ある性転者の告白 作:高野奈緒美
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ある性転者の告白46

 ようやく支度をすべて終えた私は、涼子と共に部屋を出ました。 「いいわね、これから、改めて、生まれ変わった奈緒美ちゃんをみんなに紹介するんだから、言われた通りにしなくちゃだめよ。そうしないと、奈緒美ちゃんのタマタマ、処分してもらうからね。そうしたら、男には二度と戻れないんだから、わかってるわね?」
 リビングに向かう長い廊下を歩いている時、涼子は強い口調で言ったのです。  支度が終わって、姿見に映る私をみながら、涼子は、本城と田中には、私が長期間にわたる女性化指導のせいで、心の中に女性願望が目覚め、自らの意志で豊胸手術や去勢手術を受けたと言ってあるから、その通りのお芝居をするようにと言われたのです。
 もちろん、そんなことは全くの嘘ですが、涼子のこの言いつけに逆らうことはできません。何しろ、男に戻ることができるかどうかの分かれ目なのですから。私は、彼女の言うことに、黙って頷きました。
「こ・・・こりゃ、すげぇや・・・ホントにいい女だぁ・・。」  リビングに入った私を一目見るなり、村井が感嘆の声を上げました。 「ホ、ホントに・・・すげぇ・・・。」 「ああ、これが、男だなんてなぁ・・・驚きだぜ、全く・・・。」
 村井に続いて、田中と本城も口々に驚きの声を上げました。
「じゃ、改めて紹介するわね。生まれ変わった奈緒美ちゃんでーす。どう?色っぽいでしょ?女の私が見ても、そう思うんだから・・・。男から見たら、たまんないって感じでしょ?フフフ・・・。さあ、奈緒美ちゃん、自己紹介なさい。さあ・・・。」  涼子はそう言うと、私の背中を軽く押し、それから、村井たちの座るソファの端に腰を降ろしました。
 逃げ出したくなるほどの羞恥心の中で、しばらく黙ってうつむいていた私に、すべてを知っている村井と涼子がにらみつけるような視線を送ってきます。
「さあ、どうしたの?早くしなさい・・。」  涼子は、口元は笑っていますが、その目はキッとしていて、有無を言わせない強制力が感じられます。  私は、その目の奥に、(言うことを聞かなければ、男には戻してあげないわよ。)という無言の圧力を感じ取り、とうとう重い口を開いたのです。 「み・・・充様・・聡様・・・お久しぶりです。今日は・・・生まれ変わった・・な・・奈緒美をご覧になってくださいね・・・。奈緒美ね・・・ずっと・・女・・・女の子になるためのご指導をしてもらってたら、ホントに・・・女の子に・・・なりたくなっちゃったの・・・だから、お兄様とお姉様に無理に・・・お願いして・・・・手術を・・・して・・・もらったの・・・。胸と・・・あそこの・・・。それに・・・これからも・・・もっともっとホントの女の子に近づけるように・・・体の中に・・・女性ホルモンまで・・・入れてもらったの。だから・・・もう、この体には・・・・胸のパットもお尻のパットも入っていません。全部・・・全部・・・本物です・・・。」 「おい、ホントかよ?そのデカパイも本物なのかよ?」  本城が信じられないというような口ぶりで大きな声で言いました。
 私は、恥ずかしさで顔を赤らめ、ただ黙って頷くだけでした。 「ほら、みんな、信じられないって言ってるんだから、見せてあげなさいよ。」 私は、涼子の言葉に従って、広くあいたワンピースの胸元に手を当てると、さらに大きく広げて見せたのです。Dカップの豊満な双乳が、まるでボロンっと音を立てるようにこぼれ出ました。 (は、恥ずかしい・・・こ・・こんなこと・・・。)
「うおぉ、本物・・・本物だぜ・・・、なあ、ちょっとさわらせてみろよ。」  本城は、ソファから立ち上がると、私に近づき、いきなり荒々しい手であらわになった胸を揉みしだくように触ったのです。

ある性転者の告白47

  「おお、柔らけぇ・・・。形もきれいだしよぉ・・・それに、ほれ、乳首だって・・・」  本城の指先が、ツンとした乳首に触れました。 「アン・・・イ・・イヤ・・・」  私の全身にかすかな電流が走り、口元から思わず、小さな声が漏れてしまいました。
「おい、なんだ、感じるのかよ?さすがに本物は違うんだなぁ・・・。」  本城の指の動きが早くなり、それにつれて、かすかだった電流が大きくなって、全身を駆け抜けていきます。
「アアン・・・だ・・・だめ・・・や・・・やめて・・お願い・・・。」  私は、思わず、本城の手を避けようと、体を引きましたが、いつの間にか、私の背後にいた田中によって、その動きが止められたのです。しかも、片方を本城の手によって弄ばれていた私の豊かな胸のもう一方に、その田中の手が伸びてきたのです。
(だめ・・・絶対に感じては・・・だめ・・。我慢・・・我慢しなくちゃ・・・ああ、で・・・でも・・・アア・・。)  私は、二人の手の動きを必死になって理性で抑えようと努めました。しかし、本能からわき上がる性感の高まりを抑えることはできません。 「アアン・・・か・・感じるぅ・・・だ・・・だめ・・・これ以上されると・・・ダメ・・・アアンン・・・」
 私の発する声が、切なげなあえぎ声に変わっていきました。もはや自分の意志ではどうにもならなくなってきていたのです。 と、その時です。涼子がソファから立ち上がり、本城と田中に言ったのです。 「わかったでしょ?二人とも・・・。今日は、それくらいにしてあげなさいよ。退院して間もないんだから・・・。それにまだご挨拶も終わってないし・・ね。」  本城と田中は私の胸から名残惜しそうに手を離すと、再び、ソファにどっかりと腰を下ろしました。 「さあ、続けなさい。ご挨拶・・・。」
 私は、まだ残る性感の高まりと戦いながらも、ゆっくりと口を開きました。 「お・・おわかりいただけましたか?奈緒美のこのオッパイが・・・本物だってこと・・・。それに、お尻だって、こんなに大きくしてもらったのぉ・・・。」
 私は、そう言うと、くるっと後ろを振り向き、少し前屈みになって、お尻を突き出して見せたのです。 「おお、ホントにいいケツしてるなぁ・・。たまんねぇなぁ・・」  田中は、目を大きく見開きながら言いました。
「ちなみに、上から、85のDカップ、60、86っていうのが今のサイズよ。理想的でしょ・・・?ね?」  涼子が、退院前に病院で計った私のスリーサイズを皆に告げました。
私はなぜか、そう紹介されることに激しい羞恥心を感じました。自分のスリーサイズを伝えるなどという経験が今までに一度もなかったからです。そのような紹介を受けることは、今の自分が他人には女性としてしか認識されていない証のような気がしたのです。 「奈緒美、これからも、どんどん本物の女の子になるように努力しますから・・・皆さんも、今まで以上に・・・奈緒美のこと・・・可愛がってくださいね・・・。」  私は、全身から火のでるような羞恥心におそわれながらも、一通りの挨拶を終えたのです。視線の先には、満足そうに微笑む涼子と村井の顔が見えました。

ある性転者の告白48

 その後、無言のままうつむいている私への『品評会』が一段落すると、それまで、ニヤついた顔でみんなの話の聞き役に徹していた村井がおもむろに口を開きました。 「それにしても、こんないい女になるとはなぁ。俺、本気でこいつを俺の女にしちまおうおうかなぁ・・・。アハハハ・・・」 「そ、そりゃないよ。兄貴・・・。俺だった、こいつ、彼女にしたいっすよ。なあ、聡?」 「そうっすよ。俺も、こんなに可愛いなら、男だってかまわないっすよ。それに、こいつ、自分から女になりたがってるんでしょ?なら、俺、全然、オーケーっすよ。へへヘ・・・」
 村井の冗談とも本気ともとれる言葉に、本城と田中もすぐに答えるように言いました。
「何を馬鹿なこと言ってるのよ。この人、仮にも私の夫よ。男なのよ。勘違いしないでよ。ホントに・・・。」
 涼子が笑いながら、村井に言いました。 「いやぁ、だってよ。あのオッパイといい、ケツといい、ふるいつきたくなるほどいい女だぜ。しかも、あんな格好してると尚更な・・・。ホントに、どうせなら、お前じゃなくて、こいつにしておけばよかったぜ・・・アハハハハ・・・」
 村井の言葉に、それまで笑顔を浮かべていた涼子の表情が、一瞬にして曇り、やがて敵意に満ちた視線を私に向け始めたのです。それは、以外にも、女の嫉妬心が鈍い光になって届いてくるようでした。
 涼子の立場になれば、夫への復讐心から、屈辱を与えるために私を女性化し、このような姿に変えたのです。しかし、現実に手術を受け、魅力的なプロポーションを持った一人の女として彼らの前に立った時、自分という女を無視するかのように、関心が私に向けられることは、予期していなかったはずです。しかも、それが、夫に裏切られ、唯一の心の支えになっている村井の口から発せらることは相当にショックだったことでしょう。確かに、涼子は、夫である私の口から言うのもおかしいですが、女性にしては背も高く、すらっとしていて、顔立ちも決して、悪くはありません。いえ、むしろ美人の部類に入るでしょう。ただ、胸の小さいことは気にしていたようですが。
   「いや、冗談だ・・・冗談に決まってるだろう?本気にすんなよ・・・。」  涼子の顔色が変わったことを察知して、村井はいいわけがましく言いました。  しかし、涼子の私への視線は変わりませんでした。私は、その目の冷たさに気づき、背筋が寒くなる思いでした。 「それにしても、自分から女の子に生まれ変わりたいなんて言い出すとは思わなかったなぁ・・。」
 涼子は、ソファから、静かに立ち上がると、私に近づきながら、口を開いたのです。その口元には冷たい笑みが、そして、目にはあのしばらく見せていなかった復讐心に新たな嫉妬心が加わって、冷酷な鈍い光が宿っています。
「ねえ、あなた、私から女の子になりきるための指導を受けて、女の子願望が芽生えたって言ったわよね・・・?ねぇ、それってホントなの?なんか信じられないなぁ・・。だって、そうでしょ?ずっと、嫌がってたじゃない。ねぇ、どうなの?」  私は、どう答えていいかわかりません。いえ、本心を素直に口にすることが許されるなら、はっきりと、 「手術はだまされて受けたものだ。自分から進んで受けたなんて、そんな話は全部でたらめなんだ。今すぐにでも男に戻りたい。そして、この場から逃れ、結花と暮らしたいんだ。」 と言いたいのです。
しかし、そう答えた時に彼ら、特に村井と涼子がどのような反応を示すのかを想像すると、素直な思いを口にすることはできません。

ある性転者の告白49 高野奈緒美

  「ホントはさぁ・・・、ずっと前から、女の子願望があったんじゃないの?こうなることを期待してたんじゃない?それで、私たちが、あなたを女の子にしようとしているのを知って、うれしかったんでしょ・・・?違う・・?そうじゃなかったら、自分から手術してなんて頼むわけないもの。ああ、そうか、だから、あんな情けないこと・・・、他の男のチンポしゃぶったり、お尻を犯されても喜んでたわけかぁ・・・。それで、もっと愛されたくて、身体まで本当の女の子になりたくなっちゃったんだぁ・・・そうでしょ?」
 涼子の冷酷な台詞は、どんどんエスカレートしていきます。おそらく、彼女の持つサディスティックな一面まで刺激されたのでしょう。 「そ、そんな・・・・喜んでたなんて・・・うそ・・・無理やり・・・」  私は、思わず、声を上げ、涼子を睨みつけました。とその瞬間、涼子の目に今までに見たこともない鋭い光が走ったのです。私は、質問の意図がどこにあるのか、その視線からはっきりと、わかりました。涼子は、彼らの前で、私に同意させることでよりいっそうの屈辱感を味あわせたかったのです。そうすることで、自分のやり場のない復讐心と新たに宿った嫉妬心を解消しようという思いが沸いていたのでしょう。もしそうであるなら、私には迷うことは許されません。
涼子の満足のいく受け答えをするしかないのです。万が一、彼女の気分を害したなら、男に戻れる道が完全に閉ざされるかもしれないからです。 「ほ・・・ホントは、そ・・・そうなんです。ずっと前から・・・女の子に・・・なりたかったんです・・・だから・・・ここで、皆さんにその願いをかなえてもらって・・・すごくうれしかったんです。それに・・・皆さんに・・か・・可愛がってもらっている内に、もっと、男の人に愛されたいって思って・・・お願いしたんです・・・手術を・・・。」
 私は、俯いたまま、静かに答えました。涼子の目から、強圧的な光は消え、冷酷な笑みだけが残っていました。それは、私の答えが、満足のいくものだという証でした。 「ふーん、じゃ、願いが叶ったってわけね・・・。よかったじゃない、ホントに。で、どんな気分、お望み通りのナイスバディになって、男の注目を浴びるのって・・・?え?どんな気分なのよ?」 「ご・・・ごめんなさい・・・。」
 私は、思わず、謝罪の言葉を口にしてしまったのです。それは、涼子の言葉に嫉妬心がはっきりと表れていたからです。私は村井の関心をひきつけた事になぜか、罪の意識を感じいたのです。しかし、その言葉は、涼子の女としてのプライドを激しく傷つけてしまったようで、いっそう屈辱的な言葉のやり取りへと導く結果になってしまいました。
「ええ?何で謝るのよ・・・。ああ、そうか、私をずっと騙してたから?もちろん、オカマちゃんだって知ってたら、結婚はしなかったけどね・・。でも、まあ、そんなことは今更、どうでもいいわ・・・。それよりさ、結花って女、あなたがそんなオカマだってこと知らないわけでしょ?どうすんのよ。結花って、もしかしてレズ・・・?」 「ち、違います・・・普通の・・・」
 私は、激しく頭を振り、涼子の言葉を打ち消しました。

ある性転者の告白50

  「ふーん、じゃ、どうするわけ?男として愛してあげられるの?オカマのあなたに・・・? ああ、それとも、結花って、オナベ・・・?あなたが奥さんになって、結花が旦那さんになるとか・・・?」
 私は、どう答えていいかわかりませんでしたが、自分の愛する結花を嘲笑するような言葉にいたたまれなくなり、思わず、声を上げて言ったのです。それは、リビング全体に響き渡るような声でした。
  「ゆ、結花は、普通の女性だっ・・・。ぼ・・・僕は結花を男として愛し、普通の結婚を・・・するんだっ・・・もう、これ以上、結花をバカにすると、ゆ・・・許さないぞっ・・・。」  その瞬間、リビング全体に張りつめたような緊張感が走り、数秒間の沈黙が流れました。おそらく、その場にいた誰もが、私の口からそのような言葉が発せられることは予期していなかったのでしょう。
彼らの一様に呆然とした顔つきがそれを物語っていました。けれども、その真実の訴えによって、涼子の気持ちが萎えたわけではありません。いえ、むしろ、よりいっそう彼女の復讐心と嫉妬心に火をつける結果になってしまったのです。 「そんな口聞いて、どうなるかわかってるわねっ?後悔しても知らないわよっ。いいのね・・・本当にっ・・・。」
 涼子の威圧的な言葉が、その場の沈黙を破りました。 「ああ、涼子の言う通りだ。俺たちはお前がどうなろうと知ったこっちゃねぇ。お前が後悔するだけだからな・・・。」
 村井がソファに座ったまま、冷たい視線を私に送りながら、ドスの利いた低い声でいいました。その視線の奥の人を圧倒する力強い光は、自分が私から男に戻るチャンスを永久に奪い去ることのできる、そういう力を持っている存在であることを、私に思い知らせてあまりあるものでした。 「ご・・・ごめんなさい。奈緒美が・・・・奈緒美が悪かったです・・・。口答えして・・・ごめんなさい・・・。」
 私は、卑屈にも、頭を下げ、謝罪の言葉を口にしました。 (何で、僕が・・・何で・・・謝らなくちゃいけないんだっ・・・でも・・・逆らうことはできないんだ。絶対に・・・。)
 私は内心、大声で叫びだしたい思いを必死に抑え、その感情を隠すために、じっと下を向いていました。手足の先が小さく震えているのを感じながら。 「まあ、今回だけは、大目に見てあげるけど、二度とそんな口聞いたら、許さないからね。覚えておきなさいよ。」 「は・・はい。ご・・ごめんなさい。二度と・・・二度と・・・逆らいませんから・・・。」 「フフフ・・・、じゃ、さっきの質問に答えなさいよ。みんなも聞きたがってるわ。そんなデカイ胸して、しかもタマタマまで取っちゃって、今更、男として女を愛するなんて信じられないのよ。だから、きっと、あなたが妻になって、結花が夫になって、オカマちゃんとオナベちゃんの逆転夫婦になるのが望みなんじゃないの?ね、そうなんでしょ?はっきり言いなさいよ・・・。」
 涼子の質問は、明らかにそう答えなければ、許さないという絶対的な強制力がありました。
「ご・・・ごめんなさい。黙ってて・・・。ホントは、涼子お姉様のおっしゃる通りです・・・。奈緒美が女になって、夫になった結花に愛されたいの。それが、奈緒美の夢なんです。だから・・・だから・・・手術して・・・もらったんです・・・。」
「ふーん、でもさ、あなた、さっき、男の人に愛されたいって言ってたじゃない?結花は女じゃない?それでもいいの?ああ、わかった。結花にも手術させて男に性転換してもらいたいんでしょ?ねぇ、そうなんでしょ・・・?」
 まるで誘導尋問です。涼子は、自分の意に添う答えを私から言わせることで、大きな屈辱感を与えようとしているのです。そうは思いながらも、逆らうことのできない私は、その誘導尋問のレールに乗っていくしかないのです。  

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