ある性転者の告白 作:高野奈緒美
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ある性転者の告白101

 さらに、手術、いえ、人体実験とも呼べる行為は続きました。それは、結花の提案により、加えられた手術だったのです。
 気絶から、意識を戻した私の前には、それまで一度も見せたこともない冷淡な表情で立っている結花がいました。
 結花は、さかんにくぐもったうめき声を上げる私に向かって淡々とした口調で言ったのです。 「あなたは、もう、完全に奈緒美ちゃんになったのよ。でもね、私にとっては、好きだった直樹さんの面影が残った顔を見るのはつらいの。だから、先生に頼んで、整形手術をしてもらったわ。あなたの顔、腫れが引いて、包帯をとったら、きっと、驚くでしょうね。でもね、それがあなたにとっても、私にとっても、一番いいと思うのよ。あなたも望み通りに女の子に生まれ変わったんだから、人生をやり直す意味でも、全く別人になった方がいいのよ。」 (結花、ちがうんだ、君は誤解してるんだっ・・・。) と、声を上げて言いたかったのですが、顔全体を拘束する包帯が、それを許しませんでした。いえ、それ以上に、結花が言う、顔の整形手術がどのようなものなのか、抑えようもない恐怖心が沸き上がってきました。  私が、新たな自分の顔と対面したのは、それから、一週間後のことでした。
 鏡の前でゆっくりと包帯が外され、私の視線の先に、全く見たこともない別人の顔があったのです。 「こ、これは、一体、ど、どういう、どういうことなんだ・・?」  私は、顔の拘束を外され、思わず、声を上げました。その時、私は、同時に自分の身に起こった二つの大きな変化を知ることになったのです。

  ある性転者の告白102

 一つは、その声のトーンでした。甲高いほどの細い声が病室に響いたのです。 「あー、あー、な・・・なんだ、こ、これは・・・、ああー」  私は、まるで発声練習のように何回か声を出しましたが、やはり、元の声は戻ってきません。そして、その声の変化以上に驚いたのは目の前の鏡に映し出された、自分の顔です。 いえ、とても、自分の顔とは思えません。驚いた表情でこちらを見つめ返している顔は、中学生と見まがうほどの童顔の美少女のそれでした。それは、まるでテレビから抜け出した美少女アイドルに見まがうほどでした。  私は、重なり合う二重の驚きに言葉も出ず、黙りこんだまま、鏡を凝視していました。 「どう?奈緒美ちゃん、気に入った?私も驚きだわ。こんな可愛い女の子になって・・・。それに、声もすてき。ね、これって、結花さんの提案通り?どう?結花さん。」
 涼子の声に答えて、すっかり表情も落ち着いた結花が答えました。 「ええ、思った通り・・・。これなら、奈緒美ちゃんも、人生をやり直すのにいいじゃない。子供の頃に戻って・・・ね。これからは、私のことも、結花お姉様って呼ぶのよ。いいわね?フフフ・・・。」 「な、なんて、ことをしてくれたんだ・・・。結花・・・、君はだまされてるんだぞっ・・・。」
 私は、精一杯の叫び声をあげましたが、それは、あまりに甲高く、少女が無理に男の口調を作って凄んでいるようにしか聞こえません。 「あらぁ、何言ってるの、今更・・・・。望み通り女の子に、それも、アイドルみたいに可愛い顔になったんだもの。そんな男言葉を使ったら、おかしいわよ。奈緒美ちゃん・・・。」  結花は、それだけ言うと、高い笑いを残して、涼子と共に部屋を出て行ったのです。
 しかも、結花の提案は、それだけでなかったのです。結花は、顔立ちに似合うように、身長も小柄にした方がいいと言い出したそうです。つまり、顔立ちだけでなく、高野直樹としての全ての面影を消し去り、新たに自分の前に現れた「年下の妹分」としての存在にしたかったのです。そのために、自分よりも、また涼子よりも低い身長が望ましいという要望を出したのでした。
 小島はそれは、難しいとためらったそうですが、幸い、結花は、168センチで涼子も164センチと女性にしてはかなり大柄です。ですから、私の172センチの身長を何とか160センチまでならできるだろうと約束したそうです。
 小島は、私の背骨と肋骨の数本を除去し、意図している身長にすることに成功したのです。これにより、全体としてウエスト部分が上に上がり、より脚の長い美少女が誕生したことになります。しかも、その美少女は、幼い、いたいけな容貌とはあまりにもかけ離れたイメージを醸し出す、Hカップのバストと豊満なヒップライン、そしてギュッと引き締まったウエストラインを持つこととなったのです。 

 
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