フェイクガール  作: 玲
戻る  次へ  書庫メニューに戻る

『フェイクガール』・フェイク1-2

2. 天は二物を与えずというけれど、逸物は与えるみたい。

豚男さんの車に同乗して彼の家へ。夜の闇で詳しくはわからなかったけど、広い敷
地の中の一軒家だった。しがない窓際社員みたいに見えたけど、豚男さんはけっこ
うお金持ちらしい。居間のソファに落ち着いた後も、豚男さんはまだどこかうわず
っていた。座ろうともせず飲み物を用意したり、突然思いたって音楽を流したり、
せわしなかった。何か思いつくたびに、鼻が小さくブヒッと鳴るのは癖なのだろう
か。ますます情けなさが増し、僕を微笑ましくさせた。現実に僕が目の前にいると
いう事態が信じられない面もちなんだろう。なんだか可哀想になってしまい、僕は
自分から口を開いた。

「あの、遠慮なんてしないでくださいね。僕はメールでも書きましたけれど、本気
です。あんなに何回も、メールのやりとりをして、本田さんのこと信じてます。僕
も嘘偽りなく恥ずかしい心の底までさらけだしました。どんなことでも受けとめる
決意できました。だから遠慮なく、僕を自由に使ってください」

僕がそういうと、豚男さんは一瞬泣きそうな表情を浮かべ、それから大きく息をつ
いた。うーん。さっきから豚男さんってタレントの誰かに似ているような気がして
ならないんだけど・・・。なんだっけ。ここまで名前が出かかっているんだけど。

「き、君は・・・て、天使だな」

豚男さんは鼻を鳴らして僕を力一杯抱きしめ、覆い被さるように唇を吸いつけた。
僕の舌が吸い出され、豚男さんの口の中で舐め回される。ナメクジのような豚男さ
んの舌が僕の口を犯したとき、僕は赤ん坊のようにその舌に吸い付いていた。豚男
さんの手が僕の股間をまさぐり、そこで僕のペニスの硬直に気づいた。豚男さんは
僕が本気で感じていることを知り、ようやくコンプレックスをいったん忘れること
ができたようだった。

僕は床に押し倒され、慌ただしくジーンズを剥ぎ取られた。下着はつけていない。
脱毛処理した股間のつるりとした情景を目にして、豚男さんの顔に驚きの表情がよ
ぎり、すぐにそれが劣情のぎらつきとなった。豚男さんが僕のペニスにむしゃぶり
つく。僕のペニスを咥えながら、じたばたと自分の服を脱ぎ散らかしている。僕に
とってはマタタビのような体臭がいちだんと強烈になった。

豚男さんはブヒブヒと鼻を鳴らしながら歓喜し、まるで僕の中味をすべて吸い出し
そうな勢いで吸い続けた。僕の脳みそもどろどろと劣情の溶岩に蕩けて、無意識に
声が漏れてた。豚男さんの脂肪だらけで弛んだ肉塊が、僕のペニスにむしゃぶりつ
いたまま回転し、その足が僕の頭を跨いだ。目の前に毛だらけの玉袋が吊り下がっ
ている。その向こうに初めて目にした豚男さんの赤黒いペニスは、神に感謝したい
ほど太く長くカリ高だった。巨根がいいというわけじゃない。大きすぎても困る。
肛門が裂けたり直腸壁が突き破られたりしたら命にかかわるしね。その点、豚男さ
んの肉の棒は、僕が受け入れられる限界ぎりぎりの巨大さだといえる。そのうえ瘤
だらけといいたいほど節くれ血管を浮き立たせ、はち切れんばかりに硬くそそり立
っていた。

こんな獰猛な肉の棒は見たこともなかった。両手でその肉茎を握りつけてもその上
にまだ、亀頭が湯気を出して傘を拡げている。恥垢の臭気が強烈に鼻につく。イカ
臭い。それも腐りかけの。僕の心のブレーキは、いつもこの臭いで解除される。い
ただきます。と心で呟き、僕は大きく息を吸って、その暴れ馬を飲みこんだ。亀頭
を口いっぱいに頬張り、訓練した舌でぞろりと舐めあげてやる。舌に恥垢の粘つく
感触。かすかに苦くて塩気がある。豚男さんのペニスの香りが鼻に抜ける。

豚男さんの尻肉がぶるると引攣るのを感じた。先端からとめどなく流れ出している
我慢汁を啜る。万遍なく亀頭をしゃぶりつくした後、いよいよ僕の修練の見せ所。
息を詰め、喉をひとつ鳴らして大きく拡げる。自分から頭を押し当ててゆくと、豚
男さんの巨大なペニスが徐々に口の奥に滑りこみ、僕の喉をミシミシ拡げて亀頭の
先端が突き刺さってくる。さすがに経験のない太さだったけれど、頭をひと揺すり
すると、つかえた亀頭の鰓が扁桃腺を押し潰して通り抜け、その勢いで後は一気に
僕の食道の中に滑りこんだ。

豚男さんが驚きの声を漏らした。豚男さんの巨大肉棒は完全にその姿を消し、僕の
中に収まった。僕の唇は豚男さんのペニスの根本に達し、僕の顔面は豚男さんの腹
の脂肪にめりこむように埋まる。気道が塞がれ、もう呼吸ができない。僕の食道は
満杯に拡げられて、粘膜の襞も消えるほど張りつめ、焼けつくような苦しさがある。
でも、希にみる充足感が苦しみを上回った。僕は身体が粟立つような幸福感に包ま
れる。豚男さんが獣じみた雄叫びをあげ、無我夢中で腰を振り立てた。

豚男さんのペニスできつく栓をされた僕の頭は、豚男さんの下腹に密着したまま固
定されているようなものだから、豚男さんの腰の動きとともに付属物のように揺さ
ぶられた。あまりにもぴったりとペニスが詰まっているため、豚男さんの我を忘れ
た腰の動きにも抜けることなく、わずかに食道内で前後しただけだった。だけど、
それだけの動きですら豚男さんにも、そして僕にも充分な刺激だった。まるで口か
ら腕を突きこまれ、喉から胃までを握り拳で連打されているような圧倒的な暴力に、
抵抗などできず、理性はあっけなくノックアウトされちゃった。

止められた呼吸がそろそろ限界近くなって、目の裏側に赤い斑が浮かびだしたけれ
ど、これほど完璧な嵌まりこみの充実感を喪うのが惜しくて、このまま死んでもい
いような気持ちになってた。全面降伏です。巨大な攪拌機の為すがままにただ身を
委ねていたい。僕の脳みそは脳内麻薬のスープに煮詰められていた。

空気を求める肺と喉の収縮が死の痙攣へと進んだとき、豚男さんの感極まった喘ぎ
とともに、僕の身体が万力のような力で抱きすくめられ、直後に僕の頭と喉に嵌り
こんだ肉の栓がさらにふた回りも膨張した。無理矢理引き延ばされた食道粘膜が発
したはずの苦しさは、神経のどこかで快楽に置き換わっちゃった。もう痛みですら、
血を沸騰させるガソリンにすぎない。すべての毛細血管が溶けて崩れたかのように、
僕の頭の中も真っ赤に染まった。

肉体が、煮えたぎる血泥に変わってしまったようだ。血泥の渦に息苦しさが溶け消
え、生まれて初めての不思議な快感が、産み落とされる胎児のように産声をあげて
僕を満たした。僕の肉体は蕩けた。硬直するのではなく空気の抜けたゴム人形のよ
うに弛緩した。時間が僕の肉体を境に、枝分かれし、ゆっくりと渦を巻きながら澱
んでいくようだった。轟々と流れる時間の奔流を皮膚に感じ、しかし内臓は停滞し
た時間の捩れに揉みしだかれている。

亀頭の先端が届いている胸の奥で、大量の噴出がまるで砲撃のように撃ちだされた
ときも、スローモーションのように感じられた。食道が内側からの膨張で引攣れ、
そのたびに肉襞を押し広げて撃ちだされる精液が、僕の粘膜にはじける。感度を増
した食道粘膜は、そのひと噴きごとが粘膜に貼りつく感触をしっかりと感知した。
熱くて、べっとりと粘りついて、どろっと滴り落ちる濃厚な精液。僕の押し潰され
た顔の上で、ひと噴き毎に硬直する豚男さんの呻き声は、スローモーションに引き
延ばされ腹に響く重低音に変化してる。僕の細胞がその結合力を失い、腐液を漏ら
して溶け崩れていく。肉が溶け、血泥となって、僕を包んでいる皮膚がただの袋と
なり、萎びてしまう。そこに豚男さんの精液が充填され、僕は再び膨らみ始める。
溶けた血肉と精液で満たされた人間ソーセージのできあがりだ。

快感の昂りは下ることなく、僕という木の葉を浮かべた大海のように、どこまでも
うねりながら広がっていた。いつまでもそのまま快感の揺りかごに揺られていたい
と願ったけれど、終焉は新聞の勧誘員のように突然やってくる。頭が握りつけられ、
癒着したかのような粘膜を毟り剥がしてペニスが引き抜かれてゆくのを、窒息でい
まにも消えいきそうな意識の片隅で感じた。

風鳴りのような音を立てて肺に空気が満ちてゆくのが、他人事のようにどこか遠く
で感じられた。それでもしばらくは、快感のうねりが途絶えることなく続く。肺が
勝手にせわしく動いて酸素を脳に送りつけなければ、このまま永遠に快感のスープ
に浮いていられるような気がしたんだけれど。緩やかに快感が静まってゆくと、寸
断された神経が再接続され、意識と感覚が少しずつ鮮明になってきた。おぞけのよ
うな震えが全身に走り、快楽の残滓を振るい落とした。ふと目を開けると、豚男さ
んがちょうど僕に身体を重ね口づけしようとしたところだった。今度のキスはゆっ
たりと落ち着いたものになった。

「ご、ごめん。あまりの、き、気持ちよさに、自分のことだけになって、く、口を
離してしまった」

豚男さんが僕の股間に手をやり、僕の精液を指に絡め取って見せてくれた。僕には
射精した感覚がなかったのに。驚いて、自分で股間をまさぐると、ペニスも玉袋も
粘つく精液に濡れていた。こんな射精の仕方は初めてだった。精液は発射されるの
ではなく、ゆるやかにあふれだしていた。僕は間近に豚男さんの目を覗きこみ、最
高の笑みを浮かべて首を振った。応えようとして声がかすれた。ようやく声が出せ
たのは、咳きこみ、精液臭いゲップをしたあとだった。

「こんなに気持ちのいい射精の仕方は、生まれて初めて。こんなイキ方があったな
んて。まだ体の中がザワザワしてる。僕の方こそ感謝しなくちゃいけないみたい」

「ほんとうに?僕も初めての、た、体験だったから、我を忘れた」

いぶかしげな僕の視線に、豚男さんが恥ずかしそうに笑って答えた。

「フェ、フェラチオが初体験という訳じゃないんだけども。その・・・風俗には、
行ったことがあるし。で、でもあんなに奥まですっぽり入るなんて」

「気持ちよかったですか?よかった。フェラチオだけは自信あるんです。ずっと毎
日練習してましたから」

「き、気持ちいいなんてもんじゃなかった。き、気持ちよすぎて、が、我慢しきれ
ず漏らしてしまった。自分では早漏じゃないと思っていたんだけど。いや。そんな
に、け、経験ある訳じゃないんだ。男同士は、き、君が初めてだし」

「いやだなあ。もっと自信持ってくださいよぉ。前にメールに書いたとおりで、僕
も以前に二人しか経験ないですけど、でもネットで見たどんな男性のものより外人
のものより、本田さんのは立派な男性自身だと思います」

僕はそっと手を伸ばして、今は半分の大きさになり萎縮したように縮こまっている
豚男さんのペニスを撫でさすった。

「本田さん・・・ってなんか他人行儀ですね。やっぱりメールでのプレイみたいに
ご主人様って呼んでもいいですか」

「う。ううう。め、面と向かっていわれると照れるなあ」

「でも、明日のお昼まで、ずっと一緒にいるんですから、すぐ慣れちゃいますよ」

「ずっと一緒に。ずっと一緒に。ほ、ほんとうに僕みたいなみっともない男と、そ
の・・・セックスして、その・・・ど、奴隷になってくれるって。ほんとうなんだ。
僕は、自分の、か、顔も、体型も、性格も、人に、け、嫌悪を与えるだけなのを知
ってる。こ、子供の時から思い知らされてきたし。なのに、どうして、き、君みた
いな最高の、こ、子が、僕なんかを受け入れてくれるのか、まだ理解できない。き、
君ならどんな相手だってよりどりみどりのはずなんだし」

「何度でもいいますけど、喜んでご主人様の性処理用具にならせていただきます。
自信持ってくださいね。僕だって自分の望まない相手にこんなこといいません。イ
ンターネットのあの奴隷交際掲示板に写真付きで自分を載せたとき、メールが60
0通来ました。いたずらや興味本位も多かったですけどね。あれだけ、ただのプレ
イ相手募集じゃなく、真剣に僕の人生を預ける相手を探してるんだから、応募する
方も真剣に自己アピールして欲しいって書いたのに、たった3行、前置きもなしの
ご主人様口調で一方的に命令してくる人とか、中には毎月100万円払うっていう
条件つけてきた人もいました。嘘かほんとかはわかりませんけど。お金なんかじゃ
ないってはっきり書いたんですけどね。いろんな人がいましたけど、本気で真剣に
書いてくれる人もたくさんいました。真剣に書いてくれた人だけを選んで、その真
剣さに失礼のないようひとつひとつののメールを何回も読み返して、その中でも飛
び抜けて印象深かった方10人に絞り込みました。それからメールのやりとりを何
往復もして、送られてきた全部のメールの何百行っていう文章を全身全霊で読んで、
これ以上は会ってみないと決めようがないってところまで絞りこんだんです。それ
がご主人様と後ふたりの方。ご主人様は自分の容姿にコンプレックスを持っていら
っしゃるようですけど、その容姿だって僕からしたら味わい深い個性です。さっき
初めて会って、ご主人様の容姿を見た瞬間、おチンチンにビンビン来ましたもん。
一目惚れかもしれませんよ。あ、信じてないでしょう。じゃあ、こういったら信じ
てくれますか。僕が初めて好きになった相手も、太ってて・・・その、なんという
か特異な風貌の人でした」

我が愛しの豚男さんは、ほんの少し自信をつけたようだった。

戻る  次へ  書庫メニューに戻る
inserted by FC2 system