ある性転者の告白 作:高野奈緒美
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ある性転者の告白21

  「だ・・だめだ・・・こんなの・・・履けるわけない・・・。」  私は、思わず、一旦は止めたファスナーを、もう一度外そうと、羞恥に震える手を伸ばしました。けれども、次の瞬間、彼らによって脅迫される自分の姿が心の中にはっきりと浮かび上がり、
   (でも・・・僕には・・・もう、拒否することはできないんだ・・・・・黙って従うしかないんだっ・・。) と、自分に言い聞かせると、純白のルーズソックスに両脚を通したのでした。   私は、最後に女子高生らしい黒のローファーにかかとを入れると、準備が終わったことを知らせるために、ドアのそばにあるベルのスイッチを押しました。  しばらくして、外鍵が開く音がし、静かにドアが開けられると、そこには本城の姿ありました。 「おお、可愛いじゃねぇか・・・。」 本城は、私を一目見るなり、そう言うと、口元に下卑た笑みを浮かべたのです。  私は、羞恥心のために、その目を直視することはできませんでした。  私は、本城に促されるままに、廊下を進み、村井たちが待ち受けているであろうリビングの前で立ち止まると、自らの気持ちを落ち着かせようと、一つ大きな深呼吸をしました。心臓は、激しく鼓動し、今にも飛びださんばかりだったからです。 「おお、似合うじゃねぇか・・・。セーラー服が・・・。ホント、どこから見ても、可愛い女子高生だぜ・・・・。」 震える足取りで、リビングに入った私を見て、村井が開口一番、大声で言いました。 「ホントねぇ・・・。奈緒美ちゃん、可愛い系も十分いけるのね・・・。フフフ・・・。」 涼子の声が、さらに追い打ちをかけるように耳に届いてきました。
 その後、私は約1時間ほど、村井たちの指示により、様々なポーズをとらされました。通学途中で一人佇むポーズや、窓辺の椅子に腰掛けて読書をするポーズといったソフトなものから始まって、まるでアダルト雑誌のグラビア写真のように、ちょっと前屈みになってチラッと下着を見せながら挑発するような視線を送る女子高生のポーズまで、彼らの指示は留まることを知りません。その間、田中の手に握られたデジカメのシャッター音が間断なく続いていました。 (早く・・・早く・・・終わってくれ・・・。)
 私は、激しい羞恥心の高まりの中で、それだけを念じながら、その苦痛に必死になって耐えたのです。すでにビデオテープまで撮られていた私には、こんな撮影だけなら、なんとか耐えることができるという思いもあったのです。しかし、彼らのサディスティックな嗜好は、そんなもので収まるほど、生やさしいものではありませんでした。  ポーズのアイディアも、出尽くし、『可憐な女子高生』の撮影会が一段落すると、本城が村井に向かって、口を開きました。 「なあ、兄貴ぃ・・・。もういいだろう?例のやつ・・・やろうぜ。なんか、こいつ見てるとムラムラしてきて、俺・・・これ以上我慢できねぇよ。」  本城は、周囲の目も憚らず、下品にもズボンの前に手をやり、右手でさすりながら言ったのです。 「バカ野郎・・・、まだ、早いんだよ・・・。しょうがねぇなぁ、本当に・・・。アハハハ・・・」
 村井の言葉は、本城をたしなめているようではありましたが、その表情からは、何か下心がありそうな雰囲気がありありと浮かんでいました。

ある性転者の告白22

  「村井ちゃん、そりゃ、充ちゃんだって、かわいそうよ。若いんだから・・・。こんな可愛い子が、あんな短いスカート履いて目の前にいるんだもの、我慢できなくなるわよねぇ・・・。」 涼子が村井に向かって言いました。 「ホントにしょうがねえやつだな、お前は・・・。じゃ、やるか、例のやつ・・。涼子、奈緒美に説明してやれよ。」  涼子は、小さく頷くと、その言葉に促されるように、部屋の片隅で呆然と座り込んでいる私に近づき、言ったのです。 「あのね、奈緒美ちゃん・・・、充ちゃんがね、奈緒美ちゃんを見てて、我慢できなくなっちゃったんだって・・・。いいわねぇ、可愛い子はモテモテで・・・。フフフっ・・・。わかるわよね?我慢できないっていう意味が・・・?でね、奈緒美ちゃんに、鎮めてもらいたいらしいんだけど、どう?してあげてくれる?」
 その言葉を耳にした瞬間、私は背筋は、スーッと凍りつくほどの悪寒が走りました。  いくらセーラー服を着て、女子高生を演じているとは言っても、私は、男です。涼子の言葉の意味がわからないわけはありません。 「な、何を・・・、何をバカなことを言ってるんだ・・・。」  私は、思わず、この2週間ばかり使わなくなっていた男言葉で言い返しました。 「あら?そんな言葉、使っていいの?契約違反じゃないの?フフフ・・・。」
 涼子はそう言うと、村井の方に視線を送りました。  村井はその言葉に反応するかのように、先ほどまで浮かべていた笑みを消し、キッときつい顔に戻り、私をにらみつけたのです。  私はハッとし、とっさに言い直しました。 「そ・・・そんな、お・・・お姉様のおっしゃっていることが・・・わ、わかりません。」 「困ったわねぇ。男の『直樹』だったら、私の言ってること・・・すぐ、理解できるはずなのに・・・、女の子の『奈緒美』ちゃんには無理なのかなぁ?」  涼子は私の屈辱感を煽るようにわざとらしい言葉を投げかけてきました。 「だからねぇ、簡単に言っちゃえば、充ちゃんの性欲を奈緒美ちゃんが鎮めてあげるのよ。ああ、もう、じれったい、充ちゃんのオチンチンから、溜まってるザーメンを抜いてあげるの。奈緒美ちゃんが・・・・ね。わかった?どうなの?するの?しないの?」  私は、やはり、そういうことだったんだと思い、全身から力が抜けいきました。しかし、次の瞬間、男の身でありながら、男の性欲を鎮めるという行為が、どれほど屈辱的なことかの意識が脳裏を襲い、思わず、大声で叫びました。 「そ、そんな、こと・・・。で、できませんっ・・・。できるはずが・・・ありません。」  できるはずがないだろうという言葉が、続きそうになるのを、ぐっと抑え、彼らの気持ちを逆撫でしないよう、言葉を選んだのです。自分の激する感情まで抑えなければならない惨めさのために、私の全身には抑えようもない震えが走るのです。 「そうかぁ・・・。そりゃ、そうよね、できるはずがないわよね。いくら可愛い女子高生に化けたと言っても、奈緒美ちゃんは、ホントは私の夫の直樹なんだものね・・・?男のくせに、男の相手なんかできるわけないものね・・・。だ、そうよ・・・、村井ちゃん。無理みたいよ。」

ある性転者の告白23

  涼子は、口元に冷たい笑みを浮かべて、村井に言ったのです。 「そうだなぁ、仕方ないなぁ。あきらめるか・・・、なあ、充?」  村井のその言葉は、本城をたしなめるようなものでしたが、その奥には、はっきりと下心のあることが、わかりました。  しかし、私はそれでも、かすかな望み、つまり「計画を変えよう」という言葉が、村井の口から発せられるのを待ちました。 「じゃ、やめるか。」 村井は一言、そう言うと、おもむろに立ち上がりました。
 私は、ホッと胸をなで下ろしました。自分の必死の願いが通じたのだと思ったのです。 ところが、次に村井の口から出た言葉は、私に冷水を頭から浴びせるかのような強い衝撃を与えるものだったのです。 「それじゃ、終わりだ・・・。契約の話も何もかもな・・・・。但し、二億円は即刻払えよ。それから、例の写真も会社に、それからっと、ビデオを結花って女のところに送るからな。充、準備しろ。さあ、終わりだ終わりだ・・・。」
 村井は本城の方に視線を送ると、そのまま、部屋を出ようと、ドアに向かって歩き出したのです。  村井が「やめる」と言ったのは、これから始まる行為のことではなく、契約のことだったのです。そのことがわかり、私は、とっさに、 「ま、待ってくれ・・・。お願いだ、まってくれぇ・・・。」 と、それまで抑えていた、感情を爆発させるかのように叫んだのです。
 その言葉に、村井は一瞬足を止めると、ヤクザらしい、すごみのある表情で睨みつけてきたのです。  私は、その表情にハッとして、また、言葉を選ぶように言い直したのです。 「お、お待ちください、お兄様・・・。お・・お願いです。そ・・・それだけは、おやめください。」  村井は、きびすを返すと、部屋の中央に戻ってきました。 「じゃ、どうするんだ?俺の言うことも聞けねぇ、契約も終わらせたくねぇって言われてもな・・・。第一、今、お前、野郎の言葉を使ったじゃないか?それだけで、契約は終わりなんだぜ・・・。ホントはな。」  村井の言葉は、いつしかドスのきいたヤクザ口調に戻っていました。
 私の全身の力が一気に抜け、抵抗しようとする気力も失せていきました。 (もう・・・どうすることもできない・・・。俺は、俺は・・・なんてことをしてしまったのだろう・・・。)  私の心には、脱力感とある種の諦観しか沸いてきませんでした。 そして、しばらくの沈黙の後、私は遂に彼らの信じがたい計画に同意してしまったのです。 「わ・・・わかった・・・・わかったよ・・・。従うよ・・・。どんな指示にでも・・・な。それで、文句はないんだう?」  私は、半ば自暴自棄になって、無意識のまま、男言葉を使っていました。 「おおっと、それじゃ、だめだ・・・。やっぱり、契約は、終わりだなぁ。」  私は、村井の表情から、その真意がすぐにわかり、屈辱感に苛まれながら、言い直したのです。 「わ・・・わかりました。指示には・・・指示には、従います・・・・こ、これで・・・いいですか?」 「なんか、イヤイヤじゃねぇか・・・、それじゃあよぉ。」  イヤイヤに決まっているじゃないか。何を言ってるんだと怒鳴りつけてやりたい思いでしたが、私は、それを押し殺し、村井の顔を睨みつけたのです。  「何だ?その反抗的な目は・・・・?いいんだぞ。やらないなら、やらないで・・・。俺の方はかまわねぇからな・・・。」  村井の言葉は、私の弱みを全て握っていることによる有無を言わせない迫力のある言葉でした。

ある性転者の告白24

  「ご・・・ごめんなさい・・・、もう、反抗的な目は・・・しませんから・・、お願いします。許して・・・ください。」  私は、卑屈にも、頭を何度も下げ、自分の本心を悟られないように気をつけながら、言いました。 「そうか・・・わかりゃいいんだ。でも、言っておくけど、これが最後だぜ・・・。もし、今度、そんな目をしたり、男言葉を使ったりしたら、その時は・・・わかってるだろうな?」 「わ、わかりました・・・。二度と・・・二度と、反抗的な目をしたり、男言葉を使ったりは・・・しません・・・。だから・・・だから・・・」  私は、こみ上げてくる屈辱感に涙が溢れてきて、今にもこぼれ落ちそうになりました。 「フフフ・・・、やっと、わかったようね・・・。自分の立場が・・・。いい?あなた、お化粧してるってこと忘れちゃだめよ。そんな可愛い顔して、にらんでみても、迫力も何もないの。わかる・・・?さあ、わかったら、私の言うとおり言い直しなさい。いいわねっ?」
 涼子は、私に近づき、耳元で、これから私が口にしなければならない屈辱的なセリフを囁くのでした。そして、抵抗することを完全に放棄した私は、そのセリフをただ意味もなく、オウム返しのように繰り返したのです。 「ホ・・・ホントに・・・、反抗して・・・ごめんなさい。奈緒美は・・・奈緒美はいけない子でした。これからは・・・絶対に言いつけを・・・守ります。お兄様やお姉様、それに充様や聡様の・・・素直な可愛い・・・・お・・・女・・・女の子になります。その証として・・・これから、充様の・・・お・・・お相手・・・お相手をさせていただきます。いいえ、イヤイヤなんかじゃありません・・・。奈緒美は・・・奈緒美は・・・男の方が・・・す・・・好きなんです。男の方から・・・愛されたいって思ってたの。だから・・・お願い・・・奈緒美を・・・奈緒美を・・・女の子として、可愛がって・・・。ね?充さん・・・。」  私の屈辱的なセリフが終わると、部屋中にはやし立てるような笑い声が響いたのでした。「あらあら、そんなこと言っちゃって・・・。ホントにあなたって情けない人。男のプライドっていうものがないのかしら・・・全く。もしかしたら、こうなることを望んでたんじゃないの?そうでなくちゃ、言えないわよ、そんなセリフ・・・。仮にも私はあなたの妻なのよ。その妻に向かって『お姉様』なんてよく言えるものね。でも、もういいわ。あなたのそんな姿見てたら、夫だなんて思えないもの。これからは、せいぜい、奈緒美ちゃんっていう可愛い妹だと思ってあげるから、あなたもそれに応えて、素直な女の子にならなくちゃだめよ。いいわね?奈緒美ちゃん・・・。」
 私は、そんな涼子の蔑んだ言葉にも、ただうつむきながら、黙って聞いているしかすべはなかったのです。 

ある性転者の告白25

  やがて、ビデオカメラがセットされ、録画のスイッチが押されました。そして、あのプライベートビデオの撮影時に使われた小さなイヤホンが耳に装着され、そこから涼子の指示が次々と飛んできます。まるで安物のアダルトビデオのような、芝居がかったその後のやりとりもせりふもすべてイヤホン越しに涼子から受けた指示通りでした。それからの約2時間の撮影は、私にとって地獄のような時間でしたが、あまりにも信じがたい行為の連続だったこともあって、まるで、夢の中で、うつろなまま時間だけが経過していたようにも思えます。  その時の私の様子は、プライベートビデオのパート2「女子高生 直樹(奈緒美)」編として今も映像に残っています。聞くところによると、一部の闇ルートでニューハーフ女子高生もののビデオとして出回っているそうですが、その当時の私には単に彼らの脅迫のネタが、また一つ増えたという厳然たる事実以外のなにものでもありません。  私自身、今、このビデオを手元に持ってはいますが、決して自分から見るつもりはありません。それは、私にとってはあまりにつらい過去の一部だからです。
 しかし、撮影が終わってしばらくの間は、あの結花へのプライベートビデオとともに、連夜のように、テレビの画面を通じて強制的に見せられたので、今でも、内容の一部始終を記憶しています。  私はこの告白で、すべてをお話するように言われていますので、この内容についてもお話しなければなりません。ごらんになっていらっしゃらない方の方が多いと思いますので、恥を忍んで、その内容をお話いたします。  設定は、ある一人の高校生(私です。)とその家庭教師で大学生の(本城充)の間で繰り広げられる安物のお芝居です。年齢の設定は本城の方はほぼ年齢通りですが、私の方は、実際の年齢よりも、6つも若い設定です。設定はいかにも不自然ですが、そんなことはどうでもいいことです。なぜなら、そのビデオは、彼らにとってその後の脅迫の材料として握っていたいだけだったからです。後に、裏ルートで販売されるようになったのは、あくまで副次的なことでした。  ビデオは、最初に安っぽいタイトルが入り、次に、勉強机に向かう一人の男子高校生役の私が映ります。詰め襟の制服をきちんと身につけ、教科書に視線を落としています。そこへ、家庭教師役の本城が入ってきます。 「どうだ?勉強は進んでいるか?受験ももう少しだから、がんばるんだぞ。」  本当にわざとらしいせりふです。でも、そんなことはどうでもいいのです。何度もいいますが、内容なんて全く意味を持たないビデオなんですから。 「はい、でも、ここのところがわからなくて・・・。」
 ビデオの中の私は、そう言うと、本城に教科書の問題を指し示します。 「どれどれ・・・。あ、うん、それはな・・・」  本城がペンを取り出し、あれこれ説明し始めます。  私は、そんな本城の横顔に憧れを抱いた熱い視線を送ります。  やがて、その部屋で一人になった私は、机の引き出しから、一枚の写真を取出し、ため息混じりに見つめるのです。その写真には本城の微笑みを浮かべた顔が写っています。 「ああ、先生・・・・、ぼ、僕、先生のこと・・・す・・・好きです。だから、僕、先生にだけは、ホントの秘密、教えてあげる・・・。」  私は、写真に向かってそう言うと、椅子から立ち上がり、制服を脱ぎ始めます。すると、詰め襟の制服の下からは、淡いピンクのブラジャーとパンティが現れます。  やがて、画面が切り替わり、ドレッサーの前に座っている私が映し出されます。そして、次々に手際よくメイクを施していくのです。その表情は、好きな男のことを考えながら、夢見心地になっている少女そのものです。
 すべてのメイクが終わり、ウィッグを被ると、ドレッサーからセーラー服を取り出し、袖を通し始めます。あの、極端に短いスカートにも両脚を通します。最後にルーズソックスとローファーを履くと、鏡の前に立ち、また、一人つぶやくのです。 「ぼ、僕、ホントは、お・・・女の子になりたいの。女の子になって、先生に、あ・・・愛されたい。お願い、先生、『奈緒美』を・・・愛して・・・。」
 

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