ジェード・コネクション 作: 摩火 敬一は訳がわからず呆然と立ちすくんだ。 こちらを見ていた別の看護婦が慌てたように廊下を駆け出していく。 きっと警備員に通報するつもりなのだ。 敬一はその時この病院の胡散臭さ、異様な感じを嗅ぎ取っていた。 それは窮地に追い込まれた人間だけが発する第6感に近いものだった。 この病院の放つ異様なオーラは敬一の次の決断を促した。 それは即ち一刻も早くここから逃走することだった。 数分後、3人の警備員が敬一が収容されていた病室になだれ込んできた。 全員手には硬い金属製の警棒を握り締めている。 しかし、3人の見たものはもぬけの殻の病室だった。 警備員達は中国語で叫び、指示を出し合いながら廊下に面した他の部屋を捜索し始めた。 少ししてゆかりと池内が急を聞いて駆けつけてきた。 池内が中国人の警備リーダーから報告を受け、それをゆかりに伝えた。 「実験体はまだ見つからないとのことだ。今、このフロアだけでなく館内全体に警報を発 した。恐らくどこかの部屋に隠れていると思うので見つかるのは時間の問題だと警備員は 言っている。」 「そう、でもあのストラップを外してよく逃げたわね。捕まえたら死ぬ ほどお仕置きしてやるわ。」 ゆかりが憎々しげに言った。 「ああ、しかし今のところ貴重な実験体だ。殺さないようにほどほどに頼むよ。」 池内がゆかりに言った。 実験体? 彼らは敬一をある実験に使うつもりのようだった。 そのための敬一の身体のデータは昨日のうちに全て採取されていた。その中にはDNA解析 も含まれている。 身体データを解析するには結構な金額とバカにならない労力が必要と なってくる。池内はその労力が水の泡とならないことだけを心配していた。 暫く経っても敬一が発見されたと言う報告は一向に入ってこなかった。 監視カメラの映像でも敬一の姿を発見できないとの報告が届けられる。 敬一は丸で煙のように忽然と消え去ってしまったかのようだった。 「そんなバカな、どこかに居る、絶対にどこかに居るはずだ。探し出せ。」 池内が警備員にハッパをかけるが、時間だけがじりじりと過ぎ去っていく。 「ひょっとしたら、何らかの方法で病院外に抜け出したかもしれない。外の敷地の捜索を 始めた方がいいだろう。」 池内と警備員のリーダーはそう相談し始めた。 その様子を脇でじっと見ていたゆかりは自分の腰のホルダーに装着したあばずれ調教器の コントローラーに目をやった。 ・・もしかしたら ゆかりはふと閃いた。 「待って、このコントローラー試してみるわ。うまくいけば悲鳴で居場所が分かるかも。」 ゆかりはコントローラーのボタンに手をかけた。 そう、敬一の股間を覆う貞操帯様のものは実は浅茅にも使われたあばずれ調教器の改良版 だったのだ。 「ああ、それか、でもそれは電波の到達距離がせいぜい5メートル程度しかない。無理だ と思うよ。」 池内がゆかりに言った。 「でも、駄目で元々でしょ。」 ゆかりはそう言ってあばずれ調教器のスイッチを押した。 「ぎゃっ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 そこに居る全員がそのどこからともなく聞こえてくる男の悲鳴に驚愕した。 ゆかりは構わずに調教器のボタンを押しつづける。 その時、バリバリという物凄い音を伴い病室の天井を突き破って敬一が落下してきた。 「あっ、こいつ天井裏に潜んでいたのか。」 天井から床に落下した敬一は白目をむき、口から泡を吹いて気絶していた。 敬一は病室の天井にあるケーブルなどの点検口から天井に潜り込みそこに身を潜めていた のだった。 正に灯台下暗しとはこのことだった。 早速警備員が気絶している敬一に拘束服を着せていく。 十数秒後には敬一の上半身は両手を身体に密着させられて身動きできない状態にされてし まっていた。 「やあ、ゆかり君、お手柄お手柄。」 池内がゆかりに言った。 とりあえず敬一の逃走を防ぎ、身柄を確保したことでほっとしている。 「ええ、ラッキーだったわ。でも看護婦に怪我を負わせて逃げようとしたことに対して、 これからたっぷりお仕置きしてやらなきゃ。」 ゆかりの目は残虐なる光を帯びていた 。これからどうお仕置きをしてやろうかと考えているようだった。 「とりあえず懲罰房を使ってもいいでしょうか。そこでたっぷり思い知らせてやるわ。」 ゆかりは池内に言った。 「懲罰房か・・・いいけど、さっきも言ったように本当に実験体を壊さないように頼むよ。 殺してしまえばもともこもないんだからね。」 池内はゆかりに何度も念を押した。 そして警備員に指示をして懲罰房とか言う場所に敬一を運ばせた。 懲罰房はその名のとおり禍々しいSMの責め具が揃った部屋だった。 古典的な三角木馬や天井から犠牲者を吊り下げる鎖が揺れている。 壁にはコレクションのように何種類もの鞭やらロープやら浣腸器やらが吊り下げられていた。 この懲罰房ではこれまでに何人もの男性が責め折檻を受けてきた場所だった。 性器に電気を通すというあばずれ調教器の基となった機械も設置してある。 ゆかりはこの懲罰房に用意してある道具を片っ端から試すつもりだったのだ。 懲罰房に着いた頃に敬一はようやく意識を取り戻してきた。 「うっ、うーん。」 暫くは身体の痛みのために唸りつづけている。 「ほらほら、しゃんとしなさい。」 ゆかりが脚に履いたハイヒールのつま先で敬一の足を蹴った。 「いてっ」 そして蹴った相手を振り返った敬一はそれがゆかりだという事に気がついた。 「あっ、ゆかり、てめぇー」 そう言ってゆかりに殴りかかろうとするが、当然ながら両手は拘束されていて使えない、 しかも敬一の両脇には警備員がいて敬一が妙な動きをしないようにしっかりと押さえつけ ていた。 「うおっ、な、なんだよ。てめえらは、離せ、はなさんか。」 敬一は身体をゆすってみるが、体格で遥かに勝る警備員の力の前にはびくともしなかった。 「ほほほ、無駄よ。バカメス牛のハナちゃん。」 ゆかりが敬一のことをそう呼んだ。 「なっ、なんだとぉ、ゆかり、てめえ、亭主に向かって・・・」 その瞬間、ゆかりの平手打ちが敬一の頬にパシンと小気味良い音を立てた。 「いてっ、てめえ・・・」 またパシンパシンと続けて平手打ちが敬一を襲う。 警備員に両脇を抱えられ身動きできぬようにがっしりと押さえつけられている敬一はどう することも出来ない。 十数回の平手打ちが敬一の両頬を襲った。 しかし、敬一はまだしぶとく爛々とした目でゆかりを睨みつけている。 「懲りないメス牛ね。そこのバーにお尻を向けてゆわえつけて。」 ゆかりが警備員に言った。 警備員の一人は日本語が分かるらしく、ゆかりが指示した3段平行棒のような金属製のバ ーに敬一を引きずっていった。 その金属製のバーは手首と足首とウェストを止めるスト ラップが付けられている。 そこに手足と腰をベルトで止めれば敬一は足を延ばし尻を突 き出し、身体をくの字に折り曲げた格好で固定されることとなる。 僅かに身体をゆすることはできても、それ以上のことはできない。 敬一が現在身につけているものと言えば、貞操帯型のあばずれ調教器のみだった。 それゆえバーに固定された敬一の菊門は丸々さらけ出されていることになる。 「さあて、この体制でハナちゃんは何をされるか分かる?」 ゆかりがわざと優しげな言葉で敬一に言った。 「うん、分かんないよね、分かるはずないよね。じゃあ教えてあげようかなぁ。」 ゆかりは敬一の耳の傍まで口を持っていった。 「どうしようかなぁ、やっぱり教えちゃうと自分がこれからどうなるかわかっちゃって可 愛そうだから、やっぱり教えちゃうの止めようかなぁ。」 その言葉にまた敬一は怒りを 爆発させる。 「ゆかり、てめぇ、どうするつもりだ。こんなことしてただで済むと思っているのか。」 その言葉も今の敬一の体勢では滑稽なセリフだった。 「ううん、ただで済むと思っていないわ。だからあなたが二度と私に危害を加えることが 出来ないようにしちゃうの。」 「ちくしょう、殺すのか、殺すならさっさと殺しやがれ」 頭に血が上っている敬一はふて腐れたように開き直った。 「あら、誰が殺すなんて言った?殺さないわ、殺したりするもんですか。それよりもっと もっと酷いことよ。何をされるか知ったらそれこそひと思いに殺してくださいってわたし の足にすがりついてみじめに懇願してしまうかもね。」 殺されるより酷いこととは何か、 敬一はにわかには想像することができなかった。 しかし、普段家庭に居る時のゆかりと は明らかに違っていた。 目が異常な位の憎しみの光で満ち溢れている。 その異常さが敬一の背中にゾッとするものを走らせた。 「あっ、先生が来た。先生、こっち、今三段バーに固定し終わったところ。」 誰か入ってきたらしくゆかりが何者かと話し始めた。 敬一はかろうじて首を回して入ってきた人物を確かめようとする。 その先生とやらは白衣を着た医者らしき人物だった。 それは奥村医師だった。 「やれやれ、あんたの旦那、天井裏から落下したんだって。」 奥村医師はそういいながら敬一の全身を見回した。 尻から落下したらしく、敬一の臀部には青あざが残っている。 「どうだ、痛いかね。」 奥村医師が敬一のその臀部のあざを押した。 「イテッ、痛てえよ。」 ふて腐れたように敬一は医者に言った。 「ふーん、どうやら骨は折れていないようだ。単なる打撲のようだな。」 奥村医師はこともなげに言った。 「ところで、本当にあの手術やっていいんだね。あの手術やったら、旦那は二度と元には 戻れない身体になるけどいいんだね。」 奥村医師はゆかりに念を押すように言った。 「いいの、十分に考えた結果だから。それにこいつのことわたしの旦那なんて呼ばないで。 こいつは単なる家畜のバカメス牛のハナなんだから。」 その会話から敬一は何か恐ろし い手術が自分に行なわれようとしていることを知った。 「ちょ、ちょっと待て、何を、 一体何を俺にする気だ。」 敬一が不自由な体勢から抗議の声をあげた。 二人が言っていた二度と元には戻れない手術とは不吉な響きを持っていた。 ・ ・・まさか、俺の手足を切断して暴力を振るえないように不具にしようというのだろうか。 「あら、さっきも言ったじゃない。知らないほうが身のためだって。」 ゆかりが楽しげに敬一に言った。 「ば、バカヤロウ、何をする気かしらんが、これは犯罪だぞ。誘拐、暴行、傷害、お前達 警察に捕まってもいいのか。それこそ何十年も刑期食らうぞ。」 敬一は怒りを含んだ声で2人に言った。 「あらら、あんたがそんなこと口にするなんてね。暴行、傷害の常習者のくせに。これは 天罰よ、神があんたに下した天罰、あんたがこの後どうなるか教えてあげようか。」 敬一の言葉にゆかりがムッとしながら答えた。 「うるせえ、バカ女、いいかげんにしやがれ。本当に殺されたいのか。」 かつてゆかりを完全に支配していた記憶が敬一の乱暴な口調に現れていた。 しかし、今は立場が逆転してしまっている。殺される可能性のあるのは敬一の方だった。 「まあ、あったまに来た。先生、あの注射打っちゃって、もう構わないから目一杯打っ ちゃって。」 ゆかりが奥村医師に言った。 「ははは、早速始めるのかい。いいよ、用意してきたから。だけどこの注射は許容量とい うものがあってね、たくさん打てはそれだけ効果が挙がるというものじゃあない。 打ちすぎるとかえって副作用の方が強くなるからね。」 そう言いながら奥村医師は持っ てきた鞄から注射器と薬液の入ったビンを取り出し注射器のシリンダーにその薬液を吸い 上げ始めた。 「ま、待て、何をする気だ。何を注射しようとしてんだ。」 不安に焦る敬一を尻目に奥村医師はアルコールを含んだ脱脂綿で敬一の臀部を消毒した。 「ヤクだな、ヤクを打つのか。俺をヤク中にしようとしてんだな。」 敬一の脳裏には知り合いの何人かのジャンキーの姿が頭に浮かんだ。 何年もヘロインを続けていた一人はいつもボーとした状態になってしまい、受け答えもま ともに出来ない廃人となってしまっていた。また覚せい剤を使いつづけていた女は被害妄 想のかたまりとなり、世界中の人間があたしを殺しに来ると部屋にこもり続け、ついには 栄養失調で骨と皮ばかりの状態で精神病院に収容されている。こいつらはそんなジャンキ ーとして俺を廃人同様にしちまうつもりだと敬一は思った。 「ちっきしょう、てめえら 、ふざけんなよ。」 口では威勢のいい敬一だが、実際はすっぱだかで尻を突き出した格好で固定されているの でどうすることもできない。 チクリと敬一の尻に針の刺さる痛みが走った。 それから薬液が敬一の身体に注入されるにつれ、もっと強い鈍痛が尻の中に沸き起こってきた。 「いて、いてて、な、なんだこの注射は、すっげえ痛いじゃねえか。」 敬一は思わず痛みを訴えた。 こんな痛い注射は初めてだった。 「痛いか、そりゃそうだ、ホルモンの効果が継続するように筋肉の中に薬液溜まりができ るように打っているからね。筋肉の隙間を無理に押し広げているので普通の注射より痛い はずだ。」 奥村医師が注射の痛さの訳を丁寧に説明する。 「ちょっ、ちょっと待て、ホルモンて言ったか。ホルモンって一体何のことだ。」 敬一の頭にさっきより強い不安がよぎった。 ・・・そういえばさっきゆかりは俺のことをバカメス牛とか呼んでいた、ま、まさか・・・ ジェード・コネクション161 摩火 - 2005/08/22 20:18 - 「あら、ホルモンって言えば女性ホルモンのことに決まっているじゃあない。お前は今女 性ホルモンをたっぷりたっぷり体の中に注射されたのよ。よかったわね。そのうちどんど ん女らしくなっておっぱいもお尻もおっきくなって来るんだから。」 ゆかりは楽しそう な口調で敬一に告げた。 「な、な、な・・・」 あまりもの予想外のことに敬一はうまく言葉を出すことができない。  「今、お前をバカ乳牛女にするためのプロジェクトがスタートしたわ。高濃度の女性ホ ルモンによる女性化だけじゃあなく、おちんちんもタマタマも切り取って女の子の膣を作 ってあげるわ。おっぱいもうんとうんと大きく整形して、乳首も本物の雌牛並に大きくす るの、もちろん尾蹄骨に直接手術で繋げた尻尾もつけるでしょ、それから大きな鼻輪もハ ナに通して・・・身体に白黒のホルスタインも刺青もするし・・・常に四つんばいでしか 歩けないように足の関節も固定する手術もするし・・・お前はもう人間ではない存在に変 えられてしまうのよ。牛娘にね。」 「う、ウソだろう、俺を騙してんだろう、ゆかり、 そうだろう。」 話の途中で敬一がゆかりの言葉を遮った。 「ちょっと待って、もうわたしの名前を呼び捨てにしないで、これからはゆかり様と呼び なさい。それからお前の名はハナだからね。これからハナと呼ばれたら返事しなさい。」 ゆかりがきつい口調で敬一に言った。 「なあ、ゆかり、これまでのことは悪いと思ってい・・・ぎゃっ、ぎゃーーーーー」 ま たも敬一の股間に強烈な電撃が襲った。敬一は三段棒に固定されているにも関らず、 全身の筋肉が一瞬にして硬直し、台座が大きく揺れた。 それから身体全体が三段棒にガ クッと崩れ落ちる。 ゆかりがあばずれ調教器のスイッチを押したせいだった。 「呼び捨てにするなと言ったでしょ!分かった、バカハナ!」 ゆかりが敬一の髪を乱暴に掴み、耳元で怒鳴る。 敬一は今の電撃のショックで、口から泡を吹き、鼻水がだらだらと鼻から滴っていた。 「わたしの命令に逆らうと今のような電撃がバカハナの睾丸を直撃するわよ。あの電撃を ね、睾丸に受けるたびに睾丸は少しずつ壊れていくように作られているの。わたしに逆ら う度にハナは自分で自分を少しずつ去勢していることになるわね。」 敬一はそのゆかり言葉を聞き総毛だつのを感じた。 確かに、あのひどい強烈な電撃を受けた睾丸がなんともない訳はないように思えた。 睾丸の機能が停止してしまえば、それは即ち男性としては失格ということを意味する。 キンタマがなくなったり、機能しなくなるくらいなら一思いに死んだほうがよっぽどマシ だった。 「睾丸がまったく機能しなくなったら手術で抜いてあげるわね。 だってまったく機能しなくなったものいつまでもぶら下げていちゃ邪魔でしょ。 そして男性ホルモンが一切生産されなくなるハナの身体は急速に女の体つきになっていく わ。キンタマが無くなってしまった後はわたしに逆らう度に女性ホルモンたっぷり注射し てあげる。逆らうたびにイエローカードで女性ホルモンの投与ね、イエローカードが2枚 たまればレッドカードとして雌牛化するための手術なんていいんじゃない。」 敬一はまだこれが現実のものとは信じられなかった。 若者らしく、自分の身には絶対に悪い災難は降りかからないと思っているだけに敬一はこ れが自分を懲らしめるための高度な冗談だと思い込もうとした。 「ゆかり、もう分かった。もう分かったから、ギャッ、きぎ゛ぎゃっっっっっーーーー ー!!」 電撃を体験したのはこれで3回目だった。 その痛みは強烈過ぎて、自分のキンタマが高熱で焼かれ、圧搾機でドンと潰されてしまう かのような痛みだった。 ブリブリ!!! その瞬間、敬一の身体から異音と異臭が漂ってきた。 敬一は既に白目を剥いて失神している。いや、それだけではなく、彼はあまりもの痛みに 大便と小便を同時に失禁してしまったのだった。 「うわっ、イヤだ。もう信じられない 。このぐらいの折檻でうんちとおしっこ粗相してしまうなんて。」 ゆかりが顔をしかめて飛びのいた。 「もう、あったまに来た。気がついたらたっぷりお仕置きしてやるわ。」 ゆかりは壁に掛けてある数々の種類のムチを見ながら言った。 しかし、その言葉は幸いというべきか不幸にしてというべきか、失神している敬一の耳に は届くはずもなかった。 24.浅茅9 その2人の妖艶な美女を目の前にして、浅茅はジャーナリストらしからぬ狼狽をしていた。 浅茅の知っているその美女は、つい数ヶ月前まではヤクザ界では将来を期待された武闘派 若手の2人だったはずだ。 いかつい顔と腕力が何よりも自慢の良太、痩せてはいたが、 眼光鋭くどこか野良犬の風情のあったケンジ。 その2人がよくぞここまでというくらい 柔らかく女らしい仕草で浅茅に会釈してきたのだ。 そういう浅茅も派手なピンクの3段 フリルの付いたシフォンのワンピースに女の化粧を顔に施されている。 そういう意味で は奇妙な女同士の再会だった。 長身でがっしりした体格の良太は身長もずいぶん小さくなったと浅茅は思った。 身長も身体の幅も以前と比べてすっかりとスレンダーになっている。 本当の細身の女性に比べると骨太さと体格の良さはまだ残っているものの女性として完全 に通用する体型だった。 水色のワンピースが細くなった良太のウェストとすっかり幅が 広くなったヒップを強調していた。 そのワンピースは胸元にかけて大きく開いており、 豊かなバストの谷間がチラチラと見え隠れしていた。 しかし良太の顔や首筋、細くされた足には無数の縫合跡が走っており、良太の体全体から 人工的でアンドロイド的な無機質な印象が漂っていた。 一方、ケンジはと言えば、どこ となくお嬢様を思わせる大胆な花柄のワンピース姿だった。 栗色に染められ、女らしい ウェーブをつけられた髪が軽やかに揺れていた。 良太より小柄なケンジはその立ち振る舞いもどことなくなよなよした感じになっていた。 浅茅がこの2人を見て真っ先に思ったのは感嘆だった。 そしてあの2人がこんな美女になれるならば、自分ならばもっともっときれいになれるだ ろうという自負ともライバル心とも言える思いだった。 「浅茅さん、お久しぶりです。 こんなに変わっちゃったわたし達を見てびっくりしたでしょ。」 最初に言葉を発したのは良太だった。 その声も以前DVDで聞いていたとはいえ、すっかり甲高い女性の声質になっている。 改め て目の前で聞いても以前のあの野太い良太の声を知っているだけにいまだに信じら れなかった。 「えっ、・・・ええ、お二人とも予想外の美しさにびっくりしました。」 浅茅はかろうじてそれだけを言った。 「女の子に生まれ変わってから正式なご挨拶まだでしたわね。わたしは美保、そしてこち らのお嬢さんが奈々子。どう、素敵な名前でしょ。」 ケンジが浅茅に言った。 そのケン ジの声質もすっかり女のものとなっていた。いやそれよりアニメの声優を思わせ るような素敵な声だった。 「あっ、は、はい、お二人のDVD見ました。」 浅茅はまだうろたえていた。そしてなんだか低い男の声の自分に違和感を覚えていた。 ジェード・コネクション165 摩火 - 2005/08/26 18:37 - 「まあ、やだ、あのDVD見られたんですの。恥ずかしい・・・」 奈々子こと良太が顔を赤らめて身をくねくねと動かした。 「奈々子はすっかりマゾ娘になってしまったの。だから何人もの男の人に犯されるシーン の入っているDVDを浅茅さんに見られたと聞いただけで、ほら、感じてしまっているわ。 」 ケンジの言葉に浅茅は良太の方を見た。 なるほど顔が上気し、どことなく目がトロンとして、ワンピースの下の両腿をモジモジと こすり合わせているようだった。 「奈々子はちょっとしたことにもすぐに発情しちゃう の。そうでしょ、奈々子、スカート持ち上げてすっかり濡れているあそこ、浅茅さんに見 てもらう?」 その言葉に良太は怒りもせずに相変わらず両腿をモジモジとさせて俯いて いる。 「奈々子はね、マゾ女の血と完全に入れ替えられてしまったの。そしたらこのあ りさま、ちょっと叩かれていじめられただけでも感じちゃう女の子にされちゃったの。」 ケンジは良太のことをからかうように言った。 以前であれば、ケンジは良太より格下だったはずだ。それが今ではケンジの方が良太をす っかり適度にあしらっている感がある。 それは次の良太の言葉によって裏付けられた。 「はい、あのう、あたしマゾ娘にされちゃったんです。だから男の人がいじめて下さらな いときに代わりに美保お姉さまにいじめてもらっているんです。」 「そうなのよ。縄を股間の割れ目ちゃんに縦にかけて縛ってムチでひっぱたくと面白いよ うにこの娘は悶えるのよ。でも本当は男の人にそうやっていじめられるともうすごいわよ。 お股なんかもう大洪水、おしっこ漏らしたと思うくらいラブジュースが足首にまで垂れて くるわ。奈々子は濡れていない日なんてないんじゃない。」 いきなりのハードな話に浅 茅は自分の方の顔が赤らんでくるのを感じた。 「いやだ、そういう美保お姉さまだって毎日彼氏とエッチしているくせに。」 ケンジに彼氏がいるという話に浅茅は驚いた。 実は強制性転換された良太とケンジはなりたくもない女にされたことで毎日地獄のような 屈辱の日々をおくっているに違いないと想像していたのだ。 普通はそうだ。20年近く 男性として生きていた人間が、しかも男の凶暴さを売り物にしているヤクザが女の身体に 突然変えられてしまうのだ。自殺するか発狂するかどちらかしかないものと思っていた。 それがこの二人は女であることを楽しんでいるかのようなのだ。 その証拠に、二人からは圧倒的な生き生きとした存在感が感じられた。 「えっ、ケンジには彼がいるんだ。」 浅茅は思わず聞き返した。 「嫌ね、ケンジなんて呼ばないで、美保とよんでくれないかしら。ねえねえ、それから浅 茅さんも女の子にされるんでしょ。そんな可愛い服装しているんだし、女の子の言葉遣い で喋ったほうがいいんじゃあない」 「そうよそうよ、そのピンクのドレス姿で男言葉は ぜっーたいおかしいわよ。」 良太もケンジの言葉に賛成だというように「ぜっーたい」 と強調した。 「ええっ、でも、恥ずかしい、それに俺は女なんかになりたくないんだ。」 浅茅のその言葉はどこか弱々しかった。 「そんなことないって、あたしも最初は女なんかになりたくなかった。無理やり拉致され て女性ホルモン沢山注射されて、パンティーやブラジャー付けさせられて、毎日少しずつ 自分の身体が女の身体に変わっていくのが分かるの。そりゃあすっごい恐怖、嫌で嫌で毎 日死ぬことだけ考えていたわ。隙があればナイフか何か盗み出してなんて考えていたんだ けどそんなチャンスなかった。そしてついに性転換手術、おちんちんとタマタマ切られち ゃった。おっぱいも大きくする手術されて、顔も女の子の顔に整形されちゃった。ある日 鏡でじっくり自分の顔見るとね、その可愛さにびっくりしちゃった。これなら女の子で暮 らしてもいいかなって時々思うようにもなってきた。でも決定的だったのは彼氏とできち ゃってから。彼、中国人の看護士なんだけど、あたしのこと前々から好きだったんだって。 ある日女性の機能を高めるためのマッサージ受けている最中に、彼、がまんできなくなっ ちゃったのね。あたしの中に入れちゃったの。一度入れられちゃうと女って駄目ね。とっ ても彼のことが好きになって好きで好きでどうしようもなくなっちゃった。」 「いいなぁーうらやましいなぁーあたしも彼、欲しい。」 良太がケンジの言葉にうらやましげに言った。 それは浅茅も同感だった。 ケンジの言葉を聞き、自分もケンジのような美女になって彼氏が欲しいと瞬間的に思った のだった。 「でも、王ちゃんはだめよ、絶対に手を出さないでね。王ちゃんはわたしの ものなんだからね。いい?二人とも分かった?」 ケンジは浅茅が性転換されていないにもかかわらず完全に女性同士として扱っていた。 そのことに対しては、浅茅は腹立たしいやらどことなく嬉しいやら複雑な気持ちだった。 浅茅の中では男性性と女性性が入り乱れて、どっちつかずの状態になっていた。 「で、良・・・奈々子はどうなの、女に、それもマゾ女にさせられて楽しいの?」 浅茅の言葉は知らず知らず女言葉が混じってきていた。 「うん、とおーーっても楽しいわよ。わたしも最初はものすごく抵抗したし、鎖なんかち ぎっちゃって、もう少しで脱走するところまでいったこともあるわ。」 以前の良太の腕力を知る浅茅にとっては脱走寸前までいったことは意外ではなかった。 「その後、危ないっていうんで去勢されちゃった。去勢されるとね、何だかあまり怒り 狂う気がしなくなるのね。何ていうか・・・怒りのエネルギーがなってくるのね。今まで ちょっとしたことにも腹を立てていた自分がバカみたいに思えてきたの。そりゃあタマタ マ抜かれるっていうのは男としてすっごい屈辱よ。もう一生女とはやれないようにされて しまったんだから。最初は恥ずかしくって、悔しくって、居ても立ってもいられなかった。 でもその後マゾ女性の血と自分の血をすっかり取り替えられたの。自分の血なんか一滴も 残らないくらいマゾ女性の血と取り替えられたわ。同時に全身の手術ね。肋骨抜かれ、身 長や肩幅を狭くする手術やら美保お姉さまと同じような顔の整形手術やら・・・もう半年 間くらいベッドにくくりつけられていた。意識なんて薬のせいかどうかしらないけど朦朧 とした状態、そしてようやく意識がはっきりしてきたある日世界がいきなり変わって見え てきちゃったの。なんだか病院のスタッフの男の人がとっても立派で、頼りがいのある素 敵な人たちに思えてきたわ。わたしって今まで肩を怒らせてつっぱって生きてきたでしょ、 それが、あっ、自分はそんなことしなくても男の人にすがり甘えて生きていけばいいんだ った気がついたの。」 「でも、それって、本当の自分の心じゃなくて、女の人の血と入 れ替えられた影響なんでしょ。」 浅茅が不思議そうに聞いた。 「うん、それは自分でも充分に知っていたわ。内藤様にも最初にそう言われていた。 マゾ女の血に入れ替えられたら、いじめてほしくていじめてほしくて堪らなくなって、自 分から性転換お願いするようになるって。」 「内藤様って・・・?」 浅茅はまだ内藤に会ったことがなかった。 「あたしのご主人様、って言うか、ここの施設の責任者かな、とおっーてもえらい人。」 「ふーん、その人があた・・・俺を性転換しようとしている張本人なんだ。」 「うーん、 そうとも言えるのかなあ、このプロジェクトの本当の責任者は会ったことないけど韓国の 人って聞いたことあるけど・・・」 浅茅は考え込んでしまった。 先ほどの奥村医師が教 えてくれたことといい、良太が喋ったことといい、なんとなく一本 のつながりがあった。 パンドラ・ウィルスは本当に存在するのだろうか。そして日本・ 韓国・中国による男性改造による女体供給のための共同プロジェクトはうそ偽りのないも のなのだろうか。 浅茅は2人の改造美女をまじまじと見た。 二人ともヤクザだった頃に比べて生き生きと輝いて見えることは間違いなかった。 ヤクザの心を完全に女性化することに、このプロジェクトは大成功しているようだった。 「あと2つだけ教えてくれない?」 浅茅の中のジャーナリスト魂がいつしか目覚めていた。 このことが本当ならば、大スクープだった。 自分が女に変えられていく過程、そしてその隠された秘密。 それを世に出せば社会的大問題となるだろう。 そもそもこのような人類社会に決定的な大ダメージを与える事柄を何年間も極秘にし、そ の対策として罪もないと言えば語弊になるが、正式な裁判を受けていない人間を勝手にか どわかして残忍とも言える手術をしているのだ。このようなことが人間として許されてい いわけはなかった。 「二人とも女にされてとっても幸せそうに見えるけど、年取った時のこと考えた?その時 はどうなるの?」 浅茅の言葉に良太とケンジはお互いの目を見交わした。 そしてケンジの方が浅茅に喋り出した。 「もしパンドラウィルスの有効的な治療法が見つからなければ、あたしたちは10人以上 の男性と結婚して夫を持つことになるわね。一妻多夫ってわけね。奈々子は分からないけ ど、奈々子は結婚せずに政府公認のSMクラブで客を取りたいと思うんじゃあないかしら。 そのほうが色々な男の人にいじめてもらえるから・・・まあ、それはさておき、わたしは 結婚して子供も10人以上生むことになると思うわ。だから年取っても大勢の子供や孫に 囲まれておばあちゃんとして幸せに生きることになると思うの。」 「えっ、子供?」 浅 茅はなるべく軽蔑の表情を浮かべないように努力しなければならなかった。 いくら性転 換手術したとしてもそれは外性器を女性そっくりに整形しただけにしか過ぎない。 卵巣も子宮もないのだ。生物学的に子供を生むことなどできるわけがなかった。 この二人はそんな基本的なことにも無知なのだろうか。 「ははあん、浅茅さん、今わたし達のことバカにしたでしょ。バカで無知な女だって。」 浅茅の心情を見透かしたようにケンジが言った。 「い、いや、そんなとは・・・」 「そう考えるのももっともよね。あたしにだって今のままじゃいくら彼氏のセーエキ中に 注いでもらっても子供ができないことなど十分知っているわ。生理だって一生縁がないも のね。でもね、男性2人の精子のDNAとやらを結合させて核を抜いた卵子に入れて受精さ せることできるんだって。それをあたしのお腹の大腸壁に定着させると7ヶ月くらいまで は成長させることができるって、それから帝王切開で赤ちゃんを取り出すの。あまり大き くお腹の中に置いておくと赤ちゃんの重みで腸壁が破れる危険性があるから、未熟児のま ま取り出し育てるんだって先生が言っていたわ。」 かつて新聞記者として生殖医療の現 状を取材したことのある浅茅にはそれが可能なことはすぐに理解することができた。 しかし、理論的には可能ではあるが男性の腸壁に受精卵を定着させた例など聞いたことが なかった。 その浅茅の顔つきを察したのか、ケンジが続けた。 「とっても信じられないでしょうけど、本当よ。この病院の東棟にはそうして元男性のヤ クザのお腹から生まれた赤ちゃんが5人いるわ。わたしこの間見せてもらったもの。とっ てもちっちゃくて可愛い赤ちゃん、それ見たら王ちゃんとわたしの子供産むことができる って確信できたの。以前の検査の時、わたしの精液ちゃんと冷凍して保存してあるんだっ て。」 この病院はそこまで研究がすすんでいるんだろうか。 浅茅は相変わらず半信半疑だった。 しかし、もし本当だとしたらすっかり女性化したケンジ達が老後のことを不安に感じてい ないのも当然だった。 性転換したニューハーフが中年以降自殺する割合が高いことが知られている。 それは容姿が衰え、男性から相手にされず、さりとて心を癒し支えてくれる子供や家庭 がない寂しさ・不安による要素が強いからだと聞いたことがある。 「で、もう一つの質 問は何なのかしら。」 ケンジが浅茅を促した。 「あっ、ああ、もう一つの質問ね。ええと、それはね。そもそもこんな性転換のプロジェ クトが作られたのはパンドラ・ウィルスが引き起こす女性の過半数病死を防ぎきれなかっ た時のためのセーフティ対策の一つと奥村先生に聞いたんだけど、有効な治療法が見つか って女性達は死ななくて済むとなった場合、あなた達はどうするの?」 「別にどってことないわね。他の女性たちと同じように生きるわ。そしてわたしは絶対に 王ちゃんと結婚するし結婚して彼とわたしの子供を何人か産んでみせるだけ。」 浅茅は良太の返答も聞こうと良太の方を見た。 「うん、あたしはやっぱりクラブで働こうかな。そのうちあたしを愛してくれてしっかり 調教してくださるご主人様とめぐり合いたい。そんなご主人様に誠心誠意ご奉仕してさし あげるの。」 「では、2人とも男性に戻りたいとか、このプロジェクトの責任者に罪を 償ってもらいたいとか、そんな気はないってことなの?」 浅茅が重ねて2人に聞いた 「うん、そんなことはまったく考えていないわね。だって女になれて今はとっても幸せな んですもの。女でいるってことは、肩ひじつっぱらなくていいってことだからとっても楽 なことよ。あたしたち実は感謝しているの。だってあのまま組にいたならそのうち殺され ていたでしょうね。あたしたち二人は組の内外で相当目立っていたから。」 それはそうかもしれなかった。 ヤクザの間で名の知れた敵対組織の幹部は特に狙われやすいものだ。 「浅茅さん、だからあなたも早くわたしたちの仲間になれば?スカートだってキャミソー ルだって本当は毎日着ていたいんでしょ。でもそれには女らしい身体にならなければとっ ても不恰好に見えるものよ。ヒップが大きくなきゃ、スカート姿は貧相でみすぼらしくな るしね。だから早く邪魔なもの取っちゃえば?」 浅茅の心はまたもや揺れた。 自分は男 のままでいるべきなのだろうか。それとケンジや良太のように美女に性転換すべ きなのだろうか。 さっきのケンジの説明では自分の子供を性転換者でも産めるとのことだった。 それならば女になってもいいかもしれない。 「ほら、女になればわたし達みたいにきれ いなドレスやランジェリーを心置きなく楽しめるわ。お化粧もおしゃれも楽しいし、男の 人とのセックスは・・・そりゃあ凄いわの一言に尽きるわね。それに比べれば男のセック スなんてほんのお遊び、線香花火と打ち上げ花火位の差があるわよ。これは経験しないと 本当に分からないわよね。」 女になったらなったで色々とめんどくさいことも多いかも しれない。しかし、ケンジの言葉は浅茅の心を強く惹きつけた。 「あたしたちね、浅茅さんがきっとあたしたちの仲間になってくれると思って、名前まで 考えてあげたの。絵美っていうのはどうかしら。浅茅絵美、どう?素敵な響きでしょ。今 度から絵美ちゃんって呼んであげるわ。」 浅茅絵里、その名前の響きは快かった。 浅茅は改めて自分が「絵美」と呼ばれるところを想像してみた。 髪の長いスレンダーなドレスの女性が後ろから「絵美ちゃん」と声をかけられる。 長い髪を揺らし振り向く姿は美女に変身した自分なのだ。 その想像は浅茅の心を惹きつ けて止まなかった。 「ねっ、いいでしょ、絵美もあたしたちと同じ女の子になるのよ。そしていっぱい結婚し てたくさんの旦那様にうんと可愛がってもらうの。毎回色々なウェデングドレス着られる し、毎日日替わりで色々な旦那様と暮らせるわ。これって、逆ハーレムよね。」 この先、パンドラウィルスが猛威をふるい世界中の女性が激減すれば、ケンジや良太のよ うな性転換女性は引く手あまたとなるだろう。そして自分もそうなったほうが確かに有利 に違いなかった。 その上、綺麗なドレスとおしゃれが楽しめ、セックスも思う存分楽し めるのだ。子供だって彼らの言葉を信用すれば自分の遺伝子を持った子供を作ることがで きるという。 浅茅は悩みに悩んでいた。 「まあ、すぐには結論でないと思うわ。絵美のお部屋用意したから、今日はお風呂とか入 ってゆっくり休みなさい。そして数日じっくり考えてね。」 ケンジは浅茅にそう言った。 ケンジと良太は浅茅を部屋の外に連れ出した。この病院で現在のケンジと良太は自由に行 動することを許されているように見えた。 長い廊下を暫く歩くと「絵美」と名札が書か れたドアの前に2人が立った。 「ここよ、この部屋用意したわ。シャワーなんかも付いているから使ってね。クローゼッ トにも服いっぱい用意したからね。ウフフ」 ケンジは意味ありげな含み笑いをした。 「ねえ、あたしとSMしたくなったらいつでも呼んでね。あたしのあそこも見せてあげる。」 良太がシナを作りながら浅茅に言った。 「あ、ありがと、じゃあこれで」 浅茅は2人から逃れるように部屋に入った。どうしても見事な女性らしいボディを持つ2 人の前ではコンプレックスを感じてしまい、いても立ってもいられなくなってしまうのだ。 浅茅が部屋に入るとドアの鍵が外から掛けられる音が聞こえてきた。 「・・・やっばりね。」 施錠されたことは意外でもなんでもなかった。 浅茅は日本国内から拉致されている身の上なのだ。すっかり女性に順応したケンジ達のよ うに行動の自由はない。 浅茅は部屋の中を見渡した。 なんだかホテルのような作りだった。 広さは12畳ばかりある大きな部屋だ。中央に豪華そうなダブルベッドがドーンと置かれて いる。 ただホテルと違うのは窓に掛けられているカーテンも、ベッドカバーも全て女ら しいピンクの花柄模様で統一されていることだった。 サイドボードには可愛らしいぬい ぐるみが数体置かれている。 そして大きな姿見を持ったビューローには口紅やら化粧水やらのコスメが所狭しと並べら れていた。 若い女性が好みそうな部屋だった。 姿見にはピンクのワンピースを着た浅茅が映っていた。 まだ濃い化粧と茶髪のカツラ姿に浅茅はハッとなった。 そういえば自分は女装させられたままだったのだ。いつの間にかその姿にも慣れてしまっ たのか、あまり違和感は感じていなかった。 浅茅はビューローに近づき、自分の顔を点 検した。 化粧をしてから時間が経っているせいか、あまり化粧ののりが良くないと思った。 しかしなによりも口元から顎にかけてうっすらとした髭が伸びているのが分かった。 この顔と服装に髭は似合わないどころか滑稽だった。 ・ ・・そういえばシャワーがあるって言っていたっけ。 浅茅は拉致されてから身体を洗っていなかった。そのために何だか自分の体臭がきついよ うな気がした。 新聞記者時代は1週間以上風呂に入らなくても平気だった。 それが今では拉致されてからわずか2日であっても自分の体臭が気になってくる。 シャワールームはすぐに分かった。 普通のホテルのようにトイレと一体になっている。 浅茅はバスタブのシャワーのバルブをひねった。 すぐに熱いお湯がシャーっと出てきた。 お湯を出しっぱなしにしてから浅茅は身に付けさせられたワンピースを脱いだ。 平たい胸にパットを詰めたブラジャーとパンティー姿の半裸が現れる。 シャワー室の中の鏡にはその浅茅の身体が映っていた。 「はあっーーー」 その姿を見て思わず浅茅はため息をついた。 それは女物の下着を付けていてもどこから見ても中肉中背の男の身体だった。 豊かな胸 の盛り上がりも、細く引き締まったウェストも横に大きく張り出したヒップの膨 らみもまったくないつまらない男の身体だった。 それは女性の身体の豊かさに比べると 極端なまでに貧相で味気なく感じられた。 「ああ、パンティーやプラジャー似合う身体 になりたい。」 浅茅は無意識のうちにひとり言を口にした。 そのようなひとり言を言ってからは浅茅はハッとなった。 ・ ・・どうしよう、本当に俺は女の子になりたいのかしら。 頭の中の思考も段々と女言葉が交じりこんでくる。 ・・・ああ、どうしたらいいの、このままではどんどん女の子に変わって行っちまう。 女なんかになりたくない・・・でも女の子になりたいわ。 浅茅の心の中の男性的人格と 女性的人格が激しく争っていた。 ほんの数分前までは女性になりたいと考え、次の数分では女なんかになりたくないとまっ たく逆の感情が浅茅の心の中に湧きあがってくる。 浅茅は背中に手を回してブラジャー を外した。 鏡の中の自分の背中から胸にかけてブラジャーで締め付けられた跡がくっきりと残ってい る。 次に浅茅はパンティーを脱いだ。 その股間にはまだ外されていないあばずれ調教器が猟奇的ともいえる風情で装着されたま まだった。 そして浅茅の肛門からタンポンの紐のような一本の細いコードが垂れ下がっている。 昨日車内で浅茅を拉致した実行犯のチーフ達に肛門を犯された挙句に大量の精液を中出 しされ「俺達のマーキングだ」といって栓代わりに使われたアヌスバイブだった。 それがずっと浅茅の肛門に入りっぱなしだったのだ。 24時間肛門を貫かれているという意識と感覚は途切れることなく続いていた。 それが浅茅の立ち振る舞いにどことなく女であることを意識したなよなよした感じを与え ていたのだ。 浅茅はチーフ達にバックからセックスされよがり声をあげた自分を思いかえさずにはいら れなかった。 男性的人格はそのシーンを思い出すことを拒否していた。 しかし浅茅の優勢になりつつある女性的人格は自分がペニスに貫かれたことに歓喜し更に 犯されつづけたいと願っていた。 浅茅は便器に中腰になってアヌスバイブを肛門から抜 き取ろうとした。 しかし、しっかりと肛門の奥深くまで入り込んでいるバイブはそう簡単には抜けてこない。 結構力を入れたところでようやくスポンという感じでアヌスバイブは浅茅の体内から湯 気を立てて取り出された。 そしてそれと同時にブビビビッと音を立てて浅茅の肛門から大量の精液と排泄物が便器の 中に吐き出された。 なにしろ2人分の男の精液だった。 それは浅茅もびっくりするくら いの量が次から次へと吐き出されてきたのだ。 「ああ、こんなにいっぱい出してくれた のね。うれしい。」 浅茅の女性的人格が優勢になり、そうひとり言をつぶやいた。 確かに便に混じって・・・というより男性の精液に混じって便が排出されていた。 体内 からの排泄がすっかり終わると、浅茅は便器に取り付けられているウォシュレットの 尻洗浄ボタンではなく女性用の膣洗浄のためのビデのボタンをなんのためらいもなく押し た。 すぐに強い水流が直角に浅茅の肛門の中に入ってくる。 「ああ、気持ちいい、今あたし性交した後のおまんこ洗っているのよ。」 他人がそばにいたらとっても恥ずかしくて言えないことを口にしながら浅茅はしばらく陶 然と便器にまたがっていた。 それからフト気がついたようにあたりをきょろきょろと見 渡す。 「ち、ちくしょう、オレは一体なにやってんだ。」 どうやら今度は浅茅の中の男性的人格が優勢になってきたようだった。 そそくさとウォシュレットのボタンを止め、かつらを乱暴に脱ぎ捨てると出っ放しになっ ているシャワーを浴び始めた。 それは一刻も早く身体に染み込んだ男の精液の跡を拭い 去り、顔に施された屈辱的な女の化粧を消し去りたい一心の行動だった。 最初は激しく ゴシゴシと石鹸を使っていた手がそのうちゆっくりした柔らかな動きになってくる。 つい数分前までの険しい表情がいつのまにかトロンとした柔和な表情に切り替わってい る。 難儀なことに、今度は女性的人格が優勢になったようだった。 浅茅は石鹸で体中を丁寧に洗いながら点検をしているようだった。 ざらざらした髭が気になる。また拉致後意識を失っている間に処理されたすね毛や腋毛も 少し伸び始めていた。 浅茅は浴室を見回し、一本のシェーバーをみつけた。 そして自ら進んで無駄毛を処理し始めたのだった。 腋毛が一本も残らぬよう丁寧に剃刀を入れ、股間の陰毛も女性のようなデルタ型に整えて いった。 やがてシャワーを終えた浅茅がシャワー室から出てきた。 なんとバスタオルを胸元で女性のように結び、頭にもタオルを巻きつけた姿だった。 心なしかその足取りも内股にそして軽やかになっている。 浅茅はその足で部屋にある大きなウォーキングクローゼットの中に入った。 「うわぁー、すっごい」 浅茅は思わず感嘆の言葉を漏らした。 ウォーキングクローゼットの中は色とりどりの女性用ドレスで溢れかえり、満開の花園の 様相を呈していた。 浅茅は迷わずその色とりどりのドレス群の中に手をつっこんで一枚 一枚確かめはじめてみる。 一番ボリューム感のあったのは白い清楚なウェディングドレ スやお色直し用のピンクやブルーのドレスだった。 それは女性だったら誰でもが憧れる 豪華さと絢爛さを持ったお姫様が着るようなドレスだった。 「いいなぁー、こんな素敵なドレス着てお嫁さんになりたいなぁー」 浅茅の口調は完全にウェディングに憧れる若い女性の口調だった。 「すっごーい、ワンピースやスカートいっぱい、ハイヒールも揃っている」 確かに床には所狭しとパンプスやらミュールやらハイヒールやらが並べられている。 浅茅は試しに七色に輝くヒールの高いミュールに足を入れてみた。 多少きつめだが履けなくはない。 初めてヒールの高い女性用の靴を履いた浅茅はぐらぐらする足どりで数歩歩いてみる。 すね毛を自らの手ですっかりそり落とした浅茅の足はまだ男性的なゴツゴツ感はあるもの の、浅茅には充分に綺麗で女らしい足に思えた。 そういえばここにある服も履物も全て 中肉中背の浅茅が着られるサイズのものばかりのよ うだった。 ストロベリーサイズやクイーンサイズのものはないように思えた。 次に浅茅が見つけたのはコスプレ衣装の一群だった。 浅茅は興奮で顔を赤くしながらひのコスプレ衣装の一群を点検していった。 メイド服やウェイトレス服、ナース服やOL服、チョゴリ、振袖、チャイナドレス、 そして日本の定番のセーラー服までが吊り下げられていた。 どれもポルノショップで売っているようなペラペラのちゃちなものではなく、縫製もしっ かりしたものだった。 しかしそれでいながらよりセクシーに見えるようにスカート丈も 短くされているし胸元も大きく開かれているものだった。 こんな服を着て妖しく男性に 迫ったなら、即ベッドに引きずり込まれてしまうことが確実な代物だった。 次に浅茅は クローゼットの中に置かれているタンスのに気づいた。 期待でドキドキしながらも浅茅はその引出しを引き出した。 引出しを開けた瞬間、浅茅はその引出しの中からパァーと眩しい光が放射されていると思 った。 そう思ったのも無理はない。 中は浅茅の期待に違わぬ極彩色のランジェリーの宝庫だったのだ。 その美しく官能的で女性らしいランジェリーは女の子の憧れでもあった。 浅茅の胸の鼓動は高鳴りっぱなしだった。 このクローゼットに入った瞬間からドキドキと興奮していたのだが、今絢爛たるランジェ リーを目の当たりにして、そしてそのどれもが自分が身に付けてもいいんだと思うとその 胸の鼓動は危険なくらいに高まりつづけていたのだ。 どのランジェリーも下着としての 機能を果たすというより、異性を誘惑する機能を第一に考えてデザインされているかのよ うだった。 よりセクシーでより女らしいランジェリーやドレス群に囲まれ、浅茅の頭は どうにかなってしまいそうだった。 とにかく女性に性転換すればこの素敵な服を毎日好 きなだけ着られるのだ。そして魅力的で女性的なラインに身体を改造し、それらの衣装を 着た自分を目当てに多くの男性が言い寄ってくるのは絶対確実に違いなかった。 25.敬一3 ぐぐぐっ、キンタマが痛てエ・・・・ 敬一がそう思ったのは何十回目だっただろう。 何十本もの針で突き刺すような痛みが敬一を苦しめていた。 その痛みのためにわめき散らし暴れまくりたかった。 しかし、敬一の身体はしっかりとストラップに両手両足を固定されており、身動きするこ ともできない。 前回このように拘束されていた時はなんとか古くなっていたバックルを 壊し抜け出すことができた。 しかし、今回のストラップはそれよりも頑丈なものだった。 ・・・ちくしょう、早くここを脱出して治療しなければ大変なことになっちまう。 居ても経ってもいられないほどの焦る気持ちで敬一はもう何百回も同じことを考えてい た。 あのやろう、オレに女性ホルモン打ちやがった。キンタマだってあんな電撃何度も食らっ ているとダメになっちまうと言いやがった。チンポとキンタマ切り落として女にしちまう だとぉ?しかも牛女にしちまうだとぉ?ちっくしょう、ド変態どもめ、女にされる前にここ 脱出しねえとマジヤバイぜ しかしいくらそう考えても脱出できるいい方法は一向に脳裏 に浮かんでこなかった。 ・・・嫌だ、女になんかゼッタイになりたくねぇ、おっぱいを 牛並に大きく膨らますだとぉ?冗談じゃあねえぜ、早くここ抜け出して男性ホルモン注射 して中和しなきゃ、それにこの痛むキンタマ治療してもらわなきゃ、ちっくしょう、 それにしても痛てぇぜ、まさかもうキンタマダメになっちまったんじゃねえだろうな・ ・・ 一度そう思ったら最後不安がどんどん増してくる。 ・・・マジやべぇぜ、もうこれ 以上電撃食らったらオシャカかもしんねぇ・・・ 敬一がそう思っていた時、病室のドア から看護婦が入ってきた。 敬一はとりあえず入ってきたのがゆかりではなくてほっとし た。 もうゆかりとは顔を合わせたくなかった。 あばずれ調教器とやらで何度も何度も無慈悲に電撃を食らわすゆかりは今の敬一にとって恐怖の対象へと切り替わりつつあった。 入ってきた看護婦は両腕に何やらカップ様の器具らしきものを抱えていた。 そして全裸で大の字になってベッドに拘束されている敬一の脇にその抱えていた器具をド サッと置いた。 ・・・今度はヤツラなにする気なんだ? 敬一は不安な気持ちで看護婦を見た。 どうせとんでもなくひどいことに決まっている。 看護婦は持ってきた器具の山の中から一本のクリームの入ったチューブを取り出した。 そして敬一の胸にチューブからクリームを押し出して塗り始めた。 「・・・ま、まて、なんだこれは。」 ひんやりとした冷たい感触に敬一は嗄れ声で看護婦に聞いた。 嫌な予感がする。 「コレ、女性ホルモン入りの豊胸クリームね。これ毎日塗っておっぱいマッサージするね 。すぐにおっぱいとてもとても大きくなるよ。」 嫌な予感は的中した。 「ま、待て、冗談じゃない、やめろ、やめろって言ってんだろう!」 敬一は看護婦を怒鳴りつけた。 そして激しく身をよじりクリームを塗る看護婦の手から逃れようとする。 しかし、ストラップでがっちり全身を拘束されている状態では身体が僅かに揺れただけだ った。 「ああ、うるさい小娘だこと、せっかくきれいなおっぱいにしてやろうとしてる のに、あまり騒ぐとこれ使うね。」 看護婦は服のポケットからコントローラー様のもの を取り出した。 敬一の顔がサッと青ざめる。 それはまぎれもなくゆかりがさんざん敬一に使ったあばずれ調教器のコントローラーだった。 こんな看護婦までコントローラーを持っている。 あの電撃の痛みはもう絶対に受けたくないものだった。 恐怖で敬一の痛む睾丸がキュッと縮こまったようだった。 黙り込んでしまった敬一に看護婦が言った。 「そうそう、いい娘ね、そうやって大人しくしているね。」 看護婦はゆっくりと丁寧に敬一の乳首の周辺中心に女性ホルモン入りのクリームを塗りこ んでいった。 気のせいではあったが、敬一は自分の乳首の周りが以前より一層敏感にな ったような気がしてくる。 既に敬一は大量の女性ホルモンの注射を臀部にされている。 そして今もまた女性ホルモン入りのクリームを胸に塗られているのだ。 早くなんとかしなければ女みたいな胸になってしまうことは確実だった。 次に看護婦は2個の透明なプラスチック様の半球のカップを取り出し、敬一の胸に装着し た。 カップはまわりの縁がが皮膚にぴったりと密着するシリコンで出来ているようだっ た。 透明なカップの先端は細いホースで小さな金属ケースに繋がれている。 まるで巨大な乳房が敬一の胸にできたようだった。 看護婦が金属のケースのスイッチを入れた。 ドッドッドッドッと低いかすかな音と共に敬一は胸に装着されたカップが強く吸い付いてくるのを感じた。 「うわっ、な、なんだりゃあ。」 予想外の事態に思わず驚きの声をあげる。 「これ、豊胸器ね。中の空気抜いておっぱいが大きく大きく育つことを助ける機械ね。」 確かに看護婦の言葉を裏付けるように空気が少なくなった透明なカップの中の敬一の胸はつんと思春期の少女のように尖ってきていた。 「イテテ、イテテ、止めてくれ、痛いぜこれは。」 確かにカップが周りの空気圧で押されているのだ。痛いのは当然だった。 「がまんするね。これから毎日これ使うからね。このカップいっぱいにおっぱい大きくな るまで毎日するあるよ。」 看護婦の言葉に敬一は絶句した。 そのカップは大きさといい高さといいスイカ並ぐらいはあった。 これにいっぱいになるぐらいおっぱいを膨らまされるとなるとFかGカップくらいの巨大な 乳房の持ち主にされるということだった。 彼らはそんな巨大な胸を敬一につけるつもり なのだ、笑いものになるぐらいでは済まない話だ。 「な、なあ、あんた、そんなひどい こと止めてくれないか、誘拐だけでも重罪なのに無実の人間にそんなことするなんて人間 として許されないことだろう?」 敬一はこの看護婦を篭絡しようと考えた。 今までに多くの女を騙してきた口説きのテクニックを使うのだ。この看護婦を篭絡すれば ここから脱出できるかもしれないと考えたのだ。 「あんたは犯罪の片棒をかつぐような 人じゃあない、何か事情があるんだろう?そうだろう?こんなひどいところにいるより、俺 と一緒に逃げないか?東京に行けば貯金が何千万もある、一緒に逃げ出せれば贅沢三昧の 暮らしだってできるんだ。なあ、いいだろう。」 ストラップで拘束されている状態では 格好がいいとは言えないが、敬一は精一杯の誠実そうな顔つきをした。 この顔つきにコロっと騙された女は数知れなかった。 「うーん、そね、それもいいかもね。」 看護婦は敬一の顔を見ながら考え込むような素振りをした。 しめた、食いついて来やがった。と敬一は思った。 「そうだろう?あんたみたいな人がいつまでもこんな組織にいちゃあ絶対いいことにはな らない。行こう、俺と一緒に東京へ行こう。」 敬一は最後の一押しをした。 「でもあんた、もう男じゃないからね。女同士で駆け落ちなんて変だね。」 その言葉に敬一はギョッとなった。 それは睾丸から伝わってくるキリキリとした痛みに関係しているようだった。 「あんたのコウガンの機能、電撃でもう90%はなくなってしまっているあるね。 もう女性とセックスほとんど不可能の状態になってるね。精子も男性ホルモンもほとんど 作り出すことできない状態になってるよ。そして注射された女性ホルモンの影響で身体ど んどん女になってくるね。もう誰にも止められないあるね。もう男とは言えない身体にな ってるあるよ。そんなのと駆け落ちしてもつまらないあるね。」 看護婦の言葉は敬一の心に衝撃を与えた。 「ま、待て、それ本当か?治療できないのか?ウソだろう、本当は男性ホルモン注射したり して直すことできるんだろう?」 敬一は必死のおももちで看護婦に聞いた。 キンタマがダメになるくらいなら死んだほうがマシだった。 「ウソじゃないよ。もうあんたのコウガン壊死しかかってるあるよ。早く取り除かないと 体内で腐って敗血病になるね。敗血病になったらものすごく苦しみながら死んでしまうね 。」 敬一は看護婦の言葉を信じることができなかった。90%の機能が失われていてもあと 10%残っている。なんとか一縷の望みをその10%に繋ぎたかったのだ。 「どう?バカ牝牛のハナの様子は」 いきなりドアが開き、ゆかりが声をかけながら入ってきた。 ゆかりは紺のスーツ姿の上に女医が着るような白衣を纏っている。 「あっ、ゆかりさん、今ハナはワタシ誘惑したね。一緒に逃げ出そうと誘ったね。」 看護婦の言葉に敬一は脱出の望みが絶たれたのを知った。 こともあろうにゆかりにだけはそのことは知られたくなかった。 「そう、相変わらず手くせ悪いのね。でももうすぐそんなことできなくなるわ。でも今度 は男を誘惑するようになるかもね。今度は手癖じゃなくて尻癖が悪くなるんじゃないかし らね。」 「わっ、ヤダ、今度は女に手を出すんじゃなくて、男にお尻を出すようになる あるか?それって日本語じゃ尻軽女って言うんじゃないあるか。」 「そう、尻軽女とか公衆便所とか言うわね。」 ゆかりはさも軽蔑したように敬一の顔を見ながら言った。 「コーシューベンジョ、それってトイレのことか?」 「そう、なんで公衆便所って言うかというと、ほら、誰のおちんちんでも受け入れて中に 出されるからよ。」 その言葉に看護婦は淫らっぽいニヤニヤ笑いをした。 「へえっー、日本語って面白いあるね。ハナもそのうち誰のおちんちんでも受け入れる公 衆便所になるね。いっぱいいっぱい中出しして膣の中セーエキで満タンにしてもらえるあ るね。よかったね、ハナ」 ・・ちっくしょう、ふざけやがって・・・ 敬一は看護婦をにらみつけた。しかし下手すると電撃を睾丸にまた食らってしまうことに なる。あからさまな言葉を発することは避けたかった。 「さて、ハナのタマタマちゃんの様子はどうかしら、まだ腐っていない?」 ゆかりは敬一の下半身に手を伸ばした。そして敬一のあばずれ調教器でくるまれた陰嚢を 持ち上げてみる。 「イテテ、イテッ!」 陰嚢を持ち上げられただけで痛みが敬一を襲った。 目を下半身に向けると、恐ろしいことに陰嚢がパンパンに膨れ上がり、あばずれ調教器の 金具が深く食い込んでいるのが見えた。 軽く手で持ち上げられただけでも鋭い痛みがす る。 敬一は恐怖に駆られた。 このままでは本当に睾丸がダメになってしまいそうだった。 「い、痛いんです。本当に痛いんです。どうか治療して下さい。」 敬一は哀れっぽい言葉をゆかりに発した。 ゆかりに敬語を使うなどこれまでになかったことだった。 「ふーん、治療して欲しいの?あたしにお願いているの?だったらあたしのこと何と呼ぶ んだっけ?」 ゆかりは敬一が痛がるのも構わずに陰嚢を強く握り締めた。 「ギャッ、イテッ、イタタタ、痛い!痛いです、本当にやめて下さい。睾丸がダメになっ てしまいます。ゆ、ゆかり様、お願いです。本当に死ぬほど痛いんです。お願いします。 ゆかり様」 一度ゆかり様と呼んでしまえば敬一はゆかりに屈服したことになる。 それゆ え敬一はゆかりを「ゆかり様」と呼ぶのに心理的抵抗がかなりあったことは確かだ った。 しかし、もう我慢の限界だった。自分の睾丸を失う危機の前ではみずからのプラ イドを捨てゆかり様と呼ぶしか選択の余地はなかったのだ。 ゆかり様と呼んだことによ り敬一の心理的抵抗は無くなり、後はゆかりに土下座してでもこの窮地を脱するしかない と思ったのだった。 敬一はゆかり様と連呼しながら哀れみを請い始めた。 「ゆかり様、今までのことは本当に悪いと思っています。お願いです。本当です。 どんなことでもします。」 そんな敬一を冷ややかな目で見下ろしながらもゆかりは冷た く言った。 「こんなクセの悪いキンタマとオチンチンなんて要らないわよね。あると世の中のために ならないからさっさと取っちゃうからね。」 完全に優位に立ったゆかりはまだ手の中で 敬一の陰嚢をもてあそんでいる。 また強く握り締められたなら、睾丸はゆかりの手の中で破裂してしまいそうだった。 ジェード・コネクション186 摩火 - 2005/09/16 20:11 - 「そ、そんなことおっしゃらないで下さい。それは俺の唯一の楽しみなんです。な、無く すくらいなら死んだほうがマシです。お願いです、これからは真人間になります。他の女 性にいっさいちょっかい出しません。ゆかり様だけを愛します。ですからお願い・・・ギ ャッ、ギャッーーーー」 敬一は言葉を最後まで続けることができなかった。 いきなりゆかりがさっきよりも強く敬一の陰嚢を握り締めたせいだった。 「バカハナ!あたしを愛するですって、フン、100万年早いわよ。お前はわたしの夫にな る資格なんてもともとなかったのよ。今のお前は奴隷以下、哀れな雌牛のハナ、つまり家 畜なのよ。家畜の分際であたしを愛するですって、笑わせるんじゃあないわよ。」 ゆかりは敬一に向かって大声で毒づき始めた。 その剣幕に無防備な敬一は恐怖を感じた。 つい先日までは敬一のほうがゆかりにさんざんの殴る蹴るの暴行を繰り返し、恐怖に陥れ ていたのだ。それが今では完全に立場が逆転してしまっている。 敬一は殺されるという より、睾丸やペニスを失う恐怖にすっかり青ざめ総毛だってしまった。 ゆかりに強く握り締められた睾丸は半端な痛みではなくなってきていた。 そのあまりの痛さに敬一は意識が朦朧となってくるのを覚えた。 「ゆかりさん、ゆかりさん、ハナ、陰嚢から大出血しているね。このままじゃあぶないね。 ずぐ先生呼ぶあるよ。」 朦朧とした敬一の耳に看護婦の声が聞こえてきた。 ・ ・・出血?そうか、俺は出血しているのかぁ・・・ 敬一は看護婦の声を聞きながらただ単純にそう思っていた。痛みに朦朧とした意識では他 のことを考えられない。 看護婦が敬一の出血している股間にガーゼをあてたが、それす らも敬一は気がついていなかった。 ほどなくドヤドヤと数人の病院関係者が駆けつけて きたのが分かった。 ぐったりした敬一を拘束しているストラップが四肢や胴体から手早く外されていくのが分かる。 そして敬一はキャスター付のベッドに乗せられて手術室へと運ばれていった 「どうだ、声出せるかね。」 手術室の中で、敬一は医者が横たわっている自分に問い掛けてきたのに気がついた。 それは奥村医師だったが、敬一にはとっさに誰だか思い出せなかった。 「あ、・・・ああ、出せる。」 敬一はかろうじて答えた。 「どうだ、痛むかね。」 ・ ・・当たり前だろう・・・ 敬一はそう思った。なにしろ睾丸がパンパンに腫れ上がり出血までしているのだ。 「せ、先生、痛い、早く治療してくれ、痛み止め打って・・・もう・・がまんできない。」 敬一はかろうじてそう言った。 「うん、もう少し我慢しなさい、今君の睾丸抜く準備しているところだから。両方とも ダメになっているから玉抜きしてしまえば痛みは少しは収まるはずだ。」 その医師の言葉に敬一はうろたえた。 気がつくと敬一は産婦人科の分娩台のような台に仰向けにしてくくりつけられ、両足を上 に大きく開かされたまま固定されている。 これ以上にないくらいに無防備なスタイルだった。 「ま、待ってくれ、玉抜くって・・・俺のキンタマ抜いちまうのか。」 敬一の心は悲鳴をあげ始めた。 こんなことは信じられなかった。あってはならないことだった。こともあろうに自分のキ ンタマが無くなってしまうのだ。無くなるということは即ち男性失格とイコールだった。 そんなことは絶対に認められなかった。 「だ、ダメだ、先生、俺のキンタマ切らないで くれ、そのまま直してくれ。まだ大丈夫のはずだ、絶対に元に戻る。」 キンタマが無くなるという恐怖が敬一の朦朧となった意識を少しは活性化させたようだっ た。 「このまま体内に置いておくと腐ってくるからね。じゃあ始めるよ。麻酔の準備!」 奥村医師は敬一の抗議もまったく意に介さなかった。 あれよあれよという間に敬一の去勢の準備は進行していく。 看護婦があばずれ調教器の鍵を外した。 腫れて膨れ上がった陰嚢にギリギリと食い込んでいたストラップが引き剥がされていく。 「イテテ、いてッ。」 ストラップは相当深くまで食い込んでいたらしく、引き剥がされるだけでも相当な痛みが あった。 「ダイジョーブ、痛いの最初だけね、もうすぐダメになった玉2つとも抜くある ね。暫く痛いけどそのうち良くなるね。」 看護婦は慰めとも脅しともつかない言葉を敬 一にかけた。 しかしストラップが完全に外されてしまうと睾丸を締め付けていた圧力が無くなったせい なのだろうか、敬一はいくらか痛みが軽減されるのを感じた。 「せ、先生、大丈夫だ、い、痛みはだいぶ無くなって来た。玉を締め付けられていたせい だ、」 敬一は自分の睾丸がまだ健全で機能していることを強調しようとした。 しかし、別な看護婦が注射器を持ったまま自分に近づいて来るのが見える。 その看護婦が自分の無毛にされている股間にアルコールを塗り始めた。 そのひんやりとした感触が敬一の更なるあせりを呼んだ。 「ま、待て、待って下さい。先生、そんなこと・・・やめ、やめ、・・・だっ」 その時、手術室のドアが開き、手術着を着た女が入ってきたのが見えた。 「ふうっ、良かった、間に合ったわね。もう始まっているんじゃないかとあせっちゃったわ。」 その女は開口一番そんなセリフを口にする。 それは遅れてやってきたゆかりだった。 「どうしても敬一、いや、ハナが男でなくなるところ見逃したくなかったのよ。だって乳 牛娘になる最初の記念になる手術だからね、デジカメの消毒持込に時間かかっちゃった。 ちょっと待って、まだタマタマちゃんがある手術前の股間、何枚か撮らせてね。そのあと 無事玉抜き終わったところの股間もね。」 ゆかりはそう言いながら持ってきたデジカメ で敬一の股間をアップで数枚撮った。 それから敬一の顔と股間がフレームに入るような 角度でもう数枚撮った。 敬一はその写真撮影のフラッシュから顔を隠そうとした。 しかし、全身を分娩台に固定されている状態では顔をわずかにそらせることしかできない。 「どう、ハナ?これから大切にしていたタマタマちゃんを抜かれてしまうのよ。 もう二度と女とセックスできない身体になってしまうのよ。なんだかすごく可愛そう。」 ゆかりが敬一にそんな嘲りの言葉を掛けた。 しかしそれに対して敬一は顔をそむけて無視しようとする。 「あら、シカトするのね。さんざん女の子達をもて遊びダメにしていった報いを今から受 けるというのに反省の言葉もないのね。いいわ、そういう態度に出るんなら。本来は手術 は布のカーテン垂らせて本人が見えないようにして行なうんだけど、カーテンなしね。自 分の玉抜きされるところを完全に見えるようにしてあげるわ。いい気味、女性ホルモンた っぷり注射してあるから、玉を抜かれると休息に身体が女性化していくわよ。すっかり女 性化したら性転換手術で膣も作ってあげる。そしてあんたが騙して売春窟に売り飛ばした 女の子達と同じように毎日男のペニスで貫かれるようにしてあげる。でもそれだけじゃな いわ。単なる売春婦じゃなく、雌牛の家畜として変態男達にいたぶられる身体にしてあげ るわ。」 敬一はゆかりの言葉を無視しようとしていた。 そんなことが現実にできるとは信じられなかった。 どうせペテンの仲間とグルになって自分を騙そうとしているのだ。 この医者と看護婦も偽者に違いない。 敬一は必死にそう思い込もうとした。 そして自分がゆかりに泣きながら許しを乞い始めたときに、彼らはびっくりカメラのよう に正体を現し、自分を嘲るに違いないのだ。 チクッとペニスの付け根に痛みが走った。 敬一は看護婦が彼のペニスの根本に注射を打っているのに気づいた。 注射は一本だけではなかった。 場所を変えて、立て続けに4本の注射が手早く敬一の生殖器の周りに打ち込まれた。 ほどなく、下半身の鋭い痛みが和らぎ、重苦しいどんよりとした何ともいえぬ感覚になっていく。 局部麻酔だった。 奥村医師が敬一のさっきまで激痛を与えていた陰嚢に触る。 はるか遠いところでかすかな痛みがあった。しかしそれはさっきまでの気絶するような 激痛に比べれば雲泥の差だった。 「どうやら麻酔が効いているようだね。」 奥村医師は敬一の顔の表情を覗き込みながら質問ともひとり言ともつかぬ言葉を口にした。 「よし、ではこれからハナの女性化手術の一つである去勢を行なう。」 ゆかりの言葉に悪乗りしたのか、奥村医師が敬一に言い聞かせるようにわざとそう宣言した。 「メス」 奥村医師が手を伸ばす。 その手に看護婦が銀色に光る鋭利そうなメスを手渡した。 ・・・馬鹿め、俺がここで泣き喚き、許しを乞うことを期待してんだろうが、そうはいか ねえぞ、騙されるもんか・・・ 敬一はそう思った。 これは全てゆかりの仕組んだ芝居のはずだった。 この前打たれた女性ホルモンとやらの注射もビタミン注射か何かのはずだった。 ・・いくら復讐のためとはいえ、人を誘拐してここまでやったんだ、罪の償いは受けても らうからな・・・ 敬一は腹の中でそう決意した。 奥村医師の手が敬一のはれ上がった陰嚢を摘み上げた。 その様子は分娩台で上半身の背もたれを起こされている状態の敬一にはよく見える。 ・・・へっ、俺がびびらなんいんで戸惑っていやがる・・・ 敬一は陰嚢への切開位置を決めようと動きの止まった奥村医師の様子をそう判断した。 どうせ芝居のためのニセ医者に決まっている。振り込め詐欺のような連中に違いないと 敬一は改めて思った。 一呼吸置いてから奥村医師は敬一の陰嚢を縦に切開を始めた。 すかさず横にいた看護婦が脱脂綿を傷口に当てて出血を防ぐ。 敬一はたちまち不安になった。 ・ ・・まさか、本当に切っているのでは・・・ しかしこれはインチキ心霊手術で使われるトリックに違いないと自分に言い聞かせる。 確か以前にTVで見たことがあった。あの脱脂綿に血のりが隠されており、いかにも皮膚を 切り裂いたかのように見せるのだ。 一瞬敬一の視界を奪っていた脱脂綿が取り除かれる。 ・ ・・えっ?・・・ 敬一は自分の予想とは違うことにとまどいを覚えた。 その敬一の陰嚢には二箇所、縦2センチ位の切開口があった。 それはどうみても本物の切開口だった。 僅かながら血が切開口からにじみ出ている。 「さあ、これからハナのキンタマ袋から睾丸を出すよ。」 奥村医師は陰嚢をしごくようにしてその切開口からしぼり出すかのように2個の内容物を露出した。 それと同時に敬一は自分の体内の中の何かがぐうっと引っ張られるのを感じた。 「うわぁー、こりゃひどい、もう完全に組織がダメになっている。」 奥村医師が声をあげた。 その声に敬一は医師の手元に目を凝らせた。 それはうずらの卵大というより腫れあがり、鶏卵くらいの大きさがあった。 しかも2個とも白ではなくどす黒くぶよぶよの肉腫の塊のようになっている。 それはとて も睾丸のようには見えなかった。何か別のもの、別の体内の内臓のようにも見えた。 し かし、恐ろしいことにその肉腫の固まりは2個あり、それが薄くぺちゃんこになった敬 一の陰嚢から垂れ下がっているのだ。そしてその肉腫の固まりは奥村医師が引っ張る度に 敬一の腹の中も同様に引っ張られてしまう。 これは敬一の体内に確実に繋がっているモ ノに違いなかった。 そしてそれはとても錯覚やマジックなどではないことを敬一に告げていた。 敬一の心は一瞬にして凍りついた。 何をどうしていいのかまったく分からなかった。 考えることすら出来なかった。 敬一はただただ唖然と奥村医師の動作を見つづけることしかできなかった。 「結索糸」 奥村医師が看護婦に命じた。 すぐさま糸が奥村医師の手に渡され、医師はそれを使って破壊された睾丸に繋がっている 血管を縛っていく。 もちろん、睾丸を切除した後に出血しないようにするためだった。 「よし、ではこれから睾丸を切り離すよ。」 奥村医師はゆかりと敬一にそう告げた。 「ま、待て・・・やめろ・・・やめてくれ・・・」 それまで唖然として自分の睾丸が切除される作業を見守っていた敬一がかすかに弱々しく 言った。 「大丈夫よ、心配しないで、ハナが男性だった時代の最後の瞬間、ちゃんと記 念写真に収めといてあげるからね。後で皆に見て楽しんでもらいましょうね。そしてたっ ぷり笑いものにしてもらいましょうね。」 ゆかりがそう言いながらデジカメのシャッタ ーを立て続けに押した。 そのフラッシュの灯りに敬一は一瞬目がくらんでしまう。 その時だった。 敬一は自分の腹の中が更にぐうっと下に引っ張られるのを感じた。 パチン 嫌な音が手術室に響いた。 「あっ、今ひとつ目のタマタマちゃんが切り離されちゃった。」 ゆかりがそう宣言した。 しかし敬一は恐ろしくてそれを見ることができない。 「ほら、目を開けてしっかり見ていなさいよ。自分が男ではなくなる記念すべき瞬間なの よ。乳牛娘のハナに生まれ変わる誕生の瞬間なのよ。しっかりと脳裏に焼き付けないとダ メじゃない。」 ゆかりが敬一に言った。 しかし敬一は固く目を閉じ、自分が去勢される瞬間を見ることを拒みつづけた。 「ま、いいわ、その代わりわたしが写真にとっといてあげる。手術の様子を克明に記録し ているビデオも動いていることだしね。今見ないんなら後で嫌というほど自分がキンタマ 失うシーン見させてあげるから覚悟しとくことね。」 ゆかりが意地悪くそう宣言する。 「でも、ハナのキンタマって本当に見事なぐらいズタズタになっちゃってんのね。あのあ ばずれ調教器の威力ってすごいわね。女の私には分からないけど、きっと物凄い強烈な痛 みだったのね。」 ゆかりは自分の行なった行為をまるで他人事のようにしゃあしゃあと 口にした。 ・・・き、気分が悪い・・・ 敬一は吐き気とめまいに襲われていた。 それは手術による身体的ダメージに加え、精神的にも強烈なダメージを受けたせいでもあ った。 負荷に耐え切れなくなった脳が慈悲深くも敬一を失神させようとしていたのだ。 「あっ、もう一つの睾丸もこれから抜かれるようよ。」 おせっかいにも目を堅くつぶっている敬一にゆかりが知らせた。 それは敬一にも分かっていた。 またもや内臓がぐうっと下に引っ張られたからだった。 パチン 再びあの嫌な音が手術室に響き渡る。 「やったぁ、ついに両方のキンタマとも抜かれてしまったわよ。男だった敬一さんさよう なら、もう二度と会えないわね。そして乳牛娘のハナ、改めてこれからもよろしくね。 そしてようこそ女の子の世界へ。これからうんと女らしくなって男の人にうんと可愛がっ てもらえるようになりましょうね。」 その言葉を聞きながら敬一はついに意識を失って しまうのだった jade06.txtに続く