ジェード・コネクション7  作: 摩火 啓一は両手で耳をしっかりと押さえたかった。二度とゆかりの言葉など聞こえないよう にしたかった。 しかし、ゆかりの残酷なおしゃべりは続く。 「それからね、ハナは乳牛なんだからおっぱいも出るように改造しちゃうの。えっ、そ んなことが出来るのかって?大丈夫、奥村先生は出来るって言っていたわ。女性が妊娠し ておっぱいを出すときに出る女性ホルモンの一種を投与すれば直ぐにおっぱい出せるんで すって。凄いわね医学の力って。男もおっぱい出せるようになるんですもの。そして、お っぱい出るようになったら、本当の乳牛としてデビューよ。男の人がいっぱいハナの乳搾 りにやってくるでしょうね。大きくなったおっぱいの乳首絞られて、ハナは毎日よがり声 出すようになってしまうかもね。もう男の人のペニスしょっちゅう入れてもらわなければ 我慢できない淫乱な身体になっちゃうかもね。ミルク絞られながら何人もの男の人のこー いミルクをおまんこの中にいっぱい中出してもらうなんて、うらやましい限りだわ。きっ とハナも毎日交尾や乳搾りされて、乳牛娘にされて良かったとわたしに感謝するようにな るわよ。」 ゆかりはそこまで一気に喋ると、ふうっーと一息ついた。 ・ ・・本当にそこまでされてしまうのだろうか・・・ 啓一はそう思った。こんなことをしてゆかりの狂ったような復讐心は満足することがで きても、ゆかりに協力している医者だの看護婦だのには何のメリットもないように思えた 。 唯一考えられることは、ゆかりが何らかの方法で大金を手に入れ、それを使って敬一 に復讐しているのだろうとも思った。 考えられることはそれしかなかったのだ。 ・・・そ、そうだ、ゆかりのやつ、きっと宝くじか何かが当たったに違いねえ。2億も当 ・たればこんな理不尽な復讐でもゆかりに協力する奴はいるはずだ。・・・ 啓一は何とか自分が見舞われている体の女性化ではなく、違うことを考えようとした。 そうでなければ身体を身動きの取れない状態にされていることもあって、今にも発狂し てしまいそうだった。 しかし、またあっという間に不安が敬一を襲う。 ・・畜生、本当に俺を女にしちまうのか。しかもメス牛だと?ふざけやがって。この俺が 男にパイオツ絞られて、チンポ突っ込まれて喜ぶ変態になるちゅうのか、ありえねえ、 そんなこと絶対にありえねえ・・・ しかし、そう思ってみても自分の睾丸を切り落とさ れた事実が厳然としてあった。 睾丸を切り落とされ、しかも大量の女性ホルモンを注射 されているのだ。ここまでやるような連中が自分をこのまま放免するとはとても思えなか った。 ・い、嫌だ。女にされるのなんか嫌だ。絶対に嫌だ。早くここを抜け出して男性ホルモン 打ってもらわねえと、本当におっぱいもケツも膨らんできちまう。女みたいな身体にされ ちまう。・・・ 啓一は身動き一つ出来ない状態で次々と襲ってくる焦燥感に気が狂いそ うだった。 そんな敬一をゆかりが楽しそうに見ている。 「ほら、何とか言いなさいよ。 ゆかり様こんな醜いわたしを立派な乳牛娘にしていただけるなんてありがとうございます とか、そんな感謝の言葉ぐらい言えないの?」 ゆかりはボールギャグを口にかませられ、 喋ることすらできない敬一にむかってわざとらしく言った。 「あっと、ごめんごめん、 ハナは雌牛だから人間の言葉もう話せないのよね。そうだ、いいこと思いついた。奥村先 生に頼んでハナの声帯、もおっ〜としか言えない様に改造しちゃおうかしら。ねえ、いい 考えじゃあない?男の人におっぱいいじられて搾乳される時も、交尾されてよがり声出す ときも、モォ〜としか啼けないの。ねえ、本当にいい考えでしょ。」 ・・・なんじゃこ いつは、狂っていやがる。まともじゃあねえ・・・ 啓一は腹の中で毒づいた。 しかし、ここはゆかり以上に尋常一様の病院ではない。 何というか、病院自体が狂気の禍々しい波動に満ち溢れているようなのだ。 もしかしたら、そんな手術が本当に自分にされてしまうのではという考えが敬一の脳裏 をよぎった。その可能性はどうしても否定できないのだ。 「お待たせあるね。」 不意に敬一の横から女性の声が聞こえた。 それは見るまでもなくあの看護婦の声だった。 「あら、メェイメェイ(梅美)、持ってきてくれたのね。」 ゆかりがドアのところに行き看護婦と話している気配が感じられた。 ・ ・・そうか、あの看護婦はメェイメェイと言うのか・・・ そう知ったとしても、去勢されてしまっている敬一はメェイメェイにとっては何の性的 関心も感じない存在に成り果てていた。いまさら名前を知ったとしても何の意味もない ことだった。 少ししてからゆかりと看護婦が敬一の目の前に立った。 看護婦は何やら機械を積んでいるキャスターを押している。 「さて、エステの時間よ。ハナは無駄毛だらけだから、余分な毛は全部電気脱毛で除去 しちゃいましょうね。」 ゆかりの宣言に啓一は恐怖のこもった目でそのキャスターに積 まれた機械を見やった。 よく女性の行くエステで全身の永久脱毛を行うという話は聞いたことがあった。 それが自分に行われようとしているのだ。 「あら、心配しているの。不安なのね。 そりゃそうよね。でもこれは毛穴という毛穴に針を差し込んで電気で毛根を焼却すること により最も確実に永久脱毛する方法なのよ。そりゃあ痛いと思うけど、大丈夫すぐにつる つるすべすべの女の子の肌になれちゃうんだから。」 聴いているだけでその施術は痛そ うだった。 「まずは股間の永久脱毛からしてあげる。お尻の毛もアヌス付近に生えている醜い毛も 全部抜いてあげる。ハナはツルツルのパイパン娘になるのよ。それから腋毛とすね毛、 胸毛、ヒゲ・・・永久脱毛するところいっぱいあるわね。一日8時間は施術すれば1ヶ月 もあればツルツルのきれいなお肌になるわよ。」 「ゆかりさん、いくら私でも一日8時 間はムリあるね。応援の女の子大量に呼び寄せてあるから4人がかりでやるね。1週間も あればハナはきれいなお肌になるあるよ。」 メェイメェイが横からゆかりに言った。 「あら、そうしてくれるの? わあっ、嬉しいわ。そうすれば早くハナを女の子化できる ものね。早くつるつるの綺麗な肌になったハナを見たいわぁ。」 当事者の敬一を差し置 いてゆかりとメェイメェイの話はどんどん進行していく。 ちょっと待てと口を挟みたくてもできないもどかしさに啓一は切歯扼腕の状態だった。 「ちょっと待つね。約束の時間まであと少し、そしたらみんな現れるね。みな脱毛のプ ロだから痛いことあまりないあるね。」 しかし、メェイメェイの痛くないという言葉は 結局ウソだった。 それから5分ほどして3人の白衣姿の女性が現れた。 いずれも若い女性であったが、日本語は喋れないらしく、メェイメェイから中国語で何 やら細かな指示を受け始めた。 いずれもキャスターにメェイメェイの持ってきたものと 同じ機械を引いている。 その機械につながっているコードの先端に鋭い針状のものが付いていることに啓一は気 が付いた。 ・・・わわわわっ、ほ、本当に脱毛の機会?・・・ 啓一は今までエステなどで使われる電気脱毛の機械など見たこともなかったが、それが ゆかりの説明の中に出てきた機械であことを確信した。 気のせいかこれから脱毛されるという陰部の陰毛が恐怖でチリチリと痛み始める。 やがてメェイメェイの説明が終わったのか、メェイメェイも入れて4人の女性が敬一の 下半身に群がり始める。 今の啓一は下半身を覆うものなど一切ない。 いや、それどころかその下半身は男性としてあるべきものが1箇所だけ無くなっている のだ。 その部分を女性に直に見られることは敬一に強烈な羞恥を引き起こした。 それは嘲笑の対象となるような見世物だった。 「ほら、ここキンタマ抜かれたところね。この玉抜いた後の傷口はまだ治っていないか ら、そこ避けて脱毛するね。」 メェイメェイがわざと日本語に切り替えて説明し、 その後中国語で彼女達に説明しているようだった。 中国人の女性たちから一斉にクスクス笑いが聞こえてくる。 「更に、この男女は無理やり女性ホルモンたっぷり投与されているあるね。キンタマも うないからおっぱいもお尻もほどなく大きく膨れてくるね。そのうち気分も女らしくなっ て、お化粧してしゃなりしゃなりとお尻を振りながら歩くようになるかもね。だからその 前までに毛の一本もないきれいな身体にしてあげるあるね。」 メェイメェイはまたもや 中国語で今の言葉を繰り返した。 またもや嬌声が彼女たちの間から湧き上がる。 みなチラッチラッと敬一の顔と股間を見ては嘲笑的な笑い声を出していた。 啓一はといえば、怒り狂うどころか、恥ずかしくて恥ずかしくていたたまれない思いで いっぱいだった。 更にメェイメェイが追い討ちをかける。 「みんな、この男女はもうすぐチンチンも失ってしまうあるね。りっぱな女のお道具作 られて、おっぱいも巨大にされて母乳も出せるように改造されるあるね。そして乳牛娘と して毎日何人もの男に交尾される性欲処理用の家畜にされる運命あるね。」 その言葉の 後に続く中国語の説明を聞いてアイャーという嬌声が一斉に彼女たちの口から湧きあがっ た。 「もうハナという名前も付けられているね。日本では牛や家畜によく付けられる名前だ そうあるね。だからみんなもこれからハナのことメス牛として扱うあるね。分かったらこ れから脱毛開始するあるよ。」 メェイメェイは最後にそう言うと自ら鋭い針と頑丈そう な毛抜きを手に取った。 そして敬一の陰毛を一本グッと抜いた。 ・ ・・い、痛てえ、いてえじゃねえか・・・ それは確かに痛かった。 それもそうだ、今まで一度として抜かれたことのない陰毛を無理やり引っこ抜かれたのだ。 メェイメェイは陰毛を抜いた後に細い針を差し込んだ。 これも痛い。 この針は先が熱せられるようになっており、毛を抜いたあとの毛穴に差し込んでその先 の毛根を焼却するものだった。 痛くない訳がない。 そんなメェイメェイの様子を見た残りの3人の女性は一斉に敬一の身体に取り付いた。 一人は足を、もう一人は胸を、そしてもう一人は腋毛を担当する。 いわば啓一は全身を刺青のように針で突き刺される形になってしまった。 そのあまりの痛さにボールギャグを噛ませられた敬一の口からくぐもった悲鳴が上がった。 しかし、その悲鳴も彼女たちにはまったく関係ないようだった。 もともと女性の敵である犯罪者と教えられているのだろう。啓一は全身を襲う情け容赦 のない針の痛みと毛をむしられる痛みに耐えるしかなかったのだ。 いっそのこと一思い に息の根を止めてくれたほうがよっぽどましだった。 「ううううっううううっ」 啓一は哀れみを請うかのようにうめき声を上げ続けた。 中国人のスタッフがその声を聴きながら中国語で何か言っている。 その言葉に呼応するように他の中国人女性から淫らそうな笑い声が上がった。 どうやら 敬一を嘲笑しているのだろう。彼女たちの手はいっこうにとまろうとはしなかった。 29.浅茅11 翌日、浅茅は迎えに来た美保ことケンジに連れられて病院内の会議室に入った。 入院患 者という位置づけなのだろうか、浅茅はピンクのナイロンネグリジェの上にピンク のガウンといういでたちだった。 着替えようとする浅茅を美保は押しとどめ、化粧もそ こそこに人目を忍ぶようにしてこの会議室に連れてきたのだ。 美保はブルーのプリーツ スカートに黒のタンクトップというOL風のファッションをしている。 きゅっと引き締まったウエストの細さとヒップの滑らかな曲線が見事だった。 そのセクシーさに浅茅は思わず気おされてしまっていた。 「絵美、いいこと、昨日のことは誰にも内緒にしていたでしょうね。看護婦にもよ。」 美保が会議室に入るや否や浅茅にそう念を押した。 昨日のこととは勿論病院内の浅茅を日本国内に逃亡させ、ジェード・コネクションの 全貌を明かそうとしているスパイについてのことだった。 「ええ、大丈夫です。誰にも 話していないわ。」 浅茅は美保にそう答えた。 実際に昨日の夜から浅茅は誰にも会っていなかった。 昨日の夜は女の子になれるという喜びと、自分の部屋のクローゼットを埋め尽くす色と りどりの婦人服のことを思うと興奮してしまい、どうしても眠ることができなかったのだ 。 あまつさえ夜中にはクローゼットに入り込み、明け方まで色々なドレスを着たり脱い だり・・・自分自身で着せ替えごっこを楽しんでしまった。 お姫様のようなイブニングドレスや花嫁さんが着るウェディングドレスが特に浅茅のお 気に入りだった。 そんなドレスが何着もあるのだ。まさに女装趣味の人間にとっては 夢のような宝物庫だった。 浅茅は腫れぼったい目をこすりながら会議室のテーブルに座 った。 自然と足が斜めに揃えられた座り方になっている。 会議室は美保と浅茅以外は誰もいなかった。 浅茅が不思議そうな視線を美保に向ける。 「ちょっと待ってくれない?今内藤さんは首相とホットラインで会議中だから。実はね、 恐れていたことがいよいよ始まったみたいなのよ。」 美保が深刻そうな顔で浅茅に言っ た。 「えっ、恐れていたことって・・・・」 浅茅が問い返すと同時に会議室の扉が急に開けられた。 びっくりしながら振り向くと入ってきたのは内藤と奥村医師だった。 二人ともとても急いでいるようだった。 そのただならぬ様子に浅茅は何事が起きたのかと目を見開く。 「ああ、絵美君、実は今日本の首相や中国の主席、韓国の大統領を交えたテレビ会議を 行ってきたところなのだよ。」 内藤は開口一番浅茅に言った。 そして両脇に抱えた新聞の束を机の上にドサッと置くと、それを浅茅のほうに押しやった。 自然と浅茅の目がその新聞の上に落とされる。 それは色々な国の新聞の束だった。 そしてそのうちのひとつに浅茅の目は釘付けになった。 『正体不明の疫病米国南部に蔓延』 その新聞の見出しはそうなっていた。 救急車の列がその一面を覆っている。 浅茅はその記事を食い入るように読んだ。 それによると米国南部を中心に毎日数百人の女性が突如高熱を発し、1週間も経たぬう ちに次々と息を引き取っているという。 米国疾病対策センターはこの疫病が未知の病原 体の可能性を示唆しているが、未だに細菌もウィルスも分離できていないということが書 かれていた。 どの国の新聞の記事も写真から判断すると同じような内容のようだった。 浅茅は思わず顔を上げて内藤を見た。 内藤がかすかに頷く。 「そうだ、ついに始まったのだ。我々の恐れていた事態がついに起こり始めたのだ。」 浅茅は胸が押されたように息苦しくなるのを感じた。 やはりパンドラウィルスは本当のことだったのだ。 有効な治療方法も予防方法も未だに発見されていない今、世界的なバイオ・ハザードが 始まったのだ。 あと10年もしないうちに各国政府は男女間のバランスが劇的に崩れるこ とによる人心騒乱の影響を受けて次々と崩壊していくに違いなかった。 人民を統治する 機能がなくなれば殺人や婦女暴行が横行するようになるだろう。 そして女性が絶対的に不足し、次の世代の子供が生まれなくなることが人々に認識され ていくに従い、人々は絶望し自暴自棄になっていくだろう。 浅茅にもその暗い絶望的な 未来が容易に予測できた。 「もはや一刻の猶予も許されない状況になってきた。我々の研究を完成させる時間的リミ ットは3年との見解を首相から示されたばかりだ。その間、我々の研究を妨害する企てに は全力を挙げて対処しなくてはならないのだ。」 内藤はここで言葉を切った。 「米国国 防総省の情報機関を一網打尽にする必要がある。一人や二人の工作員を捕まえ ても意味がないのだ。昨夜話し合った計画は中止し、君に相手組織の中に深く入り込んで もらえないだろうか。相手の組織のメンバー、特に機関のトップが誰なのかを知りたいの だ。」 内藤は浅茅にジェード・コネクション側の工作員になることを要請していた。 そしてそれは即ち浅茅の性転換手術が遅れることを意味していた。 任務は危険なものと思われた。 どう考えても生命の危機が及ぶ可能性があった。 何といっても相手は米国防総省なのだ。CIAやFBI以上にその諜報機関としての概要は厚 い機密のベールに包まれている。 しかし元々が軍の組織なので、力ずくで無理やり情報 を収集する荒っぽさにかけてはつとに有名だった。 その暗黒の組織に潜入してくれと言うのだ。 浅茅は恐怖でぶるぶると思わず身震いをした。 いやですという言葉が喉元まで出かかっている。 「我々とて君にこのようなことはお願いしたくない、お願いしたくないが、彼らの目標 はジェードコネクションの破壊と研究の阻止にある。今ここでこのチャンスを逃せば我々 の機関そのものが存在できなくなってしまうかもしれないのだ。それは何を意味するか賢 明な浅茅・・・絵美君ならもうお分かりだろう。我々日本人も韓国人も、中国人も・・・ 多分世界中の有色人種が全て滅亡してしまい、後には白人が支配し存在する世界しか残ら ないだろう。どうか、どうか世界のカラード達のために力を貸してくれないだろうか。」 内藤の目は真剣だった。 言葉だけではなく、その全身から思いつめたような真摯な悲壮感が伝わってくるかのようだった。 浅茅とて伊達に新聞記者はやっていない。 本人の言葉が表面的なものなのか心から出たものなのかは直感で分かるつもりだった。 浅茅はたじろいだ。 何十億というアジア人の未来がかかっているのだ。 内藤はその責任の重さに押しつぶされんばかりになっている。そしてその内藤が自分に 助けを求めているのだ。 自分が米国国防総省の諜報組織と関係を持ち、その組織を探る ことは本当にうまくいくとは思えなかった。 しかし、それはアジア人社会を守るために は必要な任務のように思われた。 「わ、分かりました。協力いたします。」 浅茅はカラカラに乾いた声でようやくそれだけを言葉にした。具体的に自分がどう動け ばいいのかすらも分からなかったが、何とか自分も役立ちたいとの思いに駆られたのだっ た。 「おお、そうか、ありがとう。ありがとう。これで少しは突破口が開けるかもしれ ない。」 浅茅の言葉に内藤も奥村医師も心底ほっとした様子が分かった。 本当に八方ふさがりの状況だったようだ。 「で、わたしはどのようにすればいのでしょうか。」 浅茅が内藤に訊いた。 「うん、そのプランだがね、絵美君は彼らの脱出計画に沿ってここを脱出して欲しい。 その時に彼らのメンバーの幾人かと接触する筈だ、また日本国内に搬送されてからも彼ら のメンバーの幾人かと会うことになるだろう。その全てのメンバーを覚えて欲しいのだ。 できれば彼らのメンバーの責任者に会わせて欲しいと主張してくれたまえ。日本でマスコ ミにリークするジェード・コネクション情報の信憑性を取るためにも情報源は絶対秘密に するからなどの理由を付けてね。」 それはジャーナリストとして当然そのような要求を しそうな内容だった。 「とにかく、日本国内のチーフが誰なのか知りたいのだ。我々のところに別に来ている 情報によると、その人物は政府の高官の地位を占めている可能性が高いのだ。万が一その 高官に会えなくても、できるだけ多くの彼らの組織のメンバーに会って欲しい。会う人数 が多ければ多いほどその人物を特定できる可能性は高くなる。最後は芋づる式に摘発する 方向に持って行きたい。」 「でも、多分わたしはジェード・コネクション側の暗殺から 保護されるためにどこか分からない場所に隔離されることと思われます。わたしの知りえ た情報をジェード側に伝えるにはどうしたらいいでしょうか。」 国防総省側は浅茅を監禁と同様の状態に置くはずだった。ここと同じように厳しい監視 をされるに違いなかった。 「その事だがね、彼らがわざわざ君をターゲットに選んだの はジャーナリストとしてその証言の信用性が一般人に比べてはるかに国民に信用されるた めと考えられる。絵美君、君はテレビ出演を要求して欲しい、彼らもうんと言うはずだ。 テレビで自分がこんな目にあわされたということを証言するとなれば、我々の打撃は大き いと国防総省側は考えるはずだ。その時が君を奪還するチャンスなのだ。国内では我々は 警察を動員することができる。テレビ局に入る前にその身柄を確保できると考えている 。」 「しかし、それは相手側も同様の想定をするのでは・・・また、わたしが国防総省 側に本当に協力するか彼らが疑っている場合も考えられるし・・・」 「ああ、そのことだがね、絵美君にはこれから去勢手術を受けてもらいたいと思っている。 そして女性ホルモンのカプセルも体内に埋め込む手術・・・なあにどちらも簡単に済んで しまうものだが、国防総省の連中には自分が嘲られながら無理やり手術されたと言うんだ。 このような屈辱的な手術を加えられ、是非ジェードの連中を罰したいと思っていると・ ・・そうすれば彼らの君に対する信用度もはるかに増すはずだ。」 去勢!浅茅は思わず出てきたその言葉に顔がかあーっと赤く上気するのを感じた。 つい先日までは男性である証を永久に失うことをひどく恐れていた。しかし、今の浅茅は この器官が自分にはまったくの邪魔な存在としてしか認識していなかった。 睾丸を切除 し、注射なしで長期間女性ホルモンの安定供給ができるカプセルの体内への埋め込みは大 歓迎だった。 「また、知りたいと思うから教えるが、もともと君をこのジェード社に送り込んだのも 米国防総省なのだよ。」 内藤の口から飛び出た言葉に浅茅は仰天した。 自分には国防総省の知り合いもいなければスパイになった覚えもまったくなかった。 「実は君のプロファイルを反社会的勢力と密接に結びついているというように書き換え たのは国防総省のエージェントだったのだ。それというのも君がジャーナリストでヤクザ 社会の人間に知己がいるために利用しやすかったからなのだ。君をここに送り、強制的に 女性化させた上でその事実を暴露するためにジェード・コネクションの詳細情報を与えて 脱出させる。そして日本のマスコミにリークを行わせる。これが彼らの描いた計画なのだ 。君も我々も国防総省の謀略の犠牲者なのだよ。」 他者に勝手に利用されるのは誰にと ってもいい気がする訳はない。 浅茅が次に訊いたのも当然のことだった。 「では誰が、誰がわたしを嵌めたのですか。」 「ああ、それはわれわれの内部調査によると池内が重要容疑者として上がっている。 彼が国防総省の指令を受けて日本のジェード社にある多くの情報の中から君をピックアッ プし、プロファイルを書き換えたのだ。池内は君とはまったくの面識はないが、国内のエ ージェントがヤクザ社会の関係者の身元調査を全て行っていてね、その時に若頭と会って いたということで君の調査データが残っていた。池内はそれを利用したと思われるのだ。 」 内藤は浅茅の顔を改めて覗き込んだ。 「君がここを脱走した後に、我々は池内を逮捕し尋問する予定だ。しかし、彼はアジア における国防総省側の諜報組織の実態についてどれぐらい知っているかは疑問だ。情報を 自白しても自白しなくても彼は我々の実験材料として陳先生の色情狂の女性の血液を全血 交換され、研修医の訓練用として性転換手術されてから妊娠出産の実験に使われるだろう 。だから安心したまえ。」 一応、内藤なりの復讐の方法なのだろうか。それはノーマル な男性にとっては非常に過酷で残酷な復讐だった。 「ではこれから先ほど話した去勢手術と女性ホルモンカプセルの埋め込み手術を行わせ てもらうけど、いいね?」 頭の中ではその手術を望んでいても、いざ本当に行われるとな ると浅茅は少々恐ろしくなってしまう。 「大丈夫よ、わたしも手術されたけど、あんな ものなくなって良かったと今ではつくづく奥村先生に感謝している位だもの、本当におで き取っちゃうくらいの簡単な手術なんだから。」 今まで黙って浅茅の横にいた美保が励 ますように声をかける。 いくらなんでも物は睾丸だ。いわば人間の内臓なのだ。それをおできに例えるのはどう かと浅茅は吹き出すところだった。 しかし、美保のその一言で気がだいぶ楽になったの も事実だった。 「絵美ちゃん、絵美ちゃんが女の子に生まれ変わるところ、わたしが立会い看護婦させて もらうわ。だから安心してね。」 浅茅は本当かという顔で奥村医師を見た。 何といって も美保は元ヤクザのちんぴらなのだ。とても看護婦の訓練を受けているとは思えなかった 。 「ああ、手伝うといっても簡単な手伝いだけだ。美保君と彼女のフィアンセの王看護士 が助手を勤めてくれる。美保君は王看護士と関係が出来てからはすっかり心を入れ替えて ね、今一生懸命看護婦としての勉強をしているところだ。ゆくゆくはこの病院で夫婦共々 看護士と看護婦として働きたいそうだ。」 「そ、そうなの、おめでとう。」 夫婦という言葉に浅茅は思わずおめでとうと言ってしまった。 「ありがとう絵美ちゃん、できたら私の花嫁姿見に来てね。私たち再来月結婚するの。」 美保が中国人の看護士と関係が出来ていることはこの前聞かされて知っていたが、結婚 まで話が行っていることに浅茅は驚いてしまった。 「今後この病院でも女性スタッフが 激減することは目に見えている。パンドラウィルスが顕在化した今となってはね、彼女は いい看護婦になるだろう。ところで話を元に戻すようだが、絵美君、君はこの手術を受け るときにせいぜい抵抗する素振りをしてくれないだろうか。去勢など真っ平だと喚くのだ 。君の心が完全に女性化していないことを相手に示して裏をかくのだ。いいね。分かった ね。」 30.啓一5 啓一はもはや正常な状態ではなかった。 毎日続く拷問のような脱毛に怯え、相手の顔色を常にびくびくしながら伺い、目先の 痛みから逃れるためにはどのようなことでもやる哀れな存在に成り下がってしまっていた 。 啓一を寄ってたかって苛めるエステシャン達にも、啓一は媚へつらい何を言われても エヘラエヘラするようになっていた。 もはや男としての誇りも人間としての誇りも啓一は放棄してしまっているかのように見えた。 啓一を寄ってたかって苛めるエステシャン達にも、啓一は媚へつらい何を言われてもエヘ ラエヘラするようになっていた。 もはや男としての誇りも人間としての誇りも 啓一は放棄してしまっているかのように見えた。 「ハナ、おっぱい大きくする時間だよ。」 ゆかりの声がそう命令すると、啓一は呆けたバカ娘のようにエヘラエヘラとしながら 自分の胸を差し出した。 もうすでに啓一の胸は思春期を迎えた少女のように膨らみかけ ている。 乳首も乳首を取り巻く乳輪も女らしい盛り上がりをみせ、先端が尖っているのが誰の目 にもはっきりと分かった。 「ほら、ハナ、女性ホルモン入りのクリームを自分で乳首中 心によくすり込むなさい。」 ゆかりが軟膏の入ったチューブを敬一に手渡す。 啓一はニヤニヤしながらもその女性ホルモン入りのクリームを自らの手で乳首にたっぷり と塗りこんでいくのだ。 啓一の精神は完全に崩壊しているようにも思えた。 「ああんっ、んんっ」 そのクリームを塗りこみながら啓一は悩ましげな声を上げた。 「ほほほっ、すっかりおっぱいの性感帯、開発されてきたようね。どう気持ちいい?」 その言葉に啓一はこくりと頷いた。 「もっともっとよおくすり込むのよ。そうすれば乳首ももっともっと大きくなってくる んだから。十分な大きさになれば男の人にも揉んでもらおうね。男の人におっぱいもまれ るとすっごく気持ちよくなるわよ。」 そんな侮辱の言葉にも理解しているのかしていな いのか啓一は相変わらずヘラヘラ笑っている。 医者は一時的な精神異常でしょうと言っていた。 無理やり去勢され、体中の体毛を抜かれれば誰でもおかしくなってしまう。しかも身体 の中には成人の女性に匹敵する大量の女性ホルモンが駆け巡っているのだ。精神のバラン スが狂ってしまって当然だった。 もっともゆかりは啓一が正常でも狂気の状態でもどち らでも良かった。 どうせ人間ではない家畜の乳牛娘にしてしまうのだ。牝牛に理性など必要ではなかった。 「どれ、玉抜きされたとこ見せてごらん。」 その言葉に啓一は素直に従う。 そしてインリンのようにM字開脚までやってみせたのだ。 完全に除毛された足が、ホルモンのせいなのか柔らかな曲線を描き始めていた。 「ほほほっ、まったくよく恥ずかしくないわね。玉抜きされた跡を大きくさらけ出して見 せるなんて。」 啓一の陰嚢はすでにぺちゃんこになっていた。玉抜きされた時の切開跡 もいまでは完全に傷口が塞がっている。 その時どやどやと啓一を集団で苛め抜いている エステシャン達が入ってきた。 彼女たちを見ると啓一は思わず身体を固くしてしまう。 また苦痛を与えられるのではという恐怖に怯える影が啓一の目に現れた。 「ハナ、そのままでいるのよ。あの娘達にお前の去勢跡を見てもらいましょう。こんな に傷が治ったんだよという報告兼ねてね。」 ゆかりが意地悪く啓一に命令した。 エステシャンたちは含み笑いを浮かべながら啓一にゆっくりと近づいてきた。 既にその口元は啓一をからかい嘲るかのように歪んでいる。 啓一はその内の一人のエステシャンが巨大なピンクのバイブを手にしていることに気が付 いた。 そのバイブが啓一に使われることは明白だった。 昨日までエステシャン達が啓一 に使っていたのは卵形のピンクローターだった。 二日目の脱毛されている時だった。股間を大股開きにされ除毛している最中に彼女たちは 啓一のアヌスにたっぷりとクリームを塗り始めたのだ。 そして一人のエステシャンがピ ンクローターをこれ見よがしに啓一の目の前に見せびらかせた。 ブーンという微かな音がそのピンクローターからしていた。 啓一もこの手の性具はよくナンパした女に使っていた。 このピンクローターを女のマンコに入れると、女は面白いようによがり狂うのだ。 そのピンクローターがまさか自分に使われるとは思いもよらぬことだった。 「や、やめて下さい、お願いします。そんな、そんなひどいことはしないで下さい。」 その時、啓一は何度もそう頼み込んだ。 しかしもとより日本語が通じる相手ではない。また、たとえ通じたとしても情けなど期 待できない連中だった。 あえなくピンクローターを尻の穴に押し込まれ、啓一はたっぷ りとエステシャンたちの素っ頓狂な嘲りの笑い声を聞くことになってしまった。 思えば 啓一の精神の崩壊はその時からだったかもしれない。 その啓一の眼前に今度はピンクローターなどというちゃちなものではなく、通常のペニ スのたっぷり1.5倍はあるかと思われるような巨大なバイブが現れたのだ。 その恐怖が逆 に啓一の崩壊しかけていた精神を揺り動かした。 そのバイブは2股に分かれていた。 正常な使い方であれば、一方は女性のヴァギナに、そしてもう一方はアヌスの中へ収ま るようにできている。 そのバイブを持ってきたエステシャンはスイッチを啓一の目の前 で入れた。 ブーンという禍々しい音がたちまち部屋中に響き渡る。 それと同時にバイブは細かく振動しながらもその雁首を不気味にくねくねと動かし始めた。 その動きはそのバイブを使われた女から快感を搾り出すことだけを目的としている動き だった。 1ヶ月前の啓一であればそんなバイブが手に入ったならば早速自分に貢がせて いる女たちに使いまくったことだろう。 相手が嫌がろうとどうしようと最終的に女をよ がり狂わせられればそれでよかった。 一度よがり狂わせることができれば、女は自分から離れることがどんどん難しくなってくる。 しかし、今それを使われようとしているのは他ならぬ自分自身なのだ。 ・・・嫌だ、あんなの入るわけがない、あんな動きするものが腸内に押し込まれたら裂 けてしまう・・・ 啓一は思考力が戻ってきた頭でそう思った。 それは啓一に快楽を与えようというより、屈辱と苦痛と恥辱を与えるためだけに使われよ うとしているのだ。 エステシャンの女たちが何事かを中国語で啓一に喋りかけた。 言葉 は分からなくても、その抑揚から啓一は何を要求されているのか分かるような気が した。 身体は相変わらず産婦人科の分娩台のような椅子に固定されて大股を開かされて いるのだ。 逃げることもどうすることもできなかった。 また、彼女たちにより陵辱の辱めを受けてしまうのだ。 啓一は目を硬く閉じた 正常な使い方であれば、一方は女性のヴァギナに、そしてもう一方はアヌスの中へ収ま るようにできている。 そのバイブを持ってきたエステシャンはスイッチを啓一の目の前 で入れた。 ブーンという禍々しい音がたちまち部屋中に響き渡る。 それと同時にバイブは細かく振動しながらもその雁首を不気味にくねくねと動かし始めた。 その動きはそのバイブを使われた女から快感を搾り出すことだけを目的としている動き だった。 1ヶ月前の啓一であればそんなバイブが手に入ったならば早速自分に貢がせて いる女たちに使いまくったことだろう。 相手が嫌がろうとどうしようと最終的に女をよ がり狂わせられればそれでよかった。 一度よがり狂わせることができれば、女は自分から離れることがどんどん難しくなってく る。 しかし、今それを使われようとしているのは他ならぬ自分自身なのだ。 ・・・嫌だ、 あんなの入るわけがない、あんな動きするものが腸内に押し込まれたら裂 けてしまう・・・ 啓一は思考力が戻ってきた頭でそう思った。 それは啓一に快楽を与えようというより、屈辱と苦痛と恥辱を与えるためだけに使われよ うとしているのだ。 エステシャンの女たちが何事かを中国語で啓一に喋りかけた。 言葉 は分からなくても、その抑揚から啓一は何を要求されているのか分かるような気が した。 身体は相変わらず産婦人科の分娩台のような椅子に固定されて大股を開かされて いるのだ。 逃げることもどうすることもできなかった。 また、彼女たちにより陵辱の辱めを受けてしまうのだ。 啓一は目を硬く閉じた。 そして再び狂気の混沌とした中へと舞い戻ろうとした。 発狂するか、自殺するしかこの永遠に続く苦しみから逃れる術はないのだ。 冷たい感触が啓一の肛門から伝わってくる。 あの禍々しいバイブをアヌスに押し込むために潤滑用のクリームを塗っているのだ。 そしてたっぷりとクリームが塗られた後に恐怖の時がまたやってくる。 自然に啓一の身体は小刻みに震え始めていた。 それはまるで恐怖に怯える小娘のような震えだった。 身体が女性のものに作り変えられていくに従い、恐怖の感じ方も女のように徐々に変質 して行っている様だった。 「ハナ、ほら見ないの? お前の身体の中に素敵なペニスが 入り込むのよ。」 どこか遠くでゆかり様の声が聞こえていた。 自分の名前は何だっけ、ハナって自分のことだっけ。 啓一は崩壊しかけた精神で漠然とそう思った。 自分は何でここにいるんだっけ。たしかとっても悪いことした罰にゆかり様におしおき されているんだっけ。 そう思った時、啓一は自分のアヌスに巨大な異物が挿入されるの を感じた。 ああそうだ、わたしは家畜として飼われているんだわ。 不思議なことに位相のずれ始めた精神は肛門を目いっぱい拡張するバイブの痛みはほとん ど感じなかった。 もはや啓一は自分が男であったという記憶を失いつつあった。 それは 精神の位相をずらし、別な人格に置き換わることによって現実から逃避しようと する啓一の無意識の最後の抵抗でもあった。 ジェード・コネクション255 摩火 - 2005/11/25 04:35 - わたしは・・・わたしは・・・牛娘・・・皆さんに調教を受け、りっぱな乳牛になるのよ。 啓一は朦朧とする意識の中でそう思った。 「あらやだ、この娘おかしくなっちゃったのかしら。」 また遠くでゆかり様の喋る声がする。 おしゃべり雀のような女たちのピーチクと囀る声が一斉に聞こえてくる。 全てが何か二重三重のスクリーンの向こうで繰り広げられるぎくしゃくした映画のよう な感じだった。 言葉は意味を成さず啓一の周りを通り過ぎていった。 深い井戸の底のようなところに自分がいるのに、自分の身体は啓一のコントロールを外 れ別な映画の登場人物になったかのような感覚だった。 「わたしの言葉分かる?ハナ」 ゆかり様の声がする。 それに対して啓一の口は勝手に喋っていた。 「はい、ゆかり様、あたしはハナです。立派な乳牛娘になって男の人にいっぱい中出し ていただきます。はい、ゆかり様、あたしはハナです。立派な乳牛娘になって男の人にい っぱい中出していただきます。はい、ゆかり様、あたしはハナです。立派な乳牛娘になっ て男の人にいっぱい中出していただきます。はい、ゆかり様、あたしはハナです。立派な 乳牛娘になって男の人にいっぱい中出していただきます。」 啓一は壊れたレコードのよ うに同じ言葉を繰り返していた。ゆかりがストップしなければいつまでも永遠にその言葉 を念仏のように繰り返していただろう。 「あーあ、ついに壊れちゃった。まったくヤワな精神力だこと。」 ゆかりが深くため息をついた。 これでゆかりは啓一の屈辱に歪んだ顔を見て溜飲を下げることができなくなった訳だ。 実は内藤から啓一を廃人同様の精神的荒廃に追い込んでも良いとの許可を貰っていた。 内藤が発狂した啓一を今後どう扱おうとしているのか、どのような悪魔的な処置を施そ うとしているのかゆかりはまったく知らなかった。 切れ者の内藤はゆかりに啓一の女性化処置を任せたならば必ずや発狂に追い込むことは 十分に予測していた節がある。 それでもなおかつ啓一の精神を崩壊せしめることを許し た内藤の計画は予定通りだったことになる。 しかし、ゆかりはまだまだ啓一をこのままむざむざと自分の手から放免しようとは思っ ていなかった。 精神が崩壊し、廃人となってもなおゆかりは啓一を牛娘として娼窟の苦 界につなぐ計画をまったく諦めていなかった。 廃人同然の狂人でも女性器が使えればそ れでいいのだ。牛娘に正気はいらない。 ゆかりは男たちの性欲の凄さを知っている。娼窟に来る男たちの目的はただひとつ、セ ックスなのだ。自分のセックス処理さえできればその相手に理性も知性もいらない。 そのように考えるゆかりこそが啓一以上に狂気に沈んでいる存在そのものに成り下がって しまっていた。 「もっとじわじわと女性化の恐怖を与えて嬲り者にするつもりだったけど、壊れちゃった ならしょうがないわね。すぐに性転換手術して本当の牛娘にしてあげるわ。傷口が治った ら男の人のちんちん受け入れるのよ。一日何十人もの男の人の精液処理用家畜として暮ら すのよ。分かった?」 啓一にはゆかりの言葉の意味はもはや理解できなかった。 ただ、 ただ、壊れたレコードのように無表情にゆかりの言葉を抑揚なく繰り返した。 「はい、 あたしは性転換されて男の人の精液処理用家畜になります。あたしは性転換さ れて男の人の精液処理用家畜になります。あたしは性転換されて男の人の精液処理用家畜 になります。あたしは性転換されて男の人の精液処理用家畜になります。あたしは性転換 されて男の人の精液処理用家畜になります。」 啓一の肛門には先ほど入れられた特大バ イブがくねくねと卑猥な動作でうねっていた。 それはまるで啓一の救いようのない残りの人生を暗示しているかのような猥雑でグロテ スクな動きだった。 31.浅茅12 浅茅はこの4日間痛みに耐えていた。 4日前に比べるとその痛みはだいぶ薄らいでいるとはいうものの、なにしろ男性の最も 重要な内臓を抜かれてしまったのだ。 初日の痛みは想像以上のものがあった。 手術を担当した医師のくれた痛み止めがなければ耐え切れなかっただろうとも思われた。 浅茅はベッドに上半身を起こすと、自分のネグリジェの裾をおなかの辺りまで捲り上げた。 淡いグリーンのレースショーツが浅茅のふっくらとしてきた腰を覆っている。 ショーツの上から見える股間は幾分かの盛り上がりを見せているものの男性が女物のシ ョーツを穿いた時のようなグロテスク感はみじんも感じられない。 「あーあ、本当に抜 かれちゃったのね。」 浅茅はそう独り言を呟いた。 この4日間、浅茅は自分の股間を確かめる度に同じことを呟いている。 浅茅は穿いているショーツをそっと下ろした。 ショーツの中から現れたのは一本の肉棒だった。 しかし、その肉棒も浅茅の記憶の中にある肉棒の面影はまったくない。 今はしおれ、縮こまり、自分がこの場所を占めている事が間違いであることを自覚して いるがごとくにすっかりとしなびている。 そしてその肉棒の後ろにはあるべき2つのかた まりが影も形もなくなっていた。 陰嚢はその失った内臓の分だけぴったりと股間に張り付いているかのようだった。 睾丸 を抜かれた跡の傷口は浅茅が思っていた以上に小さく、バンソコウ一枚で容易に覆 われてしまう長さだった。 浅茅に去勢手術を施した医師の腕がいい証拠だった。 自らの睾丸を失った結果、浅茅の精神状態はまた別の変化が現れていた。 それは男の人にすがりつき甘えたいという心の奥底からの要求だった。 なんというか、自分を小さな女の子供のように可愛がって欲しいのだ。 男の人に「よしよし」とか言われて頭を撫でられただけで浅茅は天にも昇る心持になっ てしまいそうだった。 また、ママに抱っこされたいとふと思うようにもなっていた。 心理学的に見ればこの退行現象は容易に説明が付く。 つまり、大人として生殖する器官を失ってしまえば心は無意識的に自分は生殖できる器 官を持つ前の存在、すなわち子供なんだと思おうとするのだ。 その結果、精神的退行が 起こる。 子供じみた行動でお人形さんが欲しいと思ったり、母親に抱っこされたいと思うのだ。 しかしそんな心理状態になる場合もあることを知らない浅茅は、自分がそんな子供のよ うな思いを持つことが不思議でしょうがなかった。 そして今、浅茅が欲しいのはジェニ ーちゃんのお人形さんだった。 「ああ、お人形さんで遊びたい。」 そう口に出してからはっとして浅茅は思わず顔を赤らめるのだった。 もちろん、浅茅が小さいころにお人形さんで遊んだことなどない。それにもかかわらず、 浅茅はジェニーという人形でおままごと遊びをしたいと強く願うのだった。 それから浅茅のお腹にはもうひとつ小さな手術跡があった。 女性ホルモンのカプセルを埋め込んだ跡だった。 医師の説明によると、そのホルモンのカプセルは体内でゆっくりと時間をかけて溶け出し、 5年間もの間浅茅の身体の隅々に女性ホルモンを供給し続けるものということだった。 このカプセルが体内にある限りは浅茅の身体は女性化し続けることとなる。 浅茅はその手術を行った時の手術室の様子を思い返して顔を真っ赤にした。 その記憶は普通の男ならば恥辱のあまり死ぬしかないとまで追い詰めるような屈辱的な 体験だった。 それは浅茅が工作員として米国防総省の組織を探る密命を帯びたことをま わりに悟らせないための偽装工作手術だった。 それは浅茅が自分の女性化に抵抗し、 ジェード社を憎んでいることを印象付けるために行われた手術だった。 本心では精神ま ですっかり女性化してしまっているにも関わらず、自分がまだ男性の心を持っているとい う演技はかなり迫真に迫ったものだった。 まず浅茅は自分の部屋に連れ戻された。 暫くして現れたのは日本語を操れるメェイメェイと3人の屈強な警備員だった。 その警備員の発する力のイメージに浅茅はこれまでになく本心から震え上がった。 ベッドに腰掛けていた浅茅は思わずネグリジェの胸元をしっかり閉じ合わせた。 「お嬢ちゃん、よかったあるね。これからコウガン抜く手術はじめること、決まったね。」 メェイメェイは開口一番ニヤニヤしながら浅茅にそう言った。 「し、手術!嫌だ。君たちはそれでも人間か!そんなことしてただで済むと思っているのか。」 浅茅は思いっきり大声をだした。 自分でもドスの利いた声を出したつもりだった。しかし、この数日甲高い女らしい声で 喋ろうとしていたせいか、自分でも拍子抜けするようなか細い声しか出てこない。 「はははっ、あんたおかまあるね。おかまのくせに凄んで見せてもちっとも怖くないある ね。」 浅茅の脅しにもメェイメェイは鼻でせせら笑った。 「どうするあるね。まだあんたあばずれ調教器付けられたままあるね。スイッチ入れて、 このまま無理やりにでも警備員に引っ立てさせるあるか?警備員、今女日照りだからきっ とどさくさに紛れてあんたのお尻犯すあるね。わたし何にも見なかったあるよ。」 メェイメェイの目が意地悪そうに光った。 「ま、待て、わ、分かった。ついていく、ついていくから乱暴はしないで。」 慌てたように浅茅がメェイメェイの手の動きを止めさせようとして言った。 たとえ演技でなくてもあのあばずれ調教器の電撃はもうこりごりだった。 コントローラーを見るだけで悄然としてしまい、反抗する気力もすっかり萎えてしまう。 「はい、じゃあこの札首から下げるあるね。」 メェイメェイは警備員の一人が持っていた紐のついたプラカードのようなものを浅茅に手渡す。 そのプラカードには中国の漢字体でいくつもの字が大きく書かれていた。 「去勢」「女性激素」という漢字が日本の漢字とは違う書体で文字の中に入っているの が読み取れる。 「こ、これは・・・」 嫌な予感に浅茅は声を震わせながらメェイメェイに言った。 「ああ、それあるかね、それ首からぶらさげとくと、これからタマ抜きと女性ホルモン のカプセル入れられること皆に分かるようになっているあるよ。これから男ではなくなる こと全員が知ってしまうね。翌日から皆、ああんたのこと完全に女の子として扱ってくれ るあるよ。」 要するにそのプラカードは『わたしはこれからタマ抜きと女性ホルモンを 埋め込まれ男ではない身体になります。』と書いてあるというのだ。 これは恥ずかしかった。 いくら心の中では女になりたいと思っていても、大勢の人間にさらし者のようにして去 勢されることを喧伝されるのは屈辱の極みだった。 浅茅の手がそのプラカードを持った まま止まってしまう。 「ほらほら、いつまでぐずぐずしているあるか。あたしも暇じゃないあるね。やっぱり あばずれ調教器使うあるね。」 メェイメェイが手に持ったコントローラーをこれ見よが しに頭上に持ち上げる。 「あああっ、まっ待って下さい。それだけは、それだけは勘弁して下さい。分かりまし た付けます。プラカード首からぶら下げます。」 浅茅はあの電撃の激痛を思い出しなが ら慌ててプラカードを首から下げた。 大きなボードはそれだけで浅茅の胸を覆ってしまう。 「よしよし、そうして素直になるのが一番ね。女の子は素直じゃないと殿方に嫌われる あるからね。」 メェイメェイはどこで殿方という言い方を覚えたのか得意満面に浅茅に 言った。 「じゃあ、処置室に行くあるよ。ついてくるあるね。」 メェイメェイが先頭に立って浅茅を導いた。 すかさず警備員が浅茅の両脇と後ろにぴったりと寄り添うようにガードする。 当然、浅茅の逃走を防ぐためだった。 ジェード・コネクション262 摩火 - 2005/12/03 19:08 - 病院の廊下は早朝の時と比べて当然ながら病院スタッフの往来が激しかった。 浅茅は自 分がネグリジェ姿であることを思い出し、つい尻込みをしてしまう。 その浅茅をせかす 様に両脇の警備員が浅茅の腕を取り、無理やり歩かせようとした。 ・・ああ、恥ずかしい、こんなネグリジェ姿で、しかもこれから去勢されるとまで書か れたプラカードを下げさせられて・・・ 浅茅は顔を真っ赤にして重い足取りで歩き始め た。 当然ながら顔を上げて前を見ることなどできない。顔を伏せ、どうか行きかう人がこの プラカードに気づきませんようにと願うしかないのだ。 少し歩くと、両脇の警備員が交 互に浅茅の尻をなで上げ始めた。 「ヒッ」 そのおぞましい感触に浅茅は思わず大声を出してしまった。 廊下を通行中の多くのスタッフの視線が一気に自分に集中するのが分かった。 「いひひひっ」という卑猥な笑い声も彼らの間から聞こえてくる。 それは浅茅が首からぶら下げているプラカードに気が付いたからに違いなかった。 スタッフ達の間でヒソヒソ声が聞こえてくる。それは中国語にもかかわらず、去勢され女 性ホルモン処置を受ける浅茅のことをあざ笑っているに違いなかった。 女性ホルモンの カプセルは一度体内に入れられてしまうと5年もの長期にわたり浅茅の身体を女性化させ ていく。もう絶対には元にもどることはできない処置なのだ。 ものすごく恥ずかしかっ た。 できることならこの場から一気に逃げ出し、布団をかぶって隠れてしまいたかった。 しかし、両脇の警備員ががっちりと浅茅の身体を固めてしまい、下手に動くこともままな らない。 そしていやらしい指が浅茅の尻を這い回っているのだ。 まさに公衆の面前で女のように痴漢されているのだ。 「チャンフー」 そんな言葉があちらこちらから聞こえてきた。 それは浅茅は知らなかったが、中国語で「娼婦」という意味だった。 これからチャンフーになるのだから公衆の面前でいたずらされても当たり前とでも言う のだろうか、浅茅は嫌悪感と信じられない思いでどうしていいかまったく分からなくなっ てしまった。 先頭を行くメェイメェイが叱咤するように警備員に何事か命じた。 どうやらぐずぐすするなとでも言ったらしい。 その言葉に警備員は未練がましく浅茅の身体を撫で回していた手を引っ込めた。 怖いと浅茅は心底思った。 こうしていても男に何をされるか分からないのだ。 男にとってはちょっとしたいたずら心、冗談のつもりであっても、女性にとって痴漢さ れることは冗談では済まされぬ恐怖心と恥辱を感じるものなのだ。 浅茅は今、そのこと を肌身を持って実感したことになる。 「ほら、ぐずぐずしていないで早く歩くあるよ。睾丸切り取られるの、そんなに嫌あるか。」 メェイメェイが再度浅茅をせかした。 その言葉とともに、浅茅は引きずられるように処置室へと連れ込まれてしまった。 浅茅の去勢を行うという処置室は大仰な手術室ではなく、一見普通の診察室のようにも見えた。 ただそこには分娩台のような大きな椅子が置かれていた。 浅茅は知らないが、この部屋では多くの実験体の男たちが睾丸を抜かれている。 それも全身麻酔で意識を失わせて抜くのではなく、局部麻酔だけの意識がある状態で抜か れてしまうのだ。 そのために手術用の椅子にしっかりと四肢を固定され、自分が去勢さ れる状況をはっきりと見ることができるように上半身を起こした形で処置ができるように 設計されているのだ。 それは凶悪な犯罪者に対し極限の恥辱を与えることで反抗心を一 切奪ってしまうことを目的にしているものだった。 その凶悪犯罪者用の去勢処置を浅茅は受けさせられようとしているのだ。 内藤や奥村医師から事前に相手のエージェントの目をごまかすために一番屈辱的な処置 を行うと聞いていなければ浅茅は恐怖の余り失神してしまっていたかもしれなかった。 処置室には浅茅の知らない医師が居た。 奥村医師はこの手術には参加していない。 単なる去勢手術や女性ホルモンカプセルの埋め込み程度の手術に天才奥村医師の出番は ないのだ。 「ネグリジェとパンティー脱いで椅子に座るあるね。」 メェイメェイが浅茅に命じた。 医者はともかくとして、3人の警備員はまだ浅茅の目の前に立っている。 彼らの面前で裸になるのはためらわれた。 「自分で脱がないのなら、警備員に裸にひん剥かせるあるよ。それともあばずれ調教器 使うあるか。」 メェイメェイがきつい声で浅茅に要求してくる。 またもやあばずれ調教器だった。 その言葉を聞くと浅茅は反射的に震え上がってしまう。 浅茅はようやく意を決したかのようにのろのろとネグリジェを頭からすっぽりと脱いだ。 ネグリジェの下は可憐なフリルパンティー一枚だった。 あばずれ調教器を装着されているせいで、そのパンティーの股間の部分が不自然に盛り 上がっているのが異様だった。 浅茅は警備員がそこに居ないのだと自分に言い聞かせな がらパンティーも脱ぎ去った。 浅茅の意識の中では男性は異性としての存在になってしまっているのだ。 それから全裸になった浅茅は命じられた通りに去勢用の椅子に座った。 3人の警備員が手馴れたように椅子に付けられているベルトで浅茅の身体を固定していく。 警備員が素肌に触れるたびに浅茅はビクッと震えてしまうのだった。 浅茅がすっかりと去勢用手術椅子に固定されてしまうと医師らしき男性が浅茅の目の前 に立った。 「では、キム先生、お願いします。」 メェイメェイの言葉で浅茅はその医師が韓国人であることを知った。 「では、最初に手術のあらましを説明しよう。」 キム医師はそこで浅茅の反応を伺うように言葉を切った。 キム医師も流暢な日本語が喋れるようだった。 「君はこれから睾丸の切除手術を受ける。一度切除してしまうと2度ともとには戻せな い手術だ。君はこの手術により女性を妊娠させることはできなくなる。去勢してもペニス が勃起する能力はあるから当面は女性との性交は可能だろう。しかし、今日君の身体に女 性ホルモンのカプセルを埋め込む手術も実施する。そのカプセルはおよそ5年にわたり一 定量の女性ホルモンを君の体内に供給し続けることとなる。そのために遅くとも3ヶ月以 内に君の勃起能力も失われていくだろう。女性ホルモンはそれだけではなく、君の身体に 女らしい丸みを与える。5ヶ月以内に君は思春期の少女のように胸が発達してくるだろう。 乳輪も女性らしい広がりを見せはじめることになる。ウェストは細く、ヒップは横と後ろ に広がりを見せ始める。しかし、君が一番最初に経験するのは肌の変化かもしれない。皮 膚が柔らかくきめ細かになっていき、感度も敏感になってくる。性感帯も性器だけではな く全身に広がってくるだろう。腕や背中や尻の上を軽くなでられただけで感じてしまう身 体になるだろう。多分3ヶ月以内に君は女性を抱きしめたいとは思わなくなり、逆に男性 に抱きしめられたいと感じてくるようになるはずだ。精神的にも不安定な時期はあるが、 徐々に女性としてのアイデンテティが発達し、服装も好んで女性物のパンティやスカート を穿き始めるようになってくる。」 淡々と述べるキム医師の説明は、女性化を望んでい ない者にとっては悪魔のごとき説明に聞こえるに違いなかった。 「さて、君は何故自分がこのような処置を受けることになったか分かるかね。」 冷静そうなキム医師の口の端がやや冷笑的に引きつるのが見えた。 「それは君が麻薬や婦女の人身売買やらに関わっていたからなのだよ。その罰として君 は女性化されるのだよ。この手術以降、君はもはや男性とは呼べない存在になり、身体は 急速に女に変わっていく。半年以内に君は最後に残ったペニスも失い、代わりにヴァギナ を付けられてしまうだろう。」 浅茅は無言でその言葉を聞いていた。 すでに精神的に女性化が進んでいるために、浅茅にとってはそれらの処置は望むところ ではあるものの、ここはあくまでも反抗のスタイルを貫き通す必要があった。 「ちくしょう、これは犯罪だぞ、分かっているのか。男を無理やり女に改造するなんて、 許されるわけがない。」 浅茅はキム医師を睨み付けた。 「はっはっはっ、素っ裸のくせして、しかもまもなくキンタマ抜かれてしまうというの に威勢のいいことだ。だがタマ抜きされるところを目の当たりにした時にそんな威勢のい いことをいつまで言っていられるかな。君は去勢され、性転換された後娼婦として上海の 売春宿で働くことになるだろうね。毎日何十人もの性欲に植えきった男たちのペニスを股 の間に突っ込まれて、ヒイヒイよがる人生を送ることだろう。それとも繁殖用の雌奴隷と して赤ちゃんを産む施設に回してやろうかね。何人か赤ちゃんを出産すれば、きっと母性 本能が芽生えてこのまま女でいたくなるかもしれんね。」 浅茅はキム医師の言葉に黙り 込んでしまった。 その様子は少なくともふて腐れたようにキム医師には映ったのだろう、医師は手じかの キャスターからメスを手に取った。 「ほうら、見てごらん、とても鋭利なメスだ。舶来の名のあるメーカーの品だ。これで きみの陰嚢をほんの少し切開するだけだ。そこから睾丸を搾り出し、鋏でチョッキンと切 り取るだけだ。どうだ、簡単だろう。僅か10分もかからない。君は悪事をさんざん働い てきたそうじゃあないか。特別に去勢の様子を見学させてあげよう。だから途中で目をつ ぶらないでくれよ。そして男じゃなくなる瞬間をしっかりと脳裏に焼き付けてくれよ。」 キム医師は集まってきた看護婦に何事かを命じた。 彼女たちもそこは手馴れたものだった。手術の準備が着々と進められていく。 最初に浅 茅の股間に装着されているあばずれ調教器が合鍵により取り外された。 取り外されてみ ると、久々に自由になった浅茅の陰茎は度重なる電撃にも関わらず損傷 を受けていないようにも見えた。 次に泡状のシェービングクリームがその股間に塗りつ けられた。 去勢手術するのに邪魔な陰毛を残らずそり落とすためだった。 そのひんやりした感覚に浅茅は多少の恐怖を覚え始めた。 やはりいらない器官とは思っていても、自分の身体にメスが入るのだ。不安になるのは 当然だった。 シェービングクリームがすっかり浅茅の股間を覆うと次に剃刀を片手に持 った看護婦が浅茅の股間の間に座った。 浅茅は両足を大きく開かされた形で手術用椅子 に固定されているので、見方によっては浅茅の股間にしゃがみ込む看護婦は非常にエロチ ックにも見えた。 「ジョリジョリ・・・・」 無慈悲な剃毛の音が静かな手術室内に響き渡った。 看護婦が浅茅のペニスを片手で持ち上げ、陰嚢の裏にまで剃刀をあてる。 少し前の完全な男性の心を持った浅茅であれば女性に性器を触られただけで勃起してし まったに違いない。しかし、今の彼は女性に性器を持たれても興奮せず、勃起すらしなか った。 「ちょっと待て、本当に手術するのか。」 少しでも抵抗のそぶりを見せねばと浅茅が言った。 「ははっ、今更何を言っているのかね。君も女にされた仲間をさんざん見てきただろう。 良太もケンジもみんなグラマーで色っぽい女に改造され、おっぱいと尻を悩ましげに振り 回しながら男に媚てセックスされる生活を送っている。それは君も知っているだろう。今 度は君の番なのだよ。せいぜいいい声でよがり、男を喜ばせる可愛い娘ちゃんになってく れよな。」 キム医師の残酷な言葉は、とても仕事で行っているとは思えなかった。 メェイメェイといい、浅茅と一緒にこの病院に来た池内やゆかりといい、生来的にサディ ストの傾向が強いのではと浅茅は思った。 その証拠に、浅茅が見たDVDは拉致した男を徹 底的になぶり、悪魔の所業とでも思わせるような手術と言葉で男としてのプライドや存在 や、その他諸々の男性性を完全に打ち砕いている。 そのようなことを出来るのも、相手 が苦しみもがくのを見ることに生まれ付いての快感を感じるサディストだからこそだとも 思った。 そうしているうちに浅茅の股間の邪魔な毛の処理はすっかり終わったらしかった。 最後にタオルで綺麗にシェービングクリームを拭い取られた浅茅の股間が眼前に現れた。 「ははっ、なんと萎びて哀れなちんちんだ。」 キム医師が浅茅の股間を見て笑った。 大人である証の陰毛を完全に失った浅茅の男性器は思っていたよりずっと小さく弱弱し く見えた。 「こんな惨めったらしいちんちんじゃあ有ってもしょうがないなぁ、やっぱ り君は女になるべきだったんだ。」 その言葉にその場に居たメェイメェイがおかしそう に相槌をうった。 「そのとうりあるね、女だったらこんなちんちんの持ち主、相手にしたくないあるよ。 だって挿入されても感じるわけないあるからね。」 それはムッと来るような言い方だっ た。 幾らなんでも、こんな看護婦風情にまでバカにされる云われはない。 「ちくしょう、バカにしやがって、そこの看護婦、このことは一生忘れないからな。」 カッとした浅茅はメェイメェイに向かって毒づいた。 もし縛られていなかったらこの場でメェイメェイに殴りかかっていただろう。 「へへん、どうするつもりあるか。あんたこのまま女にされるあるね。どうせこの先娼 窟に捕らえられたまま一生そこから逃げられない運命あるね。毎日数え切れないほどの男 に突っ込まれるのをこなすのに精一杯で、あたしに復讐している時間などまったくなくな るあるよ。そのうちセックスするのが気持ちよくなり、いつも突っ込まれていなければ収 まらない淫乱女に堕ちていくあるね。」 「ちっ、ちっくしょう、このあばずれが、ド変 態のキチガイ女が・・・」 「ははん、その言葉そっくりあんたに返すあるよ。このあばずれのド変態女。お前なん か人間相手じゃなく、娼窟で馬にでも獣姦されればいいあるね。」 メェイメェイも本気で浅茅を罵倒し始めたてきた。 「こらこら、女同士で喧嘩するんじゃあない。メェイメェイも女としては先輩なんだか ら、もう少し妹分を可愛がったらどうかね。」 キム医師が口を挟んできた。 もっともその口調は本気で口げんかを止めようというより、面白半分に茶化したものだった。 「そんなことより、局部麻酔だ、消毒は済んだかね。なに、まだか、なら早く消毒してくれたまえ」 キム医師の指示で別の看護婦が浅茅の股間に薄茶色い消毒液を大量に塗り始めた。 メェイメェイはぷうっーとふくれっ面をしてあさってのほうを向いている。 その消毒薬は高濃度のアルコールが入っているせいか、ひどくスースーするものだった。 浅茅はぶるぶるっと身震いをしてしまう。 そして注射器を手にした看護婦が浅茅の股間に立った。 「まっ、待て、待ってくれ。」 しかし、そんな浅茅の言葉も聞こえないかのように看護婦は浅茅の陰嚢の付け根に注射 器をブスリと刺した。 「いっ、いてっ!」 しかし、痛いのは針が刺さった瞬間だけだった。 注射器のピストンが押し込まれ、シリンダーの中の薬液が浅茅の陰嚢付近に注入される につれ痛みはまったく感じなくなり、何ともいえない重苦しい感じのみが伝わってきた 。 「よし、これでもういいだろう。どうだ、痛くはないかね。」 キム医師が浅茅の股間をつねり上げた。しかし、かすかに触られている感じはするものの、 麻酔の威力は浅茅の神経を完全に麻痺させてしまっていた。 「じゃあ、君の睾丸をこれから抜いてあげるよ。男じゃなくなる瞬間をよおく見ているんだね。」 キム医師は手馴れた手つきでメスを握ると浅茅の陰嚢の皮を持ち上げ、小さな切れ込みを入れた。 それから反対側にももう一箇所同じような切れ込みを入れる。 僅かな血が数滴その切開口から垂れるのが見えた。 「ほうら、こうして中の睾丸をここから搾り出すんだよ。」 キム医師は浅茅に説明をしながら陰嚢の中の睾丸をしごいた。 次の瞬間、鶏が卵を産むように小さな切開口からうずらの玉子大の睾丸がヌルッと搾り出 されてくる。 睾丸は白く膜がかかったようになっていた。 血も幾分付着しており、グロテスクと言えばグロテスクな光景だった。 それは心の奥底では去勢を望んでいるとはいえ、金玉を抜かれる当事者の浅茅にとって はかなりショックな光景だった。 しかし、浅茅はその光景からどうしても目を離すこと が出来ない。 胸の心臓が早鐘のようにドキドキと音を立てていた。 しかし、浅茅は未だに自分が去勢されようとしていることに実感が湧かなかった。 「はい、これから切り離すからね。ちょっとちくっとするかもしれんよ。」 キム医師が言った。 いくら麻酔をかけていても男性の最も重要な器官なのだ。局部麻酔程度では完全に麻痺 などする訳がなかった。 次の瞬間、何とも言い表すことが出来ない何重ものベールに包まれたかのような鈍痛が 浅茅の股間を襲った。 しかし、耐えられないほどの痛みではない、耐えられない程の痛 みではないが、重苦しい鈍痛がずっと続き始めた。 コトン 膿盆に何かが落とされた音が響いた。 それは言うまでもなく浅茅の睾丸以外のものではありえなかった。 「はい、これで片金になったね。もう少しの辛抱だ、もうすぐ君は玉なしになるからね。」 キム医師は浅茅に言い聞かせるようにもう片方の睾丸を処置していく。 やがて鈍痛と共にまたコトンと音が手術室に響いた。 「あはは、これであんた、玉なしのおかまになったあるね。今からあんたをお嬢ちゃん って呼んであげるあるよ。それからあんたの前に女にされた奈々子ちゃんからあんたの女 の子の名前も付けてもらったあるよ。ええと、あんたはたった今から絵美って呼ばれるか らね。わかったあるか、絵美ちゃん。」 その名前はとうに浅茅に付けられていた名前で あり、馴染みの深いものではあったが、浅茅は始めて聞くかのように無言で下を俯いた。 その動作が屈辱に打ちひしがれているように見えたのだろう、キム医師が浅茅に言った。 「絵美ちゃんか、いい名前じゃあないか、今は慣れないかもしれんが、そのうち女性ホ ルモンが脳にまわってくると、自分は絵美なんだと本当に思うようになってくるさ。そし て男性の視線がどんどん気になっておしゃれも始めるようになる。よかったな、絵美君。 」 自分は本当に去勢されてしまったのだろうか。 浅茅は何度も自分に言い聞かせた。 それはトリックでも何でもなく、確かに鈍い重苦しい痛みが股間から伝わってくる。 玉を抜かれる瞬間も浅茅はしっかりとその目に焼き付けていた。 ・ ・・こ、これで女になれるわ・・・ 浅茅はそう思った。 しかし、女の子になれるという嬉しさとは別にもう二度と元の男には戻れないんだとい う喪失感も強く感じ始めていた。 もはや自分は男ではなくなったのだ。そしてこれから 女性ホルモンのカプセルを体内に埋め込まれて、女性らしい身体の膨らみを持つ身体にな っていいくのだ。 これから二度とトランクスやスーツを着られず、スカートやブラジャ ーをつけ、男の人に尽くし可愛がってもらいながら生きていくか弱い女性としての人生を 送らなければならないのだ。 そう思うと浅茅の心は女になれるという喜びと、男には戻 れないという後悔が入り混じった複雑な心境となっていくのだった。 「ほらほら、いつまでも呆然としていないあるね。絵美はまだこれからホルモンカプセ ルの埋め込み手術が残っているあるよ。女性ホルモンカプセル埋め込んだら、身体から女 のフェロモンがムンムンに出始めるからね、その匂いかぎつけて男どもが言い寄ってくる ようになるあるよ。楽しみにしているあるね。」 そんなメェイメェイの言葉も浅茅には 届かないようだった。 浅茅の陰嚢の手術跡は手際よく止血され、化膿止めが塗布された後小さなバンソコウの ようなものを貼り付けられていた。 それはこんな簡単な処置でいいのだろうかとも思わ せるような手当てだった。 しかし、そのシンプルな傷跡の手当ては、浅茅の陰嚢がもはや何も入っていない空の状 態であることを嫌でも強調していた。 「では、これより女性ホルモンカプセルの埋め込 みを行う。普通は腕などの皮下にペレットを埋め込むだけなのだが、中には自分で皮膚を 切り裂いて取り出してしまおうという勇敢なご婦人もいてね、埋め込む場所は自分では簡 単に取り出せないように背中の一番手が届かない場所にさせてもらっているのだよ。」 キム医師が浅茅に事も無げに言った。 「ほら、これが絵美君の身体にこれから埋め込まれる女性ホルモンのカプセルだ。ペレ ットとも言うがね。これが5年もの間徐々に、そして君の身体を完全に豊満な女性の体に 変えるにちょうどいいくらいのホルモンが適量に少しずつ体内に溶け出していくのだよ。 」 キム医師は手にした楕円形のカプセル様のものを浅茅の目の前に突き出した。 それは 思っていたよりも小さく、光沢のあるピンクの色がついた錠剤といってもいいよ うなものだった。 「さて、ではこれから君の身体を固定しているストラップを外すから ね。暴れないでくれよ。」 暴れることなどは到底不可能だった。 去勢手術のダメージは思いのほか浅茅の体全体に及んでいた。 身体を拘束していたストラップを外されても全身に力が入らない。 体中が重く、まるで重病の後のような感じだった。 去勢用の椅子から立ちあがった時に、浅茅は思わずよろめいてしまった。 「おやおや、睾丸を抜いたからバランスが取れないかね。」 キム医師が残酷なからかいの言葉を言った。 浅茅はそれを極力無視しようとした。しかし、どうにも股間の傷か気になって仕方がない。 こんなにも早く動かされて大丈夫なんだろうかとも思ってしまう。 そうこうするうちに浅茅は看護婦の手により簡単に隣のベッドにうつぶせに寝かせられ てしまった。 そして背中にひんやりとした消毒薬が塗られるのを感じた。 「どうやら去勢されてからすっかり覚悟決めて女の子になる道選んだみたいあるね。いい 娘ある。きっと男の子がほっとかないいい女になるあるよ。奥村先生に頼んで、最高の膣 を付けてくれるようにあたしからも言っておくある。良かったあるね。これからは毎日綺 麗なドレス着て、きれいにお化粧して、男にセックスしてもらえる毎日になるあるよ。」 メェイメェイのそんな言葉を聞きながらも浅茅はそのことを想像せずにはいられなかっ た。 浅茅のセックスの対象はすでに男に切り替わっていた。 それ故、自分の膣の中に男性のペニスが挿入され、射精される感覚を早く味わってみた いとも感じ始めていた。 ・・男の人にパンティーを脱がされ、ヴァギナを愛撫され、し とどに塗れたその女性器にペニスが激しく、またゆるやかに侵入してくるのだ。 すっかり大きくされたおっぱいを吸われたっぷりにこねくり回される。 浅茅はそのことを考えただけでもひどく興奮せざるを得なかった。 うつぶせにされた姿勢で、浅茅は自分のペニスが硬く勃起するのを感じた。 玉を抜かれても勃起するのだ。 なぜか知らないが、浅茅は去勢されればそれで二度とペニスが勃起しないものと思っていた。 浅茅はそのことを周りの看護婦たちに悟られるのを恐れた。 まさか強制的に女性化されている手術の最中に勃起していることを知られればとたんに この上ない嘲笑にさらされてしまう。 浅茅は何とか自分の肉棒が早く小さくなってくれ ることを願った。 しかし、その願いもむなしかった。 「あいやぁー、なに、この娘勃起させているあるよ。」 浅茅の様子を観察していたメェイメェイが浅茅の異変を目ざとく見つけてしまったのだ。 「やっぱり、この娘、変態だったある。女の子にされようとしているのにちんちん勃起 させているあるよ。うわぁ、嫌だ、恥ずかしい。」 メェイメェイの呆れたような声に浅 茅は気の遠くなるような恥辱を感じていた。 本気でこのまま立ち上がって部屋を飛び出したかった。 しかし、体が重く自由の利かない状態であることには変わりなかった。 「ちょっと静かにしたまえ、これから皮膚を切開してカプセル挿入するから。」 メスを持ったときは真剣なのだろう、キム医師が周りをたしなめ始めた。