人工美女の館   作:絵里
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★ 人工美女の館 89 ★ ♂ いじらしい応援 ♀

 洋祐に誘われテニス部の練習を見学に行ってからというもの、恵一にとっては放課後にテニス部の練習を見に行くのが日課になっていた。そしてその一週間後、大神女子高校のテニスコートでは恒例となっている百合ヶ崎高校との対抗戦が行われていた。
 熱戦が繰り広げられているそのコート脇の応援席では、赤いメガホンを右手に持った白いセーラー服姿の少女が濃紺のプリーツスカートを靡かせ、しかしどことなく遠慮がちに大神女子高校テニス部を応援している姿があった。
「大神女子高校テニス部がんばって〜! 洋祐先生、がんばれぇ〜〜!」
 その応援する声は決して大きくはなかったが、他に熱心に応援する生徒もいない事もあって、選手達からはよく目立っていた。
「誰・・・あの子?」
「2年A組に新しく編入してきた子らしいわ、ずっと私たちの練習も見に来ていたし・・・」
「う〜ん、ずいぶん熱心なのね・・・」
 そんな会話が大神のテニス部員の中から聞こえて来た。
 それにしても、いったいどうしたと言うのだろう。とてもテニスの応援が出来るような精神状態ではないはずの恵一が、このように何かが乗り移ったかのように応援するとは・・・、それは、まるで嫌な事を忘れようとしているかのような行動だった。
 そんな恵一の応援が効いたのか、ここ2年続けて大神テニス部が連敗していたこのテニスの対抗戦だったが、接戦の末に見事に勝利を収めた。
「洋祐先生、おめでとうございます」
 試合終了後、恵一はすぐに洋祐に駆け寄り、そして祝福した。
「ありがとう、めぐみさんの応援のおかげだよ」
「えっ、洋祐先生、私が応援していたの知っていたんですか?」
「当たり前さ、あれだけ派手に応援してくれていればな・・・はははっ」
 自分ではまわりから目立たぬように応援していたつもりだったのだが、恵一は思わず顔が赤らめた。
「あのぅ、洋祐先生・・・」
 恵一が遠慮がちに洋祐に話しかけた。
「えっ、どうしたの? 急にかしこまって」
「じつは、テニス部に・・入りたいんですけど・・・」
「何だ、何かと思ったらそういう事か」
「だけど・・・わたしみたいな人間には、そんな資格ないですよね・・・」
「そんな事はないよ、テニスをやるのに資格なんて関係ない」
「本、本当ですか、では、今日にでも隆一郎さんにお願いしてみます」
 恵一は、これから洋祐と一緒にテニスが出来ると思うと、とても嬉しかった。ただ、・・・
「でも洋祐先生、一つだけお願いがあるんです・・・」
「お願い? いったい何のことかな」
「練習するとき、普通の体操服とかでもいいですか?」
「体操服・・・って、部員には白とピンクを基調とした大神女子高テニス部のユニフォームを着てもらう事になっているんだけど」
「で・・・でも、あんな短いスコート穿いたら、わたし・・・恥ずかしくてテニスできません」
「だけど、今だって結構短いスカートを穿いて生活しているんだし、それにテニスの場合は下にアンスコだって穿くんだよ・・・」
「だ、だから・・・よけい恥ずかしいんです。あんなフリルが付いていて・・・・」
 もちろん洋祐の言う通り、今の恵一は毎日ミニスカートを穿いて生活を送っている。しかし、あのような短いスコートを穿き、ましてあんな可愛らしいフリルをまわりの人間に見られながらのテニスなど、恵一には恥ずかしくてとても耐えられそうになかったのだ。
「う〜ん、そんなに嫌なら仕方ないかなぁ・・・。元々は僕がめぐみさんをテニス部に誘った訳だし、特別に許可してあげようか」
「本、本当ですか。洋祐先生、ありがとうございます」
 恵一は、洋祐の近くに自分がいられることに無償の喜びを感じていた。

★ 人工美女の館 90 ★ ♂ 渡された品物 ♀

 その日の夜、入浴を終えいつものようにネグリジェ姿になった恵一は、自室で隆一郎にテニス部入部を懇願していた。
「隆一郎さん、本当にテニス部に入部してもいいんですか?」
「お前の好きにすればいい、帰りが多少遅くなるだけだからな」
「ありがとうございます・・・隆一郎さん」
 恵一は、隆一郎からの了解が意外なほど簡単に得られ、素直に感謝の気持ちを表すのだった。
「恵一、お前に渡しておく物があるんだ。二日前に届いていたんだが・・・渡すのを忘れていた」
 そう言って隆一郎が差し出したのは、厚さ7、8センチほどの包装された箱だった。
 恵一はすぐにその箱を開けてみた。
「あっ、これは・・・」
「学校の体育の授業で着る体操服だ。そろそろ体育の授業があるんじゃないのか」
『そうだ、確か明日が体育の授業の初日だった』
 新学期が始まってから、しばらくは特別行事などのためにつぶれていた体育の授業が、すぐ目の前に迫っていたのだ。恵一は、その事をすっかり忘れていた。
 そう思いながら開けた箱の中を見ると、中には大神女子高校のイメージ色ピンクのジャージが・・・。そしてその上には、それよりも多少淡いピンク色をした下着のような物が乗っていた。
『ん・・・これは?』
「それはブルマだ」
「ブ・・ブルマ・・・」
 ブルマ・・・それは少女の下腹部にフィットし、臀部のラインを妖しく描き出す、それは男にとって一種の憧れのアイテムでもあり、ある意味においてはスカートとはまた違ったとても恥じらいを感じるアイテムでもある。それをこれから自分も穿くのかと思うと、恵一は愕然とした。
「最近はブルマを廃止する高校が増えているが、大神は伝統を大切にしているからな・・・と言いながら、じつはこれだってスリップ着用と同様に、私の好みを通させてもらったものなんだがな、ふふふっ。だが、まさか恵一、お前までそれを穿く事になるとは思っていなかったよ」
「隆一郎さん、こんなの・・・わたし穿けません・・・」
「何で穿けないんだ?」
「だ・・だって、こんな体にフィットするのを穿いたら・・・・」
 股間の膨らみが目立ち、自分が男だと分かってしまう、そう恵一は言いたかったのだが、そこまでは恥ずかしさで言う事が出来なかった。
「それで、何かまずい事でもあるのか?」
 隆一郎が意地悪そうに恵一に言った。
「い・・いえ、・・・別に」
「まぁ、冬場は外での授業の時はジャージを着るだろうから別に心配する事はない、別に心配する事はな・・・」
『そうだ、ブルマを穿いてもその上にジャージを着るとすれば別に問題はなかった』
 そう思い、恵一はとりあえずひと安心するのだった。
「さぁ、もうその体操服は仕舞って・・・」
 そう言われて渡された体操服を机の上に置くと、恵一はいつものように隆一郎に抱き寄せられて行った。


★ 人工美女の館 91 ★ ♂ 妖しいブルマの膨らみ ♀

「次の時間は体育よ、めぐみさん早く着替えてしまいましょう」
「そ・・・そうね」
 あのトイレ騒動の時から親友となった真理子から促され、恵一は昨日隆一郎から渡された体操服に着替え始めた。もちろん、まわりの級友たちも既に着替え始めている。
 恵一にとっては異性であるはずの女性の着替え風景、とりわけセーラー服姿の女子高生の着替えは、恵一にとって初めて目にするとてもまぶしい光景でもあった。いきなりスカートを脱いでしまう者、スカートを穿いたまま先にブルマを穿く者、着替え方法は皆それぞれバラエティーに富んでいた。そして恵一の場合は、やはり後者・・・スカートを穿いたまま先にブルマを穿く方法を選んだ。こういう点では、スカートというのはとても便利な物だなと恵一は改めて思った。ズボンでは、とてもそうはいかないからだ。
「めぐみさん、今日は体育館で組み体操をするらしいからブルマと半袖のシャツだけでいいそうよ」
「えっ、そうなの・・・」
 真理子にそう言われ、ちょうどジャージの体操服をに脚を通そうとしていた恵一は、愕然とした。
『そんなぁ・・・』
 恵一は、思わずピンクのブルマと半袖のシャツ姿のまま立ち尽くした。
 しかし、恵一もまったく手を打っていなかった訳ではなかった。パンティーを2枚重ねて穿いて来ていたのだ。女性のパンティーはたとえ木綿製であっても伸縮性があり、それを2枚重ねて穿く事でかなりのサポート力を得ることが出来たからだ。そのため、ペニスと人工睾丸の埋め込まれた陰嚢を後ろ方向に強く圧迫でき、恵一の下腹部の隆起も何とかカモフラージュする事が出来ていた。
「さぁ、体育館へ行きましょう」
 真理子から声を掛けられ、恵一は一緒に教室を出て行った。しかし、歩いているだけで股間に圧迫されている男性器がずれ上がってくるように感じられ、恵一は両脚を内股にし、太腿で股間の『異物』を押さえ付けながら歩くしかなかった。
 体育館に着きしばらくすると、体育教師・伊太刀勝也が姿を現した。
「では出席を採る。安部・・・・・」
 順番に名前が呼ばれて行った。そして・・・
「柴崎めぐみ!」
「はいっ!」
「柴崎・・・は、今学期から編入して来た生徒だな」
「はい、そうです。よろしくお願いします」
 恵一は伊太刀に自分の正体がばれぬよう、女子高生らしい仕草で返事をした。
「そうか、しっかり頑張りなさい。では次、須藤・・・・・」
 そして、ようやく主席を採るのが終わった。
「よし、今日は『組み体操』の練習をやる。身長の低い順に右から二列に並べ」
 伊太刀のその言葉に、生徒達はお互いに身長を比べながら言われた通り二列になっていった。もちろん171センチと『女子高生』としては大柄な恵一は一番左端になった。
「では、今一緒になった二人でペアを組み『組み体操』をするが、まずはその前に準備運動だ」
 このあと、体育教師・伊太刀の先導で準備運動が始まった。
『イチ、ニ、サン、シ』
 この時、先程の恵一の不安が現実のものとなった。掛け声を掛け合いながら屈伸運動、開脚運動など、下半身を動かすたびに少しずつ股間の『異物』が移動し始め、穿いているピンクのブルマの下腹部に少しずつ膨らみを作り始めたのだ。
『ま・・・まずいわ、このままでは・・・』
 そう思いながらも、恵一には手の施しようがなかった。そしてその結果、準備運動が終わった時の恵一のピンクのブルマの下腹部には、誰が見ても違和感を感じるような妖しい膨らみが形作られていた。
『まずいわ、誰かに気付かれたらどうしよう・・・』
 恵一はそう心配しながら、その部分を元に戻すタイミングを探していた。そして、皆が『組み体操』をするために移動した瞬間を狙って急いでブルマの中へ右手を入れ、前面に押し出されて来ていた『異物』を再び奥へと押し込んだ。
『あ〜ぁ、よかった。なんとか窮地を逃れることが出来たわ』
 恵一は難を逃れてほっとした・・・が、次の瞬間、恵一はある事に気付き強いショックを受けた。
 それは、自分が頭で考える時にもいつの間にか『女言葉』を使うようになっていた事だった。恵一にとっては今の女性の姿はあくまでも仮の姿であって、本当の自分はあくまでも男のつもりでいたからだ。しかし、その変化は自然の成り行きでもあった。まわりが女だけの世界にいるにも関わらず、頭の中で『男言葉』を使っていたのでは、一瞬の対応に反応が遅くなってしまうからだ。下手をしたら、そのまま『男言葉』で返事をしてしまう可能性だってあり得るのだ。
『僕、僕はもう・・・『男言葉』さえ使わせてもらえないのね・・・』
 また一歩、恵一は女に近づいてしまった。

★ 人工美女の館 92 ★ ♂ とんでもない計画 ♀

 その頃、大神総合病院の一室では隆一郎が小村井から衝撃的な報告を受けていた。
「そ、それは本当ですか!?」
「はい、なんとか隆一郎様のご結婚までに実験を成功させる事が出来ました」
「確かに理論的には十分可能な技術ですが、まさか現実のものとなるとは思いませんでした。僅かな可能性を信じて貴方に実験をお願いしていたんですが・・・そうですか」
 隆一郎が驚きの声を上げるような実験、それは男の体細胞から卵子を作り出す実験だった。そして男の・・・いや、正確には恵一の体細胞から卵子を作り出す事に成功したと言うのだった。
「小村井さん、よくやってくれました。これで私の精子と恵一の卵子で受精卵を作れば、私達二人の子供を誕生させる事が出来ます」
「そうです、あとはその受精卵をどのような形で出産まで持っていくかだけです。理論的には、受精卵を腸壁に着床させる方法を使えば、めぐみ様にも出産は可能ですが、今の段階ではリスクが多過ぎます」
「その点は問題ありません。恵一の代わりに代理出産させる女性を既に考えてありますから・・・」
 隆一郎は目を軽く閉じゆっくりと深呼吸をした。
「隆一郎様、それからもう一つ、禁断のイオン変性物質『エストロモドキン』を使った人工子宮もあとわずかで完成いたします」
「本当ですか?」
「残念ながら、人工子宮と申しましても出産まで出来るようなものではありませんが、隆一郎様から言われておりました伸縮性・耐久性に関しましては、本物の子宮と殆ど変わりありません。しかも、その素材の中にあの『エストロモドキン』を高濃度で含有させてありますから、現在、めぐみ様の女性ホルモン投与に使用している人口睾丸を切除いたしましても、自然な形で女性ホルモンを体内に取り入れることが可能となります。ただ、・・・・・」
「あとは『エストロモドキン』の極度の依存性の問題ですね、小村井さん」
「そうです、一度でも『エストロモドキン』の生成した『変性女性ホルモン』を体内に摂取すると、それ以後、『変性女性ホルモン』なしでは生きていけない体になってしまいます」
「と・・・いうと?」
「体内の濃度があるレベル以下になりますと、麻薬と同じような禁断症状が現れ始め、そして、もし完全に切れてしまうと・・・」
「切れてしまうと・・・?」
「精神に異常をきたし、やがては廃人同様に・・・・・」
「そ・・そうですか、それが『エストロモドキン』を禁断のイオン変性物質として位置づけ、世界の医学会がその使用を禁止している理由なのですね」
「その通りです。それでもやはり・・・使われるおつもりですか、隆一郎様」
「勿論です、ここまで来たのですから・・・」
 二人が問題にしている『エストロモドキン』とは、環境ホルモン(内分泌撹乱物質)に類する物質で、精液の成分の一部を女性ホルモンと類似した物質へと変性させる働きがある。しかし、この変性女性ホルモンには二人の会話にも出て来たように極度の依存性があり、医薬物質としての使用は認められていない。
「しかし、隆一郎様・・・それでは、あまりにもめぐみ様がお可哀想なのでは・・・・」
「いいえ、構いません。それより、恵一がその『エストロモドキン』を含有する人工子宮を移植され、そこで私の精液を受け止めた瞬間から精液なしでは生きて行けない体になるというのであれば、ふふふっ・・・今から恵一との初夜の営みが楽しみです」
 何という恐ろしい話だろう。恵一に女子高生活を送らせているその陰で、このような恐ろしい計画が進められていたとは・・・。
 そのような事も知らず、恵一は今も女性化の進む自分の心と体の変化と戦い続けている・・・・・。

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