人工美女の館   作:絵里
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★ 人工美女の館 124 ★ ♂ 悲嘆の代理母 ♀

「瞳さん、こんな事聞きにくいんだけど、そ・・そのお兄さんの相手っていったい誰なの?」
 男であると分かっている瞳の兄の結婚相手、葉子は聞きにくかったが敢えて瞳に尋ねた。
「あの男よ・・・大神・・隆造」
「大神隆造・・・って隆一郎の父親、お兄さんが何かを探っていたその本人じゃない・・・」
 そのような相手と強制的にしかも女として結婚させられ、瞳のお兄さんがどれほど悔しい思いをしているかと思うと、葉子は居た堪れなくなってしまった。
「葉子さん、じつは・・わたしのお腹の子も・・・」
「ま、まさか、大神隆造の・・・子!?」
 瞳のお腹の子が大神隆造の子と聞き、葉子はさらに驚いた。なんと言っても、大神隆造はもう60歳間近の初老なのだ。そのような隆造の子供を、なんで瞳が妊娠しなくてはならないのかと、葉子は納得が行かなかった。
「兄の代わりらしいわ。兄が子供を生めないから・・・」
「お、お兄さんの・・代わりに・・・・」
「恥ずかしいけど、葉子さんにはすべてを話すわ」
 瞳はこのあと、兄・俊夫と隆造との挙式、そして初夜に行われた残虐な行為の数々を葉子に話し始めた。
「許・・許せない」
 葉子は瞳の話を聞き、女を子供を生む道具としか考えていない大神家の人間に強い憎悪を覚えた。

 その頃、隆一郎に引き立てられて行った恵一も、隆一郎からとんでもない話を聞かされていた。
「お前が今回私に盾ついた罰を何にしようかといろいろ考えていたんだが、やっと決まったよ」
「・・・・・」
 葉子を人質に取られている今の恵一には、もはや何も言う事はなかった。
「あと一週間余りとなったお前の性転換手術、それを急遽、会員向けのショーとして公開する事にした」
「えっ!」
 突然、自分の手術の模様が公開さると告げられ、恵一はさすがに動揺した。それも無理はない、これはただの手術ではなく男を女へと変える性転換手術なのだ。しかも、それは本人の意思ではなく、強制的に行われる性の転換なのだ。そんな男として屈辱的な手術を、とてもではないが他人などには見られたくなかった。
「あのぅ・・・・隆一郎さん」
「なんだ、恵一? まさか、この場に及んでまた拒否すると言い出すんじゃないだろうな?」
 隆一郎にこう言われて、もはや恵一には何も言えなくなってしまった。
「まぁ、そのような事はないとは思うが、万が一、この企画が中止になった場合には、日を改めてにはなるが別の催しを用意してある・・・」
「別の・・・?」
 このうえ更に何かを企んでいるいるのかと、恵一は不安になった。
「お前は北村梨花を憶えているか? まぁ、まさか忘れはしないだろうな、深い関係を持った仲なのだからな・・・ふふふ」
 北村梨花・・・それは恵一にとって絶対に忘れられない名前だった。初めて女の姿にさせられ、恥じらいながら女奴隷として調教を受けさせられていた時に、そんな同室の自分に何の偏見もなく優しく接してくれたのが、北村梨花なのだから・・・・。
「梨花さん・・って、梨花さんがいったいどうしたというんですか!? 彼女はもう外国にいるはずでは?」
「そうか、やっぱり憶えていたか。じつは、その梨花が日本へ戻されて来た・・・」
「戻されて・・・?」
 梨花がこの日本に戻されたと聞き、恵一はなぜかほっとしていた。
「じつは、向うへ行ってから分かったんだが、梨花の妊娠が発覚してな・・・。買い取ったご主人様が、カンカンになって梨花を日本へ送り返して来た」
『梨・・梨花さんが妊娠!?』
 突然降って湧いたような梨花の妊娠話で、益々複雑になる恵一をめぐる人間模様。この先、恵一はいったいどうなって行くのか。

★ 人工美女の館 125 ★ ♂ 受け継がれていた遺伝子 ♀

「・・・で、梨花の出産予定日は7月30日だそうだ」
『7月・・って、もう4ヶ月しかないわ』
 隆一郎から具体的な出産予定日を聞き、恵一はそう思った。しかし、恵一はこの時肝心な事に気付いていなかった。この日から逆算した梨花の胎児の受精の日を・・・。そう、それは恵一と梨花が女奴隷として調教を受けていた期間と重なっているのだ。そしてこの期間、梨花にはそのような行為をする事は実質的に不可能・・・あの時の事を除いては・・・。
「恵一、私が何を言おうとしているのか、お前・・・分かるか?」
「まさか・・・梨花さんの出産を何かに利用しようと?」
「そう・・・、よく分かったな、その通りだ。お前の公開性転換手術が万が一中止になった場合には、・・・その場合は、梨花の公開出産ショーを執り行う予定だ、その7月30日にな」
「そ・・そんなぁ、隆一郎さん、出産という神聖な儀式を、そのような事に利用するのだけはどうかやめてください!」
 恵一は必死になって隆一郎に哀願した。
「何を偉そうに・・・、大事な商品に余計なちょっかいを出して、傷物にしてしまった張本人の癖して・・・」
「・・・・張本人?」
「なんだ、まだ気付いていないのか・・・」
 いったい何の事なの・・・と、恵一は目を白黒させた。
「梨花の出産予定日は7月30日・・・、それから考えればいったいその父親が誰かくらいは見当が付くだろう」
『えっ・・・父親?』
 恵一は慌てて出産予定日から、梨花が子供を宿した時期を推測した。
「まっ・・・まさか!?」
 自分の出した答えに、恵一は呆然とした。
「やっと分かったか。その時期に梨花が他の男とそういった関係が持てる訳がない。それは、お前が一番よく知っているはずだ」
『僕に・・この僕に子供が・・・・』
 恵一は信じられなかった。すでに自分は去勢され子供を作れぬ体になっている。その今になって、まさか自分の遺伝子を持った子供が目の前に現れるなんて・・・・。
「どうやら、感慨無量のようだな。まぁ、それも無理はないか。もはやお前には子供を作る能力がない訳だからな・・・」
「お願いします、隆一郎さん。どうかその子供は・・その子供は、無事に生ませてあげてください。そのためなら、たとえわたしの手術が人前で公開されようと、もはや意義は唱えません」
「よし、いいだろう。そこまで言うのなら、その子は私が責任を持って出産させてやろう。ただし、お前の手術が予定通り終了すればの話だがな・・・」
「はい、分かっています、隆一郎さん」
 これも女性ホルモンの作用なのか、恵一はいつの間にか母親のような気持ちになっていた。
「早く3月23日が来ないものかな、今からその日が待ち遠しくて仕方がない、ふふふっ」
 性転換手術の日まであと8日、いよいよ3月23日・・・恵一の体が完全な女の体になる。

★ 人工美女の館 126 ★ ♂ 傷ついた子宮・失われた命 ♀

「キャ〜ッ! 誰か・・誰か来てぇ〜〜〜っ!!」
 早朝の地下室に、葉子の悲鳴がこだました。もちろん地下室には葉子と瞳の二人しかいないが、その声は24時間作動しているモニターを通して大神家の人間に伝わった。
「葉子さん、いったいどうしたというんだ!?」
 すぐに駆けつけて来たのは、洋祐だった。
「瞳・・瞳さんが・・・・」
 洋祐が葉子の指差す先を見ると、そこには床に倒れもがき苦しんでいる瞳の姿が・・・。しかも、その股間からはおびただしい大量の出血が・・・。
「これは大変だ!」
 洋祐は急いで瞳の脇に腰を落とすと、出血している患部を診た。
「いかん、膣の奥を金属棒でめった突きにしている。急いで輸血して手術しないと・・・」
 洋祐は静かに瞳を抱き上げると、部屋を出て急いで手術室へと向かった。
「瞳・・・さん」
 一人部屋に残された葉子はただ呆然と立ち尽くし、部屋にはもう鍵がかかっていないにもかかわらず、そこから逃走しようなどとは考えもしなかった。
 そして、このアクシデントはすぐに隆造にも伝えられた。
「なにっ!? 瞳が・・・・。よし分かった、わしもすぐにそっちへ向かうが、すぐに隆一郎と二人で対処してくれ・・・」
「はい、わかりました!」
 洋祐とのやりとりが終わると、隆造は眉間に皺を寄せ苦虫を噛み潰したような顔になった。
「くそう・・・あの小娘め、余計な事をしおって・・・・。これではわしの計画も台無しだ」
 そう呟くと、隆造は急いで部屋を出て行った。

 瞳が洋祐に抱かれて部屋を出て行ってから3時間、その間葉子は、ずっとショックで床に崩れたままただ呆然としていた。そんな葉子の元へふたたび洋祐が戻って来たのは、それから間もなくの事だった。
「あっ・・先生、瞳・・・瞳さんは?」
 部屋に入って来た洋祐に、床の上の葉子が尋ねた。
「輸血が早かったので命には別状なかったが、ただ・・・・」
「ただ・・・どうしたんですか?」
 その先を言い難そうな洋祐を見て、葉子が強い口調で聞いた。
「長い金属棒を使って、何度も膣の奥を強く突いたらしい。子宮が傷だらけで、残念ながら子宮は摘出するしか術がなかった・・・」
「では、お腹の子も・・・?」
「あぁ・・・、でも、いったいどうしてあんな事になってしまったんだ?」
 洋祐が葉子にその時の状況を問いかけた。
「朝、変な音がするので目が覚めたら、瞳さんが床の上で苦しんで・・・・」
 洋祐は部屋の中を見まわした。
「あっ、ここだ。ベッドのこの部分が外されている・・・」
 瞳が自傷に使った金属棒は、ベッドの部品だった。
「昨日は、そんな素振りは少しも見せていなかったのに・・・・」
 葉子は、そこまで思いつめていた瞳になぜ気付かなかったのかと、自分を責めた。
「瞳・・瞳さん・・・許して」
 ついに恐れていた不幸な出来事が起こってしまった。益々精神的に追い詰められて行く恵一とその仲間たち・・・。

★ 人工美女の館 127 ★ ♂ 洋祐との別れ ♀

 その瞳が自分の局部を自傷したという情報は、すでに恵一にも届いていた。
 恵一はそのすべての責任は自分にあると、月曜ではあったが体調が優れないと学校を休み、自分自身を責め立てていた。
「瞳ちゃん、ごめんね・・・、みんなわたしのせいよ、わたしが瞳ちゃんを逃がしてあげられなかったからこんな事に・・・・」
 もしもあの時、瞳が逃げ切れていたら・・・そう思うと、恵一は自分が情けなくて仕方がなかった。
「『コン、コン!』・・・めぐみさん、ちょっと入るよ」
 ドアを叩く音とともに洋祐の声がし、ドアの鍵を開ける音が・・・。
 いつものプリーツスカート姿でベッドに横になっていた恵一は慌てて起き上がり、ベッドの淵に腰を下ろした。
「突然押し掛けたりしてごめん、めぐみさんが体調を崩して学校を休んでいるって聞いたものだから・・・・。ちょうど、隆一郎さんも学会の会議に出かけて留守のようなので、ちょっと心配になって・・・」
 部屋へ入ってくると、洋祐はそう言って恵一を心配した。
「瞳ちゃんがあんな事になってしまったので、とても学校へ行く気になれなくて・・・・」
「やっぱりそうだったのか・・・」
「洋祐先生・・・、それで瞳ちゃんの容態はどうなんですか?」
「命には別状なかったけど、子宮を摘出してしまったからね・・・、これから先、彼女に精神的なショックが残らなければいいんだが・・・」
「えっ、子宮を!」
 女の命とも言える子宮を摘出したと聞き、恵一は大きなショックを受けた。
『瞳ちゃん・・・・』
 改めて瞳への責任を感じ、恵一は頭を下げ深くうなだれた。
「どうした、めぐみさん?」
 その様子を見ていた洋祐は、ゆっくりと恵一の傍らへ腰を下ろした。
「洋祐先生・・・・」
「うん、なんだい?」
「わたし・・・、なんだかとても怖いの」
 そう言うと、恵一は両手を洋祐の胸に運び、そこに自分の顔を埋めた。
「ど・・どうしたんだい急に、いつものめぐみさんらしくないな」
「だ・・だって、わたしのせいでみんな不幸になって行くんですもの。瞳ちゃんはあんな事になってしまったし・・・」
「・・・・・」
 恵一の気持ちが分かり過ぎるだけに、洋祐は何と言って慰めたらいいのか分からなかった。
「洋祐先生・・・お願い、いつまでもわたしを守って・・・・」
「守って・・・・って」
 洋祐の顔が、突然、困惑した顔に変わった。
「ごめん・・・めぐみさん、僕は君を守ってあげる事が出来ない・・・」
「えっ、洋祐先生、それって・・・なんで?」
 洋祐の意外な答えに、恵一は戸惑った。
「じつは・・めぐみさん・・・・」
 洋祐は、言い難そうに言葉を搾り出した。
「僕は来月・・・ふたたび外国へ旅立つ事になってしまったんだ」
「えっ!?」
 突然の洋祐の告白に、恵一は大きなショックを受けた。

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