。私は親指を当てて漏れないように蓋をし、ベッドの上に用意して置い た肛門栓を取り上げた。抜きたてで、湯気を出しているかのような千明の尻の穴にあてが い、一気に押し込む。 「あわう!」 その太さに、千明はビクビクと全身を引攣らせた。直径5センチ、長さ10センチ。その 筒具を根元まで挿入し、底のスイッチを入れると先端から8センチ分が球状に膨らんでス トッパーとなる。 「あひっ。な、何これ。膨らむう。あわわ。ああ〜ん。ウンチしたい。ウンチ出る。抜い て。抜いてください!」 「絶対に漏れないよ。膨らみで排泄反射が刺激されただけだ。しばらく我慢していれば治 まるから」 「だって・・・苦しい。きつい・・・ああああ〜。ウンチ出させて・・・んんんぎい」 必死に踏ん張る千明の肛門が丸く拡がり、中のボールの一部を盛り上げたが、直径8セン チものボールを産み落とすことなど不可能だ。私は取り合わず、肛門栓に付属したベルト を千明の股間の前後に回し、胴体を締め上げているストラップの金具に締め込んだ。 「これからはセックスと排泄以外の時間、ずっとこの栓を嵌めているんだから、早く慣れ るんだね。これも封印呪文処理されている肛門栓だ。私と交わったことで霊の動きが活発 になる可能性がある。浄霊が済むまで可能な限り開口部は減らした方がいい。苦しいだろ うが、我慢するんだ」 「ううう。うううう。うううううむうううう」 私は千明を引き起こし、くるりと回してこちらを向かせ、座りポーズに据え置いた。首と 頭と背骨を反り返えるように固定され、上向いた顔面が、アイマスクの隙間から漏れ出し た涙で濡れ光っている。 「ずいぶん涙を流したね。スーツの中も汗でぐちゃぐちゃだろう。後でシャワーを浴びさ せてあげるから、もう少しそのままで辛抱していなさい。その間、マウスピースで口も封 じておくからね。ほい。口を開けて」 千明が素直に口を開き、私はマウスピースを押し込んだ。その上から切り取ったマスクの 一片をあてがい、幅広のビニールテープを貼って押さえ込む。 「まず私が先にシャワーを使わせてもらうよ。ちゃんとした浣腸をしなかったから、チン ポの先に千明のウンコが付いてしまった。それから千明のシャワーの準備だ。その時に身 体の寸法も測ろう。真理の物でもほとんど支障がないようだが、女用だからね。長期間着 用となるし、排泄やら何やら、やっぱり千明専用のスーツを造らせた方が快適だろう。さ て、千明のスーツを脱がせるためには、まずは腹ごしらえして、今消費したエネルギーを 回復しておかなくては。しばらく放っておくけど、その間お腹の中の精液が千明の中に染 み通って全身に拡がる様子を、しっかり実感しておくこと。今の感覚遮断状態なら、否応 なしに意識が自分の内部に集中してしまうだろう。千明のお腹を膨らませている私の精液 には、今回は抑えたけれど、それでも微量の霊気がこもっている。視床の活性化がまだわ ずかに残っているはずだから、霊的な感覚ではっきり実感できるはずだ。私の精液が身体 中に浸透していく感触は普通なら酷くおぞましい体験だが、私のことが好きなら何とか耐 えられるだろ。好きじゃないなら・・・救いようのない悲惨な体験になるだろう。その場 合は、何とかして今からでも私を好きになるしかない。じゃあ、1時間ほどで戻るよ」 さて、千明は私の精液に全身を犯される体験を、どう感じたのか。寝室を出る時点ですで に、千明の呼吸は肛交の間よりも荒く激しくなっていた。 シャワーでさっぱりとし、バスローブを引っかけて、買い込んだ肉の残りを再びプロレス ラー並みに平らげる。歯を磨き、タンカレーを一杯引っかけて霊気を補充した。自己流の 禅を組み、気の流れを整える。気力も、ついでに精液もフル充填して寝室に戻ると、ベッ ドの上に据え置かれた千明が、ほとんど息も絶え絶えの状態になっていた。顔面から下腹 にまで、新たに溢れ出した涙が流れ落ち、まるで水を被ったかのようにゴム生地を光らせ ている。身体中の水分を絞り出したかのように、びしょ濡れだった。私はつるつるのゴム 頭をよしよしと撫で、何が起こってもいいように気を充実させてから、千明の口の封を解 いた。マウスピースが吹き飛ぶように吐き出され、千明が弱り切った声で絶叫した。 「うああああああああああああ。・・・はあ。はあ。はあ。・・・酷い。酷い、よ。自分、 の中に、精液が、染み込んでくる、感覚なんて、我慢、でき、ない。恭さんの、こと、好 き、だけど、好きだ、けど、好き、だけどおおおお、身体の、細胞の、ひとつ、ひと、つ、 まで、精液に、精液に、置き換わ、っていく、んだよ。頭、頭、の、脳の、中にまで、精 液が、溢れ返る、なんて・・・うああああああ」 「ごめん。ごめん。でも気も狂わないで、なんとか耐え切れただろ。千明の好意が本物だ ってわかってたから。こればっかりは口で説明したってわからないし、体験してもらうし かないものだからなあ。実際は細胞の中に精液が入るわけじゃないんだ。精液にこもった 気が入るんだが、錯覚が起きてしまうんだよね。そしてこれこそが浄霊の感覚なんだよ。 精液に込められる気はその数千倍になる。細胞どころか千明の身体の原子ひとつひとつが 私の気を受け入れるんだ。私と君が、絶対的信頼で結ばれなくちゃならない理由がわかっ ただろ」 「うううううう。もう、どうに、でも、して・・・」 「そんなにおぞましかったかい?」 「うううううう。ううううううう。おぞま、しいって、いうか・・・嫌悪感より、じわじ わって、自分が置き換わってく、喪失感が、怖かった・・・必死で、恭さんの顔を、思い 浮かべたよ・・・ぐすん」 千明が啜り上げ、息を吐くたびに、顎の下の呼吸口から鼻水が噴き出してくる。私は千明 の横に腰掛け、身体に手を回して抱きしめてやった。 「よく頑張った。千明。えらい」 千明の身体は、精液浸透の余韻にぶるぶると震えていた。 「キスして」 「え?」 「キスしてってば。何だかわかんないけど。キスして!」 いわれる通りにキスをした。千明は自分から舌を差し込んできた。貪るようなキスだった。 溢れた唾液がだらだらと滴る。千明がまるで女の子のような反応をしている。それとも一 種の幼児退行なのだろうか。つい癖になった動きで空いた右手が千明の股間に潜り込むと、 驚いたことに、そこは硬く鬱血していた。 「もう一回、犯して。今すぐ。お願い」 「え? おいおい、私は嬉しいけど・・・本当にいいのかい?」 「いいから。早く犯してってば!」 いったいどういう心境の変化なのか、私は戸惑いながらも千明の身体をうつ伏せにし、肛 門栓を抜いた。ジュブっと白濁した液と泡が溢れ出す肛門に、再びペニスを力一杯突き刺 してやる。 「ああああああん。気持ち悪い。でも、熱っつい! 変だ。詰まってる。詰まってるう。 恭さん。恭さんがいっぱい入ってる。男のチンポが。チンポが僕の中に。ミチミチ。きつ いよ。変だよ。ぞわぞわする。ウンチみたいに。んんんんん。恭さん。掻き回して。んん んんん。滅茶苦茶にして。精液出して!」 錯乱している。しかし霊が千明の精神を乗っ取った風ではない。そんな気配があったらす かさず対処できるように身構えながら、千明の要求通りに突きまくってやった。必死で自 分を押さえようとしていた先ほどとは違い、今度の千明は譫言のようにもっともっとと要 求した。千明の腸襞も括約筋も、嵐のようにのたくる。蛇にペニスを飲み込まれたかのよ うに、根元を噛みしだかれ、強烈に吸飲されながら肉襞のブラシで擦り立てられた。冷静 でいるつもりが、あっけなく失敗した。3度目だというのに、感じすぎるほど感じてしま い、たちまち昇り詰めてしまった。溜め込んだばかりの精液が、温まる暇もない内に噴出 していく。目の前が赤く閉ざされ、黄色い星が飛び交った。千明が絶叫に近い呻きを上げ 続けている。 「んあああああ。恭さんの精液。入ってくる。恭さんの精液。熱い。熱いよ。お腹の中に ・・・どぶどぶ。入ってる」 千明の中に全精液を放出したとたん、私は床に尻餅を突いてしまった。ズポッっととんで もなく大きな音が響いてペニスが抜け出すと、座り込んだ私の目の前で千明の肛門がぎゅ ううっと締まり、放出された精液を一滴も漏らすことなく門を閉じていった。自分でも信 じられないくらい消耗している。それもそのはず、全身の気を半分持って行かれていた。 膝でいざり、千明の肛門に肛門栓を嵌め込むだけでも一苦労だった。千明は震え、息を詰 め、みしみしと拘束具を軋ませて全身の筋肉を収縮させている。と、内臓まで吐き出すよ うな大きな息を吐き切る。浅く速い呼吸が始まり、呼吸の合間に・・・恭さんの精液が滲 みてくる・・・と譫言のように呟き続けている。私はベッドに取り縋るようにしてかろう じて立ち、自分の世界を飛んでいる千明はしばらく自己完結させておくことにして、よろ ける脚を叱咤しながらキッチンに向かった。 冷蔵庫からタンカレーのボトルを取り出し、天を仰いで一瓶一気に飲み下した。喉が焼け、 胃に猛火が吹き荒れる。それでも失われた気の代替にはなってくれた。さもなくば、再び 入院という羽目になりかねない。ソファに身を投げ、タンカレーが全身に拡がるまでぐっ たりと休む。このままソファで眠りこけたい欲求を振り払って、何とか再び立ち上がり、 冷蔵庫から取り出したアイソトニック・ドリンクの1リットルボトルを開けて、半分一気 に飲み干してから、ボトルをぶらさげて寝室に戻った。 千明が静かになっている。私は慌てて引き起こし、胸に耳を当てた。心臓ははっきりしっ かり脈打っている。とりあえず安心し、呼びかけてみたが返事はなかった。アイマスクを 外すと、目はつぶられたままで開く気配はない。呼吸を確かめたが、安定した呼吸が繰り 返されている。どうやら失神しているようだ。しかし、失神というにはあまりに安らかな 表情をしている。どう見てもただ眠っているような気がする。私は千明の頬を叩いて目覚 めさせようとした。両頬を交互に3発、ぺしぺしと叩いた時、千明の目が開いた。どこか ぼんやりと虚ろな眼差しだったが、見つめる内に私の視線を捉えて焦点を結んだ。にっこ りと目が微笑む。 「あ、恭さん。あれ、僕、眠ってた?」 「ふう。そうみたいだね。ほんのわずかな間だけど」 「そう? 何だか一晩ぐっすり眠ったみたいに、さっぱりしてるけど」 「10分も寝ていないよ。喉が渇いてるだろう。ほら、飲みな」 口にペットボトルをあてがってやると、赤子のように吸いついてゴクゴクと飲んでいる。 ボトルはあっという間に空になった。 「うわあ。おいしい。あうう。恭さんの精液みたいに、身体に染み渡っていくのがわかる」 「まだ飲みたいかい?」 「うーん。今は充分」 「じゃあ、シャワーに行く前に10分間だけ時間をくれないか。千明に生気を吸い取られ た。体内チャクラを調整しなくては保たないんだ」 「ええ? やだなあ・・・精液は、僕が女だったら10回妊娠しそうなくらい入れてもら ったけど。吸い取ったんじゃなくて、恭さんが出したんでしょ」 「いや、例え話じゃなくて、本当に生気を吸い取られたんだよ。いったい何がどうしてそ うなったのかはわからないんだが・・・」 「ええ!? 僕が恭さんの生気を吸い取ったの? 本物の生気を?」 「そうさ。だから10分間だけ時間をもらうよ」 「はい・・・でも、どうやって?・・・あ、ごめんなさい。静かにしてるね」 千明の横で禅を組み、チャクラを回す。量を増やすのではなく、気の流れの安定に努めた。 10分といったが、それより数分早く禅を解くことができた。 「よし。オッケーだ。じゃあ、シャワーを浴びよう」 私は床に落ちていたバスローブを拾い上げて羽織ると、千明の腹に肩を入れて、よっこら しょと肩に担ぎ上げた。 「わわわあ。荷物扱いですかあ。あの、シャワー、ひとりでできます。拘束を解いてくれ たら・・・」 「何を恥ずかしがってるんだい? 裸ならいまさら恥ずかしがることもないだろ」 「いや、そうじゃなくて・・・あうう」 といっている間にバスルームに入ってしまう。タイルの床に仰向けに千明を転がし、まず 脚の拘束から外していった。拘束が外れて足を引っぱってやると、長時間の固定で関節が 固まっていたのだろう、千明は情けない悲鳴を上げた。 「痺れてるか? 感覚はあるか?」 「ううう・・・少しだけ。チクチクしますけど、大丈夫です。でも、関節が・・・固まっ てる」 「だろう。何を恥ずかしがっているのか知らないけど、ひとりでなんて、スーツを開ける こともできないさ」 話ながらも腕を解き、胴体ストラップも外した。肛門栓はバルーンが膨らんでいる間は抜 けないから、ベルトを外したままでまだ刺しておく。首枷を外し、ずぼっとマスクを脱が してやる。もわっと蒸気が立ちのぼって、汗にまみれた素顔の千明が現れた。髪の毛が、 湯上がりのようにべっとりと貼り付いている。汗だけでなく涙と鼻水と涎でベトベトにな っているというのに、それでも可愛いく見えるのだからハンサムは得だ。恥ずかしそうに 顔を背けて、千明はうつむいた。素顔を見られるのが恥ずかしいのだろうか。 千明に後ろを向かせ、スーツの背中のファスナーを開ける。姿が揺れるほどの湯気が立ち のぼり、蒸れた身体の臭いが鼻についた。開いたスーツを肩から外そうと滑らせた時、そ の下の皮膚が、ぬるりと剥けてしまう。 「あああうううう。く、臭いでしょ。ごめんなさい・・・」 「なるほどね。あれから一回もスーツを脱いでないんだね。そりゃ、蒸れるわ。これは垢 か。風呂に入ればよかったのに」 「だって、顔が出ているだけで火事になったりするのに、全身を脱げるわけないじゃない ですか。このマンションを燃やしちゃったら・・・自分だけならまだしも、他の部屋の人 まで巻き添えにしたらって思うと」 「なるほど。暑かったり痒かったり、あちこち酷く不快だったろう。よく我慢した。偉い な千明は」 この部屋は全体を封呪でシールドしてあるから、スーツを脱いでも他の部屋まで被害は及 ばない、ということは千明の努力を鑑みて内緒にしておこう。 「臭いでしょ。後は自分でできるから、恭さんは休んでてください」 「何だ、そんなことで恥ずかしがってたのか。いや、確かに臭うけど、嫌な臭いじゃない よ。どちらかというと好きな、興奮させられる臭いだな。ほら、何といっても私は変態だ からね。千明の股間の臭いもいい蒸れ具合だ。それにね、セックスした直後で、霊がどう いう具合に動くかまだわからないから、スーツを脱いでもおかしなことが起きないように、 私が気のバリヤーを張って防御していなければならない」 「そんなこともできるんですか。あ、ありがとうございます。お手数かけてばかり・・・」 「おいおい。チンチンしゃぶって精液飲んで、尻の穴に二回も射精させた間柄なんだから、 他人行儀はやめようじゃないか」 「ううう。だって・・・それが恥ずかしいから、つい・・・でも、すいません」 「ははは。じゃあ、腰まで脱いだら私が背中に手を当てて気のバリアーを張る。それから 肛門栓のストッパーを萎ませるから、スーツごと脱いでしまいなさい。少しぐらい漏れた って構わないからね。恥ずかしがらずに手早くいこう」 「は、はい」 スーツを脱ごうとする動きに合わせて、背中に手を当て続けるのは意外と難しかった。そ れに気を取られて、肛門栓を抜く時の千明の表情が見られなかったのが残念だ。それでも、 肉にこもったずぽんっという音は聞こえた。千明があふうと、切なげな声を上げたのが愉 快だった。茶色っぽい滴が一筋したたり、白いタイルにとろりと溜まった。千明が慌てて シャワーを出し、流してしまう。うんうんいって肛門を締めつけていた。 頭を2回洗ってから身体をボディスポンジで擦ると、驚くほど大量の垢が出た。背中は私 が流してやったが、つい面白くて、擦り剥けるう、と千明が悲鳴を上げるまで擦ってしま った。千明が背を向けたままもそもそと股間を洗っているので、背後から覗こうとしたら、 やめてくださいよう、と身体を丸めて隠されてしまった。手当てする必要がなければ、私 がゴリゴリ洗ってやるのに。全身ピカピカに磨き上がった千明は、白い身体にほんのり赤 みが差し、少女のように初々しく見えた。 「あ、そうだ、恭さんも洗わなくちゃ。僕の・・・その・・・汚れが・・・」 「千明のウンチがね。じゃあ頼むよ」 私が脚を拡げると、一瞬照れた顔をしてから千明が脚の間にしゃがみ込み、ソープで手を 泡立てて、萎えたイチモツを包み込むように優しく洗い清めた。途中いったん手を洗い、 私の股間も流して、もう一度泡立てたソープで私の下腹から玉まで洗う念の入れようだっ た。千明の性格が呑み込めてくると、こうしていかにも平気そうな顔で作業に集中してい る時は、照れ隠しだとわかる。口に含み尻の穴を犯された後でも、目の当たりにして握る のは、同性愛を意識させて恥ずかしいのだろう。ボディスポンジを手に、私の背中を洗い 出そうとしたので、シャワーだけでいいと辞した。 肛門栓やスーツなどを洗わせてから、千明の身体の採寸もした。疲れて面倒だったが仕方 がない。やるべきことを済ませて、ようやくふたりでバスルームを出る。互いに身体の拭 きっこをして、まるで新婚夫婦のような図を展開したが、互いの股間にはぶらぶらした物 があるという点で妖しい雰囲気である。一番に封印スーツの滴を拭わせ、着込ませる。そ れでようやく手当てを外せるのがありがたかった。封印スーツの代わりに間断なく気を流 し続けるのは、意外と重労働なのだ。まして今は気を半分も千明に吸い取られてしまった 後なだけに、千明の手前顔には出さなかったが心底ほっとした。 恥ずかしがる千明をからかいながら前屈みにさせ、潤滑ゼリーを塗りこめた肛門栓を焦ら すように捩じこんでやった。千明の抑えた呻きが、甘い調子に変わってきている気がする のだが、果たしてどうなのだろう。肛門栓のバルーンを直腸内で膨らませてやると、切な そうに尻をくねらせるのが、男のくせに色っぽい。他の道具を手にリビングへ戻り、ソフ ァに落ち着いた。 千明は火事を心配して早くマスクを被りたがったが、まだ髪も乾いていないことだし、ま ず視床の具合を確かめることにした。千明の頭を両手で挟み、包むように指を押し当てる。 微弱な気を流したとたん、視床が千明の脳内で一回り大きくなっていることが直感できた。 「ん・・・視床が発達したようだ。ん〜・・・視床下部もわずかに変化しているようだが。 一時的なものではないな。何だろう、千明の脳全体が何となく・・・クリアになっている ように感じる」 「それって、僕も霊を視ちゃう体質になったってことですか?」 「そうだね。恐らく。それだけじゃないような気もする。千明はなにか変わったような気 がしているかい?」 「んー。いえ。まあ、さっき人生観が変わるような体験をしましたけど」 「ふむ。定期的にチェックした方がいいかな。じゃあ、髪を乾かしてマスクしようか。ド ライヤーを持ってくるよ」 「あ、あの、すいません。この前使おうとして・・・火を噴いて・・・壊しちゃいました。 すいません」 「なるほど。ああ、気にしなくていいよ。じゃあ、タオルでできるだけ拭いてから、マス クしなさい」 「はい」 千明はタオルを被り、ごしごしと頭を擦り上げている。髪の毛が痛むだろうに、こういう 所は男である。手櫛で髪を撫でつけ、慣れた手つきですっぽりとマスクを被ると、自分で 後頭部のジッパーを閉めた。全身ラバー人間の再誕生だ。 「肛門栓のベルトが締められないので、身体のストラップだけは締めるよ」 「はい。お願いします」 顔が隠れると恥ずかしさが軽減するのだろうか、千明の返事は明るかった。千明の胴体に、 総数75本の連結されたゴムストラップがめり込む。股間に垂れ下がっていた肛門栓の固 定ベルトをきつく締め上げてやる。前に回るベルトは二股に分かれ、千秋の男性自身の両 脇を締め上げてもっこりと強調させる。軽く撫でてやるとあうっと腰を引くが、以前より も引き方が少ない。 「もう4時半だ。千明の腹は減っていないか?」 「いえ。そういえば、ママさんのステーキを食べてから何も口にしてませんね。でも、ぜ んぜんお腹が減ってないです」 「私の精液をたっぷり飲んだからかな。私は除霊で6キロ痩せて、今晩でさらに2キロは 痩せたろうな。千明に気も吸い取られたし。何か食べないと身が保たない。千明は疲れて るだろうから、先に寝ていいよ」 「あ、いや、僕が作ります。あり合わせの材料でいいですか?」 「んん、いや、冷凍庫にTVディナーがあるはずだから、電子レンジで・・・はは、まさ か電子レンジは壊してないだろうね」 「壊しそうだったので使ってません。今使うと壊しちゃうかな?」 「まだ私の精液の効果が残っているから大丈夫だと思うよ」 「うううう。精液精液って、恭さんわざといってるでしょう、そういうこと」 「わかる? からかうと面白いんだよね。千明の表情が」 「はあうううう」 千明は怒った仕草をしながらも、冷凍ディナープレートを解凍してくれた。アイソトニッ ク・ドリンクを飲む千明に見守られながら、ディナーとは名ばかりの紙屑みたいな食事を 摂る。栄養素があるなら、今は残飯でも構わない。 「ところで、千明が自分から2度目を求めてくるなんて思わなかったが・・・どういう心 境の変化だったのかな」 「え、あ、はあ、自分でもよくわからないんですけど・・・混乱してて・・・だって、本 当に自分が浸食されて、肉も骨も脳みそまで恭さんの精液に置き換わっていく感覚なんで すもん。でも・・・こういういい方したら何なんですけど・・・いったん穢れちゃったら、 とことん穢れちゃおうっていうか、最低な生き物になった自分を、だったら徹底的に貶め たいっていう・・・すいません、恭さんが汚いとか、そういうんじゃないんですよ・・・ 一種の自己破壊願望が出ちゃったのかなあ・・・」 「へいへい。わかってるし、なんといわれても平気だよ。自分で自分にトドメを刺したっ てわけか。なるほどね。納得。で、最低な存在になった気分は?」 「だからあ、恭さんに対する嫌味の表現じゃないんですから」 「あはは。そういう意味で受け取っていないってば。千明はマゾ素質があると看たのさ。 マゾなら、最低の存在といわれて嬉しいはず」 「ううううう。うううううう。嬉しくはないですよ。嬉しくは。でも・・・別に嫌でもな いかな。・・・僕ってマゾなのかなあ」 「拘束されることはぜんぜん嫌がってなかったし、どちらかといえばキツイ感じが好きと 看た。充分マゾだと思うけど」 「断言しないでくださいよう。ドキドキしてきた。うーん。このスーツもすっかり馴染ん じゃったし、身体をガチガチに拘束されるのは・・・正直いって、もう全部が人任せでよ くなって、楽になれるような気がしてました。好き・・・かも。あー、この前まで、考え たこともなかったのに・・・自分が信じられない。違う自分になっちゃったみたいです」 「内部の霊の女性質に影響されてる部分もあると思うがね。まあ、人間、大なり小なりマ ゾかサドだっていうし。こうなる前の千明がサドとは思えないしね。依代は、別名何てい われてるか知ってるかい」 「別名、ですか? いえ・・・」 「菩薩さ。どんな悪でも受け入れて許し清める。完全なる受動態。それって究極のマゾだ ろう。だから千明はマゾなのさ」 「えええ。うう〜ん? 何か論理に飛躍があるような気がするんですけど。でも、いいで す。そういうことにしておきます」 「いい子だ。で、お尻の具合はどうだった? 特に2回目は感じていたみたいに思えたが」 「いえ、ははは、そんな。感じてって・・・うー」 「勃ってただろ」 「うぐ。・・・キスで感じただけです。あっ、先にいっときますけど、相手が男だとか関 係なく、刺激に対する反射的な反応です」 「ムキになるねえ」 私は食べ終えたプレートを放り出し、千明の手からボトルを取り上げて飲み干した。 「うー。正直にいって、よくわかんないんです。恭さんの・・・その・・・チンチンが抜 けていく時、ウンチをすぽんって出す時の気持ちよさはあるんです。でも同時にそのウン チが堰き止められてムウーって踏ん張ってもでないような焦れったさがあったり、押し込 められる時はホントに身の毛がよだつくらい気色悪いっていうか、ぞわーっと背骨が凍る みたいな、足元が抜けてくみたいな不安定感があって・・・。でも、チンチンがお腹いっ ぱいに入って停まってた時は、充実感っていうのか、ずっしり感っていうのか、キツイ感 じは嫌じゃないし・・・。激しく動かされたら、発作みたいにいきんでいきんでいきんで、 その内酸欠みたいになって頭の中真っ白になっちゃうし。それは快感とは違うって思うん だけど・・・。腸の粘膜が腫れ上がって、今でもまだジンジンしてて、何か詰まってるみ たいな感じがするんですけど、それも不思議と嫌じゃないし」 「ふむう。何だかいろいろ複雑だねえ。とどのつまりは、明日もう一度お尻でしてみたい かどうかってことじゃないのかな」 「うーん。明日・・・もう一度・・・うーん。あれ。嫌じゃないみたいです」 「『嫌じゃない』を、もうちょっと前向きに表現すると?」 「前向きに・・・? あう〜。恥ずかしいなあ。どうしてもいわせたいんですね。・・・ わかりましたよ。・・・してもいいって思ってますよ。してみたいと思いますってば」 「一線越えると大胆になれるね。千明はそう遠くなく感じまくれるよ。保証する」 保証したとたんに大あくびがでた。千明もつられて手を口に当てている。 「さて、明日も健康な性生活を営むために、眠って英気を養おう。ところで、千明君。私 のベッドで一緒に添い寝のご招待をいたしますが、お受け願えますかな」 「そうくると思った」 すけべ心もあるのだが、霊的事故防止のために、肛門には栓を入れたまま、アイマスクと マウスピースをして露出部分を完全になくし、両手と両脚を緩く拘束して、千明には一本 の棒のようになってもらう。そんな状態で私に抱かれて眠るのでは、さぞや寝苦しいだろ うと思ったが、母親にすべてを委ねる赤子のように、千明はあっさりと眠りにつき、すや すやと熟睡していた。かえって私の方が、これから負うことになる責任と生活の変化、そ して千明という純粋な青年を巻きこんでしまった自分自身の卑劣さを思って、なかなか寝 つけなかった。 千明も一線を超えたわけだが、私も一線を超えたのだ。もう、後戻りはできない。 ☆彡13. 私は祈った。私は・・・泣いた。最後に見た彼女の目は、運命を予知していたのだろうか。 渦巻く狂気と想像を絶する恐怖の最中にあって、微笑みとすら見紛うほどに静かだった。 そして、闇よりも濃い黒い渦が真理を包む。毎夜愛おしんで撫でさすった彼女の黒髪が宙 に舞う。着衣が一瞬に腐敗して溶け、吹き飛ばされていく。竜巻のように彼女を呑み込ん で旋回する黒い渦の合間から、真理の純白の肌が明滅するように覗く。私の手を吸いつけ た白い肌に、無数のミミズ腫れが網の目のように走り、そこから吸い込まれた黒い粒子が 真理の肌を、純白の肌を冒し、穢していく。真理は、斑に染まる身体を苦しげに抱きしめ、 床に膝を落とした。腐りきった血の臭いを放つ粘液が跳ね、渦に巻きこまれて天井まで飛 び散った。妊婦のように膨らんでしまった下腹に走る血管が、節くれだった死木の枝のよ うに盛り上がり、そして弾けた。その一瞬・・・顔を上げた真理は、すでに視覚を喪って いたのだろう。彼女の紫色になった唇が震えるように動いた。壁紙が裂け、砕けた家具の 破片が舞う轟音の中で、真理の最後の言葉は聞こえなかった。 硫酸のような夢から飛びすさるように目覚めた時、私は涙を流しながら千明の身体を折り 砕くように抱きすくめていた。千明の呻きが耳に飛び込んでくる。 「すまん。千明。大丈夫か?」 私は慌てて千明の口の封を解いた。マウスピースが吐き出され、千明が咳き込む。 「んん・・・ふいいい。肋骨が折れるかと思った。でも、大丈夫。ごほっ・・・恭さんも の凄くうなされてた。奥さんの名前を何度も叫んで・・・」 「すまない。夢を見ていた」 私は両目を手の平で擦り、頭を振って夢の残滓を振り落としながら起きあがる。まだ震え る手で、千明の戒めを解いていった。手足が自由になると、千明は上体を起こして大きな 伸びをし、身体を左右に捻るようにほぐしている。 「うう。一晩、棒になってたから、身体中がぼきぼき鳴る」 「よく眠れたかい?」 私は千明の頭を動かないように押さえつけながら、アイマスクを外してやった。アイマス クの下から現れた千明の目がにっこりと微笑む。 「さっきのさっきまで、爆睡してました。身体は棒でも膝は少し曲げられるし、結構寝返 りも打てるんですね。何度かふっと浮かび上がるみたいに半分目覚めかけたような気がし ますが、そのたびに恭さんにしっかり抱きしめられてるのがわかって、恥ずかしいような 嬉しいような。でも不思議と嫌じゃなくて、何となく安心できて、また自然と眠りに戻っ ちゃったみたいです。あの・・・オシッコ、行って来ていいですか?」 「ああ。行っておいで。あ、肛門栓は底を探ると真ん中にへこみがある。そこを強く押す と千明の中で膨らんでいるボールが萎んで抜けるようになる。ビデを使って、スーツの穴 を持ち上げるように湯を入れてやれば中も洗えるよ。私はシャワーを、いや朝風呂を浴び てくる」 「わかりました。あ、じゃあ朝食・・・もう昼食の時間ですけど・・・は、僕が用意して おきますね」 「ありがたい。5人前くらい頼むよ」 小原庄助は朝寝と朝酒と朝湯で身上を潰したという。朝湯は元々は朝ボボだったという説 もあり、どちらにしても私は朝寝して朝酒して朝湯した上に、これから千明と朝昼晩ボボ をしようというわけだから、身上潰すのは確実そうだ。禁断の朝風呂をを浴びて出てくる と、全身真っ赤なラバースーツにエプロンという、とんでもない姿の千明が楽しげに料理 をしていた。味噌汁と炊きたてのご飯の匂い。フライパンで跳ねるバターの香り。私がと うに忘れていた家庭の匂いだった。 「もうすぐ、できますよ〜」 と、千明が肩越しに声をかけてくる。用意ができるまでの間、私は電話を2本かけた。1 本は不和美加へ。浄霊を肩代わりしてもらう鳴神と、高野山から検分にくるという僧に便 宜を図ってもらうよう頼み、私が受け取るギャランティの一部を使って、礼子夫人に何か プレゼントをするようにいいつけた。もう1本は霊師協会の装備部へ。電話が終わる頃に はダイニングテーブルの上に食事の用意ができあがっていた。野菜炒めとハムエッグにほ うれん草のおひたし付き。炊きたてご飯にタマネギの味噌汁。私は裸のまま席に着く。柔 らかな秋の日射しの元、家庭料理の並んだテーブルを挟んで、裸の中年男と全身真っ赤な ラバー人形が向かい合う情景。日常的な状況であればあるほど、異様な光景だろう。千明 の料理は基本がしっかりしている。ワカメの味噌汁が絶品だった。 「うん。美味い。いい腕してるね千明は」 「恭さんの冷蔵庫は酒の保存庫ですか。まともな材料がないんだもん。僕がここへ籠もる 時に買い込んだ食材と、昨日ルナのママさんが持ち込んでくれた食材の残りだけ。冷凍食 材すらないんだから。しかも5人前なんて、残ってた食材全部使い切っちゃいましたよ」 「うーん。野菜炒めなんて忘却の彼方だったなあ。え、ああ、何だっけ。食材か。食材は、 今日出かけないといけなくなったから、その帰りに買い込もう」 「亜、恭さんお出かけですか。じゃあ、リストを書きますね。何時頃に出かけるんですか」 「千明も一緒に行くんだよ。千明の採寸がメインなんだから」 「一緒に? 採寸って・・・昨日の夜に計ったじゃないですか。だいたい、こんな格好で 出かけるなんて、無理ですよ」 「なあに、変装すれば大丈夫さ。千明専用の封印スーツを発注しようと思ったんだがね、 最新のレーザースキャンという装置で、全身の曲面をミリ単位で計るんだそうだ。私が隠 遁している間にも、技術は進歩していたわけだ。その装置でスキャンすると、あー何だっ け・・・光硬化性ポリマーとかいったかな・・・とかいう装置で、全身の立体像がその場 で造れるのだそうだ。その型を元にして造るから、数日でできるらしい。2時にアポイン ト入れたから、食事をしたら出かけよう」 「いや、だって・・・こんな格好で・・・変装っていったって・・・ハズカシー!」 朝ボボはできなかったので小原庄助的破滅はまぬがれたが、千明を承知させるのが一苦労 だった。妻のクローゼットから出してきた女物のロングコートを羽織らせ、襟を立てる。 手袋とロングブーツを着けさせれば首から下は何とか隠せた。問題は頭だった。霊障用心 のため、口はマウスピースを咥えさせて封じてしまったので、コミュニケーションのため に首輪を嵌め、髪の毛入り引き綱を付けて、綱はコートの内側に垂らしておく。セミロン グのウイッグを被せ、大きなマスクとサングラスで顔面をカバーすればいいだろうと思っ ていたのだが、わずかに覗くゴムマスクの赤が恥ずかしいから嫌だと駄々をこねられた。 「大丈夫だって。地下の駐車場から地下の駐車場へ行くだけだから。乗り降りの時だって 人目なんかほとんどないよ」 『絶対・拒否・!・仮定・乗車中・覗見・恥・故・死亡・故・拒否!』 乗車中に覗き込まれたら死ぬほど恥ずかしいからヤダ!・・・と引き綱伝いに主張ている。 マスクにファウンデーションを塗ろうとしたが、ゴムにはなかなか化粧が乗らない。思い ついてマスクとサングラスから覗く部分にだけ白いビニールテープを貼り、何とか誤魔化 してやった。怪しさ満点だが、遠目には顔色の悪い人に見えるからと、何とか千明を説得 した。 エレベータに向かう間も、エレベータの中でも、千明は私の背に隠れるようにして、私の ジャケットにしがみついていた。ブーツのヒールは5センチしかないのだが、千明は何度 も足を挫きそうなほどカクカクずっこけ、歩きにくそうだった。幸い地下駐車場には人気 がなく、レンジローバーに乗り込んでシートベルトをするやいなや、千明は思いっきりう つむいて動かなくなってしまった。まあ、これはこれなりに野外プレイの一種だなと考え、 私は愉快にドライブを楽しんだ。 千明がぐずったせいで出が遅れ、青山の某所にある協会ビルの地下駐車場に乗り付けた時、 約束の時間を15分も遅れていた。怯む千明を急かして、エレベータに乗せる。エレベー タの操作パネルにあるカードリーダーへ会員カードを押し込み、5階のボタンを押した。 5階で降りると、どこにでもあるオフィスビルの廊下に出る。そこに装備部のスタッフが 待ち構えていた。 「瀬那恭介様でいらっしゃいますね。お待ちしておりました。装備部の高田と申します」 メタルフレームをかけ、白衣を着た研究肌の男だ。面識はない。ブランクの間に移動があ ったのだろう。 「瀬那です。遅れました。申し訳ありません。で、こちらが・・・ん?」 横にいたはずの千明の姿がない。いつの間にか、私の背後に隠れていた。 「おいおい、千明。恥ずかしがるのも程々にしなさい。ここはそもそも、そのスーツを造 った所なんだから、それを着てい歩いたって誰も異常に思わないよ」 私は千明を引っぱり出して、高田に相対させた。 「これが水代千明です。よろしくお願いします」 千明がおずおずと頭を下げる。 「器機の準備はできております。水代様の準備がございますので、こちらにどうぞ。それ と、瀬名様には副理事の山城がお会いしたいと申しておりますので、こちらの作業中にで も、8階の方へおいでいただけたらとのことでした。よろしくお願いいたします」 「山城のじいさんが・・・うーん。まあ、わかりました」 私達が通されたのは殺風景な小部屋で、テーブルひとつと椅子が数脚、3扉のロッカーが 一脚あるだけだった。 「では、こちらで着衣をお脱ぎください。ロッカーの中にガウンがございますので、そち らに着替えていただけますでしょうか。それが済みましたら、レーザーで目を痛めないた めの特殊なコンタクトレンズを嵌めていただきますが、水代様は過去にコンタクトレンズ のご使用経験はございますでしょうか?」 千明はぶんぶんと頭を振った。 「では、点眼麻酔をいたしますので」 千明は私を見つめた。スーツを脱ぐことに躊躇している。 「うーん。ここは霊的防御もしっかりしているはずだから、脱いでも大丈夫だとは思うん だが。まあ、私が付いているしね。千明、脱ぎなさい」 千明が振り向き、ぴっと鼻息を鳴らした。私を見て高田を見る。いいたいことはわかる。 高田の目の前で裸になるのかと、問い質しているのだ。 「病院と思いなさい。さっさと済ませよう」 ひーんと千明が泣き声を上げているのが、わかるような気がする。観念したかのようにロ ッカー前に進み、ウイッグから外し始めた。私も手伝って、千明を素っ裸にする。肛門栓 を抜く時は、高田に見えないようにガウンで隠してやった。ガウンを羽織るとはふうっと 息をついた。 「では、こちらにお掛けください」 千明が高田の前の椅子に座り、指示によって上を向いた。高田が千明の両目に目薬を点眼 する。そして青い色のコンタクトを嵌め終わった時だった。高田の白衣の胸のあたりで、 突然ボンと音がして、襟元から火が噴き出た。 「わあ」 尻餅を突きながら、高田は慌てて白衣を脱ごうとしている。私も駆け寄り、脱ぎ捨てられ た白衣の内側で赤く光っている炎を踏み消した。靴底に金属質な感触がある。火が消えた ので白衣を裏返してみると、煤けた内ポケットからジッポライターが転げだした。蓋が開 いている。 「た、た、大変申し訳ございません。ライターの蓋が開いて、偶然火がついてしまったよ うです。お騒がせしいたしました」 思いっきり恐縮している。その高田に事情を説明しようとした時、後ろから情けなく震え る千明の声が私を呼んだ。 「恭さん。恭さん。焦げ臭いよ、ヤバいよ」 いやそれはライターが発火したからだ、というつもりで振り返った時、白かった千明のガ ウンのあちこちで、拡がりつつあるセピア色の斑点が目に飛び込んできた。よく見ると、 うっすら煙が立ちのぼっているのさえ見えた。 「脱げ。ガウンを脱ぎなさい」 ガウンを脱いだら裸になってしまう、と千明が躊躇している内にも斑点は全体に拡がり、 一部は茶色く濃度を増している。私は手を伸ばして、乱暴にガウンを引き毟った。千明の 背中に手を当て、急造の気を送る。ぎりぎりセーフという感じだった。投げ捨てたガウン は、それ以上変化することなく床に拡がっている。しかし、室内はすっかり焦げ臭くなっ てしまった。 「高田さん、事情は後で説明するが、私がこうして手当てしながら気を送っていれば大丈 夫だから、さっさと計測を済ませてもらいたい。いいかな」 高田は弾かれたように立ち上がり、ドアを開けると、私達を向かいの部屋に案内した。別 のロッカーに予備のガウンが入っているだろうが、面倒なのでそのまま歩き出す。哀れ千 尋は素っ裸のまま、私に背中を押されるような格好で廊下に出なければならなかった。必 死で股間を押さえている姿が、かえって情けない。運の悪いことは重なるもので、偶然通 りかかった数人の女性スタッフに、その様を目撃されてしまった。 「ひーん。恭さん、僕もうお嫁に行けないよう」 私は笑った。冗談にしては泣きそうな顔なので、恥ずかしさのあまりトンチンカンなこと をいっていることにすら気がつかないのだろう。千明は実に面白い。手当てしたまま入っ た部屋は器械で埋め尽くされ、奥の壁際に天井まである2本の大きなシリンダーがひとき わ目を引いた。一本は金属製で、もう一本は透明。中にピンク色の液体が満たされている。 高田がコンソールの前で操作すると、金属シリンダーが床に沈んでいった。 「こちらに足台がございます。両手を軽く開いてこの上にお立ちください。最初は、目も 口も閉じた状態でスキャンいたします。スキャンはほとんど一瞬です。続いて目を開けて、 口もできるだけ大きく開いていただきます。それと同時に、手は上へ真っ直ぐ延ばしてく ださい。よろしいでしょうか」 「は、はい」 「高田さん、スキャンの時はシリンダーが上がるんだろう。手当てを離さなくてはいけな い。どのくらいの時間がかかるものかね」 「はい・・・2パターンのスキャンで30秒程です」 「30秒なら大丈夫かな。できるだけ手早く頼みます」 「かしこまりました。では、台にお乗りください」 千明が台に乗る。透明な突起がふたつ、間隔を空けて設けられているため、必然的に脚を 開く格好になる。 「手は脇に自然に垂らすように。ほんの少し脇を開けてください。指も伸ばして開いてい ただけますでしょうか」 そういわれて、千明は泣く泣く股間を隠していた手を開いた。千明の隠したい物がぶらぶ らと晒される。シリンダーが迫り上がって手を離さざるを得なくなった時、千明はすがる ような目で私を見下ろした。私は精一杯の気を千明の表面に塗り重ねるように送り、大丈 夫と頷いてやった。とはいったものの、本当に大丈夫だといいのだが。ここの器械を壊し たら、弁償で口座がひとつ吹っ飛びそうだ。 千明の姿がシリンダーに呑み込まれ、シリンダーの先がガキンと天井に嵌り込んだ。高田 がマイクを握り指示を出す。 「はい、いきます。顎を引き気味に。背筋を伸ばしてください。リラックスして。いった ん息を吐ききって、それから大きく深呼吸をしてください。光が何回か発光しますが、息 を止めずに、吸い続けてください。では、息を吐いて。いきます」 覗き込むと、高田の前のモニターに裸の千明が映し出されていた。高田がボタンを押すと、 画面全体が十回ほど青く輝く。 「はい。次のパターンです。手を挙げて、目と口を開けてください。はい結構です。瞬き してもかまいません。では、いきます」 もう一度青い光が瞬き、千明が眩しそうに目をしばたくのが見えた。 「終了です。シリンダーが下がりきるまで、動かずにお待ちください」 シュッと音がしてシリンダーが開き始める。その横では、ピンクの溶液の中で無数の光の 交錯が始まり、光の交点で溶液が固まって何かの形を現し始めていた。その形を見極める 暇なく、開いたシリンダーから現れた千明を支える。千明はほっとしたように目をつぶっ ていたが、私の手が触れると嬉しそうに目を見開いた。青い目の千明もなかなか魅力的だ が、じっくり鑑賞していると私の気力が尽きる恐れがある。 「お疲れさまでした。先の部屋に戻って着替えていただいて結構です。ところで、先ほど の発火現象は、水代様の特異能力なのでしょうか」 「ああ、いや、この子に憑いている霊障の一種さ。この子は依代でね。体内に限界近い霊 を溜めてしまった。最後に吸収した霊が火で殺された女性でね、その女性も何らかの能力 を持っていたのかも知れない。悪戯が多くて困ってるのさ。だから、一刻も早く新しいス ーツを造ってほしいんだ。仕様は電話で伝えた通りで、大変なのはわかっているんだが」 「依代・・・しかし、水代様は・・・男性ではありませんか。そんな例は聞いたことがあ りません」 「私も聞いたことがないよ。でもこうして目の前にいる」 「驚きました。是非、研究させていただけませんでしょうか」 「悪いんだが、いろいろ取り込んでいてね。落ち着いたら、血液サンプルくらいは協力で きるかも知れない」 「はい。それは是非。新型スーツは、特急で制作させていただきます。瀬名様がご利用さ れておられた3年前とは、素材も技術も格段に進歩しておりますので、時間的にもずいぶ ん短縮できるようになりました。ところで、採血の方、何なら、今からでも・・・」 「あの・・・恭さん、採血するくらいだったら、今でもいいよ。恭さんは副理事さんに呼 ばれてるんでしょう。僕はその間、ここで見学させてもらってるから。採血の時はスーツ から片腕だけ出すようにして、マスクもちゃんと被っていれば大丈夫でしょう」 「うーん。まあな。じゃあ、30分くらいで戻るから。高田さん、よろしいですか?」 「はい、それはもう」 どことなく慇懃な感じのしていた高田だったが、この時ばかりはチェシャ猫のように満面 の笑みを浮かべ、揉み手せんばかりだった。廊下に人気がないことを確かめてから、千明 とともに更衣室に戻り、千明の装着を見届けてから副理事室へ向かった。 30分後、山城のじいさんとの話を複雑な思いで振り返りながら5階に下りる。更衣室を 覗いても千明の姿が見えないので計測室に入ると、変態ラバー人形がめざとく私を見つけ、 飛びついてきた。 「恭さん、凄いよ。これ見て。ビックリだよ」 手を引かれてシリンダーの横に連れて行かれる。そこに淡いピンク色に透けた人体モデル が立っていた。透明な上にぬるぬると光を反射し、最初は見極められなかったが、よく見 るとそのマネキンは千明だった。 「僕だよ。これ。ちょっと気味悪いよね。そっくりだもん」 「うーむ。チンチンまで正確だなあ」 「どこ見てるのさ、恭さん」 横のシリンダータンクの中では、もう一体の千明像がほぼできあがりつつあった。光硬化 性なんたらという材質が、こういうことを可能にしているわけだ。技術は日進月歩である。 そのうち浄霊マシンもできてしまうのかもしれない。理学部志望の千明にしてみれば、こ こは一種のオモチャ箱なのだろうが、私にはあまり興味がない。渋る千明の頭にウイッグ を被せて、私達は協会を後にした。 途中、銀行とスーパーに寄り、死んでも車から降りないといい張る千明がメモを書いて指 示した食材を、山のように買い込む。家に帰り着いたら千明が料理を造ると主張したが、 私は早くチンポを突っ込みたくて車から寿司の出前を注文した。家に帰り着くと同時に出 前も届き、千明はテーブルいっぱいに並ぶ15人前の高級寿司に目を輝かせていた。 「回転寿司以外のお寿司なんて・・・」 「おいおい、さすが苦学生の台詞だなあ。さあ食べよう。千明の好きなものを、好きなだ け食べなさい。遠慮しないでいいよ。この寿司は千明の奢りだから」 「え? 僕の奢り? そんなあ。お金ないですよお。冗談ですよね」 「あはは。冗談だけどね。でも、今の千明はお金持ちだよ。ギャラが入ったんだ。スタジ オの除霊代と高野山に送った舎利の対価、合わせて2500万円。あの呪には、相当な歴 史的価値があったようだね。2000万も払ってくれたよ。当然、半分は千明の取り分だ。 ほい。銀行に新しい口座を作っておいた。1250万円入ってるからね。通帳と印鑑と、 暗証番号のメモは通帳に挟んである。数日でキャッシュカードも届くだろう。税金はかか らないし、申告の必要もない。これだけあれば当座の学費になるだろう」 「当座どころか・・・卒業するまで充分ですけど・・・もらえませんよ、このお金。だっ て、足手纏いなだけで、きゃーきゃーわーわー怖がってただけですから」 「また、そんなことをいう。謙遜は美徳じゃないよ。少なくとも私にとってはね。君がい なければ、私は死んでいた。それが結果だ。ギャラを折半する権利は充分ある。次の寿司 は奢ってもらうよ。じゃあ、いただきます」 「いただきま〜す」 思う存分、寿司をいただいた後には、思う存分、千明をいただくわけだ。 ☆彡14. 千明が2人前平らげ、私は13人前胃に収めた。千明が熱く渋い茶を煎れ、二人して老夫 婦のようにまったりと啜る。千明は茶を飲み干すと、手を合わせてごちそうさまでしたと 唱え、寿司の器をキッチンに運んで洗い始める。私が茶を飲み終わる頃には、玄関脇にま で運んでいた。 「恭さん、後で出しておいてくださいね」 エプロンを脱ぎながら戻ってくると、ちらりと私の股間に目をやり、苦笑いしてトイレに 行った。トイレから戻ると食事中は外してあった胴体ストラップを取り上げ、腕をと脚を 通してバックルを締め始める。 「うー。お腹いっぱいだからキツイなあ」 そんなことをいいながら胴体を自分でボンレスハムにし、肛門栓のベルトも固定してから、 お待たせしましたといいながら私の向かいのソファに座る。 「お待たせって、何が?」 「もう、意地悪なしですよ。エネルギーチャージが終わったら、エネルギー放出したいん でしょ、恭さん。ほら、股の間のシンボル君がぴくっと動いたじゃないですか。それとも、 もうちょっと恥じらった方がお好みですか」 「あはははは。開き直ったな。今日は、昼のチンポずぼずぼ挿入訓練をさぼったしね」 「チ、チンポずぼずぼ挿入訓練・・・よくまあ、そんな恥ずかしいいい方ができるもんで すねえ」 「開き直った割には、こういういい方をすると恥じらう所が可愛くてね。中年になるとそ ういうのが新鮮に見えるのさ」 「じゃあ、いや〜んとか黄色い声を出すようにしましょうか?」 「ふん。意図的にいわれてもツマラン。しかし、どうせこの後、我を忘れて声を上げるこ とになるんだからね」 「え?」 「昨日いっておいただろ」 「げっ・・・か、浣腸・・・ですか?」 「大正解。いい声で鳴けたら、御褒美に特別性感開発器具をプレゼントしてあげよう」 「ううう。あんまり御褒美とはいえない物のような気がしますけど・・・。浣腸って、昨 日の浣腸、何個分くらいなんですか」 「あんな物、一個30cc足らず。オコチャマ用だよ。本物のマゾを目指す千明には、教 材にもならない。とはいえ初体験だからね。グリセリン50%溶液を3000ccといっ たところで勘弁してあげよう」 「3000ccですって! あ、あれが100個分・・・む、無理ですよ。お腹が破裂し ちゃいます」 「何驚いてんの。5000ccまでは平気さ。強者ならそれだけ入れたままで、何時間で も我慢するんだよ」 「ツワモノでなくていいです。ヨワモノでお願いします」 「千明に拒否権あると思う?」 「あると・・・いいな・・・でも、やっぱり、ないんでしょうね。とほほ」 「そ。拒否権なし。私の嗜好に合わせて、マゾも頑張るっていったのはどこのどなたでし たっけ」 「うぐ・・・ここの、僕です・・・」 「大変よくできました。では、そうだな、そのまま後ろにもたれて、股を思いっきり拡げ ながら脚を持ち上げる。膝の裏を両手で抱えるようにして。そうそう。オムツ替えの赤ち ゃんポーズだな。そのまま動かないで待ってなさい」 「うく〜、恥ずかしい格好・・・。お、お手柔らかにお願いします〜」 私は昔、金に飽かせて協会装備部に作らせた特製人工肛門を持ち出してきた。3年ぶりに 箱から取り出したが、丁寧にしまってあったから新品同様だ。動作を確認してみたが、問 題なくスムーズに動く。 「ほら、見えるかい。何だと思う?」 「えと・・・オモチャの車のホイール? 糸巻き?」 「ふむ。形的にはそんなものだがね。これは人工肛門なんだよ。これを千明の肛門に嵌め 込む。先端が丸くなっていないけど、最初の太さは今の肛門栓と同じだから何とか入るだ ろう。胴体の真ん中のくびれに千明の肛門括約筋がすっぽり嵌るわけだ。それからスイッ チを押すと・・・ほら、前後の端がこうやって千明の中で拡がるんだ。倍になるだろ。同 時に胴部分が、長さは縮まりながら、太さは増していく。見えるだろ。拡がった端が内側 と外側から千明の肛門をしっかり挟み込んで蓋になるわけだ。膨らんだ胴体が千明の肛門 を限界まで拡げて、それだけでも漏れないだろうが、さらに内側からも外側からも蓋され て、苦しさのあまりどんなに力んでも一滴も漏らせなくなる。胴体の中には太い穴が開い てて、浣腸液でも何でも入れ放題。逆流防止弁があるから専用パイプを外してしまえば、 排泄不能になる。結構優れものなんだよ」 「そ、そんなの嵌められちゃうんですか・・・」 「嬉しいだろ」 「嬉しいわけ、ないじゃないですか」 「それは残念。でも、否も応もないんだよ」 「僕が、好きになるしかない・・・ってわけですね。はふう・・・」 「話が早くて、助かるなあ」 「あー、何だか、あれよあれよっていう間に、こんなことまでされちゃうようになっちゃ って。何でだろ。恭さんに騙されてるんじゃないだろうか」 「騙してるわけじゃないけど。トークのテクニックは、使ってるかな。年の功ってヤツさ」 「わかりましたよ。何でもいいから、早くやっちゃってください。こんな格好で普通に話 してる方が恥ずかしい・・・」 「おお、観念したね。ではお言葉に甘えて」 私は肛門栓の固定金具をプチプチと外し、ヒクヒクと物いいたげに肛門栓を咥えている千 明の肛門を鑑賞しながら、ストッパーバルーンを萎ませてやる。千明が漏らした小さなた め息を聞きながら、ぬるっと押し出されてきた筒部を指で押し留め、しっかりつまんで左 右に揺すってやった。 「あ、あう、や、やめて、くださいよう、んん・・・」 「あれ? 目の錯覚かな。今、ペニスがぴくんと動かなかったか?」 「ううう。知りません。ああああ。駄目ですってば。捻らないで・・・」 「おいおい。じゃあ、スーツの中にカブト虫でも入ってしまったってかい。ずいぶん活き のいいカブト虫だなあ」 「うううう。あ、あふっ、んんんん」 「感じてるじゃないか。千明。凄い進歩だなあ」 私が肛門栓を素早く前後してやると、宙に浮いた足の甲がぐぐっと伸び、ビクンビクンと 跳ね上がった。 「気持ちいいんだろ」 「んんん。す、少し・・・」 何が少しなものか。きつく目をつぶり、眉根を寄せて肛門に意識を集中しているくせに。 「もっと楽しませてやりたい所なんだが、それは後の楽しみにしようね。こんな味気ない 棒じゃなくて、もっと太くて長い、生きた棒で掻き回してやるから。そのためにはまずお 腹の中を綺麗にしなくちゃね」 私は一気に肛門栓を引き抜いた。お預けを食らった鯉の口のように、千明の穴がパクパク と喘いでいる。人工肛門を押しつけてやると、泥海に沈むようにほとんど抵抗もなく咥え 込まれた。スイッチを入れて人工肛門を展延してやると、脚の指を内に折り曲げながら、 初めて体験する腸内での動きに意識を集中させている。 「んん、あああ、ああん、拡がる。あああ。お尻の穴が挟まってる・・・うう〜、うう〜」 千明の肛門は人工肛門の金属蓋に覆われた。スーツのゴムまで一緒に挟み込んでいるため、 スーツの付属品に見える。 「いきんでごらん」 「は? あ、はい、いいいいいいいいいいい!」 千明の肛門は内と外を完全に挟み込まれて、もう盛り上がることもできない。 「いきむと・・・身体の中の・・・蓋?・・・が固く詰まって感じられて・・・腸が引っ 張られるみたいで、ううう、気持ち悪い」 「まあ、慣れるさ。スーツの穴も噛み込んでるから、小便を漏らしても穴から溢れること もない。これでどんな場所でも漏らすことなく浣腸ができるってわけだ。じゃあ、立って、 寝室に行こうか」 千明はオムツポーズから解放されて、ほっとしたようだ。脚を床に降ろしたとたん、お尻 と下腹を押さえて半べそをかいた。巨大な疣痔でも患っているかのように、ギクシャクと 情けない動きで立ち上がる。 「あ、ああ、動くと、ぐりっとなって、ううう」 「ずいぶんへっぴり腰だなあ。しかも、がに股。もっとすらっと立ちなさい」 「あううう。だって、中でつっかえる感じがして・・・」 それでも、恐る恐るキオツケのポーズを取る千明だったが、背を伸ばし、脚を揃えたとた ん、んおーっと悲鳴を上げた。 「う、はははは・・・き、効くう〜。ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。馴染むまで ・・・うー、うー」 30秒だけ待って、私は千明の手を取り、寝室までエスコートした。歩いて腰を捻ったり、 踵から脚を突いたりすると人工肛門が腸をくじるらしく、まるで安木節でも踊っているか のような滑稽な歩き方で付いてくる。 「とほほ〜。ちゃんと歩けません。これじゃあ、安木節のドジョウ掬いの踊りみたいだ。 恥ずかし〜」 シンクロニティ。といえるほど偶然そのものではないが、二人同時に同じことを考えたの が微笑ましく感じる。寝室のベッドの前まで連れてくると、そこで直立不動を命じた。首 枷を嵌め、首枷と胴体ストラップを厳重に連結する。フェイスハガーと呼んでいる、顔面 を鷲掴みにするようなストラップを、首枷で上向いた千明の顔面に被せ、鼻の隆起にすっ ぽり嵌り込んだリングから放射状に拡がるストラップを、首枷と一体化するように締め上 げてやる。顔面まで、肉にめり込むストラップに区切られて、端正な千明の顔は歪んでし まう。フェイスハガーの目隠しパッドによって、千明は視覚を奪われてしまった。顎下に 開いた呼吸口の、通気具合を確かめる。 「顔がキツイ〜」 「このくらいキツくないと、危険だからね」 私は千明の胴体ストラップも、きっちり締め直しながらいった。 「危険って・・・怖いなあ」 私は千明の腕を後ろ手にさせて、アームザックと呼ばれる革の腕袋に滑り込ませた。スト ラップとバックルで両手を一本の棒にしてやる。肘の部分と、拝み合わせした手先から垂 れているベルトを胴体に固定し、動きを封じた。最後に、脚へもレッグザックを嵌め込み、 股の半ばまである革袋を締め上げて、一本の棒状にする。倒れかかる千明の体を支えなが ら、リモコンで天井の鎖を降ろし、先端のフックをフェイスハガーの頂にあるリングに引 っかけた。 「頭・・・鎖? ああ、わかった、天井の金具・・・何だろうって思ってたけど、こうい う仕掛けだったんですね」 「そうだよ。私はオコチャマ・サディストじゃないからね。この家はいろいろ改造してあ る。どの部屋でも吊しが可能なのさ」 「吊しってことは・・・」 「そ。こういうこと」 リモコンで鎖を引き上げてやると、千明の頭ががつんと引かれ、よろける千明の身体が真 っ直ぐに引き起こされていく。 「わ、わあ、怖い・・・わああ、浮く・・・」 千明の爪先が床を離れ、前後に揺れながら床から30センチ浮き上がったところで、鎖の 牽引を止めた。千明は全身を一本の棒にして、緩く回転している。 「体重が首の一カ所にかかったら、死んでしまうけどね。ストラップと首枷で全身に分散 してあるから、このまま一週間放置されても大丈夫。慣れると揺りかごみたいで、心地い いらしいよ」 「心地いいらしいって・・・他人事じゃないですかあ」 私は笑って、宙に浮く千明の身体を押さえ、腹の部分のストラップを何本か解除した。 「な、何してるんですか。食い込みが・・・」 「お腹の部分を締め付けないようにしているのさ。せっかく浣腸するんだから、浣腸でぽ ってり妊婦腹になる図を鑑賞したいだろ」 「妊婦腹・・・そんなに・・・やっぱりぃ、耐えられそうもないです」 「耐える必要なんてないさ。肛門は完全に塞がってるんだから、いきもうが踏ん張ろうが、 ご自由にどうぞ。そうだなあ、千明は初めてだから、今回は10分を目標にしようか」 「無理です。無理ですってば」 「だから〜、無理でも何でも、苦しむのがマゾの仕事なんだよ」 私は泣き言をいいまくる千明を放っておいて、浣腸の準備に向かった。3年間クローゼッ トの中で眠っていたグリセリンの、開封していないボトルを取り出して中身を確かめる。 開封していなかったから、劣化や変質はしていないようだ。特製浣腸器も3年ぶりに引っ 張り出したが、動作に異常なし。タンクの中にカビなども生えていない。まさかもう一度 使う機会があるとは思わなかったが、しまい込む時にしっかり手入れをしておいたおかげ だ。全部抱えて寝室に運ぶ。途中、キッチンから、天然水の1リットルボトルを2本持ち 出して準備完了だ。 寝室に戻ると、千明は静かになっていた。巨大蓑虫と化して、揺れに身を任せている。ど んなに哀願しても無駄だと悟ったのだろう。その足下に浣腸器を据え置く。ふたつあるタ ンクのキャップを開け、一方に天然水、もう一方にグリセリン溶液を注ぎ込む。ひとつ3 000ccの容量があるから、フルに満たせば6000ccの50%溶液を作れるのだが、 千明もいつかは、6000cc全量を受け入れることができるようになるのだろうか。 コンセントに電源コードを差し込み、メインスイッチを入れると前面パネルが光を点す。 設定を入力していく。注水をしっかり感じてもらいたいから、温度は25度。濃度は50 %、量は3000cc。注水速度は低速にした。排水設定はなし。この器械を接続してお けば、浣腸後に自動吸引で排泄させることも可能なのだが、浣腸の屈辱をしっかりと覚え 込むまでは、他人に見られながら盛大に排泄する人権喪失感を、骨の髄まで味わってもら わなくては。千明が本物のマゾヒストに成長できるか否かの、第一関門だ。千明が浣腸の 快感を得られるように、神に祈りたい気分だった。 浣腸器がピッと電子音を発し、混合と加温の準備完了を告げた。千明は何が起こっている かわからず、不安に苛まれていたのだろう、ビクッと身体を引攣らせる。器械の横に丸め て固定してあったホースを解き伸ばしていく。ホース内の空気を吸い出し、浣腸液で満た す機能もあるのだが、そのままにしておいた。排泄の光景を見られるだけでなく、音まで 聞かれる情けなさを思い知らせるためには、空気が混ざった方がいい。 千明の人工肛門を探り、その中心の穴にホース先端の金属ノズルを突き込んでやる。3セ ンチほど奥に入ったところでガチンと突き当たり、口金を合わせて捻ってやると、ノズル が嵌り込む手応えがあった。その手応えは、当然千明の肉体へも伝わっている。何が行わ れているのか、それで千明も悟っただろう。 「あううう。怖いです。苦しいんですよね、きっと・・・」 「苦しいさ。でもね、苦しければ苦しいだけ、後で排泄する時、恍惚とするくらい気持ち いいんだよ。慣れれば、苦しんでいる時ですら快感に思えるようになる。頭の中のスイッ チをカチンと切り替えるだけでいいんだそうだ。苦しさが頂点に達した時にそのスイッチ が見えるようになるっていう。だからね、千明には気の毒だが、どうしても一度はその状 況まで苦しんでもらわなきゃならない」 「ほ、本当なんですか。そのスイッチの話。信じられないけど・・・嘘じゃないですよね」 「経験者から直に聞いたんだから、嘘じゃないよ」 「あの・・・その経験者って・・・あの・・・奥さんの・・・真理さん・・・?」 「うん。そうだよ」 「この人工肛門も、真理さんが使っていた物なんですか?」 「そうだ。真理の肛門に嵌っていたものだよ。気色悪いかい?」 「いえ。そんなことないです。・・・あの・・・その・・・」 沈黙が降りる。私は千明の次の言葉を待ったが、反応がないので浣腸器のスイッチに手を 伸ばした。その時、千明がぽつりといった。 「僕・・・頑張ります」 私はスイッチを入れた。コンプレッサーが稼働する振動音が響く。とたんに千明が喘ぎを 漏らした。 「あ、あああ、何、膨らむ・・・」 「まずはホースの中の空気が入っていくんだ」 千明の腹がググッと鳴った。次の瞬間、千明の身体がビクッと海老反った。 「冷たい! あわわ。入ってくる。あううう。冷たいです〜。うーん。何これ。気持ち悪 いいい。逆流してる。う、あ、あああ」 グルッ、グルルッっと腹鳴りを響かせ、そのたびに千明はか細い呻きを上げた。 依代-14 玲 - 2004/09/13 03:14 - 「あうー、あうー。も、もう、お腹いっぱいです。うー。うー。お腹が張る。ううう、ま だ、まだ終わらないの?」 「まだ半分も入ってないよ」 「そ、そんな・・・だってもう腸が満杯なのに。苦しい〜、うー、うー」 「まだ大腸が膨らんでるだけさ。そのうち小腸に逆噴射する」 「う、あ、んわあああ。入ってきた。うんんんん。ああああ、効いてきた。うわう。ウ、 ウンチしたく・・・あああ、したい、したい、ウンチしたい・・・苦しい、あア〜」 千明の下腹が目に見えて膨らみ始めている。浣腸の効果も出始めたようだ。 「まだ2分も経ってないからね。ギブアップには早いよ」 「あああ、ううう、ギ、ギブアップなんてしません。でも、うわあああ、ゾワゾワするう うう。んんんん。ウンチしたい。ウンチしたい。ウンチしたい。ぎいいい」 私は驚いて、空中で釣り上げられた魚のように跳ねる千明を見上げた。浣腸の効果が現れ た瞬間に、泣いて降参するだろうと思っていたのだが・・・。千明が跳ねようがくねろう が、コンプレッサーは定められた速度で淡々と液を送り込み、3分で3000ccすべて を注入し終えた。千明の下腹は見事に膨れあがり、妊娠6ヶ月といったところだろうか。 私はのたうつ千明を押さえて、人工肛門からホースを捻り外した。 千明は大きく口を開けたまま、すでに言葉を発する気力すらないようで、ひたすら低い呻 きを漏らしている。周期的に襲う排便発作の時だけ、ガッと血を吐くような音を喉の奥か ら絞り出す。全身が石のように硬くなり、全力で排便しようと力んでいることがわかる。 もちろん肛門からは、一滴の雫さえ漏れ出さない。踏ん張りに踏ん張り、脳が酸欠寸前ま でいきんでは、すべての糸が切れたようにガクッと脱力し、必死で息を吸い付ける。イン ターバルはほんの十数秒だった。再び全身が反り返って石になる。驚いたことに、それで も千明はギブアップしなかった。 「おいおい。予想外だな。5分、保ってしまったよ。千明、大丈夫か〜。限界ならギブア ップしろよ」 「ギイイイイ。ギ、ギブ、アアアアップ、しない。ううう。ンギイイイイイ」 私は困惑して頭を掻いた。この細い身体に、これほどの意志の力があったとは。いったい 何が千明をここまで頑張らせているのだろう。真理の話が出たとたんだった。真理にライ バル心を燃やしているのか。いや、そうは思えない。まして、嫉妬なわけもない。私には 想像もつかなかった。 8分を過ぎる頃、千明は何百回目かの排便発作に跳ね上がったが、そこで小さく奇妙な声 を漏らした。 「んああああ〜ん。んんんん〜あ〜んんんん」 歯を食いしばり、その隙間から甲高い呻き声が押し出されてくる。全身が小刻みにヒクつ き、そのたびに、ん、ん、ん、っと小刻みな息をしている。呼吸さえ止まらなければ大丈 夫ではあるものの、少々心配になった。時計を見ると9分を過ぎている。私は約束よりも 早めに千明の脚のレッグザックを解き、身体を降ろしてやった。千明は踏みつぶされた虫 のように床にへばりつく。吊りから解放されても何もいわず、ひたすら全身を引攣らせて いるだけだった。 「千明。大丈夫か。歩けるか? 浴室で排泄させてやる。自分で行けるか?」 「んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、あ、んっ、んっ、んっ、恭、んっ、んっ、んっ、駄目、 んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んんんんんん」 私は千明を横抱きに抱き上げた。そのまま浴室に運ぶと、床に正座させる。手を離すと千 明の上体が前倒しになり、腹が圧迫されたのだろう、ぐえええっと不気味な悲鳴を上げた。 私は急いで千明の尻に手を差し込み、人工肛門の開放スイッチを押し込んでやる。 バブッ、ブボッ、ブスッと、最初に空気が噴出し、茶の飛沫を飛び散らせる。一瞬遅れて、 ブバババババババッと、糞と浣腸液の混合物が弾け飛んだ。私の手を茶に染め、浴室の壁、 床から1メートルも上まで噴射が届いた。グーともガーとも聞こえる千明の喉鳴りが、獣 じみて耳を引く。噴出は10秒ほどでいったん止んだ。千明の濃厚な便臭が浴室中に充満 し、鼻を叩く。私がシャワーで流している内にも、再び千明の肛門から水便の奔流が迸り、 床と壁に新たな紋様を描く。ブリュブリュっという放屁が滑稽なほど続き、時々ごぼっと 溶けた糞のアーチを描く。千明は死んだように動かず、尻の穴から糞を垂れ流すことでの み、生きていることを告げていた。 水のようだった糞便に、だんだんと解れた繊維のようなものが混じり始め、浴室の床をシ ャワーに押し流されていく。ようやくせわしない排便が終わったが、それでもしばらく放 置しておくと、間歇泉のようにブリュッ、ブジュジュと軟便が押し出されてくる。私は千 明の呼吸を確かめ、とりあえず安心してじっくり眺めていた。 伏せていた千明の上体がビクッと震え、意味不明の声が出る。見守る内に全身を震わし、 濁った音とともに最後のひと噴射を扇状にぶちまけた。肛門から溢れ出すあぶくの音が静 まる頃、千明が喉をヒィーっと鳴らして大きな息を吸い、濡れた犬のように身を震わせた。 「ああああ、恭さん・・・い、いるんでしょ・・・。あうう。恥ずかしい・・・。ウ、ウ ンチ出すとこ、全部見られた・・・うううう」 「ここだよ。見てたさ。そうしないと、苦しんだ千明に失礼だろ。壁に跳ね返った雫も、 たっぷり浴びせてもらったよ」 「う、うわあ、ご、ごめんなさい。汚い。すぐ洗って・・・」 「べつに汚いとは思わないさ。シャワーで流せばそれでいい。ところで・・・」 「うん。えへへ。スイッチ・・・見つけた。ホントだったよ。・・・それが、真理さんの いった、スイッチと、同じかどうかは、わからないけど。・・・でも、頭の中で、何かが、 切り替わった。確かに、そんな、感じなんだ。ううう。そういう、暗示を、かけて、もら ったから、かな。うーう。・・・不思議な、感覚だったよ。何て、いうんだろ、感覚は同 じで・・・お腹の中が、溶岩みたいに、熱くて・・・もう、爆発、しそうなくらい、苦し いのに、身体の、外側と、頭の中に、伝わってくるどこかで・・・ひっくり返るんだ。快 感じゃない、けど、快感、なんだよね。恍惚って、いってたでしょ。まさに、そんな感じ。 あーううう。頭の中が、真っ白になって、自分が、消えちゃって、どろどろの、蛹、にな ったみたい。あふうううう。あわ。まだ出た。あうう。漏れちゃった」 千明は力無く肩を揺すりながら、上体を起こした。その動きで、尻から軟便がブボッと漏 れる。ようやく正座の格好になって、はあはあと犬のように喘いでいる。漏れたわずかな 糞便を流してから、私はフェイスハガーを外してやった。外れたアイパッドの下から、と ろんとした千明の目が現れ、私を見つめて曖昧に笑う。 「はうううう。凄かったあ。我慢して、我慢して、やっと許してもらった時、ウンチが噴 き出したとたんに・・・頭の中も身体の内側でも、太い光が何十本も交差する・・・って いえばいいのか・・・キーンって感じで光が響いて・・・光が響くって、変だよね。でも、 そんな感じがぴったりなんだ。正直にいうけど・・・逝ったみたい。おチンチンで逝った のとは、全然違う逝き方で・・・。グオーっていきむたびに、体中が放り投げられるみた いな、お尻の穴から内臓が噴き出して、身体が捲れ上がるみたいな・・・それも連続して ドンッ、ドンッ、ドンッって感じ・・・おチンチンで逝ったのとは違うんだけど、射精し ちゃってるかも知れない」 「何だか、聞いていると羨ましくなってくるな。千明は表現力があるから、なおさらだ」 「んーん。言葉でなんか表現できないよ。今度、恭さんにもやってあげようか」 「慎んで、ご辞退申し上げるよ。やっぱりね、沽券に関わるからね」 「あー、ホントに百聞は一見に如かずだ。まさか、浣腸がこんなに凄いなんて。苦しいだ けだと思ってたのに。まだ、余韻が残ってる。ん〜って踏ん張ったら、ジーンって来るよ。 でも、消耗するね。へとへとだあ」 「ふーむ。何とも・・・千明には、驚かされっぱなしだ。立てるかい」 「たぶん、何とか・・・ふにゃあ」 千明は立ち上がろうと、よろよろ足掻いた。手が拘束されたままなので、かなり難儀そう だ。手を貸すとようやく立ち上がったが、ひどく内股になっていた。私はちょうど目の高 さになった千明の股間に手を伸ばし、盛り上がりを鷲掴みにした。あふんっと、千明がわ ずかに腰を引くが、目は嬉しそうだった。 「ペニスは、勃起していない・・・ふむ」 「・・・ペニスにもジンジン来るんだけど、勃つ刺激とは違うんだよ。かえって縮こまっ ちゃう感じ・・・。逝っちゃう神経の、回路が違うんだと思う。でも、恭さん、その辺は 詳しいんじゃないの?」 「詳しい?・・・うーん、男に本格浣腸したことは、ないからなあ」 「じゃあ、僕って実験台?」 「ははは、まあ、そんなようなもんだ。それにしても、ここでいつまでも話し込んでると、 風邪を引きそうだから、さっさと腸を洗って、寝室へしけ込もう」 「腸を洗うって・・・また、浣腸するの?」 「何だい、期待するような目だな。洗腸は、ただの微温湯だよ」 私はシャワーのノズルを外した。ホースだけになった先端を、千明の人工肛門に突っ込む。 奥の口金に当たって、数回探るように先端を動かすと、するっとさらに入り込む。そこで 人工肛門のスイッチを押すと、中の弁が絞り込まれホースを咥え込んだ。軽く引っ張って 固定の具合を確かめ、おもむろに微温に設定したシャワーを全開にしてやると、千明は伸 び上がるように仰け反り、遠吠えのような唸りを上げた。 「おおおおおおおう。膨れ・・・くうううううう。きつい〜」 千明の下腹がぼっこり迫り出したあたりで、注入を止める。千明は壁に背を預けてわずか に爪先立ち、迫り出した自分の腹を覗き込んでいた。 「ううううう。こんなにお腹が膨らんじゃうんだ。可笑しいなあ。苦しいわけだ。・・・ でも、ただのお湯なんだよね。・・・うーん。浣腸液の、あの滅茶苦茶な排便欲求がない と・・・スイッチ、入らないみたい。お腹いっぱいいっぱい、風船になった気分で、これ はこれで楽しいけど。ううう。腸がぱんぱんになると、脚に来るね」 千明の脚が、カクカク小刻みに震えていた。人工肛門の絞り込みを開き、尻尾のようにぶ ら下がるシャワーホースを抜いてやると、千明は立ったまま、濁った湯を噴出させた。 「うわあああ。オシッコみたい。凄い〜。んんんんんんんんんんん。あふう」 湯を出し切った頃に、もう一度ホースを突き込み、再度微温湯を注入する。 「あああ、そっか、浣腸の時とは違って、温かいお湯だから、いつの間にか膨らんでくる んだ。冷たい液だと、冷感で、腸のどこまで入り込んでいるのか、わかりやすいんだよね。 うむむ〜。また、お腹が張ってきた。恭さん、座ってもいい? 脚がガクガクで・・・」 私が頷くと、千明は壁に背をもたせながら、ずるするとウンコ座りに座り込んだ。私がホ ースを抜こうとすると、意外と冷静に、そこにいると恭さんにかかってしまう、と注意し てくれる。私が身体を逃がしてホースを抜くと、千明はまるで女の放尿のごとく、脚を蝶 の羽のように拡げて爪先立ち、勢いよく放出を始めた。シュウウッと、高い放物線を描い て向かいの壁にまで、ほとんど透明な液が噴射される。 「ああああ、ああれ? ううーん。この姿勢・・・感じる。う、うんあ、あー、いいいい、 何で、何でえええ、んんんんぎいいい」 放水しながら、半眼になり、ガクンガクンと腰を突き出すように、千明は悶えていた。し ゃがみ込むことで直腸が歪み、腸内を流れる水流が、腸壁越しに前立腺へぶち当たってい るのかも知れない。放出し終わり、感極まったかのように尻餅をつく千明に、ノズルを戻 してシャワーを浴びせてやる。間欠的に溢れ出す温湯が収まってきた頃を見計らって、人 工肛門を閉じ、自分と千明の身体をタオルで拭いて、私は再び千明を抱き上げた。抱き上 げながらキスをすると、千明はほとんど無意識に私の舌を貪ってくる。 今の状態の千明なら、肛交による快感を得られるかも知れない。私の股間は暴れ馬のよう にいきり勃っていた。 ********************************************************************************** yorisiro4.txtに続く