ある性転者の告白 作:高野奈緒美
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る性転者の告白61

  「ああ、そう・・・、やっぱりね・・・。男たちの視線を浴びて、オチンチン、勃起しちゃったんだぁ・・・、ふーん・・・。」
「は、はい・・・だから・・・だから早く、再手術して・・・。」  私は、懇願するようなまなざしを涼子に向けて言いました。すると、涼子の表情に再び、冷たくサディスティックな笑みが戻ってきたのがわかりました。
「アハハハ・・・引っかかったぁ・・・。そんな話、全部ウソよ・・・。だって、男たちにジロジロ見られて、興奮して、たっちゃったんでしょ?感じちゃったってことじゃない?それって、女が見られて感じてるのと同じじゃない。あなたが、心の中まで女の子になったって証拠よ・・・。でも、よかったじゃない。お望み通り、女の子になれて・・・。アハハハ・・・。」
「そ・・・そんなこと・・・嘘・・・嘘ですっ・・・。」
 私は、必死になって、涼子の言葉を打ち消そうと、頭を何度も何度もふりました。けれども、男たちの視線に反応して、ペニスの変化が現れたことは事実です。それが、本当に心の女性化を意味しているとすれば・・・・。私は、背筋にゾーッとする冷たいものを感じました。 「女だって、感じると固くなっちゃうものなのよ。クリちゃんが・・・ね。ああ、そうだ・・・。これからは、あなたのオチンチンのこと、クリちゃんって呼んであげるね。あんなにちっちゃくなっちゃったんだもの、その方がぴったりでしょ・・・?よかったわね、感じやすいクリちゃんで・・・。アハハハハ・・・。」
 涼子の甲高い笑い声が、車の中に響き渡りました。けれども、私はそんな耳障りな笑い声は、単なる騒音にしか聞こえませんでした。そんなことより、自分自身の身体だけでなく、心までもが、女性化しているという現実に直面させられたことの方が遙かにショックが大きかったのです。 (ど・・・どうすれば・・・いいんだろう・・・?このままだと、もう、男に戻ることは・・・できなくなってしまうんじゃ・・・・。)  私の心には、言葉にできないほどの不安が渦巻いていくのでした。

ある性転者の告白62

 私たちの乗ったベンツが、屋敷に戻ったのは、その日の夕方のことでした。
 私は、玄関に入ると、その場から逃れるように、急ぎ足で部屋に戻りました。そして、極度の緊張と不安による疲れから、そのままベッドに倒れ込むと、そっと目を閉じました。眠ることで、ほんの一時にせよ、過酷な現実から逃避できると思ったからです。けれども、次から次へと心にわき上がってくる、女性化への不安を、抑えることはできません。私は、今日、自分の身に起こったことは夢なんだ、いや、たとえ現実だとしても、涼子に専門的な医学知識などあるはずがないし、心まで女性化しているわけはないんだと自分に何度も言い聞かせました。
でも、そうだとしたら、あの男たちの視線を受けながら、自らのペニスが反応を示した現実をどう説明したらいいのでしょう。私は、結論の出ない堂々巡りの思考を繰り返しながらも、肉体的な疲れのおかげで、ようやく眠りにつくことができました。
 それから、一体どのくらいの時間が経ったでしょうか。私は、涼子の声で一時の安らぎから、厳しい現実の世界へと引きずり戻されたのです。ぼうっとする視界の中で、時計に目をやると、八時を少し回っているのがわかりました。私に与えられた安らぎの時は、2時間ほどだったことになります。 「あらあら、メイクも落とさないで眠っちゃダメじゃない・・・。お肌が荒れちゃうわよ・・・。さあ、起きて・・・、リビングでみんな待ってるから・・・。」
 私は、涼子の言葉に促されるまま、ベッドから起きあがると、 「きょ・・今日はもう、このまま・・・休ませていただけませんか・・・?お姉様・・・。」 と、涼子の機嫌を損ねないように言葉を選びながら、懇願するように言いました。 「あら、そんなに疲れちゃったの?でも、大事な話があるのよ。奈緒美ちゃんにとってもいい話よ、きっと・・・。だから、さあ、早く起きて・・・。」
 私の心に、一旦は落ち着いていた不安が、また沸いてきました。これまでも、涼子が優しい口調で語りかけるときには、たいていその裏に残酷な企みがあったからです。けれども、拒否することは絶対に許されません。心の女性化を止めるためにも、一刻も早い再手術が必要なことは、誰よりもわかっていたからです。  私は、同意を示すように、小さく頷くと、放心状態のまま、ベッドから力無く立ち上がり、ドアに向かってフラフラと歩き始めました。ただ、願わくは、今日は、いえ、今日だけは、村井たちの性欲のはけ口になることを許して欲しいという思いを抱きながら。
 けれども、そんなささやかな希望すら、見透かしたかのように、涼子は、残酷な言葉を投げかけてくるのです。 「あら、ダメじゃないの、そのままじゃ・・・。お化粧、ちゃんと直してからじゃないと・・・。いい?奈緒美ちゃんのお化粧は、自分のためにしてるんじゃなくて、男の人を喜ばせるためのものだってこと忘れちゃ、ダメよ・・・。アイメイクだって、男の人にセクシーで誘うような目元を作るためだし、それにルージュだって・・・フフフ・・・、男の人が、自分のオチンチン、しゃぶらせたいって思わせるためにしてるみたいなものだってこと・・・。さあ、わかったら、早く、お化粧直して・・・。」
 私は、こみ上げてくる屈辱感に耐えながら、ドレッサーに向かうと、涼子に指示されるまま、メイクを直しました。 (そうなんだ・・・、この目も頬も唇も、この屋敷では、何一つ自分のものはないんだ。村井たちを喜ばせるためのもの・・・、いや、自分という存在全てが、彼らの性欲を刺激し、そしてそれを受け止める道具に過ぎないんだ・・・。)という一種の諦観にも似た思いが、心の中に芽生えていくのがわかりました。

ある性転者の告白63

 メイクを直し終えた私は、涼子に促されるまま、村井たちの待つリビングに向かいました。
 私は、直後に繰り広げられるであろう、屈辱的な行為、つまり、村井たちの性欲のはけ口として、単なる道具、いえ性具として扱われる自分の姿が頭に浮かび、暗く沈んだ気持ちになるのでした。
 リビングのドアが涼子の手によって開けられ、私は震える脚で前に進み、視線を上げました。意外にも、そこには村井一人だけが、ソファに腰掛けていて、本城と田中の姿はどこにも見あたりませんでした。
(も、もしかしたら、本当に話だけなのかも・・・。)  私は、少しホッとし、自分の想像が杞憂であることを期待しました。 「さてと・・・」  リビングに入ってきた私と涼子を見て、ソファに深く腰を掛けながら、タバコを吸っていた村井が小さな声で言いました。私は、その声に、思わず身を固くし、じっとうつむきながら、次の言葉を待ちました。
 その言葉は、あまりにも意外で、一瞬、自分の耳を疑う程でした。 「なあ・・・お前もこの2ヶ月間、よくがんばってきたな。それでな、涼子とも相談したんだが・・・、そろそろ解放してやろうかってな。な?涼子。」 「そうなのよ、まあ、ちょっと、納得いかないけど、私だって鬼じゃないからね。夫のこれ以上屈辱的な様子を見るのも忍びなくなってきたし・・・」
 私は、目を丸くしながら、二人の顔を交互に見つめました。同時に、自分の聞き違いだと思い、黙って、次の言葉を待ちました。 「なんだ・・・?うれしくないのか?」  村井は、私の驚きの表情をじっと見つめながら言いました。
 それは、聞き間違いではありませんでした。確かに村井の口からは「解放」という言葉が出たのです。しかも、涼子もそれに同意しているのです。もちろん、うれしくないはずはありません。しかし、その時の私は彼らの言葉を素直に受け止めることができなくなっていたのです。なぜなら、彼らの言葉巧みな罠によって、これまで幾度となく、騙されてきたからです。
「そ、それは・・・・、う、うれしいですけど・・・でも、何か・・・」
 下心があるんではないか。と言おうとしましたが、もし、本当なら彼らの機嫌を害することになってしまうと思い、喉の奥に押し込みました。 「なんだ、うれしくないようだな・・・。じゃ、いいぜ。約束通り、あと一月だ・・。」 「い、いえ、そういうわけじゃ・・・ないんです・・・。ホ、ホントに、ホントに・・・解放してくれるんですね?」  村井は、ただ黙って、頷くと、涼子の方に目配せをしました。
「本当よ。でもね、よく聞いて。それには、条件があるわ。」 「じょ、条件・・・?」  私は、やはり、と思いました。彼らが私を無条件に解放することなど考えられなかったからです。  涼子は、口元に笑みをたたえながら、頷くと、 「これから、10日間、あなたにテストを受けてもらいたいのよ。それに合格すれば、手術を受けさせて、すぐに解放してあげる。どう?受けてみる?」  私の心には、言いしれぬ不安が沸き上がってきましたが、一日でも早く手術を受け、解放され、結花と再会したいという願いが抑えきれなくなり、彼らの真意を探る心の余裕がなくなっていました。 

ある性転者の告白64

  「わかりました。テ、テストを・・・テストを受けます・・・。受けさせてください。」
 涼子はフッと納得したような笑みを浮かべると、さらに言葉を続けました。 「そう?受けるのね。そりゃ、そうよね、一日でも早く解放されたいものね・・・。でも、いい?テストは厳しいわよ。」 「は・・・はい、でも、テストって、ど・・・どんな・・・・?」 「フフフ・・・、それはね・・・今は内緒・・・。
でも、それじゃ、不安でしょうから、ちょっとだけヒント・・・ね。あのね、あなたに受けてもらうのは、言ってみれば、『女性化確認テスト』かな・・・?2ヶ月前にあなたがここに来てから、私は、あなたへの復讐心を満たすために、あなたを女の子にして、屈辱的な経験をさせてやろうって思ったの。それは、わかるわよね?だから、そのために、いろいろな特訓をしたり、女性ホルモンを使ったり、騙して手術まで受けさせたってわけ。あなたの身体が日に日に女性化するのを見たり、男から犯されるのを見たりすると、ホントに痛快だったわ。私の心の中にそんなサディストの血が流れていたのかって改めて気づかせてもらった。でも、今日、その女性化があなたの身体だけじゃなくて、心の中にまで起こっているのがわかった訳じゃない?そうしたら、急に復讐心が薄れてきて、もうこのくらいにしておこうかなって思ったの。村井ちゃんに言ったら、お前がいいならそうすればいいって言ってくれたわ。でもね、いざ、そうしようと思ったら、なんか急に惜しい気がしてきたの。きっと、まだ、あなたへの復讐心が完全に消えたわけじゃなかったのね。で、あなたの心の中に女の意識が残っている内に、女としての恥ずかしさを、少しだけ味わってもらおうと思ったの。もちろん、これが最後・・・、これで私の気持ちも踏ん切れるわ・・・。」
 涼子は、ほとんど言いよどむことなく、自分の思いを正直に告白するように言ったのです。そして、それを語る表情は、まさに一点の、嘘偽りも感じさせないものでした。
 私は、涼子の「女としての恥ずかしさを味あわせる」という言葉の中身に不安を抱きながらも、真剣な表情で、「復讐心が薄れてきた」と語る、その言葉を信じ、涼子の申し出に同意したのです。もちろん、その奥には一刻も早い再手術と解放のチャンスを逃したくないという思いがあったのは当然のことですが。  しかし、それは、巧妙に仕組まれた企みへと、私を導いていくための演技に過ぎなかったのです。涼子の胸の内に燃えさかる復讐心は、決して薄らいでいたわけではなく、むしろそのサディスティックな嗜好とも結びついて、いっそう大きなものになっていたのです。
 その後の10日間で私が受けることになる屈辱的な体験は、決して「少しだけ」などという生やさしいものではなく、今、思い出しても口に出すことが憚られるほどのものだったのです。しかも、それだけではありません。この時、本城と田中がその場にいなかったことには、大きな理由がありました。それは、私が自らの意志で女になることを望み、手術まで受けたのだという作り話が偽りであるとバレてしまうからではありません。いえ、それも少しはあったのかもしれませんが、彼らはその時、村井から受けた、もっと大きな指示を実行するために、なんと私の恋人である結花のもとを訪れていたのです。
 いずれにせよ、そんな彼らの邪悪な企みをみじんにも感じ取ることのできない私は、村井の差し出す、10日間のテストに合格すれば、すぐに手術を受けさせ、解放するという内容の手書きの念書にサインをしてしまったのです。  こうして、涼子の言う最後の試練としての10日間が始まったのです。

ある性転者の告白65

 それから3日後の朝、私がその日指示されたオフホワイトのキャミソールとデニム地のタイトミニという比較的な軽装でリビングに入ると、彼らは待ちかねたように迎え、奥の椅子に腰掛けるように促しました。座る瞬間、タイトミニの裾がたくしあがり、私は思わず、前を両手で隠しました。本城と田中の若い情欲をぎらつかせた視線が私の太股あたりに注がれているのを感じたからです。それは、自分でも不思議なくらい自然なしぐさでした。
 実は3日前、テストを受ける事に同意した後、私は、涼子から一本のテープを渡されました。涼子の説明によれば、そのテープは心を落ち着かせるための、いわゆるリラクゼーション効果のあるもので、部屋にいる時は、ずっと流しておくようにとのことでした。私は、心の中の不安を少しでも抑えることができるのならと、その指示に従ったのです。
 テープから流れ出す、その音は、音楽とも単なる合成音の重なりとも感じられる不思議なもので、時折、音の合間に意味のわからない、人間の囁きにも似たかすかな声が入っていました。
 最初、それを耳にした瞬間は、なにやら違和感を感じ、とてもリラクゼーション効果があるとは思えませんでした。けれども、継続的に聞き続けていると、気のせいか、心の中に落ち着きというか、安堵感のようなものを感じるようになったのです。そして、そのかすかな心の変化は、再生が10回目を超えた頃から、はっきりと意識できるほどになっていました。ドキドキするような不安と緊張がすっかり消えていて、優しく穏やかな気持ちだけが広がっていくのです。それは、まさに甘美とも言えるほどの快感を私に与えてくれました。もちろん、そんな気持ちは、この2ヶ月間で一度も味わったことがありません。私は無意識の内に、その音の重なりを自ら求め、スイッチを切ることができなくなっていました。そして、エンドレスにテープが流れる中、まるで別の世界に誘われるかのような快感の中で、久しく味わっていなかった、深く心地いい眠りに落ちたのです。
 翌朝、かすかな小鳥のさえずりと、小さな窓から差し込む朝の光で、目を覚ました私は、 久しぶりに熟睡したことを実感しました。精神的にも肉体的にも疲れが全く残っていないのです。ベッドサイドのテープデッキからは、相変らず、音の重なりが流れ続けています。
 私は、その音に包まれながら、ベッドから起きあがると、そのままシャワールームに入り、着ていたパジャマと下着を脱ぎました。目の前の鏡が私の顔と上半身を映し出しています。と、その時、自分の表情がいつもと違っていることに気づきました。いつもの暗く沈んだ表情は消え、無意識のうちに微笑みを浮かべているのです。もちろん、そんなことは初めてのことです。それまで、鏡に映し出される自分の女性化した姿を見ることは、決して慣れることなどできない辛い瞬間でしかありませんでした。だから、鏡に映る自分の姿に微笑みなど浮かべたことなどなかったのです。
 私は、意識して、微笑みを消そうとしました。けれども、その意識を少し別の方向に向けると、なぜか心の中から陽気な気持ちが沸いてきて、自然と微笑みが戻ってくるのでした。しかもその快活とも言えるような陽気さは、シャワールームを出ても消えることはなく、無意識の内に自分から積極的に着替えを済ますと、いつしか鼻歌交じりに、メイクを始めているのです。そして、全ての支度を終えて、姿見に向かい、最後のチャックをする時になると、微笑みが大きな笑顔に変わっていて、 「うん、今日はきれいにできた・・・。可愛いわよ・・奈緒美・・・フフフ・・・。」 などと、無意識の内に話しかけている自分に気づき、ドキっとしました。以前、誰かから聞いた話を思い出したからです。それは、女の子というものは、朝起きて、服を着替え、メイクを済ませて、最後にその姿を鏡でチェックする時に、自分の満足する仕上がりになっていると、自然と笑みがこぼれてきて、言いようもない幸福感を感じるナルシストな生き物だという話でした。
私は、その時、抱いている感覚が、まさにその女性の感覚と同じだということに気づいたのです。  

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