地球征服に関するオレ的実践と顛末 作: 摩火
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地球征服に関するオレ的実践と顛末71

「うん?何かな、姫君。」
ゲゲッ、オレのこと、姫君だって?このオレが?
生まれてこの方、常に硬派の生き方を信条としてきたオレにとって、姫君と改めて面と向かって言われるのは思わずたじろいでしまうくらいの気恥ずかしさを与えた。
しかし、オレはそんなことはおくびにも出さず少し微笑みながら言った。
「大佐様もご存知のように、わたくしは身一つで葬神博士様の基地を脱出してきました。このままここで暮らすにしても、身の回りなどを色々整えねばなりません。」
「おお、そうか、そうか、そんなことならいくらでも買い求めるぞ、服でも何でもなんなりと言ってくだされは。」
「はい、ありがとうございます。お心遣いに感謝いたします。以前に住んでいた家では、色々と身の回りの世話をしてくれるばあやがいたのですが・・・・」
実は色々と身の回りの世話をしてくれるばあやとは、オレのお袋のことだった。
「うむ、そうか、身の回りを世話する以外にも、姫には普段の話し相手も必要だしな、よろしい、私が誰かみつくろっておこう。」
「はい、重ね重ねありがとうございます。大佐様はとてもおやさしい方なのですね。」
男というものは、女に賞賛されるととにかく舞い上がってしまうものだ。地獄大佐もその例にもれなかった。
「おお、そうだ、姫と一緒にあの基地を脱出してきた看護婦13号と、護衛用に戦闘犬5号をつけようか。」
地獄大佐はひらめいたように言った。
実は、その人選こそオレが望んでいたことだったのだ。
このオレが華族の血をひく姫君であると地獄大佐に思わせることに成功したオレにとって、オレの出自の秘密を知る2人の・・・いや、1人と一匹の存在はとてもほおっておけるものではなかったからだ。
いつ何時、ひょんなことからオレの秘密が彼らの口から漏れ出さないとも限らなかった。
かといって、今すぐ口封じのために殺したりすることは到底できなかった。
敵にできぬのなら味方にすべし、オレは看護婦13号と戦闘犬5号を完全にオレの仲間に引き入れるつもりだったのだ。
もっとも、3人はすでに小さな秘密を共有している。
それは、女郎1号という男の性欲を処理する貴重な改造体を地獄大佐のもとに持っていけば、自分たちも敗残兵として冷遇されないだろうという動機があったに違いない。そしてそのためには同性愛嫌いの地獄大佐にオレの出自・・・つまり男だったことを知られては絶対にまずいことだったのは容易に想像がついた。
オレの前身が男であることを隠した時点で、看護婦13号と戦闘犬5号は弱みを持ったことは間違いなかった。


地球征服に関するオレ的実践と顛末72

オレは彼らのこの弱みを利用し、さらに拡大して、オレだけの仲間を作ろうと考えたのだ。
もっとも、オレの護衛にと推薦された戦闘犬5号は、オレの肉体の貞操を以前から狙っている。その意味では護衛ではなく、危険かもしれなかった。
地獄大佐はまた胸に付いている通信機に小声で二言三言命令を発した。
「姫、もう少々お待ちを、今2人を呼び寄せましたからな。」
地獄大佐が得意げに言った。
「ありがとうございます。こんなにご親切にして頂いて、ご恩は決して忘れません。」
「いや、なんのなんの」
地獄大佐は大仰に手を振った。
「時に姫君、私はあなたの呼び方を何と及びすべきかな。ここでは俗界の名前は捨てる決まりになっておるし、幹部以外はみな番号で呼ばれる決まりになっておる。しかし、私はあなたを番号では呼びたくないのでな・・・・どうだろう、あなたを幹部に任命し名前を付けさせていただくというのは。」
「はい、地獄大佐様にお任せいたします。」
姫君を演じている以上はオレはあくまでも奥ゆかしくおしとやかでなければならなかった。
「そうかそうか、それならば・・・・プリンセス・ヘルというのはいかがですかな。僭越ながら俺様・・・私の名前の一字をとったものだが・・・」
あまりセンスのある名前とは言いがたかったが、オレはにっこり微笑んだ。
「・・・プリンセス・ヘル・・・まあ、とっても素敵な響きですこと。大佐様の御命名のままに従いますわ」
「そうかそうか、気に入って頂けましたかな。」
オレに気に入られたと思った地獄大佐は更に有頂天になった。
『このスケベのエロジジイが』
オレは腹の中で密かに笑った。
その時、部屋にノックの音がした。
「おお、来たな。入りたまえ。」
地獄大佐が大声で命令をした。
おずおずと入ってきたのは、例の看護婦13号と戦闘犬5号だった。
「地獄大佐殿、ご命令により出頭いたしました。」
看護婦13号と戦闘犬5号は貴婦人のような純白のドレスをまとったオレが地獄大佐の傍にいるのを不思議そうに見やりながら言った。

地球征服に関するオレ的実践と顛末73

「おお、お前達に新たな命令を与える。お前達はただいまよりプリンセス・ヘルの使用人及び護衛としてプリンセスの命令下に入るのだ。」
地獄大佐は堂々とした威厳のある声で彼らに命令した。
「はい、かしこまりました。ご命令通り、プリンセス・ヘルの指揮下に入ります。・・・あの・・・大佐殿、プリンセス・ヘルとは・・・まさか・・・女郎1号のことでは・・・」
看護婦13号が戸惑ったような声で言った。
「無礼者!このお方をどなたと心得る。日本の華族の血を引く姫君なるぞ。」
地獄大佐はオレのウソ八百の言葉をそのまま並べ立てた。
「うへっ、へへへっー」
看護婦13号と戦闘犬5号が思わず平伏したところで地獄大佐の通信機がピーと音を立てた。
「ああ、もしもし、俺だが・・・・なに!そうか、分かった。すぐ行く」
地獄大佐は何かの緊急事態が発生したのか、非礼をオレに詫びるとそそくさと部屋を出て行った。
その後にはオレと看護婦と犬が残された。
「で、一体何がどうなっちゃったワケ?」
地獄大佐が出て行ったの見届けてから看護婦がオレの方を振り向き言った。
「ウウウウッ、そうだ、何でオレがお前に土下座しなきゃならないんだ。」
戦闘犬までが腹立たしげにオレに詰め寄ってくる。
「ま、まあそう怒らないで、ちょっと座ってくれないかな。どうなっているのか説明するから。」
オレは彼らの気持ちを落ち着かせようと黒い革張りのソファーを指した。
「・・・ったく、もと男のセックス用の雌奴隷同然のあんたが、何でお姫様なのよ。」
看護婦はブツブツ言いながらもオレが指したソファーに座った。戦闘犬もソファーの横にペタッと座る。
「実は・・・最初は葬神博士の基地にもあったような娼婦用の部屋に入れられたんだけどさ、そこで大佐の理想の女性とは何なのか分かっちゃったワケよ。それが高貴な生まれのお姫様ってワケ、こっちも基地の司令官に気に入られたいからってさ、自分がさる華族の流れを引くお嬢様ってことを匂わせたら、大佐ッたらすっかりハマッちゃってさ、どうやら完全ストライクゾーンど真ん中だったようでサ」

地球征服に関するオレ的実践と顛末73

オレは自分の知能が以前よりはるかに良くなっていることを隠すためにわざと軽い口調で話した。
「ふーん、そうなんだ。それで娼婦からお姫様に出世ってことかぁ。でもさバレたら大変じゃあないの。ただじゃあ済まないと思うよ。」
看護婦が不安そうに聞いた。
「うん、それはその通り、でも最初に前身が女子高生じゃなくて男なことを隠してた時点でもうヤバかったワケだし、それにこの秘密知っているのはあんたたちだけだし、あんたたちさえ黙っていれば絶対に分かんないと思う。それにわた・・・オレがプリンセス・ヘルとして基地の幹部になればあんたたちにもそれ相応のことは色々してあげられると思うよ。」
オレは看護婦と犬を説得にかかった。
「うーん、そうねぇ、あたしもこの基地の風習いまいち馴染めないしね。なんていうか、あまりにも軍隊軍隊しすぎているのよね。それに葬神部隊から落のびて来た敗残兵ってことで、皆の目は白いしさ、与えられる仕事は見習いのやるような簡単なものばっかしだしさ、かっての葬神博士の改造実験室の主任看護婦なんてキャリア丸で無視されているしさ」
看護婦はここで言葉を切って戦闘犬5号を見た。
「ウウウッ、オレは軍隊っぽいとこ好きだぜ。だか、ここはあまり好きにはなれねえな。人間の恐怖心の臭いがプンプンしている。きっと地獄大佐は見せしめのために処刑を繰り返しているぜ、さっきは愛想が良かったが、それはあんたが傍にいたからだろう。」
戦闘犬の見かたは犬独特の嗅覚からもたらされたものだったが、その見解はオレにはピーンときた。
そうなのだ、地獄大佐はこの基地では恐怖政治をひいている。誰からもサディスティックで危険な存在と見られたいという彼の願望の現れなのだ。
オレは自分の行動にますます注意を払わなくてはならないと思った。少しでもしくじれば、即処刑される可能性は高かったからだ。

地球征服に関するオレ的実践と顛末74

「うーん、どうやら決まったみたいね。あたしたちはあんたに協力するわ。」
看護婦がオレのほうに向き直りながら言った。
「ウウウッ、その通り、だがいつかやらせてくれよ。」
戦闘犬は相変わらずオレとセックスをしたがっていた。だが、とりあえずオレはこれで仲間を手に入れることが出来たわけだ。
今の非力な状態のオレにとって戦闘犬のもたらす戦力は決して馬鹿にならないはずだった。そして看護婦13号は組織の内情の知識を豊富に持っている。これだけでもオレは地獄大佐の組織の中でおおきな力を持つことができる。
なおかつ、オレには地獄大佐のお気に入りという大きなバックアップも持っている。もっともそれは今のところ確固たる絆にはなっていないが、けっこう早い時期に彼の愛人という地位も手に入れる必要があった。
『そうか、やっぱり地獄大佐に体を許さないとだめかぁ』
オレは密かにそう思った。
地獄大佐のペニスがオレの体を貫く、そう考えただけでオレの心は暗くなった。しかし、それに反してオレの豊満な肉体は別な反応を示した。つまり、あそこがジンとなり、濡れてくるのが分かったのだ。
「ねえ、なに考えてんの、お姫様。」
看護婦13号の声にオレはハッと我に返った。
「とりあえず、あんたが地獄大佐にますます気に入られるようにすればいいんでしょ。ならうんと上品そうにおめかししなきゃね。まあ、まかしといて。」
看護婦13号はオレに向かって軽くウィンクすると部屋を出て行った。
後には戦闘犬とオレが残される。
戦闘犬がのそっと立ち上がった。
「おっと、オレを襲うんじゃないぞ、そんなことをしたら処刑もんだからな。」
オレはちょっと不安になりながらスカートのへりをしっかりと押さえた。
「ウウウッ安心しろ、ちょっとしょんべんだ。・・・そんなことよりあんた普段からお姫様のような言葉遣いしていないと、ひょんなとこから卑しい身分だとバレてしまうぞ。」
戦闘犬の言うことももっともだった。
「あ、あら、そうね。おっほほほほ」
流石にそう言ってしまってからオレの全身に気持ち悪さによる鳥肌が立ったのは言うまでもないことだった。
看護婦はブラッと出かけたまま半日近く帰ってこなかった。
オレはその間、手持ち無沙汰のあまりテレビを見たりしてボケーと過ごさざるをえなかった。
上流階級の生活もけっこう退屈なものだ。

地球征服に関するオレ的実践と顛末75

看護婦が戻ってきた時には、オレはおしゃべりする相手ができたことにホッとしたくらいだった。
看護婦は戦闘員の一人に山のような荷物を持たせていた。
「な、なんですの、そのたいそうなお荷物は」
不審そうに尋ねるオレに看護婦はふふふっと含み笑いを返した。
「これはプリンセス・へル様用のお召し物や小物でございます。地元のデパートで早速購入してまいりました。しかし、銀座と違いなかなか高級なものが少なくて、申し訳ございません。お気に召すと宜しいのですが。」
看護婦は荷物を運ばせている戦闘員の手前もあるのだろう、オレに対して敬語を使った。
「とりあえず、良さそうなものだけをみつくろってまいりました。他に手に入らないものは、銀座の店に現地連絡員を使って取り寄せております。」
そう言っている間にも、戦闘員はさっとオレにナチ式の敬礼をするとそそくさと部屋を出て行った。
どうやらオレの地位の向上はいつの間にか全結社員に知れ渡っているようだった。
戦闘員が出て行ったのを確認してから看護婦はふうっと大きくため息をついた。
「ああ、疲れた。半日買物し続けだもんね。」
看護婦はそばにあったソファにすとんと腰を下ろした。
「ご苦労様です。それよりどのようなものを買ってらしたのですか?」
オレは姫様の言葉遣いを意識しながら聞いた。

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