地球征服に関するオレ的実践と顛末 作: 摩火
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地球征服に関するオレ的実践と顛末66

地獄大佐がオレをある程度ていねいに扱おうとしているのは、今の訪問予定を告げる放送で想像がついた。これはけっこう有望かもしれない。
オレは急いで石鹸を手にとり、体をざっと洗い流した。
股間やおっぱいに洗う手が触るたびにオレは「あんっ」とか色っぽい声を上げながらも、気分を出している場合じゃあないと自分を叱咤激励した。
しかし、それにしてもこの女体はやっかいだった。
なにしろ強烈な性感帯のゾーンが多すぎるのだ。体全体が性感帯と言ってもいいくらいだった。
ともあれ、おれはようやく全身や髪を洗い終え、風呂場から出た。
残り時間はあと20分、オレは先ほど用意した白い絹のビスチェとショーツのセットを身につけた。
オレの細いウェストがビスチェのコルセットで更に細く絞られる。
オレは浴室の鏡の前にあったドライヤーで急いで髪を乾かした。
うまい具合に髪はふわりとした女らしい膨らみを持った形に整えることができた。
それから白い絹のドレスを身に纏う。
『おっと、お化粧、お化粧、大変だ、時間がない。』
オレは丸でデートに遅れそうな女のようにあたふたとバスルームを飛び出し、鏡台の前に座った。
とにかく、上品な皇女様のような化粧をしなければならない。
オレは頭の中に入っている化粧の知識の中から、簡単で上品に見える化粧の知識を取り出し、メイクに入った。
「お知らせします。基地司令官の地獄大佐がまもなく到着されます。」
天井のスピーカーがまた放送を流した。
オレはルージュを急いでひきおわると、地獄大佐を入り口に出迎えに向かった。
どうやら間に合ったようだった。入り口のドアが開くころには俺はその前にいることができた。
地獄大佐は大股で威厳たっぷりに入ってきた。
その堂々とした様子といい、口の上を彩るカイゼル髭の風貌といい、それはまるで100年位前の軍人そのもののアナクロニズムをかもし出していた。

地球征服に関するオレ的実践と顛末67

「地獄大佐様、お待ちしておりました。」
オレは映画の中で外国の上流階級の女性がよくやるように膝を曲げ、腰を少し落とした。
「ムッ、あっ、ああ」
地獄大佐はオレの純白の装いと上品な言葉遣いに意表をつかれたようだった。
「急なお越し故にご満足のいくおもてなしができぬとは存じますが、どうぞごゆるりとご滞在下さいませ。」
オレの言葉のトーンはいつもより1オクターブは上に上がっていた。
「うっ、むっ」
地獄大佐は下卑たセックスの塊の娼婦的対応を想定していたために、オレの意外な出方にまだ自分がどう対応していいのか分からないようだった。しかし、さすがに司令官として臨機応変に対応する術はもっていた。
「うむ、丁重な出迎えご苦労。中に入ってもいいかな?」
「はい、もちろんでございます。わたくしは地獄大佐様の庇護下に入っておりますゆえ、」
オレはなるべく凛とした風情が出るようにして言った。
オレの頭の中にあるイメージは「カリオストロの城」に出てくるクラリス姫だった。毅然とした高貴さを保ちながらも愛する人に対しては身も心も全て投げ出せる姫君、そんなイメージを相手に持たせることができれば半分成功したも同然だと思われた。

地球征服に関するオレ的実践と顛末68

オレはくるりと背を向け、相手がついて来るのが当然だとでもいうように歩き始めた。
オレの目的とする部屋はただ一つしかなかった。
この変態の溜まり場のような数々の部屋の中でも比較的ましな部屋が1つだけあった。
それは豪華なロココ調の調度が置かれている応接室のような部屋だった。
恐らく、そこはオレにクラッシックスタイルのメイドの服装をさせ、貴族になりきった男がオレにかしづかれながら色々なことをしようとの目的で作られた部屋なのだろう。
暖炉の上の壁にはドラクロワと思しき(あるいは模造品?)大きな風景画がかけられ、サーベルなどもぶっちがいにしてかけられていた。
「どうぞおかけ下さい。身の回りを世話するものがおりませぬゆえ、なんのおもてなしもできぬとは存じますが・・・」
オレは落ち着いた口調で喋った。
「いや、なんのなんの、時に貴女は、そのう・・・葬神博士に捕まる前は女子高生と伺ったが・・・」
「はい、改造のせいであまり記憶が定かではない部分もございますが、学○院におりました。」
オレは都内でも有名な上流階級の子女が通う学校の名前を挙げた。うへっ、本当は不良とヤンキーの溜まり場である某公立高校出身なのだが。
「お父様は会社を経営しております。ひいおじい様は以前貴族院の一員だと聞いております。それ以前のご先祖様は近畿の方の大名だったそうです。」
オレは平然とした顔つきでウソ八百を並べ立てた。
「すると、貴女はかつての華族の血をひいておられるのか、どうりで立ち振る舞いが違うと思ったが。そうか、世が世なら、貴女は華族の姫君と言うわけか。」
オレみたいな綺麗な女性が喋ることに男達はコロッと騙されてしまうものだ。しかも今のオレは女の手練手管のあらゆるものが使えた。地獄大佐もオレの嘘八百を信じかけているようだった。
「そのう、なんというかな、わしは葬神博士が改造した・・・そのう、女郎タイプということで・・・そのう、なんというか・・・」
地獄大佐はしどろもどろになっていた。
「ご安心下さい。このような部屋、わたくしは何とも思っておりません。確かに多少奇妙な部屋が多いようではありますが。それにこの体とてわたくしの元の体とは似ても似つかないものにされておりますが、葬神博士様はわたくしの心までは変えられませんでした。」
オレは地獄大佐を制するように言った。
「そのう、貴女はあまり気にしていないと言われるのか。そのような体に成り果てても。」
地獄大佐は驚いたように言った。
「はい、このようになってしまったことはなってしまったこと、今更嘆いてもせんないこととあきらめております。」
オレは苦難に耐えるお姫様の役を見事にやりとげたようだった。その証拠に、地獄大佐のいかめしい顔つきがガラリと変わり、感動の表情がありありと表れてきた。

地球征服に関するオレ的実践と顛末69

「おお、なんという清純な心の持ち主、この欲望と穢れに満ちた世界にこのような清純な乙女がいようとは。」
地獄大佐は自分が欲望と穢れに満ちていることを棚に上げ、大仰で大時代的な言葉を口にした。相変わらずのアナクロニズムぶりだった。
「いや、この地獄大佐、感動しましたぞ。どうか、正式にオレ様・・・いや、わたしの賓客になっていただきたい。このような下賎で下劣な部屋に案内したのは部下の大失態であった。貴女には賓客ルームが相応しい。しばしお待ちいただきたい。」
地獄大佐は軍服の胸ポケットに付けた通信機に早口で何事かを命令した。
しめしめ、オレは心の中で密かにペロッと舌を出した。
やはり男というものは、女に対する好みのツボさえ押さえてしまえばコロッと行ってしまう。その証拠に、地獄大佐のオレを見る目つきは賞賛と崇拝に満ちた恋するものの目つきになっていた。
その時、ノックの音と同時に慌てたように戦闘員が入ってきた。オレを最初にここに案内してきた戦闘員52号だった。
「ウキキッキー(お呼びですか、大佐殿)」
戦闘員はオレをチラッと盗み見ながら大佐に敬礼した。
「コラ!52号、お前はなんでこの方をこんな下賎な部屋に案内したのだ。この大ばか者!この方を今すぐ賓客ルームに案内せい!」
地獄大佐は戦闘員52号を一喝した。
驚いたのは戦闘員のほうだった。
「う、ウキ、キキキ(えっ、あれ、だって大佐殿がここに・・・・)」
「何をごちゃごちゃ言っておる。いいか、このお方はこんな所にいていい人ではないんだぞ、まったく、お前は人を見る目がないのか!」
戦闘員は一方的に大佐に怒鳴られ、可愛そうにも目を白黒させた(ようだった。なにしろ全身黒タイツなので)
「いや、失礼、とんだお見苦しいところを・・・ささ、では賓客ルームへと・・・」
地獄大佐に促され、オレは腰をあげた。
「ウキッ、キキキッ(あのう・・・大佐殿、賓客ルームと言うと、あの、首領殿が見えられたときにお泊りになるあの部屋でしょうか。)」
戦闘員52号が恐る恐る聞いた。
「あたりまえじゃ!ばか者!このお方をそこに案内せい。」
いやはや、権力を持っている物と泣く子には勝てるわけがない。戦闘員52号はこめつきバッタのように平身低頭してオレを賓客ルームとやらに導いた。
「ウキッ、キッキッ(なんなんだ、一体なにがどうなってるんだ。)」
ぶつぶつとひとり言でぼやきながらもオレを賓客ルームに案内すると戦闘員52号は逃げるようにして去っていった。
可愛そうに、オレの体にディルドーやバイブを入れて遊ぶという夢が結局はかなえられなかった訳だ。
オレはちょっと残念な気持ちもしていた。なんていったって、この体のもたらす快感は尋常一様なんてもんじゃあなかったからだ。
それに残念なことももう一つあった。
あの風呂場にあったディルドー付きの椅子のことだ。
あの椅子、オレの心を引き付けて離さなかったあの椅子、あれを持って来れなかったことはとても残念なことだった。
しかし、清純な乙女を演じている今のオレがその椅子を持ち出すことなど到底かなうはずもないことだった。
賓客ルームは重厚な落ち着いた家具調度が置かれた上品な部屋だった。
先ほどの卑猥ルームのロココ調の部屋も豪華なものだったが、この部屋はロココ調の、悪く言えば成金趣味の部屋とは違って、上流階級の臭いが染み付いた部屋だった。

地球征服に関するオレ的実践と顛末70

「どうですかな、この部屋は、気に入ってもらえましたかな。」
遅れて入ってきた地獄大佐が部屋の真中に立っている俺に声をかけてきた。
「ええ、とても素敵な部屋ですわ。大佐様」
オレは相変わらず上品そうに答える。
「そうですか、そうですか、気に入ってもらえて、俺さま・・・失礼、私も嬉しい。」
俺たちは部屋の真中にある応接セットに腰をかけた。
「時に、そのう、あなたのこれからの身の振り方を相談せねばならない。私としてはあなたの自由を束縛するつもりはない。しかし、大変つらいことを申し上げねばならないのだが、あなたを元の女子高生に戻すことは技術的に不可能だと聞いておる。そして、この基地の秘密と我々の存在を極秘にする為にも、あなたを元いた場所に戻すこともできぬのだ。」
地獄大佐は軍の司令官らしく、要点を率直に切り出してきた。
オレが技術的な問題で元の肉体に戻れないということは、以前葬神博士の口から聞いていたことだったが、オレは心の動揺を押さえながらも言った。
「はい、以前葬神博士様からその旨を知らされておりました。最初はもうお父様お母様にも二度と会えないと思うと、胸が張り裂けそうでした。でも、今はもう覚悟はできております。わたくしは今は地獄大佐様のご庇護のもとにおりますゆえ、大佐様のご指示に従います。」
オレは美女と野獣の1シーンを演じているつもりで可憐そうな様子を見せた。
地獄大佐の顔にはホッとしたような、憐憫のような表情が滲む。
「そうかそうか、そう言ってくれると俺・・私も安心できるというものだ。どうか、この基地に末永く居て欲しい、できれば今後も私の話し相手となって、毎日こうしてお話しする時間をとっていただければありがたい。」
その様子はウブな中学生の遠まわしの恋愛告白みたいなものだった。オレはそれを可愛いと思った。
「はい、喜んでお受けいたします。」
おれが小声で恥ずかしそうにそう答えると、地獄大佐の表情は歓喜にパッと輝いた。
「おお、そうか、そうか、それはありがたい。」
実に他愛のないものだ。オレのこんな演技にコロッとだまされてしまうとは。
「大佐様、実はひとつお願いがございます。」
オレは有頂天になっている地獄大佐に言った。

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