女にされた  25〜27 作:摩火

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女にされた25

・ ・・ああ、オレは、オレは女性ホルモンまで注射されてしまったのか・・・
もはや裕次郎にできることはわが身の不運を嘆くことぐらいしか残されていなかった。
・ ・・早く、早く男性ホルモン打って中和しないと、本当に女にされてしまう・・・
そのような思いつきが次々と浮かんでは消えてった。
もし、裕次郎がホルモンの正確な知識を持っていたなら、男性ホルモンを急いで打っても女性ホルモンは中和されないことを知っていただろう。
ホルモンは酸とアルカリとは違う。
ホルモンはその僅かな量が体内にある限りは細胞に直接に働く。特定の細胞には更に大きな効果を上げる。だから一度打たれてしまった女性ホルモンは肝臓等で分解されるまで体中の細胞を女性化していくのだ。
今回、医者が投与した女性ホルモンは毎日飲まなければならない錠剤タイプと違って。体内に少しでも長く残留するように筋肉へ注射する方式のものだった。筋肉に打たれた女性ホルモンは少しづつ毛細血管等から全身に運ばれていく。そして最後に肝臓で分解されてしまうのだが、血中の女性ホルモン濃度をゼロにすることなく一定期間持続する効果を持っていた。
「さてと、もう朝か、痛み止めと傷口に塗る消毒液渡しておく、一週間後にまたホルモン注射するから、夜の10時くらいに来てくれ。」
黙り込み、悄然とした様子の裕次郎を尻目に医者が言った。
「ああ、それから2-3日は安静にしておいたほうがいいな、なにせ内臓取っちまったんだから、体への負担はだいぶ大きいからな。」
医者のその言葉を合図に、裕次郎はまたバスローブをまとわされ、ヤクザ達に引きずられるようにして車に向かった。
病院の外は夜明け特有のひんやりとした空気に包まれていた。
東の空が茜色に染まり始め、夜の闇から薄闇へと代わりつつあった。
新聞配達の自転車をやり過ごしてから、裕次郎は車の中に押し込められた。
その時サブがわざとらしくバスローブ越しに裕次郎の尻をなでまわした。
「ヒッ!」
そのおぞましい感触に裕次郎は思わず小さな叫びを漏らしてしまう。

女にされた26

裕次郎はおどおどしていた。
去勢をされ、自分が男達の愛玩物として性的対象にされようとしていることで、裕次郎は自分がか弱く、ひ弱な存在であることをいやというほど感じていた。
その感覚はレイプや痴漢に怯える女性の感情と同じだった。
昨日までの裕次郎だったら、そんな精神状態になることすら理解できなかっただろう。しかし、今の裕次郎は男という男が怖かった。男達のそばにいると、自分が性欲の対象になるという恐怖で体中が緊張のあまり硬く固まってしまうほどだった。
そのような精神状態のところへ持ってきて、自分の尻をサブになで上げられたのだから、全身が怖気立ち、叫び声を上げてしまうのも無理はなかった。
「さて、次は純子ママのところだな。」
古田の兄貴分は運転席に乗り込んだ運転手兼カメラマンのヤクザに言った。
車はまた白々としてきた明け方の街中を走り始めた。
純子ママとヤクザたちが呼ぶ女性のマンションは繁華街から程近い場所にあった。
裕次郎は会社の帰りによくその繁華街に立ち寄り酒を飲む。そのせいで、自分がどこにいるかの見当はついた。
そのマンションの1階や2階には小さなバーや大人のおもちゃのような怪しげな店が数件入居している。
車はマンションの裏手にある地下駐車場に滑り込んだ。
駐車場にはエレベーターがあり、そこからすぐに上階へと行くことができる。
裕次郎達そのエレベーターに乗り込まされた。
明け方とはいえ、その駐車場には誰もいなかった。誰かいれば、それは裕次郎が助けを求めるチャンスだったかもしれない。
しかし、娘を人質に取られ、去勢までされてしまった身だ、裕次郎はヤクザ達から脱出する気力も根性も萎えかけていた。
エレベーターは最上階である13階に止まった。
最上階は意外と強い風が吹いていた。素裸にバスローブ一枚の裕次郎は、その明け方の寒い風に触れ、体が自然に震えるのを感じた。そしてロープの襟元をしっかりと自分の身にかき寄せた。
ヤクザ達に促され、マンションの廊下を歩き始めた裕次郎は、股間がひどく痛み出してきたことを感じた。
それは股間に打たれた局部麻酔が切れてきたことを表していた。

女にされた27

痛むのも無理はない、なにしろ男性の急所である睾丸をスッパリと切り落とされているのだ。
裕次郎は股間の痛みと共に、体全体のひどい脱力感を覚えていた。
また脂汗がジワッと毛穴から染み出し、それが朝の冷たい風に触れ、急速に裕次郎の体力を奪っていった。
裕次郎は歩くのがだんだんつらくなってくるのを感じた。
そして最後には裕次郎を挟み込むようにして歩いているヤクザの肩に寄りかかるような状態になってしまった。
「へっ、どうやら麻酔が切れたらしいな。」
兄貴分の古田が誰に言うともなく呟いた。
純子ママのドアまではエレベーターからほんの20メートルくらいだったが、裕次郎にとっては、何キロもあるような長い道のりに思えた。
古田の兄貴はようやく目的地のドアの前に立った。そしてチャイムを鳴らす。
少し経ってから、ドアがガチャッと開いた。
「いらっしゃい、待ちかねたわよ。」
中から現れたのは30台半ばかと思われる彫の深い、しかし優しい顔立ちの美女だった。
この女こそこれまでにヤクザの会話に時々登場した純子ママと呼ばれる女性だった。
純子ママは体にぴっちりとした黒のクロップドパンツに長袖の花柄のカットソーという普段着姿だった。
「その子がそうね、早く入って。」
純子ママはちらっと裕次郎を値踏みするように一瞥すると体を引いてヤクザ達を部屋の中招き入れる。
裕次郎はそのヤクザにほとんど抱きかかえられるようにして部屋の中に連れ込まれた。
「とりあえず、その子を長椅子に横にならせてあげてちょうだい、タマ抜きしてきたばっかりなんでしょう?痛み止めのお薬は貰ってきたの?まだ飲ませていない?ならコップに水ついで来て。」
純子ママはひどく手馴れた様子で、ヤクザ達に次々に指示を出す。その指示に運転手役の男どころかサブまでも素直に従って動き回った。
「とうだ、こいつは、いい掘り出し物になりそうだろう?」
古田の兄貴が純子ママに言った。
「うーん、そうねえ、ちょっと待って。」
純子ママは長椅子に横たえられた裕次郎のそばへ行くと、顔を両手でつかみ品定めするように動きまわした。それから手足の筋肉や骨の太さを確かめるようにあちらこちらをいじりまわした。
裕次郎はといえば、手術のショックのためか、この一日でさんざんな目にあったせいか、ぐったりとして純子ママのなすがままになっている。
「ほい、純ママ、薬と水」
サブが純子ママに病院で貰ってきた鎮痛剤と水の入ったコップを手渡す。
「あら、ありがとう。」
そう言って純子ママは裕次郎の上半身を起きあがらせると、薬とコップを今度は裕次郎に手渡した。
「お薬、早く飲んで、少しは痛みが和らいで体が楽になるから。」
その言葉に促されるように裕次郎は錠剤を飲み込み、水を一気に飲み干すとまた長椅子の上にどっと倒れるようにして横になった。

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