Kawahagi   作:Z
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萩原真(41歳)某有名私大工学部情報工学科卒、元TSシステムエンジニアリング社長
しかし3年前、TSシステムエンジニアリング社は50億もの巨額の負債を抱えて倒産。萩原は暴力団系の金融機関に多額の負債を負っていたために、自己破産もままならず海外協力隊メンバーに潜り込み逃げるように日本を脱出、ODAの一環として現在中近東の某国でシステム開発に従事している。ただ業務終了の時期が迫っておりその時はビザは失効し日本に帰らなければならない。
そうなれば再度多額の負債を抱え債権者に追われる運命が待っている。
独身
高山安岐(40歳)元TSシステムエンジニアリング専務、コンピューター専門学校卒だがかつては天才プログラマーとして業界内では知られた存在であった。
萩原と共同でTSシステムエンジニアリング社を経営していたが、やはりTS社倒産と伴に多額の負債を負い、萩原と伴に海外協力隊メンバーとして中東某国に逃亡してきた。
なお現在は独身だが離婚した妻がいる。子供なし。

あーあ・・・・・
萩原も高山もやりきれないため息をつく。あれから1週間経っていた。
この一週間というもの二人とも外に出ていない。まあシステム開発の過程においてこのようなことはいくらでもあるし、そのために食料等の備蓄はある程度はあった。
しかしより大きな問題が目前に迫っていた。納期まであと1週間しかないのである。
そこでシステムが完成されていなくては職務怠慢ということで即時にビザを打ち切られ日本に帰らなくてはならない。
たとえ完成しても業務終了ということでビザは失効する。
案の定システム開発は何一つ進んでいなかった。
二人とも過酷な現実から逃避するように、1日中己の美しい女体を互いに重ね合わせ、性の享楽をむさぼっていた。もっともさえない二人の中年男が突然美女に変身してしまうことこそ現実離れしているのだが・・・
「おい、いつまでこんなことしてるんねん。納期まで5日しかないんやぞ!それを美人に変身したことをいいことに1日中俺を凌辱しくさりやがって、この助平。昔からどうもおかしいと思っていたが俺に対してそういうみだらな欲望を抱いていやがったんやな!このホモ男が!」
高山は萩原をののしる。
「やかましい!襲ってきたのはお前のほうだろ!誰が以前のお前のようなむさくるしい男に欲情するか!突然こんな不条理かつ倒錯した状態に突き落とされてあわれだと思うからこそお前のような性転換ブス女でも相手をしてやってるんだ!ありがたいと思え!それにホモというよりレズというほうが正しいだろ!」萩原も応酬する。
「とうとう本音を吐きおったな!この変態!やっぱり俺の美しさに劣情を抱いて俺をレイプし続けてたんやな!」高山も負けていない。
突然二人とも沈黙した。ただ言い争うことのむなしさを感じたのだ。
「やめやめ!仲間割れしとってもはじまらんわ。それより今後のことや。いったいどうするつもりや?」高山は再度ため息をついた。

「どうするって・・・・いっそこのままフケるか?」萩原は突拍子もないことを言い出す。
「あほう!戸籍も持たない女二人見ず知らずの外国でふらふらしとってみい!ここいらには人身売買組織がうじゃうじゃいるんやぞ!一生売春宿に監禁されて男達に春を売らされることになってもいいのか?」
「そうだな、どうしようかな」萩原は考えこんだ。
「まったく、なんも考えてない男、いや今は女か・・・・いいかよく聞け。昨日ネットを見てたらな、この国で初の航空会社が設立されるらしいんや。その会社は日本までの航路を開設する予定で若干名やがフライト要員も募集しとる・・・」
「そうか、パイロットなら無理だが・・・」
「そうや、女性名と経歴をでっち上げ二人ともスッチーとして日本航路にもぐり込むんや。」
高山はニヤリと笑う。それも実に魅力的な微笑みで・・・・美女の微笑だ。
「よし、それならまずは名前からだ。お前は何と名乗る?」
萩原も負けないくらいの美貌を上気させて尋ねる。
「そうやな。俺の安岐という名前は女でも通用する名前やが、過去の経歴を隠すためには本名から離した方がいいと思うんや。だから俺は美貴と名乗ることにするわ。」
「それってお前の別れた奥さんの名前じゃ・・・・・」
「やかましい、過去の古傷掘り返しくさりやがって・・・・さあ、お前の番や。」
「俺は怜子と名乗ることにするよ。」
「昔入れ揚げてたキャバクラのねーちゃんの源氏名やな・・・。」
「うるさい!ほっとけ!お前よりましだ!さあ、それなら準備にかかるぞ」
「準備というと」
「スチュワーデスの面接受けるのに男の服着て行く気か?」
「なんや嬉しそうやなー。もともとその気があったんとちゃうか?よかったなー。望みがかなって。」
「やかましい!お互い様だろ!」
その日の内に準備(女物の服を揃えること、もちろん下着を含めて)を終えた二人は、2日後に国営航空会社の面接を受け、即座に採用され、4日後には成田行きの便にスチュワーデスとして搭乗していた。

共和国国営航空成田行き第1便、乗客は予想通り日本人で一杯だった。NGO団体、商社、外務省及びその他の官庁の役人。乗客全体の7割ほどは日本人だった。
国際貢献と称しここにも多数の日本人が来ていたことを示していた。
残りは欧米人、アジア系の人々が半々ぐらい。しかしこの乗客には奇妙な特徴があった。しかし国外脱出に頭が一杯だった二人には、そんな特徴に気付く精神的余裕などなかった。
救命胴衣の装着など非常時の対応のためのブリーフィング、行先案内、食事、飲料の用意などの乗客サービス。二人ともスチュワーデスとしての多忙な業務をとまどいながらなんとかこなしていった。
やがて乗客は睡眠時間に入った。二人ともやっと一息つける状態になった。

「おい、どうやらここまではうまく事が運んだようやな」高山が言った。彼、いや彼女は長い黒髪をアップに束ね、スタイルのいい豊満な肉体をスチュワーデスの制服に包み、紺色のパンティストッキングに覆われたすらりとした長い脚線美を投げ出すように組んでいた。
もともと長身のためか女性化してもスタイルの良さは変わらない。まさにスチュワーデスになるために生まれ変わったような女だった。
いや、そのことなら萩原も負けてはいない。制服を着た清楚な美しさとスタイルの良さ、特に脚線美の美しさについては高山に負けてはいない。ただ髪の毛は高山のようにアップに束ねることはせず、さらりとした流れるようなロングヘアーをなびかせていた。
「ここまではな。しかし出口が大変だぞ。昨年の米同時多発テロ以降空港の警備は厳重だからな。いくら航空会社から支給された身分証明書があっても油断は禁物だぞ。」萩原は諭すように言った。
「わかった、わかった十分気を付けるようにするわ。しかしな無事に日本に帰れたとしてそれから後のことはどうするのや?俺達は契約スチュワーデスなんやぜ。それも今回のフライトのみの・・・戻り次第早速仕事を捜さなければならん。どうすんのや?今や日本経済破綻秒読み、俺達のように戸籍のおかしげな人間を雇ってくれるところなんかあるんかいな?」高山は声を潜めて言う。
「とにかく今は無事日本に戻ることに専念するんだ。それからのことは日本に着いてからだ。」萩原も声を潜めて答える。
「わかった。まあとにかくがんばろうや」高山がそう言うと、二人とも仮眠に入った。
10
第1便は無事成田についた。しかし空港を出た二人を大きな衝撃が待っていた。
近代的な空港ビル、しかしその出口から先には荒涼たる荒野が地平線の先まで広がっている。
地平の先に街が点在しているようだが、空港周辺には建物らしきものは空港ビル以外何も見当たらなかった。またあれだけの数の乗客は何処へ消えてしまったのか、空港ビルの回りには誰もいなかった。
とても首都圏にある国際空港からの光景とは思えない。
「おい、ここは本当に日本なんやろうな?」高山が尋ねる。
「植生、気象を見る限り、日本であることは間違いないようだが・・・・」
萩原もただあっけに取られるていた。
「成田の周辺ってこんなに広々していたか?」
「まさか、かりにも首都圏にある国際空港やぞ!それがなんや!建物はおろか人っ子一人見当たらないやないか!日本にこんな空港があるわけないやろ!」
高山はその清楚な美貌に似合わないような大声をあげる。
誰もいない荒野の中の空港ビルの前、美人スチュワーデスが二人呆然としてたたずんでいる。
これ以上シュールな光景は無いだろう。
「俺はこの光景をどこかで見たことがある。」
萩原は色白の美貌を上気させ思い出したようにつぶやいた。
11
空港ビル内喫茶店、奥のボックスにはスチュワーデス姿の美女二人がぐったりした様子でへたりこんでいた。高山と萩原だった。二人とも制服の上着は脱いで今はブラウス姿になっていた。
「もう、なにがなんだかさっぱり分からんわ。ここまで訳のわからんことが続くと俺の頭もどうにかなってしまいそうや。」高山はうんざりした様子で愚痴をこぼす。
「日本に帰ってきたが、異空間の中の日本だったとはな・・・まさか、俺が千歳空港周辺の風景に似ていると言ったとたん、本当に千歳空港になってしまったとはな・・・」萩原もため息をつく。
「あほな事言いなさんな!俺だって昔は結構北海道に行ってたんや。確かにをあそこの周辺は広々としているが、周りには山々が広がっていて、地平線が見えるなんてことはない。ええか、日本国内で地平線の見える所と言ったら今や根釧原野だけなんやぜ。お前があほうな事を言った瞬間あの成田の巨大な空港がこんなしみったれた地方空港に変わってしまったやないか!おまけに荷物は届いてない、着替えもない、移動のための交通機関は見つからない、手持ちの金はないで、これからいったいどうするつもりや?」
「急いで出国したために外貨を円に交換できなかったからな。」
「換金してたからって使えるもんかいな!さっき売店で客が支払うのを見ていたら、見たこともない金を使っておったで。」
「そうしたら、俺達一文無しじゃないか!本当にどうする?」
「知るかいな!しゃあない。これを使うしかないやろ!」高山はテーブルの上に航空会社からフライトの報酬として支給されたVISAカードを投げ出した。
「大丈夫か?使えるのか?これ」萩原は不安そうにたずねる。
「他にどうせいっちゅうねん!ま、使えるやろ、ここの支払いには通用したみたいやし」
「何だ、もう支払って来たのか?済まないな。」
「とぼけた事言うとる場合やない!一応VISAは全世界共通やからな。使えることは使えたが残高がどのくらいあるかわからんさかいな。ま、どこかに信販会社のATMがあるやろ。そこで調べてみるこっちゃ。」
「いや、今調べてくるよ」萩原は席を立ち喫茶店から一時外に出た。高山は疲れが出てきたのかうとうとと居眠りを始めた。
数分後高山は萩原に揺り起こされた。
「おいっ!大変なことが起こった」萩原の美しい色白の顔は少し青ざめていた。
「なんや、やっぱり空っけつか、しゃあないやろ。いざとなればプーでも風俗でもお水でもやるしかないやないか!」高山は開き直っていた。
「違うんだ。その逆だ。残高を調べてもらったら、100,000,000円という金額が弾き出された。」萩原は引きつった様子で答えた。
「何いー、そりゃ返ってやばいやろ!そんな高額な金を国外から持ち込んだら・・・・」高山もさすがに動揺し始めた。
「いや、カード自体は問題なく通用するし、不審がられることもなかった。それに、ここは国際空港ではない。一地方空港に過ぎない。」
「なんや?それってどういうことや?俺達は国際便のスチュワーデスなんやぞ!いったいどうなってるんねん!」
「とにかく、ここはこのカードに頼る他はないだろう。そして移動手段だがバスの最終便が出てしまっていて、あとはレンタカーでも借りる他ないそうだ。」
「やめやめ!もう動く気になんかならへん!今晩はここの付属のホテルでも宿を取ることにするわ。あとどこぞにブテックなんかないのんか?手荷物の中に着替え全部が入っていたからな。どっかで買わなければならん。」
「いや、そんなしゃれたものはここにはない。一応ホテルだけはあるようだが・・・・」
「なんや、ほたらこのスッチーのコスプレが俺達の一張羅かいな。力抜けるで。ほんまに・・・しゃーない、宿でも取ってくるか。」
高山と萩原は空港ビル内のホテルのフロントに向かった。

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