フェイクガール  作: 玲
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『フェイクガール』・フェイク1-3

3.馬子にも衣装というけれど、マゾには衣装が必需品。

ついでに下腹でも元気が出てきたようだ。僕の手の中で活火山が隆起しつつあった。

「め、目を塞いでもいいかな?見られてると思うと、ダ、ダメになるんだ」

豚男さんが声をうわずらせていった。それは僕も望むところだった。芝居がかって
いるかなとも思いながら、それでも豚男さんが喜びそうな気がして、僕は身を起こ
し、豚男さんの正面に正座して三つ指を突いた。

「よろしくお願いします」

豚男さんが嬉しそうに立ち上がって、別室へ消えた。戻ってきたとき、手に持って
いたのはゴムマスクだった。僕の胸がきゅんと高鳴る。僕のいちばん感じるアイテ
ム。正座する僕の前にゴムマスクが並べられた。ちょっとびっくりした。黒いゴム
マスクが2枚もある。悦びが倍加した。上を向くようにしてといわれて、わくわく
しながら顔を上向かせると、髪の毛をまとめるように後ろに撫でつけられ、最初の
マスクが顔に押し当てられた。薄手のマスクで、伸びがよく、するっと僕の頭を包
みこむ。ずれを直し、マスクの裾からはみ出した髪の毛が中に押しこめられる。マ
スクには目と鼻と口に穴があり、顔全体が柔らかに圧迫される感じがするだけで、
不便は感じない。

「き、綺麗な人は、マスクをしても、き、綺麗だ。自分の顔を見てみたいかい」

「はい。見てみたいです」

豚男さんがいそいそと鏡を取ってきてくれた。鏡の中のマスク顔は何度見ても異様
で、僕を興奮させる。ぬめぬめと光るゴムの膜にぽっかり開いた穴から目と口だけ
が覗き、目は濡れたように大きく、口は性器のように嫌らしく強調してくれる。素
直に股間が反応し、漏らした精液の糊を引き剥がして直立した。

「か、感じるんだね。本物のマゾの証拠だな。次のは、ちょ、ちょっと・・・か、
かなり苦しいかもしれない。き、君とメールのやりとりをしているときに話に出た
マスクなんだ。すぐ、つ、造らせてみた。覚えてるかな」

豚男さんはもう一枚のマスクを僕の目の前にぶら下げた。異常なほど厚手のゴムマ
スクで、厚みが5mm近く、顔面部では3cm以上厚みがあった。開口部は口にし
かない。その口も金属のリングで真円に縁取られ、その内側に短い筒がついている。
異様なのはその鼻の部分。外側に鼻を納めるための盛り上がりがなく、呼吸のため
の穴もない。マスクの内側にゴムを抉ってへこみがあり、そこに鼻の隆起がすっぽ
り収まるようになっている。そしてそこから2本の長いゴムパイプが、昆虫の触角
のように放物線を描いて伸び出していた。

見た瞬間思い出した。「気道確保マスク」と呼んでいたものだ。とすると、あのパ
イプは、僕の鼻の穴を抜けて気管にまで入りこむはず。想像の産物として無責任に
考えたものだったはずなのに、まさか現実に造ってしまうなんて。ほんのわずかの
水が入っても死ぬほどむせかえるというのに、こんな太いパイプという異物が入っ
たらどれほど苦しいか。その苦しさを想像して思わず唾を飲みこんだ。

「覚えてます。鼻の穴から気管にまでパイプを入れるんですよね」

「つ、造らせてはみたけど・・・病院なんかでするときはランプ付の、き、器具で、
く、口と喉を開いて覗きこみながら、鼻を抜けたパイプの先を慎重に誘導するとい
うんだけど、こ、これの場合は、チュ、チュ−ブがマスクにくっついてるからそう
もいかない。き、君が自分で、き、気管に吸い込むようにしなくちゃいけない。く、
口から入れるより鼻からの方が、鼻を抜けた時、チュ、チューブの先が自然に、き、
気管の方を向くから入れやすい、という話をネットで読んだけど。それにしたって、
もの凄く難しいし、もの凄く、く、苦しいのは間違いない。き、君が嫌なら無理に
とはいわないけど、どうかな」

どうかなといわれても、僕が発案者なんだし、現実に造られて目の前にあるのに嫌
とはいえない。それに、じつはその苦しさはすでに知っている。とんでもなく苦し
いのは確か。

「じつは僕も、メールのやりとりの後、鼻から気管にチューブを入れるって、どの
くらい難しいか試してみたんです。片方の鼻からだけでしたし、もっと細めのチュ
ーブでしたけど。大泣きするくらい苦しかったんですけど、入れることできました。
だから試してみてくれていいですよ」

8回失敗して9回目にようやく成功したんだよね。さすがにそれ以来試そうとはし
なかった。それくらい苦しかったからなあ。でも、豚男さんの嬉しそうな顔を見る
と、がんばってみようという気になる。

「もし、どうしても我慢できなかったら、すぐ外すからね」

このときばかりは、豚男さんの押しの弱さに感謝した。鼻も気管もデリケートな場
所だから、有無をいわさないタイプの人に乱暴に押しこまれるのはかなり怖い。豚
男さんくらい気弱なタイプの人なら慎重にしてくれるから安心だ。マスクが僕の視
野を覆い尽くし、迫ってくる。うわー、どきどきする。鼻の穴に2本のパイプが同
時に滑りこんできた。潤滑ゼリーの甘い香りがした。豚男さんもおそるおそるで、
慎重すぎるほどゆっくりとパイプが進む。何度も何度も鼻を啜るようにして、僕は
パイプを受け入れていった。

喉でもお尻でもそうだけど、どうせ苦しいのなら一気に入れた方がいい。鼻の穴だ
って同じだろうと思う。でもお尻の穴や食道とは違って、通常個体が通る場所じゃ
ないだけに不安は強く、僕はなされるままに耐えていた。鼻の奥にパイプの先端が
達したとたん、強烈なくしゃみが連発で出た。豚男さんがおろおろしていったん抜
いてしまった。

「だ、大丈夫です。構わずに入れてください。でもその前に一回鼻をかませてくだ
さい」

ティッシュが渡され、僕は急速に分泌された鼻水を始末した。鼻血は出ていない。
ちょっとほっとする。

「ちょうど鼻の奥に先端があると、くしゃみが出ちゃうようです。喉に届くまでは、
遠慮なく入れてください。またくしゃみが出ると思いますけど、一回入ってちょっ
と慣れましたから今度は大丈夫だと思います」

豚男さんが真剣な面もちで頷き、再度パイプの先端が僕の鼻に差しこまれた。今度
は豚男さんも手早く押しこんでくれたので、くしゃみはなんとか押さえこめた。パ
イプの先端が喉の裏に達する頃には、鼻のむずむずもほぼ収まった。そこでいった
ん止めてもらい、何回か鼻を啜り、深呼吸をして呼吸を整えた。

喉から気管に入れるのが難事業だった。これは豚男さんのテクニックの問題ではな
く、僕が息をして気道を開き、パイプを気管に導くタイミングの失敗が原因だった。
失敗が3回続き、泣きそうになったけど、4回目にようやく先端が気管に入りこん
だ。猛烈に咳きこみながら、でも豚男さんの手を押さえて抜かせないようにした。
豚男さんが慌ててここで抜いたりしたらいままでの苦労が水の泡だもんね。

耐えて耐えて耐えまくっていると、ようやく咳の発作が下火になってきた。僕は口
を大きく開け、豚男さんの手ごとマスクを一気に押しこめた。最後の1センチがず
るっと入り、口には開口筒が嵌りこんだ。また咳が出たけれど、こんどはそう強く
はなかった。顔面がマスクの内側に抉られた窪みにすっぽりと嵌りこむ。鼻の窪み
がほんのわずか低いのと、こめかみのあたりにわずかに隙間がある以外はぴったり
フィットしてる。

「だ、大丈夫か?外そうか?」

僕は完全な闇の中にいた。豚男さんが耳元でうろたえた声をかけたけれど、僕は首
を振った。いまはまだ馴染まないけれど、時間とともに馴染んでくるとわかってい
たから。

そっと息をしてみる。パイプからゴム臭いだろう空気が流れこんできた。パイプの
中を通る外界の空気は、もはや臭覚細胞には届かない。僕は臭覚を奪われた。そし
て声を出そうとして声も出せなくなっていることに気がついた。肺からの空気は声
帯を振動させることなくパイプによって直接外界に排気されてしまうからだった。

鼻の中と気管がひどい風邪をひいた時のように重い。しばらくひたすら深呼吸を続
けているうちに、少しずつ楽になってきた。僕は指で丸を作って豚男さんに大丈夫
と伝える。

「ほんとうに入ったんだね。凄い。このままマスクを、ちょ、長時間し続けても、
だ、大丈夫そうかい?」

僕は再び指で丸を作る。

「じゃあ、パイプの先のバルーンを膨らませて、こ、固定するからね」

僕がうなずくと、豚男さんが口の金属リングのあたりでなにか操作した。すると気
管内でバルーンが膨らみ、いっさい息が漏れなくなる。鼻と気管の苦しさが和らい
でくると、その異常な違和感が被虐感と結びついた。咳とくしゃみの大合唱で縮こ
まっていたペニスが、ぴくんと持ち上がった。豚男さんもそれに気がついたのだろ
う、ペニスがそっと握りしめられ、しばらく弄ばれる。僕のペニスが鉄の棒になっ
て直立した時、マスクの後ろのジッパーが引き下げられ、マスクが密閉されてしま
った。むむむう。

マスクはほぼ僕の頭にぴったりだった。ほんのわずかに小さいかもしれない。ジッ
パーが閉じるにつれ、顔面が、続いて頭頂と側頭部にきつい圧力を感じ、ジッパー
が閉まりきってしまうと、僕の頭全体が万遍なく快い圧迫感に包まれた。顎が固定
され、鼻はやや潰れてマスクのへこみに収まっている。こめかみの隙間もなくなっ
た。僕の鼻の穴はパイプの厚みの分狭められたわけで、意識的に大きく呼吸しなけ
れば、充分な空気を補給できなくなってしまった。そう思っただけで甘美な被虐感
が僕の下半身を痺れさせ、興奮で呼吸が荒くなるってしまう。そうするとますます
息苦しさが増し、それがまた息さえ制限される被虐状況を感じさせ、興奮してしま
うという循環。

僕はこのマスクを被せられている限り、犬のように荒い呼吸を繰り返し続け、息苦
しさを感じ続ける。夢にまで見た状況だった。ふと、マスクの鼻の部分に穴がなか
ったことを思い出し、いったいどういう仕掛けなのか、僕は手を上げて鼻の部分を
まさぐってみた。

僕の顔面はいっさいのおうとつを奪われ、ボールのような緩やかな曲面に変わって
いる。鼻の部分には穴の痕跡もなく、微かな息すら漏れてはいない。ではいったい
どこから僕は空気を吸っているのだろう。頭全体を撫でさすってみた。

指先に点のようなものを感じたのは耳の上あたりだった。マスクのその部分に、針
穴ほどの小穴が数十個、1センチほどの円状にまとまっていた。そこから僕の呼吸
に合わせて呼気が噴き出し、吸いこまれている。反対側を探るとそこにもあった。
それ以外にも頭頂部と後頭部にそれぞれひとつずつ呼吸孔があった。

「そこは、く、工夫したんだよ。鼻のパイプはマスクの中を幾筋かに別れて走って
いるんだ。このマスクを、つ、着けていさえすれば、き、君がどのような、た、体
勢でいても、た、たとえ、が、顔面が埋まってしまっても、少なくともひとつの、
こ、呼吸孔は、か、確保できる。うっかりしていても事故は防げる仕組みなんだ」

感心。というか豚男さんの創意に脱帽。顔面をのっぺらぼうにするために邪魔な鼻
の穴がなくなるだけじゃなく、窒息事故まで防止できるなんて。こういうのなんて
いったけ。二兎を追うもの〜じゃなくて。一石二鳥だね。一挙両得ともいう。

挿管のときは苦しいけど、いったん収まってしまうと意外と耐えやすい。違和感も、
なんというかほどよいんだなあ。密閉感は最高だし。顔面のゴム厚から重そうに見
えるけど、着けてしまえばそれほどでもない。逆にその厚みが外界との遮蔽感を増
してくれる。

このマスクは僕の最高のお気に入りになった。豚男さんの実行力と創意が嬉しかっ
た。声も出せず、笑みも見せられず、感謝の気持ちを表せないことがもどかしい。
だから、三つ指をついて深々とお辞儀をした。そのとき、揃えた膝に何か液体がと
ろりと落ちてはじけた。

「おっとっと。涎がこぼれてる。ちょ、ちょっと上向きにして」

開口リングで「O」の字にぽっかりと開いた僕の口は、唾液を留めておけない。上
を向こうとしたが、マスクの厚みと圧迫で顎やうなじが引攣れ、完全には上向けな
かった。ずっとこうしてもいられない。当然、栓が必要ということになる。

「栓は、楽な蓋タイプと、か、かなり、き、きつい、ゴ、ゴムペニスで喉の奥まで
塞ぐ張り型タイプがあるんだけど、・・・もし、た、耐えられそうなら、鼻のパイ
プがちゃんと、き、機能するか、た、確かめたいから、張り型タイプを、た、試し
たいんだけど、だ、だめかな」

もちろん否とはいわない。そもそもこのマスクのアイディアは、フェラチオをして
喉の奥にペニスが突きこまれても呼吸を確保することにあった。それゆえの気管内
挿管なんだから。確かにその機能を試す必要があるよね。僕は涎をこぼさないよう
に気をつけながら頷いた。

口の中にゴムのペニスが差しこまれる。長くて太い。でも、さっき豚男さんの超極
大ペニスで拡張された喉には何の問題もなく、かえって物足りなさまで感じさせて、
つるりと食道に収まってしまった。ガチンっと口の金属リングに張り型の底が嵌り
こみロックされたみたいだ。口から空気や唾液が漏れる心配がなくなった。

本物に比べたらフニャチンだなあ。それでも太さはフランクフルト級だから、喉は
完全に塞がれたはず。深呼吸してみると、パイプで確保された気道は潰れることな
く、呼吸になんの支障もない。

「く、苦しくないかい?なにか異常はないかい?」

鼻パイプも気管にしっくりと馴染んでいたし、長年の練習で鍛えた喉はゴムペニス
で塞がれたって嘔吐反射の心配はない。息苦しさはどうしようもないが、それは変
態マゾの僕にとって麻薬みたいなもの。僕は大きく首を振った。そうすると、喉の
中のゴムペニスがぬるりとくねって気持ちよかった。

「よ、よかった。医療用の、こ、呼吸管とか、いろいろ調べまくったんだけど、ど、
どうしても推測で判断しなくちゃいけない、と、ところもあって」

豚男さんの推測はシャーロック・ホームズみたいに正確だったみたいだよ。といい
たいけれど鼻息がすうっと漏れただけ。顔がなくなり、視覚も臭覚も声も奪われ、
息さえコントロールされてしまうと、もうどうにでもしてっていう気持ちになる。
奥深いところの緊張がふっと解け、淫らな欲望がどろどろとあふれだしてきた。ペ
ニスが痛いほど硬く、勝手にぴくんぴくんと跳ねまわる。拘束が解放に繋がるって
矛盾してるけどほんとうのこと。この辺が理解できるとしたら、マゾレベル8って
ところかな。

豚男さんの手が、おそるおそるといった感じで僕の頭部に乗せられた。いまや顔を
喪失し、亀頭のように滑るゴムボールと化した僕の頭を、その太い指が、舐めるよ
うに這い回った。

「うう。が、我慢できないよ。すごく素敵だ。いますぐ、き、君の中に入れたい。
で、でも、き、君のために用意したいろんな衣装を、つ、着けてもらったら、もっ
と素敵なお人形さんになるだろうし、そんな、き、君の姿を見てみたい。き、君は、
ゴ、ゴムマニアだから、き、君も、き、着てみたいと思ってるだろう?」

豚男さんの極上ペニスを体感し、頭のマスクの密閉感とそのブレス・コントロール
効果だけでも充分興奮してしまった僕は、いますぐ犯して欲しいと内心悶えていた。
アヌスは期待にうずうずして、酸欠の金魚のように括約筋をパクパクさせてるし、
その動きが括約筋の繋がりで前にも伝わり、犬の尻尾のようにペニスが浅ましくパ
タついてた。

とはいえ、のっぺらぼうのゴムボールと化して、その中味の脳みそは煮えたぎった
欲望のスープに溶けていても、いまだわずかばかりの判断能力が残っていて、豚男
さんが用意したゴムの衣装がどれほどのものか、興味と期待でわくわくしてる。い
ま僕が被っているマスクがこのこだわりようなら、他の衣装にも思いもよらない驚
きが隠されていそう。いま抱かれるのも気持ちいいだろうけど、フル装備の完全拘
束で抱かれるのはもっと興奮できるはず。と先走る下半身をなだめすかして、僕は
頷いてみせた。

「そうか、そうか。じゃあ、き、今日のために準備したプレイルームへいこう。た、
立ってくれるかい」

豚男さんが手を貸して僕を立たせてくれる。優しいご主人様だ。そのまま手を引い
ていこうとした豚男さんの手を、さりげなく外す。手は背中で組み、背筋を伸ばし
て、思わせぶりに腰を突き出してみせた。けっこうな無言の間があって、突き出し
た僕のペニスがそろりと握りこまれた。

握られたまま再びわずかな間があったのは、僕の機嫌でも窺っていたのだろう。気
弱な豚男さんらしいもどかしさだと思う。でも、まあ、まだ今日が初対面なのだか
ら、探りあいも仕方のないことなんだろう。ペニスがそっと前に引かれた。僕は迷
わず一歩を踏み出した。

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