ある性転者の告白 作:高野奈緒美
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ある性転者の告白41

 私は、トイレのドアを開け、個室に入ると、そのままパジャマのズボンを膝までおろしました。尿意がかなり迫っていたので、立ったまま用を足そうと思ったからです。私はどういう訳か、男の時の癖が出て、女性用のショーツを身につけていたにも関わらす、その脇から自分のペニスを引き出そうと手を入れました。ところが、手に伝わってきた感触は、ペニスと呼ぶにはあまりにも小さく細い、まるで、突起物に触れたような感触だったのです。
しかも、それは、小さすぎて、ショーツの脇から引き出すこともできないのです。私は、そのまま漏らしてしまいそうになり、あわててショーツを下げると、便座に腰掛け、用を足しました。上から見下ろすと、その突起物の先からは、一本の筋となって尿が出ているのが見えます。
つまり、その突起物こそが、私の変わり果ててペニスそのものだったのです。よく見れば、それは、小指の第2関節ほどの長さしかありません。そして、その下にあったはずの二つの睾丸の丸いふくらみは、姿を消し、ただ陰嚢の皮膚がだぶついているだけなのです。しかも、もっとよく確認しようと、目を近づけると、豊かな胸のふくらみが、その視界を遮るのです。 (ああ・・・とうとう・・・こんな身体になってしまった・・・。あああ・・・。)
 私は、その個室の中で嗚咽しました。屈辱と後悔と情けなさといった、言葉にできない多くの感情が一度に絡まり合って、私の心に迫ってくるのでした。 (で・・・でも、一生このまま元に戻れない訳じゃないんだ。残り、たった一月・・・たった一月辛抱すれば、元に戻れるんだから・・・。) 私は彼らの言葉を信じ、そう自分に呟くと、かすかな勇気と希望沸いてくるのを感じたのです。 ある性転者の告白42 高野奈緒美 - 2004/04/23 14:46 - 10日ぶりの屋敷には、なぜか、前と違った印象を受けました。
いえ、どこと言って変わったわけではありません。変わったのは、屋敷の方ではなく、庭からそこを見ている私の方が変わっただけなのです。  私は、歩を進めるたびにプルプルとかすかな振動を見せる、大きな胸の感触に、相変わらす違和感を覚えながら、屋敷の玄関へと足を踏み入れました。  その日は、まっすぐに部屋に入ると、そのまま、一歩も外には出ませんでした。夜になり、私はあの希望の日記に一遍に10個もの×をつけ、残りの日数を数えました。
「もう少し・・・、もう少しだ・・・。あと35日・・・。身体を元に戻してもらうためにも、そして晴れて結花と再会するためにも、耐えて耐えて耐え抜かなくては・・・。そのためには、村井たちの機嫌を損ねないようにしなくては・・・。がんばれ・・・がんばるんだ。」  私は、そんな言葉を何度も独り言のように呟くと、自分を勇気づけたのでした。
 翌朝、目覚めた私は、いつものようにドアの下に置かれたメモを取りあげると、支度を始めました。  その日の指示は、ショッキングピンクのソフトボディコンのワンピースで、その昔、ディスコなどでいわゆるイケイケギャルと呼ばれる女の子たちが身につけていたような、派手なデザインの服でした。  私は、ドレッサーから、指示されたワンピースを取り出すと、引き出しから、同系色のフロントホックのブラジャーとハイレグのパンティを取り出しました。
 私は、その中から、パンティを手に取ると、男の筋肉を失い、ほっそりとした脚に通していきました。むだ毛の全く生えていない脚を、シルクのスルっとした滑るような感触が、少しずつ上に移動していきます。そして、最後にグッとウエストに向かって引き上げた時、股間にほとんど異物感がなく、しっかりとしたフィット感だけが、伝わってきて、私は改めて、睾丸を失い、矮小化したペニスしか持っていない自分の姿を認識したのです。もちろん、病院でも下着は女性もののショーツでしたが、それらは決して派手なものではなく、実用的で地味なデザインばかりでした。ですから、伸縮性のある小さな布切れのようなパンティを身につけてみると、よけいにその感触が伝わってくるのです。いえ、感触だけではありません。実際に、その姿を鏡に映し出してみると、股間にはほとんど盛り上がりがなく、その代わりに、ふくよかで丸い大きめの線を描くヒップラインが、際だっているのです。
 私は、次に同系色のブラジャーを手にとると、それまでの癖で、シリコンパットに手を伸ばしました。けれども、パットはどこにも見つかりません。私は、一瞬あわてましたが、次の瞬間、鏡に映る自分の姿を目にして気づきました。 (ああ、そうだ・・・もう、パットなんていらないんだ・・・。)  私の胸には、大きくふくよかなDカップの双乳が、呼吸にあわせて上下に波打っているのです。不要になったシリコンパットは、おそらく涼子が処分したのでしょう。  私は、ブラジャーの肩ひもに腕を通すと、バストの肉が全てカップの中に収まるように、少しずつ位置を調節しながら、フロントホックを留めました。やはり、思っていた通り、シリコンパットは必要ありません。新たな胸の膨らみは、カップサイズと寸分の狂いもなく、フィットしています。入院中はずっとノーブラで過ごしていたので、こうしてブラジャーの中に収めてみると、その二つの大きな肉の固まりが、すぐに外すことのできない自分自身の身体の一部であることを実感するのです。  私は、外側からの感触を確かめるように、カップ全体を手のひらでさすってみました。そして、その指先が、ツンと突き出した女性特有の乳首の先端に触れた瞬間、全身に、生まれた初めて経験する、ゾクッとするような感覚を覚えたのです。 (な・・・何?こ・・・この感覚・・・。これが・・もしかしたら・・・女の感覚?) 私は、慌てて手を引っ込めましたが、もう一度、その未知の感覚を確かめようと、今度は強めに指先をあててみました。 「アン・・・」 ゾクッとする感覚がもう一度、全身を駆け抜け、思わず、口元からかすかな声がこぼれました。私は、なぜか、もうこれ以上、その感覚を覚えてはいけないと思い、指を離しました。それは、やはり、男としての感覚を失いたくないという無意識のうちの本能がそうさせたのかもしれません。

ある性転者の告白43

  姿見に映し出された私のランジェリー姿は、自分で言うのもおかしいのですが、完璧なまでの美しい女性的な曲線を描いています。豊かなバストとふくよかなヒップラインを強調するようにきゅっとくびれたウエストラインは、もうシリコンパットもコルセットも必要なくなったことを実感させてくれます。しかも、女性ホルモンの影響で透き通るように白く木理の細かくなった肌と、女性的な顔立ちとが、全体にぴったりマッチしていて、全く違和感がありません。いいえ、もちろん、それを喜んでいるわけではありません。むしろ、身体の中を流れる女性ホルモンによって、これからもますます女性化が進むのだと思うと、本当に元の身体に戻ることなどできるのだろうかという、言いようもない不安な思いだけが強くなってくるのです。
しかし、今は、彼らの言葉を信じるより他にすべはないのです。私は、全ての邪念を振り払うかのように、一度大きくかぶりを振ると、ショッキングピンクのワンピースを手に取り、目の前にかざしてみました。素材も大きさも、ちょっと大きめのタオルのようで、広げてみなければ、とてもワンピースとは思えません。けれども、以前にも同様の服を着せられたことのある私は、それが優れた伸縮性を持ち、172センチという女性にしてはかなり長身の私の身体をも包み込んでくれることを知っていましたから、たいした驚きはありませんでした。
 私は、その柔らかなタオルのような布きれを丸めると、脚から上に引き上げていきました。ファスナーの付いていないボディコンのワンピースは水着のように、そういう着方をするものだということを涼子から教えられていたからです。伸縮性のある素材が身体にピタッと張り付いてくる感触が伝わってきました。ところが、ヒップを通そうとすると、かなり窮屈でなかなか上に上がってくれないのです。以前にそのような服を着せられた時には、そんなことはありませんでした。それもヒップパットを付けていたにも関わらずです。 私は、改めて自分のヒップのサイズが大きく変わってしまったことを実感させられたのです。
 私は、腕に少し力を込め、胸の高さまで一気に引き上げると、そのまま、長袖に腕を通しました。ぎゅうっと締め付けられるような感触が全身から伝わってきます。私は、視線を上げ、目の前の姿見に移しました。ショッキングピンクの布きれが、私のDカップのブラジャーの辺りに全部集まっていて、おへそから下の部分は完全に露出されていて、セクシーなハイレグのパンティが露わになったままです。私は、力を込めて引き上げたせいだと思い、裾を持つと、今度はそれを下に引き下げたのです。と、その瞬間、私は、目の前に映る自分の姿に愕然とし、白かった頬に一気に赤みが差していくのがわかりました。 「な、何・・・?こ・・・こんなに・・・イヤらしい服・・・。」
 胸元が大きく開いていて、フルカップのブラジャーの上、3分の1程が露出しているのです。そして、ウエスト部分の大半は、かなり薄い透過性のシースルーになっていて、一見すると、素肌が露わになっているようにしか見えないのです。しかも、スカート部分の丈は、股下数センチほどの超マイクロミニで、女性ホルモンによって作られた、ムッチリとした太股と細くしなやかにのびる二本の長い脚を全て露出しています。  私は、胸元のブラジャーを隠そうと、全体を引き上げてみました。しかし、そうすると、裾はさらに持ち上がり、丸みを帯びたヒップを覆うパンティが顔を覗かせてしまうのです。 それを隠そうとして、引き下げると、ブラジャーの露出が止められません。  私が、姿見の前で呆然と立ちつくしていた時、いきなりドアが開き、涼子が入ってきました。 「いつまで、かかってるのっ・・・?おそいじゃ・・・」  涼子の厳しい表情が、私の姿を見て、みるみる柔らかいものに変わっていきました。 「すごいじゃない・・・ホント、女から見ても、うっとりするくらい素敵なスタイル・・・。それに、その服もセクシーじゃない・・・」  涼子は、そばに近寄り、姿見に映る私の全身をなめ回すような視線で眺めたのです。 「で・・・でも・・・これ・・・小さすぎて・・・。」  私は、鏡に映る涼子の顔に訴えるような目で見つめながら、ワンピースの引き上げと引き下げを繰り返して見せたのです。  「あら、そんなことないわよ。だって、そういう服着るときは、ノーブラに決まってるもの。」
 涼子は、そう言うと、いきなり、ワンピースの中に手を入れたかと思うと、ブラジャーの前ホックとストラップを外し、するっと抜き去ったのです。

ある性転者の告白44

  「ほら、こうすれば、全然気にならないでしょ?ね?」 「で・・・でも・・・これじゃ・・・・は・・・恥ずかしい・・・です。」  確かにブラジャーの露出はなくなりました。しかし、フィット感のある素材が、大きくて丸みのある胸の形をはっきりと示し、広く開いた胸元からは、深い谷間をさらしているのです。しかも、ツンと突き出た乳首が服の上からもその膨らみを示しています。 「やっぱり、本物はいいわよねぇ・・・。ほら、乳首まで・・・、ねぇ、ちょっとさわらせてみて・・・。いいでしょ?女同士なんだから・・・。フフフ・・・」
 涼子は、そう言い、私の胸に両手を伸ばして、全体を包むようにしたかとゆっくりとその感触を確かめるようになで回したのです。さらには、下から全体を持ち上げるように下かと思うと、指先でポンポンと弾ませるように弄ぶのです。 「イ・・・イヤ・・・恥ずかしい・・・です・・・・。」  私は、男の身でありながら、妻の手で乳房を弄ばれるという、あまりに恥辱的な行為に、 思わず、身を引いたのです。  しかし、そんな私の反応が、涼子のサディスティックな心を刺激したのか、手を離すどころか、よりいっそう力を込めて、揉みしだいてくるのです。 「ね?どんな感じ?胸を揉まれるのって・・・?フフフ・・・。」 「は・・・恥ずかしい・・・恥ずかしいです・・・お・・お姉様・・・や・・止めて・・・お願い・・・。」  自分の身体が元の男の姿に戻るまでは、一切の抵抗をしないと心に誓っていた私は、涼子の機嫌を損ねないように気を配りながら言ったのです。
「ホントは、恥ずかしいんじゃなくて、感じちゃうんじゃないの?女の子みたいに・・・。」 「そ、そんなこと・・・そんなことないです。だって、ホントは男・・男なんですから・・・。」  その言葉は、本心でした。いくら本物そっくりに作った胸の膨らみとは言え、そこを刺激されて、女性としての性感を覚えるということなどあるはずがないと思っていたからです。けれども、それは間違いでした。私の身体の中にはずっと高濃度の女性ホルモンが流れ出していて、その効果による内部からの女性化がどんどん進行していることを、私は忘れていたのです。 「あら、そうかしら?そうは、見えないけど・・・じゃ、これはどう?これでも、感じない?」  涼子はそう言うと、服の上からでもツンと突き出ているのがわかる、女性化した乳首を指先で弄び始めたのです。その瞬間、私にあの未知の感覚が全身を駆け抜けたのです。 「アン・・イヤ・・・アアン・・・。」  私は思わず、小さな喘ぎ声を出しました。  涼子の指先は、小さな振動を繰り返しながら、私の乳首を刺激し続けます。その動きに反応するかのように、全身に電流のようなゾクッとする性感の高まりが走ります。
「アア・・・・、ダメ・・・、お・・・お願い・・・ヤメテ・・・。」 「フフフ・・・、やっぱり感じてるんじゃない。ダメよ、ウソ言っちゃ・・・。女の子なんだから、胸が感じて当たり前なのよ。」  涼子はそう言うと、私の胸から手を離し、 「さ、早く支度しなさい。みんな待ってるんだから・・・。」   と言うと、私をドレッサーの前に座らせました。私は、涼子の手が離れたことにホッとする反面、なぜか、そのまま続けてもらいたいと思う自分の心に気づいて、激しい羞恥心の高まりを覚えました。
(いけない・・・こんな、感覚を覚えてはいけない・・・。)  私は、そう心の中で呟くと、まだかすかに身体に残る性感の高まりを振り払うように、小さく首を左右に振ったのです。

ある性転者の告白45

  その後、涼子に見つめられながら、その日の派手な衣装に似合うような濃いめのメイクを施し、肩までのびるストレートロングのヘアウィッグをつけ、最後に光沢のある黒いストッキングに包まれた足先を白いミュールに通したのです。 「うーん、完璧・・・、ホントにセクシーな女の子になったわ。うん。ホントに・・・。」  涼子は、支度を終えた私の全身を眺め回すと、改めて感心した口調で言いました。 「あ、そうそう。素敵な女の子になった奈緒美ちゃんに、お祝いのプレゼントがあるのよ。」  涼子は、バックから小さな小箱を出すと、その中から、金色に輝くリングのようなものを取り出したのです。そして、私の目の前に立つと、ロングヘアを持ち上げ、耳に近づけたのです。
「うん、これなら似合いそうね・・・・。うん。」  涼子は納得したように言うと、リングの先にある細い針のような部分を私の耳たぶに刺したのです。 「イ・・イたっ・・・」  耳たぶから、チクッとする痛みが走り、私は思わず、小さな声を上げました。 「うーん、やっぱり、ピアスの穴を開けてもらって、正解ね・・・。イヤリングよりおしゃれだもの。それに、これ、奈緒美ちゃんにぴったり。よく似合ってるわ。」  姿見に映る私の両耳に大きなゴールドのリングが揺れています。そんな派手なピアスをつけてみると、全体から受ける印象もがらりと変わって見えます。私は、その時、これは、どこかでみた覚えのある感じだと思い、記憶を辿りました。 (あ、あの時の・・・。そうだ、あの時の女の子の姿そっくりだ・・・。)
 私の脳裏に1年ほど前に取引先の部長を接待して訪れた六本木のキャバクラで、私たちの席に着いたキャバクラ嬢の姿が浮かんだのです。店での彼女はとても華やかで、人当たりもよく、印象に残っていたのです。ただ、服装がかなり挑発的で、取引先の部長が私にささやいた言葉も鮮明に記憶に残っていました。 「あの娘さ、口説けば、絶対に寝るよ。だって、あの服だよ。男をその気にさせるキャバクラ嬢そのものじゃない。ね?」
 その時は、下品な男だと大して気にもとめていなかったのですが、こうして、自分がその時のキャバクラ嬢と同じような姿をしてみると、もし、今、このまま外に出て、歩いていると、男たちはきっと、そんな思いで私をみるのかと思うと、急に恥ずかしさがこみ上げてくるのでした。

 

 
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