人工美女の館   作:絵里
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★ 人工美女の館 109 ★ ♂ 具体化する恵一の性転換手術 ♀

 瞳の妊娠は、隆一郎によって恵一にも伝えられた。
「えっ、瞳ちゃんが・・・妊娠?」
『な・・なんていう事だ、可哀想に・・・・。それもこれも、みんな僕が助けてあげられなかったのが原因なんだ』
 恵一は責任の重さを痛感していた。
「ずいぶん神妙な顔をしているな、だが、お前だってそんな感傷に浸っている暇はないぞ」
「・・・・?」
「お前の性転換手術の予定日が決まったんだよ」
「えっ!!」
 この瞬間、恵一が受けたショックは計り知れないものがあった。まるで、死刑執行の日を告知された時のような・・・・。
「で・・・いつですか、その手術の・・日は?」
 恵一は敢えて冷静を装った声で隆一郎に尋ねた。
「高校の終業式の三日後、3月23日だ。この日の手術なら、新学年の始業式にはなんとか間に合うからな。そのため終業式が終わり次第、その準備のためすぐに入院する事になっているからそのつもりでいてくれ」
 それを聞いた恵一は、心臓の鼓動の早さが急激に高まるのを感じた。
『3月23日で・・・僕の体は・・完全に男では・・・なくなってしまう』
 そう思った途端、恵一の心に恐怖心が沸き起こり体が小刻みに震え始めた。
「なんだ、震えているのか? まぁ、それも当然か・・・20年間馴染んで来た大切な男のシンボルが体から切り取られてしまうのだからな」
 そんな隆一郎の言葉を、恵一はただ唇をかみ締めて聞いていた。
「隆一郎さん、一つだけお願いを聞いていただいてもいいですか?」
「なんだ、突然?」
「僕が・・いえ、わたしが性転換手術を受ける事は、葉・・葉子には絶対知らせないでください」
「手術の事を・・知らせるなと?」
「はい・・・お願いします!」
「まぁ、そこまで言うのなら黙っていてやってもいいが、どのみちいずれは分かる事だぞ」
「その時は・・・仕方ありません、でも・・今は・・・」
「分かった、とりあえずはお前の言う事を聞いてやろう。で・・もう一つ、手術の二週間前には血栓症予防のため女性ホルモンを供給している人工睾丸は摘出するから、そのつもりでいてくれ」
「えっ・・・摘出!?」
 人工睾丸を摘出と聞き、恵一は益々切羽詰った心境になっていた。

★ 人工美女の館 110 ★ ♂ 葉子と恵一、そして・・・めぐみ ♀

 性転換手術の予定日を告げられてからというもの、恵一には精神的に重苦しい日々が続いていた。しかし、そんな中での唯一の救いは、学校でテニスの指導を受けている洋祐や再会した葉子との一時の触れ合いだった。
 その葉子との接触時は、いつも必ずといっていい程真理子が一緒だった。しかし、そんなある日の昼休み、この時葉子が真理子を訪ねて来た時は、ちょうど真理子が病気で休んでおり、恵一は初めて一人だけで葉子と接する事になった。
「そうなの、きょう真理子さんはお休みなの・・・」
「え・・えぇ、お休みなの・・・」
「それじゃあ、めぐみさん、今日は二人だけでお話ししましょうか」
 葉子がそう言い出したので、恵一は戸惑った。いつもは必ず真理子が葉子との間にいてくれ、二人の間のフィルターとなってくれていた。それで、恵一もある程度冷静な気持ちで葉子と接する事が出来ていたのだが、それが二人だけとなるといったいどうなってしまうのか、恵一にはいつも通り冷静に接する自信がなかった。もちろん、葉子の視線も恵一一人に集中する訳で、それだけ正体のばれる危険度も増大するはずだ。
「じゃあ、めぐみさん、校庭に出ましょう」
「は・・はい・・・」
 葉子に促され、二人はそよ風の吹く校庭へと出た。
「わたしね、前からめぐみさんと二人でお話ししたかったの」
 葉子にそう言われ、恵一は一瞬ドキッとした。
『どうしよう・・変な事を聞かれたら・・・』
 恵一の胸は高鳴った。
「めぐみさんに以前言った事があるでしょう。あなたがわたしの知っている人にとても似てるって・・・」
「ええ、聞いた・・わ」
 恵一はいつもに増して、女らしく話す事に気を遣った。それは、いつもなら真理子がいて葉子の神経も二人に分散しているが、今日の場合はそうはいかないからだ。
「じつはね、あの時は違うって言ったんだけど・・・・」
「えっ?」
 まさか・・分かってしまったのでは・・・と、恵一は一瞬緊張した。
「やっぱりすごく似ているの。背の高さもめぐみさんその人と同じくらいだし、声の感じなんかも・・・」
「そ・・そうなの、でも葉・・・いえ、佐伯さん、その方って男性・・・なんでしょう」
「うん、じつはね、その人はわたしの恋人なの・・・」
「・・・・恋・・人?」
「そう、恋人・・・、それも結婚まで約束した・・・・」
「・・・・・」
「でも、詳しい事は話せないんだけど、もう会えなくなっちゃったの」
「それでは・・結婚は?」
 恵一はわざと結婚の話を聞いてみた。
「わたしは諦めていないんだけど・・・、でも、もう会えないから・・・・」
『・・・葉子、僕なら目の前にいるじゃないか!』
 そう恵一は心の中で叫んでいた。しかし、今の状況ではとてもそれを言い出す事は出来なかった。
「キャーッ!」
 その時、急に突風が吹き葉子のスカートが風に捲くれ、葉子が悲鳴を上げた。同じく風でスカートが捲れそうになった恵一も、あわてて両手でスカートを押さえた。
「もう、やんなっちゃうわ、スカートだとこれだから。でも、ここは女子高だからまわりに男の子がいないから、その点は安心ね」
「そ・・そうね、男の子いないから・・・」
 恵一は、葉子のその言葉に思わず苦笑いをしながら相槌を打った。
 それにしても、こうして葉子といっしょに同じセーラー服を身に着け、女子高生として話をしているという事が、恵一には何か不思議な気がしてならなかった。しかし、それも自分の正体が葉子にばれていないから出来る事であって、もし正体を知られてしまったら、誰がこのようなスカートを穿いた女の姿で葉子の前に出ていられようか・・・。いや、その姿を見て一番ショックを受けるのは葉子なのだ。そのためにも、絶対に自分の正体は知られてはいけないと恵一は思った。


★ 人工美女の館 111 ★ ♂ 去り行く葉子 ♀

 その後、しばらくは不思議なくらい平穏な日々が続いていた。恵一は真理子の友人として葉子とも頻繁に接触し、いつまでもこのままの状態が続くのではないかとさえ錯覚するほどだった。しかし、それは所詮嵐の前の静けさでしかなかった。時は瞬く間のうちに葉子たち三年生の卒業する3月10日へと移っていた。

 その日、恵一と真理子は式の始まる1時間前に葉子と会う約束をしていた。恵一は前日、二週間後に行われる性転換手術の事前処置として、今まで恵一の体内に女性ホルモンを供給して来た二つの人工睾丸を摘出されていた。そのため、ホルモンバランスの崩れか、体調があまり優れなかった。
「二人とも・・・来てくれたわね」
 恵一と真理子が葉子との待ち合わせの場所へ着くと、葉子はすでに二人を待っていた。
「佐伯先輩、卒業おめでとうございます」
 真理子が葉子にお祝いを言うと、恵一もその横で祝福した。本来ならば一番祝福したいはずの恵一だが、今の立場ではあくまでも控え目で通すしかなかった。
「どうもありがとう、でも、本当はあまりおめでたくないんだけどね」
「ええっ? それ・・・どういう意味なんですか?」
 葉子が変な言い方をしたので、真理子が聞き返した。
「う〜ん、それは冗談。それで、今日ここへ来てもらったのはね、四日後はホワイトデーでしょう、でも、わたしは今日で卒業してしまうから・・・、それでバレンタインデーのお返しを渡しておこうと思ったの」
 そう言って、葉子は手提げ袋の中から綺麗に包装された小さな品物を取り出した。
「はい、真理子さん。短い間だったけど、親しくしてくれてどうもありがとう」
 葉子は真理子の前に歩み寄ると、そのプレゼントを差し出した。
「わぁ、嬉しい。佐伯先輩・・・ありがとうございます」
 葉子からプレゼントをもらい、真理子は喜んだ。
「良かったわね、真理子さん。ホワイトデーのお返しをもらえて・・・・」
 恵一もまるで自分の事のように喜んだ。
「めぐみさん、あなたにも用意してきたのよ」
 そう言って、葉子は手提げ袋の中からもう一つ包装された品物を取り出した。
「えっ? 葉・・・佐伯さん・・・・」
 恵一は、葉子の差し出したその品物をゆっくりと受け取った。
「でも、わたしはバレンタインのプレゼントしてないのに・・・」
 恵一は二人が顔を揃えているのに、真理子にだけプレゼントするのでは悪いと思い、それで自分にも用意してくれたのだと思った。
「すみません、無理にプレゼントを用意させちゃったみたいで・・・」
「いいえ、違うの。本当にめぐみさんにプレゼントしたくて、・・・それで用意してきたのよ。だから、気にしなくてもいいわ。真理子さんもそうだけど、わたし何だかめぐみさんの事がとても好きになってしまったの・・・・」
「それってきっと、めぐみさんがその恋人の方に似ているからだわ・・・・」
 真理子が葉子の気持ちを代弁した。
『うぅぅ・・・葉子』
 その言葉で、恵一は思わず感傷的になった。
「確かにそれもあるの・・・。ごめんなさいね、めぐみさん。わたしの恋人の代役にしてしまって・・・」
「ううん・・いいの、わたしとても嬉しいわ。気にしないでください・・・」
『葉子・・これは代役なんかじゃないんだよ・・・・』
 恵一は今すぐにでも葉子にそう言いたかった。
「じゃあ、真理子さん、めぐみさん・・・、お元気でね」
「はい、佐伯先輩も・・・・」
 こうして葉子は二人の前から立ち去って行った。
 そしてそれから3時間後、恵一と真理子は卒業する葉子の後姿を遠くからじっと見送っていた。

★ 人工美女の館 112 ★
♂ 恵一の反抗 ♀

 葉子が卒業し恵一の前からその姿を消した翌日、当然だがもう学校に葉子の姿はなかった。あの後、葉子はいったい何処へ消えてしまったのか。やはりあの時に葉子から情報を得ていればよかった・・と悔やむ一方、恵一は自分自身の精神的変化を感じていた。あれほど強い覚悟で性転換手術を受ける事を承諾したにもかかわらず、その意思が揺らぎ始めたのだ。恵一は、葉子の姿を自分に見せつけるように仕組んだ隆一郎を恨んだ。

 金曜日の夕方、学校から戻った恵一は、そのセーラー服姿のまま隆一郎のところへ向かった。そして、いきなり自分の今の気持ちをぶつけた。
「隆一郎さん・・・お願いがあります」
「なんだ恵一、まだ着替えも済ませていないようだが・・・?」
「性・・性転換手術を・・・」
「・・・? 性転換手術がどうしたというんだ」
「性転換・・手術を・・・取りやめてください」
「何・・何だと、お前の性転換手術を中止にしろというのか!?」
「は・・はい、どうかお願いします」
「いったいそれはどういう事だ、お前はすでに手術を承諾して誓約書に署名までしているんだぞ。そんな事は絶対に許さん!」
「お願いです、わたしは言われた通りに女としてあなたと結婚もします。女としてあなたに尽くします。でも、これ以上の手術はもう許して!」
『ふふふ、恵一め・・見事に私の罠に引っかかったな。やはり葉子の姿を見て完全な女の体にされるのを拒み始めたか・・・』
 隆一郎は、事が自分の考えているシナリオ通りに進んでいるのが、面白くて仕方なかった。
「いや、許さん。もしかして誤解されていると困るが、元々私は男には興味はない。恋愛の対象はあくまでも女だ。しかも、男が演じるな・・・。だからお前には女になってもらわねば困るのだ」
「そ・・そんなぁ」
「大体お前はあの承諾書を何だと思っているんだ。お前はすでにその承諾書に署名しているんだぞ。もしそれを破れば、どうなるか分かっているんだろうな!?」
「は・・はい、どんな罰でも受ける覚悟はあります・・・だから、お願いします」
「う〜ん、まだ言っているのか。それならば仕方がない、考えが変わるまでしばらく地下の檻の中で頭を冷やしてもらおうか・・・」
「・・・檻!?」
「そうだ、お前も以前入った事のあるあの地下2階にあるあの奴隷用の檻だ」
 そう冷たく言い放つと、隆一郎は恵一をそのまま本邸の地下にある奴隷用の檻へと連行した。
「どうだ、まだ考えは変わらないか?」
 階段を下りながら隆一郎が恵一に確認した。
「はい・・・変わりません」
「そうか、では仕方がない。だが、別にお前が承諾しようとしまいと、手術は強制的に受けさせる事は出来るんだぞ。ただ、私は本人に望ませて行いたいだけだ。それを・・・忘れるなよ」
 一見困り果てているように見せているが、隆一郎は初めからこういう状況を楽しんでいるのだった。やがて二人は薄暗い地下の檻の前にたどり着いた。
「さぁ、入るんだ! いいか、考えが変わればいつでもここから出してやる。それまでここで頭でも冷やしていろ!」
 そう言うと、隆一郎はセーラー服姿の恵一を檻の中へと突き飛ばした。
「あっ! ・・・・・」
 その勢いで、恵一は檻の中の冷たい床の上に放り出されてしまった。
「では、私はもう行くぞ。いろいろと忙しいのでね」
 そう冷たく言い放つと、隆一郎は地下室を後にした。
 暗い地下室の中で一人呆然とする恵一。しかし恵一が部屋の暗さに慣れて来ると、それまでは気付かなかったが、鉄格子で仕切られた隣の檻・・・そこに人の姿があるのに気付いた。


★ 人工美女の館 113 ★
♂ 檻の中での意外な再会 ♀

「誰・・・そこにいるのは誰なの?」
 恵一が四つんばいになり仕切りの鉄格子へ近づいて行くと、その奥には人影が・・・。薄暗いのですぐにははっきりと確認できなかったが、時間が経つにつれその姿がはっきりとして来た。
『えっ・・・裸の女性?』
 その人影は、何と一糸まとわぬ裸の女性だった。恵一の異性としての心がその姿を直視する事をためらわせ、恵一は視線を床に落とした。
「あのぅ、あなたは・・・?」
 恵一がその裸の女性に声をかけると、丸まっていたその人影がゆっくりと動き出した。
「大丈夫ですか?」
 ふたたび恵一が声をかけた。
「そ・・その声は・・・もしかして?」
 そう呟くと、その女性は恵一と同じように四つんばいになって、恵一のいる仕切り付近まで近づいて来た。
「や・・やっぱりめぐみさんね・・・めぐみさんなのね」
「えっ、わたしの事を知っているあなたは?」
 その女性の声に、床に視線を落としていた恵一が顔を上げると、その声の主はなんと先日卒業式で見送ったばかりの恋人の葉子だった。
「葉・・・佐、佐伯さん、あなたがいったいどうしてこんな所に?」
「とうとう見られてしまったわね、わたしの本当の姿を・・・」
「本当の・・って」
「これがわたしの普段の姿なの。といっても、これまではちゃんと服を着て生活させてくれていたんだけど・・・。それが訳あって大神女子高に編入させられ、卒業した途端ここへ入れられて・・・。でも、めぐみさんこそどうしてこんな所に?」
 そう聞かれて、逆に恵一は困ってしまった。本当の事などとても話す訳にはいかないからだ。
「わたしは・・そのぅ・・・」
 そう答えながらも、恵一の目は自然と目の前で横座りしている葉子の裸の体へと行っていた。
『あっ!』
 目の前の葉子の裸の体を見て恵一は気付いた。それは横座りしている両脚の間、本来なら淡い繊毛が生い茂っているはずのその場所にそれが見当たらなかったのだ。そして代わりに、女性の象徴とも言うべき縦割れの線が僅かにその姿を現していたのだ。
「嫌っ、めぐみさん、そんなにわたしの体を見つめないで・・・」
 葉子がそんな恵一の視線を感じ、急いで開いていた両脚を閉じた。
「ご、ごめんなさい。そんなつもりではなかったんだけど・・・」
「気が付いたでしょう? ここに入れられる前に剃られてしまったの。めぐみさんとは女同士だから恥ずかしがる事もないんだけど、でもやはり恥ずかしいわ」
 それは恵一とて同じだった。いくら肉体関係もある恋人の葉子の裸体とはいえ、体毛を失ったその部分を見るのは、やはり恥ずかしさを感じずにはいられなかった。
「佐伯さん、わたしこのセーラー服脱ぐから、これを着て・・・・」
 そう言って、恵一は自分の着ているセーラー服を脱ごうとした。その下にはスリップも身に着けているので、それだけなら葉子に正体もばれないと思ったからだ。
「いいえ、それは駄目よ。そんな事をしたら、あの人たちからどんなお仕置きを受けるか分からないわ」
 葉子は、慌ててセーラー服を脱ぎかけている恵一を止めた。

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