rubberdoll  作: 玲
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rubberdoll-21 精液。

強制換気は1分ほどで終わり、僕は肛門括約筋の自由を取り戻した。しかし唯一完
全な自由と思っていた括約筋までドクター・ペインの手が加えられていると知って、
喜びも半減してしまう。ふたりの身支度が終わると、精液にまみれたマッドの下着
で顔と肛門を雑に拭かれ、僕は新たな場所へ運ばれていった。廊下を抜け、暗証ロ
ックのある扉をくぐり、何度も角を曲がって到着した部屋のドアプレートには「介
助士ラウンジ」と記されていた。ドアを抜け薄暗い室内に押し込まれるやいなや、
号砲のような男達の歓声が上がり、自閉していた僕の意識が我に返った。フットボ
ール選手のようないかつい男達が十人以上、僕の目の前で手を叩き蛮声を上げてい
る。

饐えた臭いが目一杯こもっているだろう乱雑な部屋だった。壁には破れたヌードポ
スターや雑誌の切り抜きが無造作に貼られ、床に積み上がっているのはポルノ雑誌
ばかり。いったいいつ掃除したのかわからないほど汚れきった部屋だった。男の汗
と腋臭と体臭。煙草と酒と反吐と唾。汚れた下着と食い残し。湿った毛布と黴。あ
りとあらゆる臭いがカクテルされて部屋にこもっているはず。そんな耐え難い悪臭
を嗅がなくて済むのは、ありがたいことだ。

凱旋将軍のように歓声を浴びているロジャーとマッドに押されるまま、僕を収めた
鞍馬器具は、床のゴミを蹴散らして部屋の真ん中に運ばれ、そこに据え置かれた。
全身の血管が凍りついたように竦みあがる。男達の歓声と、その顔に浮かぶ獣欲の
笑みが、僕のこれからの運命をあからさまに物語っている。キャスターがロックさ
れる音が、死刑台の床が落ちる音のように聞こえた。

「てめえら、味見しやがったな」

誰かが、酒で焼けたガラガラ声を発した。

「当たりめえだろ。おまえだってそうしただろうに。役得だよ、役得。そんなこと
より、こいつはダイナマイトだぜ。いままでここに貸し出された改造体なんて、こ
いつの穴に比べたら錆びた配水管みたいなもんだぜ」

ロジャーの絶賛を聞いて、男達が全員、その目にぎらぎら脂っぽい欲求を光らせる。
目の前で男達がクジ引きを始めた。樽のように太った豚男が一番クジを引き当てた
ようだ。獣のような咆吼を上げていた。二番クジを引いたのは馬面の男だった。馬
男は歓声もあげずにズボンを脱ぎ捨てる。馬並みのペニスが湯気を出しそうに勃っ
ていた。豚男もズボンを脱ぎ捨て、こちらは包茎の並物を晒した。皮を捲り上げる
と、亀頭が恥垢で真っ白だった。そこから立ちのぼる酸っぱい臭いが、目にまでつ
んと来るような気がした。

懇願することも、助けを呼ぶこともできない。恐怖と嫌悪に全身を石のように固く
することさえできないのだ。アルカイックなスマイルを浮かべ続け、物欲しそうに
口を開いて誘い続ける。無駄と知りつつせめて肛門を閉じるだけ。豚男が後ろに回
って僕の視界から外れた。馬男が僕の目の前に立つ。肛門をぽってりした指で撫で
回され、顔には馬並みのペニスがぴたぴたと押し当てられ、ガマン汁を擦り付けら
れた。

早くしろよという声が取り巻きから飛んだ。前後同時に突き込まれた。ロジャーと
マッドにさんざん犯しまくられた後でも、あいかわらず耐え難いおぞましさだった。
でも僕には抗議することも、拒否することも、懇願することも、首を振ることすら
できない。僕はただ受け入れることしかできない。そして目の前の男達の股間にぶ
ら下がるイチモツが精液を枯渇させるまで、僕は受け入れ続けなければならないの
だ。

肛門と口での激しいピストン運動。何本目のペニスなのか、僕は足し算すらできな
くなっていた。前も後ろもいやらしい音を立てている。僕の胃は大量に流し込まれ
た精液で張り裂けそうに重い。抵抗する気も失せ、開ききった肛門からだらだらと
精液が溢れ出ている。2度、強制換気が発動し、ババを引いた男が笑い物になった。
ピストン運動で少しずつ送り込まれた空気が止まらないゲップになって喉を鳴らし
続ける。

前で後で、貧困なボキャブラリーから叫ばれる賞賛の声。僕はといえば言葉の意味
など理解不能な状態だった。屈強な男達に一本の消化管の前後を同時に打ち据えら
れて、僕は肉体が潰れていくような錯覚すら覚えた。頭の中に電気のスパークみた
いな火花が飛び散り、毛穴という毛穴から精液の臭い立ちのぼらせているような気
がする。もはや嫌悪も悲嘆も砕け散り、僕はただの肉穴と自ら化した。熱い精液が
迸る。そのたびに脳裏に閃く真っ白な光の幻覚の中で、僕の精神のどこかが、また
ひとつ永久に壊れていった。

それからの1ヶ月、僕の居場所はこの介助士の休憩所になった。10人3交代制で
非番や勤務明け、休憩になった介助士達が入れ替わり立ち替わりこの部屋に集まっ
てくる。常時10人前後の男達がたむろし、朝も昼も夜中も、僕は休むことも許さ
れず肛門と口をさまざまなペニスで犯され続けた。収縮する暇も与えられずにペニ
スを突き込まれ続け、開きっぱなしの肛門は、痴呆のように精液を垂れ流していた。
惨めで哀れで情けなかった。気が狂えばいいのにそれができない自分自身を呪った。

それでも、肛門に注がれた精液は、直腸栓で堰き止められるだけましだった。精液
を飲み込むという行為には、なかなか慣れることができなかった。顔面を掻き毟り、
腹を裂いて内臓を毟り捨てたいほどおぞましかった。舌の上にぶちまけられれば、
口の端から涎のように垂らし出すこともできたが、喉の奥深くで放出されてしまう
と、否応なしに飲み込むしかない。男の僕が、男の精液を、飲むなんて・・・。

胃の中に溜まった男達の精液を、僕はどうすることもできずに消化し、吸収してし
まう。僕の血管の中に男達の精液のエッセンスが混ざり込み、僕の全身を駆け巡る
わけだ。それが僕の肉となり骨となる。僕は精液を固めて造った蝋人形のような物
に変えられてしまう。いったい何リットル、何ガロンの精液を飲み干せば、精液の
蝋人形と化して、何も感じない物体になれるのだろう。心などあるから苦しいのだ。

僕の口で感極まったペニスが、いつもとは違い、湿った音とともに引き抜かれ、開
きっぱなしの僕の目玉に押し当てられた。眼球に熱を感じ、右の視界が白く塗りつ
ぶされる。精嚢をすっからかんにした男が離れていくのを左目だけで眺めていると、
ふと頬を伝う滴りに気がついた。今、目の中にぶちまけられた精液だとわかったが、
その感触は涙の滴りに似ていた。精液で満たされる肉袋となった僕には、精液の涙
を流して泣くのが似合いだった。

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